鳥越俊太郎の発言 (我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会)

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○鳥越参考人 皆さん、おはようございます。
 予定された時間から十分既に超えておりまして、皆さんそれぞれ言いたいことが多いのでちょっとずつ押しておりまして、今、十分。私、四十五分から始めるところを、もう五十五分になっております。したがって、私は十五分でおさめるつもりでございますけれども、若干押すかもしれませんと事前に御了解を得て。
 私は、二つの点についてきょうは申し述べたいと思って参りました。
 一つは、先日、自民党本部で行われましたいわゆる若手勉強会。若手といっても、大西さんは六十八歳ですから若手と言っていいのかどうかわかりませんけれども、当選二回もしくは三回ぐらいの若手の皆さんの文化芸術懇話会での、マスコミを懲らしめるためには広告収入を減らせとか、沖縄の二紙を潰せとかいう大変乱暴な議論があったことについて申し述べたいことが一つです。
 これを最初に話をするはずでしたけれども、ちょっと順番をかえまして、後に述べるつもりであった集団的自衛権の問題点について先に申し述べさせていただきます。
 それはなぜかと申しますと、昨日、新幹線で焼身自殺の事故がありました。大変な大騒ぎになったことは皆さん御存じのとおりでございます。非常に日本は平和な国ですから、こういうことは日本ではなかなか起きないので皆びっくりされたわけですけれども、私の頭の中で、集団的自衛権の問題が議論されている間、どこからも、誰からも、ある視点からの問題指摘がないのに非常に不安を覚えております。これは新幹線にかかわることですので、ぜひ聞いていただきたいと思います。
 世界は今、どういうふうに動いているかといいますと、中国の大変な膨張ぶり、北朝鮮の核武装等、問題はもちろん日本の近辺にあるわけですけれども、実は、世界を覆っている対立構造といいますか、戦争といったり紛争が起きているのは、アメリカを中心とする一部の国と、基本的にはアメリカと言っていいでしょうけれども、アメリカとイスラム教過激派、我々メディアそれから皆さん方もいわゆるテロリストとお呼びになっているイスラム教過激派のグループ、この勢力との対立構造で世界は今せめぎ合っているわけです。
 二〇〇一年にアメリカ・ニューヨーク貿易センタービルが攻撃されました。九・一一、いわゆるセプテンバーイレブン、あれは実はイスラム教過激派からの宣戦布告であったというふうに僕は捉えております。なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、私は、テヘランのイラン特派員で一年半おりまして、イラン・イラク戦争を取材しております。それから、二〇〇四年にはイラク戦争の戦場に行って取材をしておりまして、イスラムということについてそれなりに私は理解をしております。特に、イスラム教の中でジハード、聖戦というもの。
 ジハードに参加して命を失って、自爆テロなどを行えば天国に行ける。一見これは日本の特攻隊に似ているように見えますけれども、全く違うんですね。特攻隊の場合は必ずしも喜んで行ったわけではない、仕方なくお国のために行ったわけですけれども、聖戦、ジハードの戦士たちは本当に、僕は子供からお母さんから一般の兵士も含めて全部取材をしましたけれども、彼らは心から、ジハードつまり聖戦で命をささげた場合は天国に行けるというふうに思っているんですね。だから、ああいう自爆テロを平気で起こす。だって、ニューヨークで飛行機で突っ込んだイスラム教過激派の連中はみんな高学歴ですよ。その辺のならず者がやったわけじゃないんです。ハンブルクの工科大学などを優秀な成績で卒業しているようなエリートが行った行為であるということを考えると、大変恐ろしい。
 何を私が心配しているかというと、今、世界はアメリカ対イスラム過激派の対立構造になって戦争がずっと続いておりますが、イスラム国は、かつてアメリカが大義なき戦争をしかけてイラクという国をめちゃくちゃに壊してしまった、崩壊させた、そのときのイラクの高官、軍人たちが逃亡して今再び立ち上がって、イスラム国というものを再建しようとしているわけです。そのためには、自爆テロでもいわゆる爆破テロでも何でも、我々から見ればとんでもないひどいことをやっても構わないということで彼らはやっているわけです。
 問題は、集団的自衛権の議論の中で、いろいろ聞いておりますと、安倍総理の発言などでもそうですけれども、日本の自衛隊は極東条項といって、これまで極東でのアメリカ軍との共同はあったけれども、極東を離れるということは、ホルムズ海峡の掃海というのは事例としてありますけれども、これは戦闘行為ではありません。集団的自衛権の今回の解釈改憲という議論の中で見ておりますと、アメリカ軍が行くところは世界のどこでも、地球の裏でも行くことがある。つまり中東地域にも、米軍が行って助けが欲しいというときには後方支援を日本の自衛隊はやる可能性が、やるのかどうかはわかりませんが、議論を聞いていると、そういうことになる可能性がある。
 そうなった場合に、イスラム過激派の認識としては、これまで日本というのは全く彼らの視線外にあったと思うんですね。日本が別にイスラム過激派の連中もしくはイスラム国に対して何か悪いことをしかけた、そういうことではありませんので全く視線の中には入っていなかったわけですけれども、先日のエジプトでの安倍総理の二億ドル供与という発言、あれで一気にイスラム過激派の連中は日本が視野に入ってきた。それで、後藤健二さんを殺害するという事態に陥った。
 この構造は、将来、日本の自衛隊がアメリカ軍の後方支援でどこかに、中東地域かどこかわかりませんが行った場合に、明らかに日本の自衛隊はアメリカの友軍である、友達である、つまり、彼らの論理からすれば、イスラム教国、イスラムの国にとっての敵であるという認識を持つ可能性がある。これは可能性ですよ。
 そうすると、二〇〇三年にイラク戦争がありましたけれども、二〇〇四年にマドリッドで列車爆破事件がありました。あのときは、私のあれによりますと百九十一人が亡くなっております。さらに、二〇〇五年にはロンドンで同時多発、列車とバスが爆破されました。これは、明らかにアメリカがしかけたイラク戦争への報復として、スペインとイギリスが自爆テロ、テロリストの攻撃の標的になったということですね。
 そういうことを考えると、将来、日本も自衛隊が集団的自衛権行使ということで、もしイスラム過激派が敵だなと思ったときには、ここにいらっしゃる方も、日本の国のほとんどの人はイスラムなんて全く自分たちにはかかわりのないことだと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、実は、将来ひょっとすると日本が標的になる可能性がある、これは集団的自衛権行使と深くかかわっている可能性がある。
 私がもしイスラム原理主義のテロリストだとすれば、まず最初に考えるのは、皆さんの御想像どおり新幹線です。新幹線は今のところ、新幹線と原発と言われていますけれども、原発はある程度セキュリティーがちゃんとしています、しかし、新幹線のセキュリティーというのはないに等しいですよね、自由に誰でも乗れるわけですから。爆弾を持ち込む、きのうはガソリンを持ち込んだわけですけれども、爆弾を誰かが持ち込んで爆破しても何の不思議でもない。そうしますと、恐らく千人を超える犠牲者が出る。
 私は何もそういうことがあると肯定しているわけではないし、そういうことは避けたいという立場からこれを申し上げているんですけれども、そういうことを一応念頭に入れて、イスラム教過激派というのは世界でアメリカと対立して紛争、戦争を起こしている、そういう中に日本が集団的自衛権ということで突っ込んでいくことの危険性についても、ぜひ一考願いたいなというのが第一点でございます。
 もう一つは、今回、この委員会とも関係があると思うんですけれども、先日の自民党本部で行われた文化芸術懇話会、三十七人の議員、百田さんという作家が講演をされた。この席上で、マスコミを懲らしめるには広告収入を減らせ、不買運動を起こすために経団連に働きかけよと。それから、講師である百田さんは、沖縄の二つの新聞は潰せ、潰した方がいいというようなことをおっしゃいました。
 皆さんも国会議員の方ならば、これが明らかに憲法二十一条の、私は覚えていないので読み上げますが、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と憲法二十一条に書いてある、これに真っ向から反する。つまり、これはその辺の居酒屋で酔っぱらっておだを上げて、マスコミなんか潰してしまえと言っているのとわけが違うわけです。自民党という与党、絶対多数を誇る与党の議員が自民党本部の会議室で、しかも、そこには政府の官房副長官と党の総裁補佐、党と政府の幹部が入った中で行われた。しかも、これは私は確かめておりませんが、新聞報道などによると、この若手議員の皆さんは安倍総理に近い立場の人である、つまり安倍応援団であるというふうに書かれております。そういう人たちがああいう議論をされたということに非常に危機感を覚えます。
 それは恐らく、きょうたまたま朝出てくるときにあったので見てきたんですが、共同通信が世論調査をやりまして、集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案に対してどう思うかという世論調査ですけれども、ことしの六月二十日、二十一日に実施された世論調査では、反対が五八・七%、賛成が二七・三%。これは、一年前は賛成は五四%、反対は三四%。一年後、反対がふえ、賛成が減っているわけです。国会では絶対多数をとっているにもかかわらず、憲法審査会では与党推薦の参考人までが、この安全保障の法案は違憲である、三人とも違憲というふうに言われている。そして、世論調査では国民は反対をしている。こういう状況に恐らくいらいらされたというか、不満がある、このままではいけない、これはマスコミが要らぬこと、余計なことを報じるからこういうことになっているんだと、自民党の、与党の思うとおりにならないその原因をマスコミのせいにして、だからマスコミがいろいろ書くからだめだというふうに発言されるんだと思います。
 言論の自由、表現の自由というのは基本的人権の中の中核をなすものであって、アメリカを初め先進国、世界各国の共通の価値観なんですね。言論、報道、表現、集会等々の、国民が自分の意見を述べる自由を保障するというのは共通の価値観。これに真っ向から今回は挑戦をされたというわけで、私は大変危機感を覚えました。こんなことでいいのかというふうに思います。
 皆さんは憲法に保障されているからだめだというふうに議論を展開されるんですけれども、実はメディアというのは、歴史的に見ると、間接民主主義、つまり代議制民主主義の中で国民が税金を出して政府と議会に委託しているわけですけれども、その税金の使い方が、ちゃんと使われているかどうかということをチェックする道具としては何もない、しかし、歴史の中で新聞というものがやがて育っていって、納税者つまりタックスペイヤーの税金、自分たちが払った税金がちゃんと使われているかどうかということをチェックする機能をメディアに、新聞に与えたわけですね。
 つまり、それは新聞のミッションとして、権力つまり政府及び国会がちゃんと税金を使っているかどうかをチェックする機能、これを権力のチェックというふうに呼んでおりますけれども、英語で言うとウオッチドッグと言われていますが、そういう機能を与えたわけで、これは何も恣意的に新聞が反政府的になっているわけではなくて、問題があればチェックするというミッション、使命を帯びている、歴史的にそういうものが形成されているということですね。したがって、時には政府に批判的なことを書くこともあるでしょう。そうでない新聞もあるようですけれども、それは別として。
 そういう本来の使命からして批判的になったから、政府に批判的で集団的自衛権の安全保障法制がなかなか前へ進まない、これはみんなマスコミのせいだというふうにして、そんなものは懲らしめろというような考え方は、当委員会の委員の皆さん方の中にはいらっしゃらないと、小野寺さん、思いますが、いかがですか。
 ぜひその点は御理解願って、マスコミにはマスコミ、メディアにはメディアの歴史的に与えられた使命というものがあるんだということ、そしてそれを行使しているということです。ぜひ御理解いただいて、今後も御審議いただければ幸いかなと思います。
 私の話はこれにて終わりにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 鳥越俊太郎

speaker_id: 17764

日付: 2015-07-01

院: 衆議院

会議名: 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会