関根秀一郎の発言 (厚生労働委員会)
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○関根参考人 派遣ユニオンの関根と申します。
余り滑らかにお話しするのは得意ではないので、御容赦ください。
私は、派遣ユニオンの書記長として、派遣労働者からの相談を日ごろ受けております。また同時に、私自身も、あちらこちらの派遣会社に登録して働いてみた、就労をしてきたというような経験もございますので、そうした、相談を受けたり実際に働いた経験の中から、派遣の実態、そして今回の労働者派遣法の改正案についてどのように見ているかということについてお話しさせていただきたいというふうに思います。
まず第一に、今回の労働者派遣法改正案の最大の問題点についてなんですが、派遣労働者を正社員化する法案であるというのは全く真実ではなく、むしろ不安定な派遣労働者を大幅に拡大してしまうという法案であること、つまり、特に若者、これから就職しようという人たちが正社員として就職する機会を完全に奪ってしまう法案であるということ、これこそが最大の問題だろうというふうに考えております。
派遣の実態といたしましては、まず、最大の問題は派遣切りであります。
リーマン・ショックのときにも、東日本大震災のときにも、一番真っ先に切り捨てられたのは派遣労働者です。最も切りやすい労働力として派遣労働者が位置づけられているがために、数十万人の派遣労働者が切り捨てられ、路上に放り出される。年越し派遣村にあらわれたたくさんの人たちは、命の危機にさらされるというような事態があったわけです。
残念ながら、この派遣労働者の不安定性というのは全く変わることなく、現状においても不安定なまま、二カ月から三カ月程度の雇用契約を何回も更新しながら働くというような働き方で、なおかつ、派遣先企業、働かせている企業の側は、雇用上の責任を全く負わないということから、ごくごく簡単に切り捨ててしまうというような実態にございます。
一ページめくっていただきますと、派遣スタッフアンケートがございます。私どもが二年から三年に一回のペースで行ってきた派遣労働者に対する実態調査なんですけれども、一ページ目のこの表は、派遣労働者の平均時給をあらわしています。一九九四年の段階では千七百円台だった平均の時給が、二〇一三年の段階では千百円台にまで落ちてしまっています。これは、もうずっと派遣労働者の時給が落ち続けているということを示していますし、大幅なダウンです。
それから、二ページには、年収の水準、百万円から二百万円程度の派遣労働者が多数いるということや、現在の収入では大変苦しい、生活が少し苦しいということで、苦しいと言っていらっしゃる方がたくさんいるというような実態がございます。
それから、四ページをごらんいただきたいんですけれども、現在の労働契約期間というのは、二カ月から三カ月程度の人が大変多く、通算就労期間というのも、一年未満であるとか、二年未満、三年未満というような形で切られている人たちがたくさんいらっしゃいます。
そして、五ページにございますけれども、これからの自分の将来の働き方について聞いているわけなんですが、まず、自分の将来には不安を感じているという人たちが約六割いらっしゃる。さらに、今後の働き方の希望については、正社員として働きたいという方が六三%で、派遣スタッフを続けたいという方が二一%でした。
その下に、今後どのような働き方を希望するかというアンケートに関する経年の変化が出ておりますけれども、九四年に調査した段階では、派遣スタッフを続けたいという方の方が多かったわけなんですが、これがどんどんどんどん減って、派遣スタッフを続けたいという方が減っていって、正社員として働くことを希望するという人がふえていくというような推移が、この表にも見てとれるかと思います。
つまり、どんどんどんどん労働者派遣法が規制緩和されていくに従って、派遣がどんどん拡大されていく。結果として、働く人たちは、正社員として働きたい、あるいは安定した雇用で働きたいけれども、安定した雇用がないから、派遣という働き方を余儀なく選択しているという人たちがふえているということになっているわけです。
今回の労働者派遣法に関しては、正社員化する法案というふうに言われておりますけれども、実際にはその雇用安定化措置というのは、あくまでも、派遣会社が三年たった時点で派遣先に、雇ってくださいね、派遣先で直接雇用してくださいという要請をするだけであって、これを派遣先が、嫌ですよ、うちは雇いませんよというふうに言ってしまえば、全く効力がない。また、派遣会社がかわりの仕事を紹介するという場合についても、通勤時間が著しく長い仕事を紹介される可能性や、あるいは時給がダウンしてしまう仕事、あるいは全くできない業務内容の仕事を紹介されてしまう危険性もありまして、そこのルール化がまだ全くなされていない中で、雇用安定化措置とはとても言えず、実効性のないものであるというふうに考えられます。
今回の改正案が施行された場合にどんなことが起こっていくのか、その問題点についてお話しさせていただきたいと思います。
まず第一に、三年ごとに派遣労働者を別の派遣労働者に差しかえさえすれば永続的に派遣が活用できる、今までの期間制限というのが事実上なくなってしまう法案ですので、企業の側は派遣が使い勝手のいいものだということになりますので、これから不安定な派遣労働者が大幅に拡大していくことは間違いありません。企業の側は、労働力としては派遣ばかり活用するようになって、正社員の募集というのは著しく減少していくということになるかと思います。正社員ゼロ法案であるというふうに言われているのも、そうしたことから言われているわけです。
また、今回、期間の定めのないいわゆる無期雇用の派遣というものについては、正社員として募集するということも許されるというようなお話も聞こえてきておりますけれども、名ばかり正社員というふうに言わざるを得ないだろうと思っております。事実上、派遣というのは間接雇用ですから、まさに正社員ではないことの要件の一番大きなところなんですね。ところが、これを正社員として募集する、結果として、派遣労働者が正社員という名前だけで募集されている。
きのうも私、ある派遣労働者の相談を受けていたわけなんですけれども、その派遣労働者は、正社員ということで募集されて派遣で働いていたけれども、賃金は月収で十三万から十四万ぐらいだということで、派遣がいかに労働条件が悪いかということをお話しされていました。
それから、今回の労働者派遣法の改正案の中で非常に大きな問題点、三年後には専門二十六業務の派遣労働者が一斉に切り捨てられることになってしまうということなんです。
九ページをごらんいただきたいんですけれども、これは、専門二十六業務、研究開発職で働いていらっしゃる派遣労働者、五十代の男性の実態なんです。
彼は、十七年間にわたって派遣で働いているわけなんですけれども、研究開発職という極めて専門性の高いお仕事をしていらっしゃいます。彼は、三年後に備えて派遣先、派遣元と話をしているんですが、まず、派遣先に正規雇用してもらうという点については、派遣先からは、もうあなたの年齢と学歴では無理ですよというふうに言われてしまっている。また、派遣元からは、あなたの年齢では期間の定めのない雇用契約に切りかえるのは無理ですよというふうに言われてしまっているということなんです。
専門性が高い仕事であればあるほど、三年後に切られて、新たな仕事を紹介することは非常に難しいということなんです。
十ページの中段あたりから書いてありますが、この方は、どう転んでも、この法案によって失業するというふうに認識している。そして、その後は生活保護になるか、生活苦から老いた母とともに無理心中することも考えてしまうというふうに話していらっしゃいます。
本人は、現実的には、現在の派遣制度による生涯派遣でも構わないと思っているとのことです。ただし、その条件としては、同一労働同一賃金とまでは言わないけれども、正社員の七、八割ぐらいの賃金はもらえるようにしてもらいたい、つまり均等待遇を定めてほしいということ、とにもかくにも安定雇用を保障してほしいんだということを話していらっしゃいます。
本人は、安心した暮らしと仕事があれば再婚もできる、この方はバツ一だということなんですが、再婚もできるかもしれないし、そうすれば、いずれやってくる親の介護も何とかなるかもしれない、しかし、今度の改悪案は、そういった希望を全て奪い去り、それどころか命の危機にさらされるようになってしまうということを危惧していらっしゃいます。
それから十一ページには、同じく五十代の女性の方、この方も、事務用機器操作で十五年働いていらっしゃる方なんです。
この方も、正社員にはあるが派遣にはないものとして、交通費、賞与、退職金、慶弔休暇等々がありまして、非常に大きな格差、給与でいうと半分程度の給与しかもらっていないということ。派遣法改悪がもし施行されたら、三年で自分も雇いどめになってしまう、今だっていつ切られるかわからないけれども、少なくともこの法案によって三年で確実に切られるということに定められるのは御免だということを話していらっしゃいます。
再び経済的な変動や大規模災害が発生したときには、この法案で派遣をふやしておいたら、また大規模な派遣切りが発生してしまうことは間違いありません。
本来望まれる派遣法改正の方向性としては、まず何といいましても、派遣労働者の雇用の安定を図っていただきたいというふうに思っております。今回の改正案では、残念ながら、無期雇用に移行するということはございません。期間の定めのない雇用契約を前提とする派遣に切りかえていっていただきたいというふうに考えています。
それから、派遣労働者と同一の業務を行う派遣先の労働者との均等待遇、同一労働同一賃金をきちんと定めていただきたい。
そしてもう一つは、派遣先の責任の強化です。やはり派遣先というのは、実際に派遣労働者を使いながら、そして大きな権限を握りながら、責任を負わずともさまざまなことができるというふうになってしまっていることから、派遣労働者が派遣切りされて派遣先に申し入れても、うちは雇用関係がないから関係ありませんよというふうに逃げられてしまう。あるいは、さまざまなセクシュアルハラスメント等の被害に遭っている方もたくさんいらっしゃいます。
そうした問題を解決するためにも、本当に実効性のある労働者派遣法の改正を行っていただきたいというふうに考えております。
以上です。(拍手)