宮村啓太の発言 (法務委員会)

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○宮村参考人 日本弁護士連合会で司法改革調査室の室長を務めております宮村と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 当連合会の本法律案についての意見、全般的な意見及び取り調べの録音、録画についての意見は、本年六月十日の本委員会で副会長の内山弁護士から申し上げたとおりです。
 本日は、身体拘束及び証拠開示制度について意見を申し上げます。
 まず、身体拘束制度についてです。
 言うまでもなく、身体の拘束は重大な人権の制約です。身体を拘束された被疑者、被告人は、四六時中、寝食も含めて全ての動作が監視のもとに置かれることになります。身体が拘束される期間が長期化すれば、仕事を失うこともあります。また、身体を拘束されている状態では、弁護人との打ち合わせの機会が制限されてしまいますから、防御権の行使も困難になってしまいます。
 従来、とりわけ、嫌疑を否認し、無実を訴える被疑者、被告人について、容易に身体の拘束を続けるという運用が行われてきました。
 取り調べで黙秘をすること、嫌疑を否認すること、供述調書への署名、押印を拒否すること、そして公判で検察官が取り調べを請求した証拠書類に不同意の意見を述べること、これらは、無実を訴える被疑者、被告人にとって当然の権利の行使です。ところが、そのような否認または黙秘の態度を理由として、容易に、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由、あるいは逃亡すると疑うに足りる相当な理由を認めてしまい、勾留を決定し、保釈請求を却下する、そのような運用が従来行われてきました。いわゆる郵便不正事件でも、罪を認める供述をした被告人には早期の保釈が許可されたのに、無実を訴える村木厚子さんには百六十四日間にもわたって勾留が続けられました。
 先ほども申し上げたとおり、勾留された被疑者、被告人は、四六時中、全ての動作が監視のもとに置かれることになります。弁護人以外との面会は、一日一組、ごく短時間しか認められません。接見禁止が決定されれば、家族や友人などの一般人とは一切会えない状況が続きます。そのような過酷な状況で捜査機関の取り調べを受け続けることになります。起訴された後も保釈されない状況が続けば、捜査は終わっているのに、いつ終わるともしれない、出口の見えない過酷な状況に置かれ続けることになります。
 無実を訴える人を容易に身体の拘束下に置くという運用は、被疑者、被告人の自由を不当に制約するばかりか、冤罪を生む大きな要因になってきました。本当は罪を犯していないのに、身体を拘束されている過酷な状況から逃れたいばかりに、捜査機関の見立てに沿う供述をし、虚偽の自白をしてしまうという結果をもたらしてきました。
 無実の人が無実を訴えていることを理由に身体の拘束を続けるようなことは、決して許されないと言うべきです。被疑者、被告人の身体拘束が許されるのを例外的な場合に限定し、無実の人が身体の自由と引きかえに自白を強いられるようなことが決してないように、身体拘束制度を抜本的に改善する必要があります。近年、勾留請求の却下率や保釈の許可率には改善の兆しがあります。しかし、その改善はいまだ不十分であると言うべきです。
 このように、従来の身体拘束制度には極めて問題があったからこそ、日弁連は、その改善に向けてさまざまな提言をしてまいりました。具体的には、勾留及び保釈の裁判に当たって、被疑者、被告人が否認または黙秘したことなどを理由として不利益な取り扱いをしてはならない旨の規定の創設、そして、身体を拘束することなく罪証隠滅や逃亡を防止する住居等制限命令制度の創設などを提言してまいりました。
 本法律案は、裁判所が裁量保釈の判断をする際の考慮事情の一つとして、身体の拘束の継続により被告人が受ける防御の準備上の不利益を明記するものとしています。身体を拘束されている状態では、弁護人との打ち合わせの機会が限られます。差し入れられた証拠を検討する時間も限られてしまいます。そして、身体を拘束されていることによる防御上の不利益の程度が最も大きいのは、防御準備の必要性が特に大きい、嫌疑を否認し無実を訴える事件であると考えられます。
 本法律案による裁量保釈に関する規定の改正は、身体拘束制度の運用を改善する契機になり得るものであると考えています。本法律案による改正を契機として、被疑者、被告人の防御準備の利益に十分に配慮し、そして、嫌疑を否認し無実を訴えている被疑者、被告人の身体を容易に拘束しない、そのような運用が広がっていかなければならないと考えています。
 次に、証拠開示制度について申し上げます。
 現在の刑事訴訟法のもとでは、捜査機関が作成または入手した証拠のうち、被告人側に開示される証拠は一部に限られます。公判前整理手続が導入されたことで証拠開示請求権が保障されましたが、全ての証拠の開示を受ける機会が保障されたわけではありません。また、公判前整理手続に付されていない事件では、いまだ証拠開示請求権は保障されていません。
 被告人に有利な証拠が隠されたまま過って無実の人が処罰されるようなことは、決してあってはなりません。無実の人が処罰されることがない刑事司法を実現するためには、全ての事件において全ての証拠が開示されるべきです。
 二〇〇七年十月に再審無罪判決が言い渡されたいわゆる氷見事件では、捜査機関が押収していた電話通話履歴の中に被告人のアリバイを裏づける情報がありました。しかし、公判ではそれが取り調べられないまま有罪判決が言い渡されていました。
 再審開始を経て二〇一二年十一月に無罪判決が確定したいわゆる東京電力女性社員殺害事件では、再審開始が決定した後になって、検察官から被告人側に新たな証拠が開示されました。新たに開示された証拠の中には、被害者の体から採取された唾液が被告人とは異なる血液型の反応を呈したということを示す証拠が含まれていました。私は、この東京電力女性社員殺害事件で、元被告人であるマイナリ氏の弁護団の一人でした。
 これらの事件で被告人の無実を裏づける証拠がもっと早い段階で開示されていれば、無実の方が有罪判決を言い渡されずに済んだ可能性があります。東京電力女性社員殺害事件では、マイナリさんが逮捕されてから釈放されるまで、実に十五年以上の歳月を要しました。
 被告人が虚偽の弁解をするなどの弊害を防止するために、証拠開示を制限するべきとの意見もあります。しかし、刑事司法で何よりも防がなければならないのは冤罪であるはずです。無実の人を処罰することがない刑事司法を実現するためには、全ての事件において全ての証拠が被告人側に開示されるべきです。
 確かに、刑事訴訟法は当事者主義を採用しています。しかし、捜査機関と被告人側には、証拠収集のための権限に圧倒的な差があります。
 そのような見地から、日弁連は、全ての事件に適用される全証拠の開示制度、そして証拠一覧表の交付制度の創設を主張してまいりました。
 今回の法律案は、証拠一覧表交付制度の導入と類型証拠開示の対象の拡大を定めています。検察官から弁護人に証拠一覧表が交付されれば、弁護人にとって、検察官に対して証拠開示の請求をする手がかりが与えられます。
 また、今回の法律案は、検察官及び被告人側に公判前整理手続に付することの請求権を付与することとしています。特に争いがある事件では、弁護人が充実した公判に向けた準備を遂げるために、証拠開示を受ける必要性が高く、弁護人から公判前整理手続に付することを請求する場合が少なくないと考えられます。
 今回の法律案は、いまだ全面証拠開示制度を実現するものではありませんが、証拠開示の拡充を進める改正であると言うことができます。
 日弁連は、本法律案が成立し、証拠開示が前進することを望んでいます。その上で、さらに、法制審特別部会で必要に応じてさらに検討を行うことが考えられるとされた再審請求審における証拠開示制度のあり方を含めて、証拠開示の一層の拡充に向けた議論がなされるべきであると考えております。
 私の意見は以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 宮村啓太

speaker_id: 24519

日付: 2015-07-08

院: 衆議院

会議名: 法務委員会