高橋洋の発言 (経済産業委員会)

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○高橋参考人 都留文科大学の高橋と申します。
 今回、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。
 私は、今は大学の教員をしておりますけれども、三月末までは富士通総研と申します民間のシンクタンクで電力システム改革の研究をしておりました。その間には、資源エネルギー庁の電力システム改革専門委員会の委員をさせていただきまして、この審議会では、二〇一三年二月、約二年前だったと思いますけれども、当時、茂木経産大臣に対して報告書を提出した。この報告書の策定に若干かかわらせていただいたという背景がございます。
 したがいまして、今般の電力システム改革、電気事業法の改正につきましては、基本的に賛同をしております。その上で、さらにこのような改善方向にしていけばいいのではないかという立場から発言をさせていただきたいというふうに思っております。
 主に二点ございまして、一点目が、総論、そもそもなぜこのような改革をするのかという電力システム改革の目的を、あえてもう一度確認させていただきたいと思います。二点目が、各論として、今回の電事法の改正の一番の柱である発送電分離について意見を申し上げます。
 お手元に資料があると思います。まず、電力システム改革のそもそもの目的というところからです。
 今回、第三段階の法改正でございますので、先生方におかれましては、もうよくわかっているというようなお気持ちもあるかとは思いますけれども、やはり、どうしても各論、技術論に入ってまいりますと、場合によっては木を見て森を見ずといったようなことになってはいけませんので、あえて、どうしてその改革をするのかという目的を確認したいという趣旨でございます。
 では、電力システム改革の目的は何なのかということなんですけれども、先ほど申し上げた二年前の報告書、これの冒頭の部分に極めて明快に書かれています。この一枚目のスライドの文章はまさにそこから私が引用したものなんですけれども、この一番上の部分、この一文は私は大好きでよく引用をさせてもらうわけなんですけれども、「料金規制と地域独占によって実現しようとしてきた「安定的な電力供給」」、これを今後は「国民に開かれた電力システムの下で、事業者や需要家の「選択」や「競争」を通じた創意工夫によって実現する」、これは名文だと思います。今回の電力システム改革の本質を一言であらわした文章であります。
 このポイントは、安定供給のためにやるんだということです。よく、競争すれば電気料金が下がるとか、そういう側面ばかりが強調されがちです。もちろん、そういう側面もあります。非常に重要ですけれども、先ほど八木会長からも御指摘があったとおり、安定供給が極めて重要なわけでありまして、それを新たな仕組みに進化させる、これが今回の改革の一番の目的だと思っています。
 どうしてそういう改革が必要なのか。この辺はもう本当に復習になりますけれども、やはり、福島原発事故が起きたことによってこの改革をしようという機運が高まった、まさにそのとおりでございます。特に、震災後の環境変化というものがやはり同じ報告書の中で大きく四つ指摘されておりまして、この青字の部分なわけなんですけれども、「原子力発電への信頼が揺らいだ」。原子力発電依存度、数字についてはいろいろな御意見があるとは思いますけれども、震災前の水準より下がるということは間違いないだろう。政府もそのような方針を出していらっしゃる。その際には、当然安全規制も強化されましたし、コストも増大をしている。
 では、原子力発電が減らざるを得ないというときにどうするのか。それが次の二番目でありまして、再エネやコジェネなどの分散型電源の一層の活用、これは先ほど橘川先生も御指摘になったとおりであります。ただ、このような分散型電源、これまで日本では極めて量は少なかったわけなんですけれども、原子力や石炭といったような集中型電源を受け入れるための仕組みと分散型電源を受け入れるための仕組み、電力システムは大きく異なります。だからこそ、電力システムの改革が必要であるという話になるわけです。
 三点目が価格による需給調整、これは、私も東京に住んでおりますので、計画停電に直面いたしました。やはりどうしても供給力が逼迫するとき、今後もいつか起きるかもしれません。しかしながら、価格メカニズムを多少なりとも使えば、もう少し、より柔軟な形で需給調整ができるのではないか。これまでは、やはりお客様、消費者の方に御迷惑をおかけしてはいけないというような配慮もあったかもしれませんけれども、今はスマートメーターとか、そういうITの機器もかなり進歩しておりますので、そういう機器の力もかりて、消費者の方にもディマンドレスポンスというような形で需給調整に協力していただく、これも非常に重要な、新たな分散型の仕組みになるわけです。
 四つ目が、いわゆる広域運用ということです。地域別に電力会社さんが切磋琢磨して需給の責任を持ってきた。これがこれまでの仕組みで、大きな成果も上げたわけですが、やはり経済合理的に考えれば、広いエリアでもって需給バランスをとる、これは、以前の、これまでの電気事業法にも広域的運用という項目があったことからも明らかでありまして、ただ、なかなかこれまでそういう仕組みに改革することができていなかった、今後は全国大で需給調整を行う仕組みにしよう、これが四点目の広域運用の話です。
 ここまでの話は、報告書に書いてある審議会としての一つの結論なわけなんですけれども、これを私なりに言いかえたのが次の二ページ目でありまして、電力システム自体を集中管理型から自律分散型へ移行していくんだということであります。
 電源の構成を見直していく、これはもちろん当然でございますけれども、それだけではなくて、独占の仕組みを競争ベースにしていく。
 あるいは送配電ネットワーク、これまでは地域別で基本的には閉鎖的なものであったわけですけれども、これを広域的に有効活用していく、多くのプレーヤーが自由に、公正に使えるようにしていく。
 したがって、産業構造も、これまでは垂直一貫だったわけですけれども、水平分業化していく。もう既に免許制という法律が通っておりますけれども、要するに、送電ビジネスと発電ビジネスと小売ビジネスというのは、今後は違った行動原理に基づくことになる、したがって、それらの業界というものの垣根をしっかり分けましょうという側面もあるわけです。
 最後に、消費者の役割。これまでは、ある意味、我々消費者は非常に恵まれていたのかもしれません。自由に好きなだけ電力が使えるという、非常にありがたい環境だったかもしれません。ただ、それは一方で受動的であり、かつ均一であった。均一であることに価値があるという議論もあるかもしれませんけれども、今後は、より能動的かつ多様になっていく。そういう中で、いかにその複雑なシステムを構築していくのかということが今問われているわけです。
 今申し上げたような変遷、転換というものは、むしろ、欧米諸国ではもう既に当たり前のものとなっているわけです。電力自由化について言えば、もう十年前、二十年前から、欧米諸国は発送電分離も含めて進めていらっしゃるわけですし、再生可能エネルギーを、例えば二〇三〇年断面で四〇%ぐらいにしていこう、五〇%ぐらいにしていこうというのも、おおむね欧米諸国の一般的な、共通的な目標となっているわけです。
 したがって、日本もようやくそういう改革をする段階に入ったのかというところがポイントでありまして、今、エネルギーミックスの話ですとか、再生可能エネルギー、原子力ですとか、電源別、電源ごとの議論も行われています。エネルギー政策は本当に今重要な局面にあるわけなんですけれども、まさにそういうエネルギー政策全体の、特に電力という意味では基盤をつくるのが今回の電力システム改革であり、そういう観点から自律分散型の仕組みに改造していくんだという趣旨をもう一度確認させていただきたいと思います。
 ここまでが総論の話でありまして、次が各論、発送電分離について意見を申し上げます。
 三ページ目のところです。「法的分離から所有権分離へ」というスライドでございます。
 こちらの図は、横軸が一九九〇とか二〇〇〇とか書いてあります。これは時間軸ですね。一般に、発送電分離については、所有権分離、法的分離、機能分離という三種類がございますので、では、どの国がいつごろ発送電分離に踏み切ったのかということをプロットした図であります。
 この図からわかること、まず一点目が、世界の主要国、中国とか韓国とかアジアの国も加えていますけれども、多くの国はもう発送電分離を終えているという事実であります。おおむね二〇〇〇年代半ばぐらいまでには、主要国というのは発送電分離を大体終えている。アメリカについては州によって異なりますので、下の灰色のところですね、テキサス州、ニューヨーク州、カリフォルニア州というような形で書かれていますけれども、大体、多くの国は、おおむね二〇〇〇年代ぐらいまでに発送電分離を終えている。
 日本は、今回の法案では、二〇二〇年に行うことといったような条文になっているわけです。ですので、日本は、ある意味後発なわけであります。後発というのはデメリットばかりではなくて、他国から学べるというメリットもございます。発送電分離については、いろいろと懸念の声もあるということは私も承知しておりますが、これだけ諸外国がやってきた改革、ここから学んで、よりスピーディーに、的確に実施をする。
 例えば、東京電力は二〇一六年に法的分離を行うという計画を出されているわけでありまして、日本の他の電力会社に関しましても、この改革に資する発送電分離という施策をできる限り早く実施するということをお願いしたいと思っております。
 もう一点、この図からわかることは、種別についてです。世界的、特に欧米先進国ということで見ますと、やはり所有権分離というものが主流である。アメリカは、基本的には機能分離、ISO、独立系統運用機関をつくるということが主になっておりますけれども、アメリカの中でも、例えばテキサス州とかニューヨーク州とか、一部では、発電部門を売り払って送電会社のみになるという、いわゆる所有権分離に該当するような例もございます。
 したがいまして、所有権分離というものが競争の促進、送電網の中立化ということからすれば最も理想的な形態であるということは、欧州の政策当局者と議論をしていても、あるいは欧州の送電会社と議論をしていても一般的な認識でございます。
 おもしろい例がドイツでございまして、この真ん中のもの、矢印が伸びていますけれども、もともとドイツは法的分離を選択しました。ドイツも日本と同じように電力会社が民間企業でしたので、やはりなかなか私的所有権の観点から所有権分離はできないという事情がございました。ですので法的分離から始まったわけなんですけれども、やはり法的分離では不十分だったということで、後々、電力会社あるいは規制当局などとのいろいろと交渉なりもございまして、最終的には二〇一〇年前後に電力会社の経営判断として所有権分離を選択した。一部まだ法的分離で残っている会社もございますけれども、ドイツですら、近年、所有権分離を選択してきている。要するに、法的分離から所有権分離に移行したんだという経緯がございます。
 日本については、これは審議会でも議論をしました。私も法的分離に賛成をいたしました。今回の段階で法的分離をするのが適切であると思っております。
 ただ、将来的なことを考えれば、やはり送電事業の発展あるいは再生可能エネルギーを統合していく、スマート化を進めていくというようなことを考え合わせれば、やはり送電会社が子会社ではなくて独立した会社になるということが最も経営合理的であるというふうに考えております。ですので、そこはもちろん民間企業の経営判断になりますが、政府としましても、所有権分離にインセンティブを与えるような施策を打っていくといったようなことを期待しております。
 このような、所有権分離にしろ法的分離にしろ発送電分離をするということになりますと、どうしてもやはり安定供給というところが懸念されるわけなんですけれども、最後の四ページ目のところに、いわゆる停電時間というものの推移のグラフをまとめてあります。
 日本は、世界的に見て極めて停電時間が短い。これは本当に電力会社さんの努力のたまものだと私も思っているわけです。もちろん震災の直後のような例外的な事例はあるわけですけれども、ずっと過去、世界で最も短い停電時間を実現した。
 ただ、見ていただきたいんですが、デンマークとかドイツ、一番下のところ、緑とか黄色の点線、デンマークとかドイツといったような国も決して日本に負けているわけではない。これらの国は、再生可能エネルギー、いわゆる変動電源が日本の十倍ぐらい入っている国ですので、こういう国でも当然、所有権分離、送電会社が独立をしているわけですが、送電会社の努力あるいは技術革新によって十分な安定供給を保っている。
 あるいは、スペインのような国、紫色のところなんですけれども、日本よりも圧倒的に停電時間が長いわけです。スペインも日本よりも十倍ぐらい変動電源が入っている国ですが、ごらんのとおり、歴史的な推移とすれば、ここ十年ぐらい停電時間を減らしてきているわけですね。
 ですので、欧州の方と議論をすると、今後、送電ビジネスといったものが極めて重要だ、投資もたくさんしないといけないし、技術革新も期待されるということもございますので、新たな安定供給の仕組みをつくるという観点から発送電分離は極めて重要であると。
 日本も、さまざまな議論を経て、新しい電力システム、分散型の電力システムを構築していくという方向に今回の法改正が寄与するということを期待しておりまして、その方向で審議をしていただけるよう、切に願う所存でございます。
 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 高橋洋

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日付: 2015-04-28

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会