川島千裕の発言 (経済産業委員会)

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○川島参考人 ただいま御指名いただきました、連合で総合政策局長を務めております川島千裕と申します。
 本日は、このような、私ども連合の意見を表明する場をいただきまして、まず感謝を申し上げます。
 本日は、特許法等の一部を改正する法律案の中の職務発明制度の見直しについて、働く者の立場から三点の意見を述べさせていただきます。
 まず一点目は、法案に対する基本的なスタンスについてであります。
 職務発明制度の見直しについては、連合も参加しました産業構造審議会のもとでの特許制度小委員会において、立場の異なる委員によりますさまざまな議論の積み重ねを経て、報告書が取りまとめられました。
 本法案は、小委員会で確認された報告書の内容を適切に反映したものであり、また、その中で連合の意見も反映をされていることから、妥当な内容であると受けとめております。
 小委員会での議論経過や報告書の趣旨が十分反映された法案となるよう、国会での審議においてこれらの趣旨が確認されることを強く求めたいと思っております。また、今回の法改正は、我が国における職務発明の促進、産業の発展につながるということが重要なことでありますので、法改正後の運用においてもしっかり調査、検証がされるようお願いしたいと思っております。
 二点目は、審議会での議論経過と連合の受けとめについて触れさせていただきたいと思っております。
 我が国が世界最高の知財立国を目指すためには、研究者による研究開発、発明活動と、また、企業における研究開発がともに促進されるような職務発明制度の確立が求められると考えております。そのためには、発明を生み出す研究者、技術者の発明意欲の向上につながるような、従業者へのインセンティブが確保されることを前提とした制度の検討が必要であると考えております。
 連合は、このような課題認識のもと、小委員会に参加をし、法改正の必要はないとの主張を当初してまいりました。といいますのも、現行の特許法第三十五条は、従業者と使用者の双方に発明のインセンティブを与えるための合理的な利害調整機能を果たしており、バランスのとれた制度であること、また、現行の特許法は、二〇〇四年に改正されて以降、改正法に関する判例の蓄積がないことによるものであります。
 さらなる法改正を行うべき立法事実が認められない以上、現行法を維持すべきである、むしろ、二〇〇四年改正法の趣旨を徹底し、社内規程の整備など労使の取り組みを浸透させていく、また、そのためのガイドライン整備を進めていくべきであることを小委員会の中で主張してまいりました。
 その上で、連合は、特許法の趣旨を踏まえ、従業者と使用者の双方の発明のインセンティブを高めるためにはどのような制度にするべきなのか、そういった立場で議論に臨んでまいりました。
 一方、今回の職務発明制度の見直しは、二〇一三年の日本再興戦略において、企業のグローバル活動を阻害しないという観点から検討がスタートしました。その流れの中で、産業界からは、特許を受ける権利を法人帰属へ転換するべき、法定対価請求権を廃止し、企業が自由なインセンティブ施策ができるようにするべきとの意見が強く出され、その意向を全面的に受け入れた方向で議論が進んでいくものと思われました。
 これに対して、連合は、従業者のインセンティブの切り下げにつながりかねないとの大きな懸念を持ち、なおさらのこと、今回の法改正の必要はない、従業者のインセンティブ確保が必要であることを主張してまいりました。
 このように、労働界と産業界との意見の隔たりは大きかったわけでありますが、議論が進む中で、有識者の方から、発明者に対するインセンティブの重要性について複数意見が出されました。また、権利の帰属が使用者、従業者のいずれであったとしても、従業者のインセンティブを確保するべきであるという意見ですとか、また、法改正によって発明者に対するインセンティブが損なわれることがないよう、法的担保が必要であるとの意見も出されました。
 その結果、小委員会の報告書には、本見直しは、インセンティブの切り下げを目的とするものではなく、企業の国際競争力、イノベーションを強化する上では、研究者の研究開発活動に対するインセンティブを確保することが大前提であるという旨の内容が盛り込まれ、小委員会全体で確認がされました。
 加えて、報告書に、従業者には、現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されるということや、指針の策定に当たっては、労使代表が参加する場で検討する旨の内容が盛り込まれております。これは、私ども連合が働く者の立場に立って主張した内容でございます。
 このように、小委員会の議論経過を振り返りますと、当初の議論から軌道修正が行われまして、最終的な取りまとめとしては、従業者の発明のインセンティブ確保に対する最低限の制度的担保は設けられたものと受けとめております。
 最後に、法案の具体的な内容に対する評価、課題について、四点について申し述べたいと思います。
 一点目は、職務発明に関する権利の帰属についてであります。
 法案では、職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることを可能としております。この法人帰属化については、マスコミでも大きく取り上げられたところでありまして、研究者の関心も高い論点であると考えております。
 法案では、法人帰属とするためには、契約、勤務規則等であらかじめ定めることを要件としております。したがって、契約、勤務規則等で法人帰属とすることを定めない会社においては、従来同様、従業者帰属のままであるというように受けとめております。
 また、現行法のもとで、大企業のほとんどは職務発明に関する規程を設け、その中の多くの企業は、規程において特許を受ける権利を従業者から承継するようにしております。
 小委員会の報告書では、法人帰属とする場合の前提条件が必ずしも明らかになっておりませんでした。したがいまして、私どもは、どのような法案になるのか、若干心配をしていたところでありますが、先ほど申し上げましたとおり、特許を受ける権利の取り扱いについての変更は、実質的には小幅にとどまるものと受けとめております。
 いずれにしましても、国会審議において、特許を受ける権利の帰属を見直すべきとした立法事実、法人帰属を可能とすることの意義、さらには、これが従業者のインセンティブ確保あるいは向上にどう寄与するのかという点について、御確認いただきたいと思っております。
 また、職務発明は全て無条件に法人帰属となるといった誤ったメッセージが伝わらないように、その点も御留意いただきたいと思っております。
 二点目は、相当の利益を受ける権利についてであります。
 従業者に対し、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を法定化することは、初めから法人帰属とした場合でも、従来の法定対価請求権に相当する従業者のインセンティブを確保するものであり、妥当と考えます。
 小委員会の報告書には、これにより、従業者には、現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されることとなる旨の記載があります。間違っても、従業者のインセンティブがそがれることのないよう、この趣旨を十分に踏まえた法律、運用となるよう確認いただきたいと思っております。
 三点目は、指針の策定についてであります。
 法改正後、相当の利益の内容を決定するための手続の指針が策定をされます。現在も特許庁において手続事例集が策定をされておりますが、今回、法により指針を定めることが明記されたことを評価しております。
 指針の具体的な中身は産業構造審議会で検討されることとなりますが、検討に当たっての留意点として三点申し上げたいと思います。
 一点目は、従業者の関与の必要性をより重視するような手続ルール、また苦情処理のあり方について指針に盛り込むという点であります。
 相当の利益の内容は、使用者と従業者の協議や意見聴取が適切に行われ、その結果を十分に踏まえたものでなくてはならないと思います。従業者にとっても使用者にとっても、双方が納得できるような内容となる必要があるということであります。
 また、社内に苦情、異議申し立ての仕組みや相談窓口、あるいは問題解決をする場を設けることも重要だと考えております。そうした場については労働者代表や研究者代表を含めた形で構成するなど、より従業者の納得性を高めるような内容が盛り込まれることが重要であると考えております。
 二点目は、相当の利益の内容に対する考え方について、指針に盛り込むべきであるという点であります。
 法案では、「相当の金銭その他の経済上の利益」と定めておりますが、金銭以外にどのようなインセンティブがふさわしいのかなど、具体的な例を示し、インセンティブの切り下げにならないことを担保する必要があると考えております。
 三点目は、現在、職務発明に関する規則がない企業に対して、規則制定の促進となる指針とすべきであるという点であります。
 特に、中小企業の規則制定を促進するための一助となるよう工夫を凝らし、わかりやすく実効性のある指針となることを求めます。
 最後、四点目ですが、法改正後の調査、検証についてであります。
 今回の法改正が今後従業者のインセンティブにどのような影響を与えるのか、正直わからないというのが実感であります。法改正前後で企業の職務発明規則が変わったのかどうか、変わったとすればどのように変わったのか、また従業者のインセンティブに変化があったのかなど、法改正後の運用に対する調査、検証が重要だと考えておりまして、そうした対応がなされるような御議論をお願いいたします。
 以上、私からの御意見とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 川島千裕

speaker_id: 11039

日付: 2015-05-29

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会