永岩俊道の発言 (国家安全保障に関する特別委員会)

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○永岩参考人 おはようございます。航空自衛隊OBの永岩であります。
 本日は、自衛隊の作戦運用の現場及び司令部活動におきまして、司令官としてその統制を実施した、指揮を実施した経験から、具体的な話でお話ししたいと思います。
 もちろん、私自身、NSCの立ち上げの議論につきましては大賛成でありまして、待ちに待った法案ができたなと。ただし、確認いたしますと、いろいろまだ具体的な課題があるだろうな、将来に対して、状況変化に適応する形でどうテーラーメードにしていくかということに関して、ビジョンが必要だなというふうに感じているところであります。
 経歴としましては、F4ファントム、F15戦闘機に乗りまして、飛行時間四千時間、冷戦時代の対領侵任務についておりました。平成十五年には、西部航空方面隊ということで、東経百三十五度以西、北緯三十度以北の防空任務を担任しておりました。それ以降、十八年からは、航空支援集団司令官ということで、戦う航空総隊を支援する役割を負うていましたが、当時、イラク復興支援でございましたので、クウェートのアリ・アルサレム空軍基地にC130の部隊を派遣しておりましたし、カタールの方に、CAOC、コンバインド・エア・オペレーションズ・センターというところに連絡要員、現地指揮官を派遣して、それを府中の航空自衛隊司令部から指揮統制しておりました。
 また、支援集団司令官は邦人輸送にかかわる統合任務部隊指揮官でありまして、例えば、朝鮮半島が不安定になる、そのときに、いかに邦人を救出するか、後方輸送するかという、その任務での司令官としてアサインされておりましたが、その当時、計画立案、具体的な演習といったもろもろのことに携わっておりました。
 昭和五十一年九月六日、私は、千歳基地で、アラートハンガーでスクランブル待機をしておりました。不意突然の目標の出現に、スクランブルで上がって、ベレンコ中尉の乗るミグ25を発見することができませんで、それで、やむなく千歳に帰ったんですが、その当時は、何といいますか、事態というのは不意突然に、思いもしないマグニチュードのことが思いもしないところに発生するものでありまして、現場は相当混乱しますし、情報ももちろん、いろいろな状況掌握も全くできない状態でございましたので、現場はもちろんですが、中央の方に至っても同じように情報錯綜し、基本的には、上から下までしっかりした意思のもとにマネージされたか、危機管理がされたかというと、今考えますと、非常にお寒い状態であったなというふうに認識しているところであります。
 戦闘機乗りが上空で生き残りのために何に一番関心を持って行動するかといいますと、英語でまことに申しわけありませんが、SAをとるといいます。SAというのは、シチュエーショナル・アウェアネス、状況掌握であります。それはもちろん、自分の担当、正面だけではありませんで、後方も、あるいは各警戒管制組織から来るいろいろな情報もあわせまして、深刻に状況判断、SAをとります。SAが優位になりますと、基本的にその交戦につきましては勝利が見えてくるということであります。
 多分、NSCも、いかにSAをとるか、情報掌握をするかというのに課題があり、そして、上空のパイロットも一緒ですが、いかに決心するか、非常に錯綜した中で、決心するまでのリードタイムが少ない中でいかに決心するかというのが問われるわけでありまして、それはNSCも全く一緒なんだろうなという感じがするところであります。
 次の論点ですが、さて、NSCは、宮家先生おっしゃいましたが、なかった屋根をつくればそれでオーケーか、危機管理は大丈夫かということでありますが、全くそういったことはないというふうに思います。
 最近、中国の軍事力台頭も非常に厳しいところでありますが、私は数年前に大連に行っていろいろ意見交換をする機会がありまして、その際、大連空港におりるファイナルレグ、最終着陸経路の真下で、そこに大連港があるんですけれども、そこでワリャーグの工事をしておりました。国家的な秘密であればまさかそんなに目につくところで建造なんかするとは思いませんが、そのとき着々と建造しておりました。中国に言わせると、空母は大国であれば持つべきものというふうに言っておりますので、どうもそれは中国人のナショナリズムを満足させる類いのものなのかなと。
 実際、今、遼寧という名前に変わりまして、実運用に向けて着々と整備が進んでいますが、それを見ますと、空母だけで役割をなそうとしている。アメリカ軍に言わせますと、格好の、いい目標であると。中国本土にいるハイバリューアセット、戦闘機等が非常に多数艦上に載りまして、海に単艦で出てくる状況でございますから、そうしますと、それは非常に楽な作戦になるということであります。
 NSCも一緒でございまして、NSCさえつくればいいかというと、決してそうではないわけでありまして、それにかかわるもろもろの体制の整えというのが全般的にデザインされて初めて機能するんだろうなというふうに私は思うところであります。
 NSCは、情報の要求を出すところであり、情報のエンドユーザーであります。ですから、そういった観点でしますと、まさに情報を、どういった形で周辺体制を整えるか、デザインするか。私は、多分、アメリカと同じように、中央国家の情報組織、まさにCIAのような体制をいずれつくらなければいけないんだろうなというふうに考えているところであります。
 集約した情報は、一体管理されて、そしてその状況に合わせた形で合意し、判断、決心できますような形で十分提供されないと役割をなさないというふうに考えるところであります。
 ただし、総理がいつもおっしゃいますが、今そこにある危機、昔と違いまして状況が非常に厳しくなっておりまして、あすにでも、アドホックにでも、それらの脅威、危機に対して答えを準備しなければいけないというふうに思うわけであります。その言葉で適当なのがありますが、それは、まず隗より始めよ。それで、だんだん状況変化に適合させていく、アレンジしていく、テーラーメードにするという形でやれば、あした危機が至っても、あさって至っても、そのときの状況に合わせたいい答えが出るんじゃないかなというふうに思っているところであります。
 それから、実はNSCは、事が起こったらそれに対処するシステム、センターではありません。私自身が考えますのは、将来のことを予測して準備しておくという組織なんですね。
 というのは、私は以前、MITの方で、あるクライシスマネジメントに関連するシミュレーションに出たことがあります。MITのリチャード・サミュエルズ教授が、ジャパン・プログラムということで、日本を中心とした周辺諸国を対象として、十年後、二十年後にどういったクライシスが発生するだろうかという検討をし、そして、ジャパン・チーム、中国チーム、そのほかアメリカ・チーム等々の専門家、キャリアの外交官、大学教授、軍人、政治家も含めて、そういったスタッフを含めて非常に真剣な議論をしていましたが、まさに我々がまさかこんなことは起こらないだろうといった類いのことを考え出しました。
 つまり、中国の台頭、インドの台頭、ロシアのリバイバル、アメリカの相対的な退潮、そういった環境の中で、日本周辺に不測の事態が発生する。実はそれは、極めて戦略的な議論のもとに、もう既にちゃんとテーラーメードの答えがある中を適応させるやり方でやらないと、まずもって混乱するんだなというようなことですね。そういったことをテーマに準備した、あるいは議論したことがありますが、多分、そういったことでないと、次なる時代の危機は、またとんでもないところにとんでもないことが、過去の財産にないものが起こるのが事態であるというふうに認識しますので、どうしてもそういった形で事前の準備が必要であろうなというふうに思うところであります。
 その観点で申し上げますと、アメリカのNSCは、一九四七年、トルーマン大統領の時代につくられてから今のオバマ大統領まで、実に状況変化に合わせて姿を変えて、テーラーメードにしております。大統領の関心、重要事項というのもありましょうが、基本的には、いかにその状況に適合するかということに関して、体制を変えることには何ら抵抗を感じていないふうに見える。
 ですから、NSCをつくったからこれで全部答えが出せるわけではありませんので、つくったら、来年は多分、いろいろなアドホックな体制整備というのが必ずや必要になるだろうなというふうに思うところであります。
 当時、オバマ大統領になったときに議論されましたのが、大統領に対する意見具申を明確にする、長期的、戦略的視点から米国の国益にかなった政策判断をする、恣意的な情報操作を排除する、NSCの所掌範囲を限定せず、現下の複雑多岐の状況に適応できる柔軟な機構構成にする、メンバーは特定せず、事態、状況に臨機に参集できるようにする、NSCの所掌範囲を再整理するとともに省庁間の連携を強化する等々、過去、きっとおのおののことはそれなりにちゃんとなされていたんじゃないかと思いますが、オバマ大統領は、自分の代にかわりまして、まだまだ課題ありということで、テーラーメードにしたということであります。
 それから、最後になりますが、実は、世論戦ですかね、メディア戦。お隣には三戦あるんです。スリー・タイプス・オブ・ウオーということで、世論戦、法律戦、心理戦。中でも世論戦は極めて得意であります。
 まずもって、私は、作戦現場、運用の現場で、最前線で行動しておりまして、いざ、場合によって不意の衝突がここであった場合に、いかにその状況を中央にしっかり正しく伝え、とった情報についてはできるだけ速やかに、迅速に提供するかということについて腐心しておりました。時間のディレーもありましょうし、正確な情報掌握は多分非常に難しい。距岸数百マイルも離れたところで行動しておりますから、正しい情報の迅速な伝達というのは難しかろうと思いますが、大事なのは、基本的には、最前線で対処する航空自衛官、海上自衛官、陸上自衛官あるいは海上保安庁、警察等の隊員たちが、国内法、国際法理に基づいてきちっと対応しているというのが、我が自衛隊あるいはその他の機関等の今の現状の能力、実力だというふうに思っています。
 それをいかにメディアあるいは政府から、あるいは次なるNSCから、日本は国内法、国際法にのっとって正しい対応をした上でのこういった事態だということを説明して、世界に日本を応援するグループを早く確保すればするほど、日本の国益にかなう政策といいますか、あるいは実行力という形になろうと思いますから、これについては、どうしても迅速に判断する必要があると思います。
 私の過去の経験からしますと、例えば、日本海にロシアのTU16が墜落したことがありましたが、その際に日本側でやった状況掌握は、まず、戦闘機を返して、おりた航空機の残弾を確認するという行為をしましたが、まずもって、現場は相当混乱した経験があります。
 いずれ、そういった意味での世論戦について具体的に体制をしっかり整えるというのが、日本の国益にかなう、あるいはNSCをつくった上での一つの大事な要素であろうというふうに認識するところであります。
 本日の報告は以上で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118504291X00420131031_006

発言者: 永岩俊道

speaker_id: 18474

日付: 2013-10-31

院: 衆議院

会議名: 国家安全保障に関する特別委員会