白石隆の発言 (安全保障委員会)

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○白石参考人 白石でございます。
 防衛装備庁と防衛産業技術政策ということについて、考えているところをお話しさせていただきたいと思います。
 まず、防衛力の基礎に産業力、技術力があるということは、これは誰もが直ちに理解できることだろうと思いますけれども、こういう、防衛力の基礎にある産業力、技術力をいかに維持し培養するか、あるいは育てていくか、これが、私としては、防衛産業技術政策ということの根幹であると思いますし、それから、防衛装備庁というのはこれをミッションとする、そういう新しい機構であるというふうに考えております。
 きょう申し上げますことは、これを少し敷衍して御説明するということでございます。
 まず最初に、なぜ、それでは防衛生産、技術基盤あるいは防衛生産技術政策ということを考えなければいけないのかということでございますけれども、防衛生産、技術基盤というのは、これは装備品等、つまり防衛省・自衛隊の任務達成のために使用される火器、車両、施設器材、弾火薬類、誘導武器、通信電子等の装備品、船舶、飛行機その他、これを開発、製造、運用、維持、改造、改修するための人的、物的、技術的基盤というふうに定義できるだろうと思います。
 日本の場合、この基盤の特徴というのは、国として工廠を持っていないということでございまして、別の言い方をしますと、民間の防衛産業に完全にこれを依存している、これが日本の特徴でございます。
 問題は、防衛産業を、装備品等の開発、製造、修理、運用支援、維持、整備支援等に携わる企業の全体、こういうふうに捉えますと、防衛省向けの生産額、つまり市場規模というのは、現在で二兆円程度でございます。平成二十七年度の予算で見ますと、主要装備品等購入費というのが大体一・二兆円、維持整備費というのが〇・八兆円で、ちょうど大体二兆円くらいの規模でございまして、日本の工業生産額というのは二百五十兆円ございますので、一%以下、あるいは正確に申しますと〇・八%くらいの規模、極めて小さいものでございます。
 ということで、防衛省の毎年度の予算でこの防衛産業の市場規模は決まりますけれども、予算は決して、順調に伸びていると言うにはほど遠い状態でございまして、主要装備品等購入費と維持整備費の合計というのは、平成十年から二十五年までは大体一・四兆円から一・五兆円、平成二十六年度で一・七兆円で、二十七年度になって二兆円になっているということでございます。それからまた、平成十七年度から二十五年度にかけましては整備維持費の方が多かったということも、これも事実でございます。
 もう一つの問題は、装備品等が急速に高性能化しまして、また複雑になって、その結果、取得単価というのは、つまりそれぞれの装備品というのはどんどん高くなっている。予算は限られていますので、そうしますと、当然のことながら調達数量というのは減っていく。この結果、防衛産業の方から見ますと採算性は低下しておりまして、特に汎用性の低い防衛装備品等関連研究部門とか製造部門の維持というのは次第に困難になっている。
 そもそも、日本の防衛産業に携わる企業で、特に大企業の場合には、防衛産業が一番重要な部門になっているなんという企業は一つもございません。ですから、そういう中で、ある意味では国のためということで防衛産業部門を維持している企業が非常に多いものですから、だんだんと事業性が低下していきますと、社内的にもそれを維持することは難しくなりますし、サポーティングインダストリーの場合にはこれで破綻してしまう、そういう企業も全くないことはございません。当然ながら、事業性が低下していくときには、研究開発投資に対して十分な資金も回していけない。これがおおよその現状でございます。
 問題は、こういう現状を踏まえて、それではどうすればいいのかということでございます。
 ですから、全部を維持することはもうできませんので、国の方から見ますと、国内に保持すべきものを選んで、その分野の維持、育成に注力するしかないだろう。つまり、選択と集中の実現によって安定的かつ中長期的に防衛力の産業基盤あるいは技術基盤というのを維持、培養していくということになる。これは国の方からの観点でございます。
 一方、民間企業という観点から考えますと、民間企業にとって極めて重要なことは、投資の予測可能性を少しでも高めてあげるということでございまして、そのためには、できる限りリスクを抑制して、長期的観点から企業として投資を行い、さらには研究開発、人材育成を行えるようにする、これが非常に重要なことである。
 この二つのことを念頭に置いて、防衛力の基盤にある産業力、技術力を維持、培養していく、これが私は装備庁の主たるミッションであるというふうに考えております。
 その上で、二点考えるべきことを申し上げたいと思います。
 一つは、日本の防衛力の基盤にあります産業力、技術力というのを維持、育成していく上で、理論的には三つのことが考えられます。
 一つは、市場規模を拡大するということ。これは、端的に言いますと、輸出をもっとやるということでございますけれども、日本の場合には、平和国家という国是がございますので、これはなかなかそう簡単にはできない。例えばドイツは非常に熱心に輸出をやっておりますけれども、私は、日本の場合にはこれについてはなかなか難しかろう、むしろ、極めて抑制的あるいは限定的に、防衛装備移転というのは日本の安全保障に資する、こういう条件のもとで防衛装備移転はやりますというのが今のところの大きな合意ではないだろうかというふうに考えております。
 それから二点目は、生産性を向上させるということでございまして、ここにおきましては、研究開発システムにおける産官学の協働というのが極めて重要になってまいります。
 それから三番目は、産業政策、特に企業統合でございますけれども、これは、民間企業、日本の場合には防衛産業というのは全て民間でございますので、なかなか国として、企業を統合しろというふうなことは言えない、これは民間の方がやるべきことだろうというふうに考えております。
 そこで、まず最初に、市場拡大ということについて考えますと、結局、先ほど申しましたように、防衛装備の移転にかかわる政策的な課題というのは、これはあくまで日本の安全保障に資する、こういう条件で行われるべきですけれども、三つぐらい重要な意義があるだろうと私は考えております。
 一つは、同盟、連携関係の強化と相互運用性の向上ということでございまして、これは、日米同盟ということを考えますと、ここでやはり防衛技術協力あるいは防衛産業協力を実施するということは非常に大きな意味があるだろう。それからもう一つは、現在、日本とオーストラリアの間で少し防衛技術の協力が始まっておりますけれども、これも、実際にオーストラリアの要人と話をしておりますと、日豪の安全保障協力においては非常に大きな意義があるというふうに私としては見ております。
 もう一つ、防衛装備移転にかかわる課題として重要なことは、次世代の装備品等の技術開発、さらには生産コストの低減、リスク分散、それから、日本にはないけれども、例えばアメリカにある先端的な技術へのアクセス、こういうことでございます。
 それから三番目は、企業経営基盤の維持、育成、高度化ということでございまして、特に、部品産業の市場拡大ということではこれはなかなか意味があることではないだろうかと考えております。
 もう一つ重要なことは、生産性を向上させ、さらには次世代の防衛技術開発を行う上で、研究開発システムにおける産学官の協力をどう進めるか、こういう課題でございます。
 現在の安全保障の大きな趨勢を見ますと、二つ、ほぼ確実に言えることがあるのではないかというふうに考えます。
 一つは、海中から宇宙まで、安全保障を考えるときに一体的に考えなければいけないということ、これが一つでございまして、もう一つは、サイバー社会というのはこれからも急速に進んでいく、つまり、サイバー空間と現実の空間の融合というのはこれからますます進んでいく、この安全保障をどう考えるかということでございます。
 サイバー社会につきましては、もう既に、それこそ新幹線から発送電あるいは銀行システムに至るまで、我々の生活というのは、あらゆるところで極めて高度で複雑な技術システムの上に成立しておりますけれども、同時に、インターネットが広がり、スマートフォンが広がり、ウエアラブルが普及し、物のインターネットが拡大していきますと、我々の生活というのはあらゆる面でサイバー空間に依存するようになってまいります。この安全保障をどうするのかということ、これは極めて重要な課題でございます。
 これを全て、私は別に防衛省が担当するというふうには考えておりませんけれども、少なくとも、その中で、狭い意味での防衛のところだけの技術的な趨勢を考えましても、サイバー化、つまり、情報通信における革命的な技術進化ということに対して、これをどう使っていくのか。
 さらには、無人化。これで重要なのは、情報通信技術、さらにはロボティクス、それからブレーン・マシン・インターフェース、こういうものでございます。それからさらにナノテクノロジー、こういうものを使っていかにして次世代の防衛装備を開発していくのかというのは、これは極めて重要なことでございます。
 その際に、もうこれは皆様よく御存じだと思いますけれども、技術そのものには軍用も民用もございません。電子レンジというのは、もともとこれは軍用のものとして開発されましたし、例えば情報通信技術というのは、もうインターネットなんというのももともとは安全保障の技術としてつくられたものでございます。
 重要なことは、こういう安全保障の観点から日本の技術動向を見る、外国の技術動向を見る。どこに、誰が、どういう技術を持っているのかということを常に見ながら、日本の外に出してはいけないものは出させないし、外でぜひ欲しいものはとってくる。そういうことができる人たちを育てていく。これも、数年ごとにローテーションをするような、そういうところではできません。こういう非常に高度の技術的な能力を持った、技術戦略を組み立てることのできる人たちを育てていく、これも防衛装備庁の大きな課題になるだろうというふうに考えております。
 これで私の報告は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 118903815X00820150423_004

発言者: 白石隆

speaker_id: 23532

日付: 2015-04-23

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会