前川清成の発言 (憲法審査会)
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○前川清成君 民主党の前川清成でございます。
まず第一に、これから憲法の役割を議論するに先立って確認しておきたいことがあります。それは、私たち、今この世に生きる一人一人の人間があまねく自由でかつ平等だということです。自由であり、かつ平等であるということは、基本的人権が保障されていると言い換えることも可能です。
私たちの誰もが、ただこの世に生まれてきたがゆえに尊い存在であり、だからこそ、一人一人の個人として尊重され、その個性も尊重され、したがって、どのような形の幸せを追求したとしても、他人に迷惑を掛けない限り、国家権力や他人から干渉や妨害を受けてはなりません。私たちの誰もが、ただこの世に生まれてきたがゆえに尊い存在であり、だからこそ、一人一人には様々な違いがあることを当然の前提にしつつも、人間としての尊さに違いはありません。
この自由と平等、基本的人権の保障を否定する、あるいは、政治において最優先で追求すべき価値として認めない者がいたとするならば、ここから先の憲法の議論は馬の耳に念仏となります。憲法の議論は、自由と平等、基本的人権をどのような仕組みで守るのかという議論です。
第二に申し上げたいことは、憲法の制限規範性です。
自由と平等という侵すことのできない永久の権利も、地球上に当初から横たわっていたわけではありません。まさに、人類の多年にわたる自由獲得の努力の結果です。では、人類の多年にわたる自由獲得の努力は何に対して向けられてきたのでしょうか。
例えば、人権宣言の嚆矢と評価されて、国王といえども法の下にあることを確認したイギリスのマグナカルタは、一二一五年、国王ジョンに対して封建領主らが突き付け、承認させた文書です。一七七六年からのアメリカ独立戦争は、課税の強化等苛政に苦しむ植民地住民と本国イギリスとの戦いでした。一七八九年のフランス革命は、絶対君主制、アンシャンレジームに対して第三身分、平民が自由、平等、博愛を理念として掲げた戦いでした。
枚挙にいとまはありませんが、人類の歴史において自由や平等の妨げとなったのは国家権力でした。だからこそ、憲法というルールが生まれ、憲法によって国家権力は制限されています。このように、国家権力が憲法によって制限されることを立憲主義あるいは法の支配と言います。
したがって、この制限規範性に関して、安倍総理が、今月三日の衆議院予算委員会において、王様の時代の考え方と述べたことに私は驚きを禁じ得ませんでした。安倍総理は、今国会冒頭の施政方針演説を始め様々な機会に、自由や民主主義、人権、法の支配など、基本的な価値観を共有する国々と連携を深めると述べておられますが、憲法の制限規範性を否定することは、法の支配の否定にほかなりません。
さらに、安倍総理は、今月十二日の衆議院予算委員会において、憲法の解釈に関して、私たちは選挙で国民から審判を受けるなどと述べておられますが、民主主義は憲法の制限規範性を否定しません。なぜならば、例えばヒトラーのナチス・ドイツのように、民主的な政権であったとしても、時として暴走し、自由や平等を侵害することがあります。だからこそ、王様の時代が終わり民主主義国家が成立しても、国は憲法を持ち、国家権力を制限しています。むしろ、立憲主義と民主主義とは密接に結び付いています。なぜならば、自由な討論の広場が存在しない社会に制度としての民主主義は存在し得ませんので、民主主義は全ての国民に基本的人権が保障されて初めて開花します。単に多数者支配の意味ではなく、民主主義が実を伴ったものであるためには、自由、平等の保障、そのための国家権力の制限は必須です。
フランス人権宣言第十六条が、権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されていない社会は、全て憲法を持つものではないと述べているとおり、基本的人権の保障とそのために権力を制限することが憲法の核心的な構成要素であることを世界と歴史が承認しています。
第三に、憲法は制限規範である以上、その論理的帰結として硬性憲法となりますが、硬性憲法であることは決して不磨の大典であることを意味しません。現行憲法も施行後既に六十六年を経過しています。社会や環境が大きく変化しています。憲法も現実の社会を規律するルールである以上、社会や環境の変化に応じて変わらざるを得ない場合があります。
だからこそ、私たち民主党は、昨年三月に策定した新しい綱領において、「国民とともに未来志向の憲法を構想していく。」と述べ、昨年七月の参議院選挙のマニフェストにおいても、更に国民とともに憲法対話を進め、補うべき点、改めるべき点への議論を深めると記しています。
以上です。