山中伸弥の発言 (内閣委員会)
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○山中参考人 皆様、おはようございます。
早速でございますが、資料の二ページ目をごらんください。
私たちは、iPS細胞という技術の研究をしております。この技術は、私たちのいわゆるボトムアップ型の自由な発想に基づいた研究で生まれた成果でございますが、これが現在は、目的がはっきりした、医療応用するというトップダウン型の研究に移行して、まさに臨床研究がことし始まるという段階に達している研究でございます。
このiPS細胞研究開発に携わった経験から、今回の二法案に期待する点について簡単に御説明申し上げます。
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三ページ目でございますが、このiPS細胞の研究は、私が、一九九九年でございますが、奈良先端科学技術大学院大学というところで、独立させていただいて自分の研究室を持たせていただいた、そのことによって始まりました。そのとき私は三十七歳でございましたが、三十代で独立して自分自身の研究を思う存分できたということが、iPS細胞というイノベーションにつながりました。
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先ほどの竹中会長のお話でも明らかなように、今後、日本の新しい創薬や新しい治療というのは、企業からではなくて、多くは大学から出てこなければなりません。そのためには、大学でどうやって新たなイノベーションを導くかということが極めて大切です。
イノベーションというのは、やはり自由な発想、柔軟な発想が必要でありまして、イノベーションを導くためには、私が与えられたように、若手、三十代、場合によっては二十代の若手に独立のチャンスを与える。そして、そういった若手に、欧米に匹敵するような研究環境、建物を含めた研究環境、また研究費。
私が奈良にいたときは、自分自身の研究費というのは科研費の二百万円くらいがあっただけでございますが、奈良先端の方から支援をしていただいて、一千万円以上の研究費が当初から使えたわけであります。また、それだけでは人というのは雇えないんですが、大学から数名の技術員や学生をつけてもらった。それによって、小さいけれども、自分自身の独立した研究室を持てたというのが、こういったイノベーションにつながりました。
しかし、この独立というのは非常に注意しなければならない点があります。独立させてほったらかしにするというのは非常に危険であります。私もそうでありましたが、三十代の研究者というのは、実験の方法については一生懸命それまでやってきて上手になっていると思うんですが、それ以外のさまざまな点についてはまだまだ未熟な人間であります。
したがいまして、私も奈良でしていただきましたが、独立後も、シニアな研究者から、研究室の運営をどうするか、学生とか技術員、さまざまなトラブルもどうしても生じますので、どういった運営をするか、そして、生命倫理や研究倫理や利益相反等に対してきちっとした、独立後も継続した若手研究者の教育を行う、そういうシステムが必要であります。これを大学単位でやるのか国単位でやるのかということは、効率から考えると、国単位でやっていく方がいいんじゃないかという気もしております。
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こういった、独立させていただいたことによってできた技術がiPS細胞技術であります。この技術は、患者さんの血液や皮膚の細胞をiPS細胞という万能細胞に変えて、そこから作製したさまざまな分化した細胞を再生医療や創薬に用いるということで、再生医療に関しては、ことし神戸で臨床研究が始まりますし、治療薬につきましても、幾つか有望な薬が既にiPS細胞創薬でできているわけであります。
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このiPS細胞研究もまさにそうでありましたが、できた当時は、マウスでiPS細胞をつくった、そして、今度はそれをヒトで実現させたい、そういった基礎研究の段階ではお金もまだそれほどかかりません。一千万円くらいの年間予算でも何とかできる、数名の研究者がいればできる、そういう基礎研究の段階があります。
その後、それが本当に人間の治療に使えるかという検討になっていきますと、前臨床研究、もしくは末松先生の橋渡し研究ということで、安全性であるとか効果を動物実験等で確かめる必要があります。その段階からだんだん費用も人材もウナギ登りになっていきまして、iPS細胞技術は、まさに臨床研究、実際の人間の患者さんで効果や安全性を検証する直前まで来ておりますが、臨床研究になると、さらにぐっと加速度的に費用も人材もかかるというのが研究に係るコストであります。
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このように、大学発のイノベーションを、前臨床研究を経て臨床研究まで持っていくためには、莫大な予算がどうしてもかかってしまいます。ただ、我が国の科学予算というのは、アメリカのNIHに比べ、アメリカ全体に比べると十分の一程度の予算であります。決められた枠の中でどう有効に予算を使っていくかということが非常に大切でありまして、私たちは、日ごろ研究していて、ここに書いてある幾つかのことを何とか柔軟にしていただきたいと。
例えば、単年度執行という拘束があります。年度末になるとお金が使えない。私たちも今ネイチャーという雑誌に重要な成果を投稿しております。つい二週間くらい前に最初のレビューが返ってきて、追加実験をしなければなりませんが、私の部下に追加実験をしているのかと聞くと、いや、今、年度末で薬が買えないから四月にならないとできませんということで、僕は、いや、そんなの待っていられない、もう自分のお金で買うから注文せよと言いましたが、そういうことが本当に起こっています。これは、ぜひ何とかしていただきたいと思います。
それから、府省をまたぐ複数のプロジェクトの相乗り、これもできません。同じiPS細胞関連の研究であっても、プロジェクトが違うとお金は分けなければならない。機械も原則的には分けなければならない、ネズミの餌も分けなければならないという、非常に事務手続も複雑になっております。
また、特許侵害等、突発的に生じる場合に、なかなか国のお金では対応できないということで、私たちはiPS基金ということでマラソンを走ったりして寄附を集めておりますが、やはりこういったことも、国プロジェクトの場合は国からの支援をいただきたいというふうに考えております。
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臨床研究を進めていくのは、あたかもジグソーパズルを組み立てている作業と同じだというふうに感じています。たくさんのピースがありまして、私たち基礎研究者ができる基礎研究も大切なピースですが、それだけでは全然だめでありまして、前臨床研究、臨床研究、治験、特許や倫理や許認可、また私たちの場合は日赤との連携も非常に大切ですし、産学連携、国際連携、広報、ファンドレージング、さまざま専門家が集まって初めてイノベーションの医療応用というのは実現します。私たち基礎研究者だけでは全くできません。
こういった人材を私たちのiPS細胞研究所では雇用しているわけでございますが、次の九ページでございますが、その大部分は有期雇用、国プロジェクトの経費で一年任期、長くても五年任期で採用している不安定な身分の方々であります。国のこのiPS研究という最前線の研究を支えてくれている方々が、このような不安定な身分で頑張っていただいているというのが現状でございます。
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十ページ目でございますが、イノベーションを研究開発していくためには、研究者だけではなく、研究支援人材の確保が必須であります。大隅先生も言われていたことでありますが、いかに優秀な研究支援人材を育成するか。
公的な教育プログラムや資格認定制度が必要であると考えております。また、そういった方々がその後も大学で安定して、安心して働き続けられる処遇、キャリアパスを明確化しないと、優秀な方はどんどん民間に流れていくという結果に既になっております。
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十一ページ目でございますが、末松先生も言っておられましたが、我が国は、基礎医学においては世界のトップファイブに入る高い地位を有しておりますが、臨床医学、これは発表をした論文数に基づいている結果でございますが、臨床医学では世界二十五位と、どんどんその地位が低下している。まさに、基礎は優秀だが、それを臨床応用する点でうまくいっていないというのが現状であります。
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これが最後でございますが、では、いかにこの日本の優秀な基礎研究を臨床開発まで持っていくか。
再生医療や創薬の推進に必要なこと、三点だけ挙げさせていただきましたが、まず、PMDA等の審査体制の強化、審査基準を明確にし、審査員も増員するという強化が必要であると思います。また、前臨床試験から治験までというのは十年以上かかる長丁場でございますので、その間、一貫した研究支援システムが必要であると考えております。さらには、一番最後の出口でございます臨床研究、治験を行うためには、国際共同治験にも対応できるような中核拠点の整備が急務であるというふうに考えております。
今回の二つの法案によって、これらのことがよりよくなり、我が国の大学発のイノベーションがさらにふえて、そしてそのイノベーションによる新しい医療や創薬の推進が実現することを期待しております。
ありがとうございます。(拍手)