高橋弘行の発言 (厚生労働委員会)

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○高橋参考人 おはようございます。経団連労働政策本部長の高橋でございます。
 本日は、労働者派遣法改正法案に対する考え方を述べさせていただく機会を頂戴し、まことにありがとうございます。
 限られておりますけれども、改正法案について申し上げる前に、労働者派遣制度に関する基本的な考え方を述べたいと存じます。
 労働者派遣制度は、労働市場における重要な需給調整機能を担っており、多様な働き方のニーズと人材活用に応える選択肢を提供するものであると考えております。
 派遣労働者にとりましては、希望する勤務地や勤務時間、仕事内容を迅速に選ぶことができるという柔軟性がございますし、企業側にとりましては、必要なスキルや知識を持った人材を早期に確保できるという利点がございます。労使双方にとりまして重要なマッチング機能の役割を果たしております労働者派遣制度を、今後ともよりよいものに見直していくことが肝要であります。
 派遣という働き方に関しましては、雇用が不安定であるとか処遇改善やキャリアアップの機会に乏しいといった指摘がございますけれども、他方で、二〇一四年の労働力調査によりますと、派遣労働者の六割はみずから派遣労働を選択して就労しているということが確認できるわけでございます。
 派遣という働き方を否定し、規制強化によって制限していくことは、制度の持つすぐれたマッチング機能を損なうことになります。重要なことは、不本意ながら派遣として長く働いている方々に向けた適切な支援と多くの就業機会をつくり出していくことであると考えております。
 それでは、改正法について申し上げたいと存じます。
 私といたしましては、改正法案は大きく四つの点ですぐれていると評価しております。
 第一は、特定労働者派遣事業の廃止であります。
 私は、労働政策審議会労働力需給制度部会の委員を拝命しておりますけれども、毎月の会合のたびに、悪質な法令違反の報告を多く受けております。それらの事案を見ますと、行政への届け出だけで事業を営むことができる特定労働者派遣事業に特に悪質な違反が目立っておりまして、私は、そのことに常々大きな問題意識を持っております。また、派遣事業者の八割近くが届け出だけで事業運営を行っている実態にも疑問を感じております。
 そこで、小規模な派遣事業者には大変な規制強化となりますけれども、法改正について議論をしておりました二〇一三年の労働政策審議会の場で、私から、特定労働者派遣事業を廃止し、全て資産要件などを要する許可制とすべきことを主張いたしました。この点は労使で考え方は完全に一致しておりまして、改正法案へと結実いたしました。全て許可制へと移行することで、健全な派遣事業者が事業を営む基盤となり、それがひいては派遣労働者の保護につながると期待しております。
 第二は、期間制限のあり方を抜本的に見直して、わかりやすい制度に変更することであります。
 現行制度では、派遣労働者が行う業務に着目し、政令で定めますいわゆる二十六業務につきましては、派遣可能期間に制限を設けていない一方で、その他の自由化業務については、原則一年、最長三年までとしております。しかしながら、二十六業務に該当するかどうかの判断をめぐりまして、労働局、派遣先、派遣元、派遣労働者の間で認識にそごが生じがちでございます。
 とりわけ、二〇一〇年に厚生労働省が行いました専門二十六業務派遣適正化プランをめぐりまして、大変な混乱が見られたのは記憶に新しいところであります。適正化プランのもとで、二十六業務に関する行政解釈が突然変更されました。例えば、派遣労働者の方が一緒に働いております派遣先の従業員の電話をとっただけで、専門業務とは認められないといった極端な行政指導がなされたことは、制度を不安定化させただけではなく、行政に対する不信を生じさせたと考えております。
 こうした経緯から申し上げられますことは、業務の専門性に着目して期間制限の有無を判断することには無理があるということであります。
 改正法案では、二十六業務を廃止し、派遣元における雇用形態の違いによりまして期間制限の有無が異なる仕組みに見直します。派遣労働者を受け入れる場合、派遣元で有期雇用なのか無期雇用なのかは、派遣契約を締結する際に書類上で確認することができますので、非常にわかりやすい形となります。
 雇用が安定している無期雇用の派遣労働者について、期間制限なしとすることで、派遣という働き方をみずから選択する労働者にとりましては、同一の派遣先で長期にわたってスキルや経験を磨くことにつながることが期待されます。
 一方、有期雇用派遣労働者の場合には、個人単位と派遣先単位の二つの点から三年という期間制限がかかってまいります。この点に関しまして、三年ごとに人をかえれば派遣を使い続けられるといった批判がありますが、事業所単位で見まして、派遣労働者の受け入れから三年が経過する前に過半数組合等からの意見聴取を義務づけている点は、すぐれた制度であると思っております。
 職場のあり方は、何より、労使が意見交換を行いながら自社に最も適した形としていくことが基本となります。改正法案が労使の話し合いに重点を置き、労使自治を尊重しているということは、高く評価できると思います。
 第三は、派遣労働者の雇用安定が現行制度より図られやすくなる点です。
 派遣労働者につきましては、使用者責任が曖昧になりやすいといった点や、派遣契約の終了と同時に雇用が不安定になるといった指摘が多くございます。確かに、リーマン・ショックの際には、未曽有の危機であったために、派遣契約の終了が相次ぎ、派遣元において雇いどめや解雇も多く行われました。
 ただし、こうした状況を踏まえまして、平成二十四年改正におきまして、派遣先の都合により派遣契約を中途解除した場合には、派遣先が当該派遣労働者に対しまして新たな就業機会を確保することや、休業手当の支払いに要する費用等を派遣先が負担することが法定化されたわけでございます。
 今回の改正法案では、派遣元に雇用安定措置を義務づけております。このことは、派遣元の雇用主責任を一層明確化するものであります。また、有期派遣労働者の雇用安定に必要な措置であると思っております。派遣先が新たに正社員などを事業所に雇い入れる際に、その募集情報を派遣労働者にも周知するといった措置を図ることとしておりますので、派遣労働者の保護に関する取り組みは一層整備されてまいります。
 改正法案が成立しても派遣先での直接雇用がふえることは期待できないという御意見もお聞きします。そもそも、雇用は経済情勢などによって大きく変動するものでありますけれども、二〇一三年十月十日の労働政策審議会に提出されました厚生労働省の資料によりますと、現行制度におきましても、派遣期間制限の抵触日が到来した対応といたしまして、五割以上の派遣先が直接雇用をしているという実態がございます。
 派遣労働者と雇用契約が成立するかどうかは、派遣先と派遣労働者の双方のニーズが合致するかどうかで決まってまいります。派遣労働者の方が必ずしも現在の派遣先で就業したいと希望されているわけではなく、中小企業などの場合でございますと、ぜひうちで働いてほしいと申し入れても、派遣労働者の方から遠慮したいと断られるケースも多いと聞いております。
 重要なことは、就業継続を希望している方への支援であり、今回の雇用安定措置は現行制度にはないものでありまして、その効果を期待しております。
 最後に、第四といたしましては、派遣労働者の処遇改善とキャリアアップ支援が強化されるということであります。
 派遣労働者は、長く働いても処遇改善につながりにくいとか、キャリアアップの機会に乏しいという指摘がございます。
 既に大手の派遣業者などでは、専門の学校施設を設けるなど、派遣労働者の教育訓練やキャリア形成の支援について積極的な取り組みが行われていますが、全ての派遣元事業主が取り組むといった状況には至っておりません。
 派遣労働者のキャリアアップにつきましては、第一義的に、雇用主である派遣元がその責任を負うものと考えておりますけれども、業務に関するスキルや能力、経験は仕事を通じて身につけることが多いため、派遣先でのOJTも大変重要となってまいります。
 そのため、改正法案では、派遣元に計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングの実施を義務づけており、許可要件にも、キャリア形成支援制度を有することを追加するとしています。その上で、派遣先に対しましても、業務遂行に密接に関連した教育訓練の実施や、職務遂行能力などに関する情報を派遣元の求めに応じて提供することとされています。
 また、業務単位の期間制限が撤廃されることについても、派遣労働者の仕事の幅が広がり、派遣先としてもOJTが行いやすくなるということが期待されます。
 これらは、キャリアアップやステップアップを考えている派遣労働者にとりまして非常にプラスになる仕組みであると考えております。さらに、みずから望んで派遣就業している労働者にとりましても有益でありますので、派遣法改正法案の早期成立が求められると考えてございます。
 簡単ではございますが、今回の改正法案に関する考え方につきまして、評価されるべき四点を中心に申し上げました。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 高橋弘行

speaker_id: 25965

日付: 2015-05-28

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会