松本紘の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)
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○松本参考人 皆様、おはようございます。国立研究開発法人理化学研究所理事長を拝命してございます松本紘でございます。
本日は、このような機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
理化学研究所は、この四月一日から、研究開発成果の最大化ということをミッションとする国立研究開発法人に衣がえをいたしてございます。
時を同じくして、私も四月一日に理化学研究所、理研と言わせていただきますが、理研の理事長に着任をいたしました。
このミッションを実現するに当たりましてどうすればいいかということで、私も理研にいたわけではございませんので、まず、理研の内部を知る必要がある、問題点があればそれをちゃんと処理する必要がある、そういうつもりで、着任してからおよそ四十日間、一カ月と少し、連休が入りましたので四十日ぐらいになりましたが、その間、理研にあるほぼ全ての事業所、十七のセンターを訪問して、議論を重ねてまいりました。
それぞれの事業所で、センター長を初めとする研究管理責任者や若手など、約百五十名の方々と議論を重ねてまいりました。そして、面談をする中で、それぞれが抱えておられる問題、あるいはシステムの問題と感じているような問題というものを提起していただきまして、そこで出された意見を参考にして、研究開発成果の最大化に向けて、きょうこれから御説明をさせていただきます、お手元に一枚物の資料があると思いますが、理研科学力展開プランを取りまとめたところでございます。
理研科学力展開プランは、理研が総合研究所として研究開発のポテンシャルを高め、至高の、つまり最高の科学力をもって国の科学技術戦略の担い手となるための方針を示そうとするものです。理研自身の発展と同時に、我が国の発展のために理研がなすべきことという観点を考慮してまとめさせていただいてございます。
我が国は世界第三位の経済大国と言われておりますが、日本が世界トップクラスの経済力を維持し、人類文明の発展のために、また自然環境との共生のためにも、科学技術の強い力によるイノベーションが必要だと思っております。そのために、理事長として、理研がなすべきことを明確に示して、理研をどう導いていくか、私の考えを五つの柱にまとめさせていただいております。
一つ目は、研究開発成果を最大化する研究運営システムを開拓及びモデル化するということです。
理研は国立研究所でありまして、研究成果を生み出すことが第一のミッションです。研究者は、研究を通じて社会貢献するために日夜努力をしております。その努力を最大限成果として世に出していくためにも、研究所のマネジメント、ガバナンスがとても重要と考えております。そのためには、不祥事を二度と起こさないこと、新たなシステムを構築し、若い研究者の元気を取り戻すことが必要です。
理研は、優秀な研究者を集めるために、研究機関としては、一九八六年という比較的早い時期から任期制の人事制度を導入してまいりました。そして、任期制と従来からございました定年制の二つの異なる人事制度を混在させて運営をしてきておりました。しかしながら、今日に至り、任期制研究者のキャリアパスが見えにくいなどの問題が生じてきています。このことから、さらに研究に集中できる環境を整えるためにも、人事制度を一元化し、運用していくことが必要だと考えました。
また、理研が全体として力を発揮するためには、本部が全体の目標管理、評価、資源配分を行うなどの機能を果たさなければなりません。センターごと、個別事業を最適にするというのではなくて、理研全体の強力なマネジメントのもとで、全体最適となるように努力をしていきたいと思います。そのためには、基盤的な研究資金である運営費交付金の中長期目標期間における安定化が不可欠だと考えております。
これらの課題は、多くの大学にとってもまだ解決していないことであり、大学や企業の研究所からも、理研のこのモデルはいいモデルだというふうに言ってもらえるものをつくり出したいと考えております。
二つ目は、至高の科学力で世界に先んじて新たな研究開発成果を創出するということです。
この趣旨としては、もちろん理研単独でもすぐれた研究成果の創出に取り組みますが、さらに、全国の大学や研究機関と一体となって、国の科学力を総体として向上させ、国力としての研究開発成果の最大化を図りたいと思っております。
人類社会の課題解決という問題は取り上げられて久しいですが、それを目指すためには、さまざまなミッションに対応できるよう、総合研究所として広範な分野の研究開発を進めていきます。また、基礎研究をしっかりと推進し、深化させたいと思います。このことにより、世界に先んじた研究成果の創出に取り組んでまいりたいと思っています。
もちろん、次の社会をにらんだビジョンを策定し、それに向けて科学技術がいかに貢献できるかということを明らかにし、着実に実行してまいりたいと思います。
理研は、野球でいいますとキャッチャーとして国が投じるボールを受けますが、キャッチャーがサインを出しますように、理研からも国にいろいろ申し出、提案をしていきたいと思ってございます。
三つ目は、イノベーションを生み出す科学技術ハブの形成をするということでございます。
先ほど、国力としての科学力ということを申し上げました。理研はオール・ジャパンでイノベーションに取り組むのですが、アンダー・ワン・ルーフで、大学や研究機関、あるいは企業をつなぐ中核としての機能、これを果たしたいと思っております。それを私たちは科学技術ハブと称しています。
大規模で、理研でしかできない研究はもちろんございます。しかし、理研だけではできない研究も多くございます。優秀な研究者を理研に集める、そして大きな成果を生み出す、そのためには、例えば、クロスアポイントメントの制度を大学の研究者に適用することによって、大学に籍を置きながら理研の研究にも参画できる、そういうふうにしたいと考えております。この取り組みを通して、理研の研究や制度を大学の方々ともシェアをしながら広めてまいればよろしいのではないかと考えております。
四つ目は、国際頭脳循環の一極を担うということです。
理研の運営を国際的なスタンダードに近づける、現在でもたくさんの国際研究者が来ておりますが、スタンダードに近づけることによって、海外からの研究者がより参画しやすい環境を整えたいと思っております。
例えば、研究支援スタッフ。海外の研究機関では、論文を書くためのサポート、実験機器のエキスパート、あるいはソフトエンジニア等の技術者が研究者の周辺にたくさんいます。
海外から著名な研究者を呼ぶと、その研究室には世界から優秀な研究者がやってまいりますし、世界のさまざまな研究文化、あるいはその国の文化が一緒にやってまいります。海外からの研究者が定着するかどうかは、こうした環境をいかに国際的な標準にするかということがポイントになろうかと思っております。
英語の公用語化につきましては、新聞報道でも見出しになっておりました。英語で議論するということは、将来、国際的なリーダーとなる若手研究者にとってはとても重要なことです。国際学会等で活躍するための必須のスキルと言えるでしょう。セミナーやシンポジウムの公用語は英語ですから、理研内部でも英語で議論することによって、お互いにこなれたフレーズを身につけていただいて、みずからの考えをきちんと発信できるようになることを期待してございます。
最後の五つ目でございますが、世界的研究リーダーを育成するということです。
資源の乏しい我が国は、これまでも科学技術により国を興すという戦略で臨んでまいりました。また、御案内のように、火山や地震の多発する国土においては、科学的な防災、減災対策ということも大変重要だろうと思っております。
科学力は、それを担う科学者そして技術者の強い意思と、それが多くの人たち、つまり、国民によって支えられることが重要となります。世界的に活躍する新しい研究リーダーを育成する、出てくるということは、多くの人たちが科学技術に夢を持つということにつながります。
「終身の計は人を樹うるに如くはなし」という言葉がございますが、人を育てることが最も重要だろうというふうに考えております。若手研究者を長期的に安定的に雇用する道を開く、そして海外へ留学させるなど、夢を持って研究に取り組めるよう環境を整えてまいりたいと思っております。
キャリアパスとしては、若いときに研究をやってずっと研究者という方もおられますが、それ以外に進まれる方もあるわけで、そういう意味では、研究者以外への道も開拓することによって、各人の能力を最大限活用するということが我が国にとって重要ではないかと思っております。
最後になりますが、理研の各センターを私は訪問させていただきました。私の印象は、理研には随分すばらしい研究者がいるな、もちろん大学にもすばらしい研究者はおりますが、理研は特に固まってすばらしい研究者がいるなというふうに感じました。
また、大学では実現できないような超大型の研究施設、スーパーコンピューター「京」、あるいは大型放射光施設SPring8、エックス線自由電子レーザーのSACLAなどが整備されており、多くの方々に利用されております。これは、学界、学者だけではなくて産業界の方にも利用されております。
それぞれの研究室にも、こういう大型設備以外の最先端の設備が入っておりまして、この分野では私たちは世界一ですと胸を張って言ってくれる人がたくさんおられました。大変うれしく思いました。日々新しい成果を生み出して、世界の科学技術を牽引しているというプライドを感じることができました。
明治時代には、非常に意気盛んな若者、優秀な若者が海外に出て、新しい知見を西洋から持ち帰って、また同時に、日本は優秀である、日本人とはこんな魂の持ち主だということをその時代にアピールしてこられました。
今後も、我が国の優秀な研究者が海外で活躍し、また、海外の研究者が理研で活躍されるということを考え、理研の、そして我が国の科学技術や文化に対する評価を高めていかねばならない、こんなふうに思っているところでございます。
以上、簡単に御説明いたしましたが、理研科学力展開プランを理研の経営方針として、今後、この五つの柱に沿った戦略を具体化してまいりたいと思ってございます。
委員長、委員の先生方の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)