鈴木啓之の発言 (農林水産委員会)
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○鈴木参考人 おはようございます。愛知県碧南市から来ました鈴木啓之と申します。きょうはよろしくお願いします。
私は、碧南市で鈴盛農園という屋号で農業経営をしております。現在三十一歳です。
実は、今から六年前まで、自動車関係のケミカルメーカーにおいて、直営店舗で統括店長の仕事をしておりました。結婚を機に退社をして、改めて農業の世界に参入してまいりました。それまで農業には全く接点がなかったので、もちろん知識もない、人脈も何一つありませんでした。そこから一年弱、愛知県の農業大学校で基礎的な研修をした後、地元農業法人で二年間研修を重ねて独立をいたしました。二〇一二年に新規参入で経営を開始してから四年目の、まだまだ小さな経営体であります。
それと同時に、現在、北海道から沖縄までの日本全国三十九歳以下の農業青年一万三千名が所属する全国農業青年クラブ連絡協議会、通称四Hクラブの第六十一代目の会長をさせていただいております。
話を鈴盛農園の方に戻させていただきまして、鈴盛農園は私が代表を務めておりますが、先ほどの四Hクラブの業務などでの出張も多いため、今、妻を女性農場長として、野菜の作付スケジュール、品種の選定だったり、スタッフへの作業指示、また六次産業化として農産物の加工などを担当してもらっています。
私は、もともと両親が農業をしていたわけではないので、新規参入で農家世帯となりました。それゆえ、家族労働力は妻のみです。それではやはり規模拡大ができませんので、現在、ほかに研修生を一名、それからパートスタッフ二名を常時雇用し、繁忙期には地域のシルバー人材を利用して農業に取り組んでおります。
また、私自身が改めて外部から農業の世界に新規参入してきたということもあって、これから農業を始めたいんですとか、農家で働いてみたいんです、そういう若者が訪ねてきてくれることも多くなりました。現在、鈴盛農園のスタッフの平均年齢は三十歳で、非常に若い農業者集団になっております。
現在は、面積は約二ヘクタールの農地を利用して、年間で三十種類、約百品種の野菜を、ハウスや温室を使わない露地栽培で育てています。
私のいる碧南市というのは、冬ニンジンやタマネギの指定産地となっていることから、作業体系の機械化が進んでいたり、販売価格も安定しているということで、農業後継者が豊富で、優良農地は全くと言っていいほど余っていない状態です。今は本当に、いい農地があくと、陣地の奪い合いをしているような地域です。
その中で、僕のような新参者にはどうしても農地が集まらないため、非常に非効率なのは重々承知の上なんですが、三つの市をまたいで農地を借りて農業をしております。遠い畑では、農園の本拠地から三十キロ以上離れたところもありまして、往復の移動時間だけでも一時間半ほどかかります。そこに、トラックにトラクターを載せて走っていって、作業をして帰ってくる、そういった形の農業をしております。
また、現在お借りしている農地は、野菜栽培に必要な水源、水がなかったり、もともとちょっと耕作放棄地のようになっていて、最初に見に行ったときは雑草が何メートルかに伸びていたようなところであったりという、いわゆる条件不利地がメーンです。
その中でも、僕のような新規参入者が借りられる農地は、やはりほかの農家さんが手をつけないような、やり手のない農地になりがちです。よく中山間地の耕作放棄地の増加が問題として叫ばれている一方で、農地不足によって、そこまでしないと規模拡大ができない地域もあるということであります。
そういった限られた農地で野菜を栽培するため、畑一枚当たりの収入をいかに大きくできるか、そこがすごく重要になってきます。そういう観点でも、販売という部分も安易に人任せにはできないというふうに思っています。
私どもの生産量は、ニンジンでおよそ五十トン、サツマイモ十トン、タマネギ七トン、ジャガイモ四トン、そのほか細かい野菜をつくっておりますが、鈴盛農園では、栽培する野菜は全て直売事業での販売をしております。ですので、今回の改革の一つの主題でもある農協への系統出荷というのは実は一切行っておりません。
今では、自社農園での直売ですとか、自分のところのホームページのウエブショップ、それから道の駅、地域直売所での販売、これで野菜、農産物の六〇%を直売しておりまして、そのほか、大手農産物宅配サービスだったりスーパーとの契約で農産物を販売しております。
私の知り得る限りでは、こういう販売も自分のところで行っているという農業者、農業法人はふえています。担い手ですとか我々のような青年農業者のいわゆる農協離れというのは加速傾向にあるのではないのかなというのも現場にいながら感じております。
これまで、農産物の販売というと農協への系統出荷というのが基本であって、その他、身内ですとか周辺の人に少し直売をする、ごくわずかな直売であったり、一部だけ市場に持っていくんだという販売が多かったと思うのですが、かつてより販売先も多岐にわたって広がる今の状況では、農協への出荷というのも一つの販売チャネルにすぎなくなってきているのではないかなというふうに感じております。
そんな中で、私たちが農協への系統出荷をしていないということだったんですけれども、それには二つの理由があります。
一つは、自分たちで営業努力をして直売をした方が、ずばり、野菜を高く販売できるからです。
また、少しこれはきれいごとになるんですけれども、全ての野菜を僕たちスタッフの顔とそれから名前が見える状態で販売していますので、お客様の喜びの声は直接いただけます。それがみんなのやりがいにつながっています。
また、それより重要なのが、この前のあの野菜、ちょっと苦かったよとか、去年よりちょっと甘みが少なくなっていないかというお客様からのクレームを直接聞けることこそが我々の強みであると思っております。
市場からのクレームはどうしてもサイズや規格に関するものが多いと思うんですが、一般消費者からのクレームは味に関するものが多いです。そのため、私どもは、規格が出しやすい、簡単につくれる、栽培が容易だよという品種ではなくて、つくるのは少し難しいけれども味はおいしいよという、味を重視した品種選定を行っております。そのため、規格外品の発生というのがやはりふえます。収量も減少します。ですので、そんな中でも再生産できる価格を自分で決めて直売するということが非常に重要となって、全て人任せ、農協系統任せの出荷をしていては経営が成り立たないという側面もあります。
そして、系統出荷をしないもう一つの理由として、部会に所属する必要があるからです。
部会に所属をすれば、もちろんのことですが、その中でのルールを守らなければいけません。例えば、部会員は勝手な直売をしてはいけません、独自で加工品の開発をしてはいけません、ホームページを自分で開設してはいけません、メディアへの許可なき出演を禁止しますなど、さまざまな縛りがあるということも聞きます。
足並みをそろえてやっていくということ、それは地域の農産物のブランドを守るという観点においては非常に重要だと思います。ですが、それは同時に、出るくいは打たれるというか、出させない、誰かがぬきんでることを抑止するということでもあります。
そのような中、私は、農業界に参入してきて、六年前からずっと掲げているテーマがありまして、きょうお配りさせてもらったレジュメ資料にも書いてあるんですけれども、それは、「日本の農業をカッコよく。」というテーマです。
農業は、やはりどうしても後継者不足という問題もありますが、未来の子供たちにとっても当たり前のように職業の選択肢にあるような状況にしていきたいし、ひいては、憧れられるような農業にしないといけないというふうに考えていますし、それをやるのはやはり外部から入ってきた自分のような人間ではないかというような勝手な使命感すら抱いております。
そのため、積極的なメディアへの出演による農業の魅力のアピールも大事にしていますし、先ほどのホームページやSNSなどを利用した情報発信も、一年三百六十五日、ほぼ毎日行っております。きょう、こういった機会をいただいて、こういった場に立たせていただいていることも非常に光栄なことだと思っております。ありがとうございます。
農業は地域商売であるので、一人だけ出ていく、目立っていくというのはやはりどうしても悪とされてきたところがあると思いますが、あえて矢面に立ってでもその魅力を伝えていくということ、これは、これからの新規就農者、新規参入者はこういった部分も取り組んでいくべきだと思っています。
そういったことをしていくには部会の縛りというのがこれは大なり小なりあるので、もちろん、そういったことをしても大丈夫だよというところもあると思うんですが、やはりどうしても僕のいるところの中ではそういった部会の縛りというものがあっては不可能だったので、部会に所属するということをしませんでした。
端的にまとめますと、自分で営業努力をして直売した方が収益性が大きいということ、もう一つは、部会の縛りがあっては思い描く農業ができなくなるということ、この二つの理由から、私ども鈴盛農園では農産物の系統出荷を行っておりません。
では、逆に、農協がどのようになれば僕は出荷をしたくなるのかなということも考えたことがあるんです。
まず、私どものような個人農家と比べて圧倒的な物量があります。農家数の多さと集まってくる物量の多さがありますので、それを生かして有利販売をしていただきたいなと思います。
僕自身、営業活動をしていく中でネックになるのが物量です。耕作面積がまだ少ないこともあって、契約出荷においては物が足りなくなってしまうというリスクがあるので、契約出荷の出荷量を減らさせてもらうとか、または必要量が用意できないので契約に至らないということも多々あります。
農協にはそれを集める力があるので、ただ集めて流すということではなくて、産地ブランドと安定大量出荷ということを武器にして積極的な営業活動をしていただき、本当に、私どもが営業努力をして出すような販売価格を軽々と上回るような金額で販売をしていただけるようになると、販売チャネルとしての魅力も上がってくるんだろうなというふうに思います。
もう一つは、部会に所属する農家と、私のように所属をしない、個人で販売する農家の間を埋めるような役割も農協に担っていただけるとありがたいなと思っております。
これまでの農業界においては、部会に属さず、一匹オオカミのような農業をしている、変わり者と言われるような人が地域には少なかったと思うんですけれども、それゆえ、例えば相手にしないですとか、あそこはちょっと違うという形で過ぎてきたことかもしれないんですけれども、時代が今変わっておりますので、栽培方法ですとか出荷方法などにオリジナリティーを追求する個人の農家というのはふえています。間違いなく、そういった農家は今に無視できない存在になっていきます。
もちろん、これまでのやり方を忠実に守ってくれる農家を守るのも非常に大事な農協の役割だと思いますし、そういった農家とこれからの新しく入っていく形の農業者との距離をうまくつないでいくことも今後の農協に期待しております。
そのためには、農協の理事に、農協とちょっと距離があるような農家も積極的に採用していただくとか、法案の中で認定農業者とか販売に強い者を理事に入れるというところの中に、やはり地域でこれからを担っていくような、私どものような青年農業者を採用していただく枠などをよりふやしていただけるとありがたいなというふうに思います。
もう一点が、農協の事業利用についてなんですけれども、私どもは、肥料や種苗、それから資材や機械の購入における農協の利用率は、金額ベースでいうと全体の約五%で少ないんですけれども、残りは、地域の種苗店や機械メーカーから直接購入したり、ホームセンターや農業用品専門店など、そういったところとの取引をさせていただいております。
組合員皆平等という言葉もありますけれども、何か農協にはちょっと商売っ気がないような感じがするんですよね。もちろん、ほかの企業と同様に、早期予約割引ですとか大口利用者への割引ということはあるんですけれども、例えば、農業用品専門店は、すごく積極的に足を運んで土壌診断や施肥設計の提案をしてくれます。ホームセンターでは、割と柔軟性のある値引きですとかサービスを行ってくれます。
そう言うと、土壌診断や施肥設計はうちでもやっているよという地域農協もあるかと思うんですけれども、私が言いたいのは、積極的に農家のもとを訪ねてその提案をしているかというところであります。
まあ、私がそういう農協系統出荷をしていない農家なので、もしかするとそのサービスを享受できていないだけだよと言われればそれまでなんですけれども、出荷先が農協であるかないかということは関係なしに、資材販売をふやすための営業活動はやはりすべきだと思いますし、その結果、肥料、農薬の販売数量がふえることで仕入れ価格を抑えて、農業者へ還元できるということもあると思います。
ただし、農協の肥料は高いというふうに言われるんですけれども、実は品質はいいんだよというふうに言われる、そういう声もよく聞きます。では、そういったいいものを販売しているということがあるのであれば、資材価格の努力による引き下げはもちろん、待つだけではない農家への提案型のサービスを強めるなどして農業者の方に歩み寄ってきていただけると、強制的に利用するのではなくて、みずから農協を利用したいなと考える農家はふえるのではないかと思います。
ここまで私なりに農協に求めるものというのをお話しさせていただいたんですけれども、地域農協によっては、実は、これらのことを全てクリアしていて、農家にも求められる農協になっているところもあると聞きますし、最近では、そういった農協がよくテレビに取り上げられたりしていることもあります。最終的には、やはり農協職員の人間力というところが非常に重要になっているようなことも感じます。
実は、私たちも、農協への出荷がなかったり事業利用率も五%と、ほとんど縁がないような状態なんですが、現在、少しずつですが耕作面積が広がっているのは、実は、一人の農協職員さんの力添えがあるからなんです。
地域の中では、どれだけ悪条件な農地でも耕作放棄地にしたくないというその考えと、どんな農地でもいいから規模拡大したい、貸してほしいという我々は利害が一致しておりますので、その間に入って農地のあっせんをしてくれているのがその農協職員さんです。
職員の間での仕事への熱量というのか温度差というのはどの世界にもあることだと思うんですけれども、一人でも多くの職員さんが広い視野で地域農業というのを見ていただいて、熱量を持って取り組んでいただけることを強く望んでおります。
農業者に直接的に関係があるのは、やはり全農、全中というよりも地域農協だと思うのですが、地域農協から盛り上がっていくことは非常に大事だと思います。その点、全農さん、全中さんには、その組織力を生かして、やはり基本的な職員の人材育成、教育であったり、優良事例として先ほどのうまくいっている農協の情報というのをきちんと地域まで落とし込んでいただくような、そういう教育をしていただけるとありがたいと思います。
私自身も、いろいろ農業をやっていくに当たって、経営の計画を立てて、未来のビジョンを描いていくと、あっ、今思い浮かんだモデルというのは小さな農協だなと思うときがやはりすごくあるんですよね。そのときに、やはり農協というのはビジネスモデルとしてはすごくすばらしいものなんだなというのを感じたりもします。
ただ、現状でたくさんの課題を抱えているということも事実だと思いますので、これからも創意工夫をして、本当に、時代に合った農協の形をつくり出していただいて、我々農業者にとってなくてはならない組織となっていただける、そんな改革になることを期待しております。
以上が、私、鈴盛農園代表鈴木啓之の意見です。
ありがとうございました。(拍手)