原英史の発言 (予算委員会公聴会)
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○原公述人 おはようございます。政策コンサルティングの会社を運営しております、原と申します。
本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、政府の国家戦略特区のワーキンググループの委員、また大阪府、大阪市の特別顧問なども務めており、国や地方の規制改革、行政改革などにかかわってきております。
きょうは、特に規制改革、行政改革の観点からお話をさせていただきたいと思います。
まず第一に、安倍内閣の施政方針演説によれば、今国会は改革断行国会と位置づけられていると承知しております。アベノミクスの第三の矢、つまり成長戦略を進める上で、いわゆる岩盤規制の改革は特に重要と考えます。
お配りしております資料の二ページで、ちょっと字が細かくて恐縮ですが、世銀グループの公表している世界各国ガバナンス指標のデータをお示しいたしました。
ここでは、政府のパフォーマンスに関する四つの指標、政府の有効性、汚職の抑制、法の支配、規制の質という四つについて、世界各国の中でのトップテン、それから日本を含む主要先進国の順位を示しています。
全般に我が国政府は、世界の中では比較的頑張っている方だと思います。政府の有効性は、この指標では世界で十四位。それから、汚職の抑制については十六位。法の支配については二十三位であります。これは全体で二百数十カ国の中での順位ですが、こういった順位です。トップテンにこそ入っていませんが、欧米の主要先進国の中では上位に位置しているわけであります。
一方で、もう一つの指標である規制の質、これは、健全な規制を導入し、民間セクターの発展を促進できているかという指標なわけでありますが、これについては順位が三十六位とかなり低くなります。主要先進国と比べましても最底辺に位置しているということであります。つまり、ここが日本政府のいわば苦手分野なわけであります。
ですから、いわゆる岩盤規制と言われるような、十年も二十年も、こんな規制はおかしいと言われながら岩盤のように維持されている規制が残っているわけであります。
安倍内閣が成長戦略の根幹として二年で岩盤規制を打ち破るという方針を掲げられていることは、高く評価されるべきと考えます。これまでの政権でさまざまな成長戦略が策定されてきておりますが、いずれも、これからの成長分野として、農業、あるいは健康・医療、環境・エネルギーといった分野を掲げて政策的な支援、誘導が図られてきました。しかし、残念ながら、いずれの分野もいまだに、これからの成長分野のままであると思います。
これは理由は簡単で、これらの分野はいずれも岩盤規制の残されている代表的な領域だからであります。新規参入や新たな創意工夫が規制によって制約されている状態のまま、幾らこれからの成長分野であると旗を振っても、成長は難しいということだと思われます。
問題は、岩盤規制改革が本当に実現できるかどうかです。二年で岩盤規制を打ち破るという表明を安倍総理がなさったのは、昨年の一月、スイスのダボス会議でのスピーチでありました。ということは、残された期間はあと十カ月しかありません。
これまで一年数カ月の間に、実現にまでたどり着いた改革はまだ決して多くはありません。既に法律が成立したものという意味では、昨年の通常国会での電力改革の第二弾、つまり小売参入の自由化ぐらいであります。農協改革、患者申し出療養、労働時間規制改革、電力改革の第三弾、発送電分離といったものについては、今国会でこれから審議される段階であります。
さらに、まだ残されている課題も少なくありません。例えば、長年の懸案となっている、農業分野でいえば株式会社の農地所有、医療の分野であれば医療機器、医薬品の承認の迅速化、雇用の分野では同一労働同一賃金の実現といったようなものが残されています。こうした課題に、残り一年弱の間にどのタイミングでどのように取り組んでいくのか、早急に見通しを明確にすることが重要であると考えます。
国家戦略特区については、私も政府のワーキンググループの一員として運営にかかわってきております。兵庫県養父市での農業改革、福岡市での創業促進のための改革といった先鋭的な取り組みのほかに、東京圏、関西圏といった広域的なエリアでの制度運用も本格化してきています。
国家戦略特区は、いきなり全国規模では困難な岩盤規制を、まずは地域限定で実験的に改革していくという仕組みであります。この仕組みを最大限に活用して、さらに強力に進めていけるように、私もできる限りのお手伝いをしていきたいと考えております。
改革を促進するための予算への転換という視点も重要と考えます。
いわゆる岩盤規制と言われる領域では、多くの場合、規制によって利益を得ている利益集団が存在し、そのために改革がなかなか進まないという実態があります。これまで得られていた利益を補填ないし補償するということで改革が進むのであれば、有力な手法になると思います。
改革すべき状態を維持することにお金を使うのではなく、円滑に改革を進めるためにお金を使うということに重きを置くべきではないかと考えます。
ただ、規制改革会議や国家戦略特区での規制改革の議論は、予算の査定、見直し、あるいは要求といったスケジュールとは必ずしも合致せずに、別トラックでなされております。このため、規制改革の議論と予算の連動は不足しがちであります。関係省庁との規制改革の議論の進展とも連動して、機動的に予算の見直し、手当てができるような仕組みなども検討されるべきではないかと考えます。
二点目に、成長戦略の前提としての公務員制度改革の重要性についてお話ししたいと思います。
別紙の二でお示ししておりますが、これはお配りしている資料の三枚目ですが、ここでは、政策の製造過程である官僚機構に問題があると、そこからでき上がってくる政策にもゆがみが生じるということを示しています。
例えば、よく言われます縦割り、セクショナリズムという問題は、役所の各部署がそれぞれ所管をしている特定利益が優先されるということにつながります。それから、よく言われます年功序列、あるいは裏からいえば能力・実績主義の不徹底という問題は、事なかれ主義であるとか人材の死蔵、組織優先の意識といったことをもたらし、これらがいずれも政策のゆがみにつながっていくわけであります。それで、このゆがみの代表例が岩盤規制ということであります。
公務員制度改革は、一般には成長戦略とは無関係と捉えられがちであります。しかし、こうして見ると、公務員制度改革は、政策のゆがみの構造を取り除くための改革であって、実は成長戦略の重要な柱と考えられるわけであります。
安倍内閣の発足以降、二〇〇八年に制定された国家公務員制度改革基本法以来の懸案であった内閣人事局が創設され、昨年から稼働を始めました。長い間停滞した公務員制度改革がようやく前進しているということは評価してよいと思います。一方で、制度改革が本当に成果をもたらすのかどうかは運用次第であります。
かつて橋本龍太郎内閣のもとで推進された橋本行革は、中央省庁再編と並んで内閣機能の強化が重要な柱とされていました。内閣府の設置、経済財政諮問会議の創設、民間人の登用のための制度の新設など、さまざまな制度改革がなされました。
しかし、この制度改革が本当の真価を発揮したのは、その後、小泉内閣で制度がフル活用され、首相主導の枠組みが運用上確立していったときだったと考えられます。
その意味で、内閣人事局、大臣補佐官制度といった新たに導入された仕組みについて、その真価を発揮できるのかどうか、運用が問われている段階だと考えます。
現状で心配な点もあります。
例えば、能力・実績主義の徹底のために二〇〇七年の国家公務員法改正で導入された新たな人事評価制度の運用状況です。
新たな人事評価制度では、一般職員の場合、SからDまでの五段階評価がなされます。Sが最上位、Bが標準、Dが最下位であります。
現実になされている評価を見ますと、これは総務省で二〇一四年に出されている報告書から引用しておりますが、五段階のうち、上から二番目のAが五〇%を超え、一方で、Cつまり「通常より物足りない」という評価は〇・五%、Dつまり「はるかに及ばない」という評価は〇・一%ということであります。これはどう考えられるでしょうか。
私は、今の会社をつくる前に二十年以上官庁に勤め、その後の仕事の中でも役所の人たちと仕事をする機会を多く持っておりますが、国家公務員三十万人のうち、物足りないに相当する方が千人に五、六人しかいないというのは、私の実感とはかなり異なります。
また、幹部職員については、これはAからCの三段階評価になっています。実際の評価を見ると、上位のAが八割、Cは〇・〇%ということであります。
もちろん、幹部に上り詰めた方々ですから全般にレベルが高いことは、そのとおりだと思います。しかし、そうはいっても、一旦幹部に登用されたが職責を十分果たせていませんという人が皆無であるというのは、これまた私の実感とは異なります。また、求められる水準を上回る業績、Aということですが、こういう方が八割もいるとしたら、政府はもっとすばらしく機能しているのではないかと思います。
要するに、現状の人事評価の実態は、だめな人にだめだということをせずに、余り差をつけないようにしているということだと思います。せっかく新しい人事評価制度を導入しても、これでは効果が十分にはあらわれません。
役所組織の大きな問題の一つは、頑張っても頑張らなくても余り差がつかず、同じように昇進し、同じように給与が上がっていくということであります。こうした組織では、どうしても頑張らない人の比率がふえてしまいがちです。組織内に頑張らない人がふえれば、政府が十分に機能を果たせない、発揮できない、それだけでなく、公務員人件費の無駄が生まれるわけであります。
こうした人事運用は、国に限ったことではありません。地方自治体でも同様の問題があります。能力・実績主義の不徹底によって、日本全国で莫大な公務員人件費の無駄がもたらされているということであります。
この関連で、私もかかわりました大阪府、大阪市での取り組み例にも触れておきたいと思います。
大阪府、大阪市では、二〇一二年に職員基本条例を制定し、能力・実績主義の徹底、人事評価に相対評価の導入ということを定めています。大阪府、大阪市の場合も、やはり形式上は五段階評価がなされていましたが、かつては、C評価、D評価は、先ほどと同様、千人に数人、一万人に数人といったレベルでありました。これを解消するために、条例で、Sは五%、Aは二〇%、Bは六〇%、Cは一〇%、Dは五%という枠を定め、既に運用がなされています。
人事評価について、絶対評価がいいのか相対評価がいいのか、本来どちらが適切なのかという問題は議論の分かれる点であります。しかし、少なくとも、低い評価をつけないことが常態化してしまっている現状を変えるためには、国でもこうした手だてが検討されてよいのではないかと考えます。
こうした課題を含めて、創設された内閣人事局を核として、これまでの公務員制度改革の成果が最大限に発揮されるように、運用面での改革推進が期待されます。
第三に、地方分権改革について触れたいと思います。
規制改革の議論は、具体論のレベルでは、しばしば地方分権と表裏一体です。というのは、地域での固有の事情、独自の創意工夫が、国が全国一律で定めている法律によって阻まれるということがしばしば問題を引き起こしているからです。この意味で、地方分権改革も成長戦略の重要な柱の一つと考えられるわけであります。
規制改革や公務員制度改革と同様に、地方分権改革も長年にわたって取り組みがなされ、第一次分権改革、第二次分権改革を経て、権限移譲、義務づけ、枠づけの見直しなどが進められてきました。しかし、例えば、出先機関改革などでは課題がまだ多く残されていますし、その先の道州制に向けて道はまだ遠い状況と考えられます。
これまでの分権改革でどうしても限界があったのは、地方自治体側の行政機能の限界、つまり、本当に委ねて大丈夫なのかという問題にしばしば突き当たったためではないかと考えられます。
今後、分権改革をさらに進めていくということのためには、地方自治体の行政機能を高めることが必須だと考えます。そして、横並び、一律方式で分権を進めていくということではなく、行政機能を高めるための取り組みを突出して進めた自治体には、突出して権限や財源を移譲するといった進め方に切りかえていくことも必要と考えます。
中央官庁から県庁、市役所への分権だけでなく、ルール設定の分権、つまり、国会から地方議会への分権も重要です。このためには、地方議会の機能強化も重要と考えます。
昨年二〇一四年は、地方議員の質を問われる問題というのが続出しましたが、地方議員の質の向上は、分権を進める観点でも避けて通ることのできない課題と考えます。
こうした観点で、従来から地方制度調査会などでもなされている議論として、地方議会は土日、夜間開催にして、普通の仕事をしている人がそのまま議員になれるようにしたらよいのではないかというものがあります。
欧米諸国の場合、特に基礎自治体の議会の場合、土日、夜間に開催し、普通の仕事をしている人が普通に議員も務めるということが広く見られます。そのかわり、報酬は、無報酬あるいは年間数十万円の実費程度ということであります。
一方、日本の場合、地方議員への支出額は、報酬のほか、期末手当、政務活動費、費用弁償を合算して試算すると、年間総計二千七百億円程度という金額であります。これは諸外国と比べるとかなり突出した支出額であります。それでも、日本の地方議会がその分だけ突出してよく機能しているということならばまだよいのですが、決してそうは言えないと思います。
これは朝日新聞の二〇一一年の調査結果ですが、例えば、首長の提出した議案を全く修正、否決したことのない丸のみ議会が五〇%、議員提案の政策条例が一本もない無提案議会が九一%といった状況とされています。
むしろ、日本の場合は、地方議員に相当額の支出をしているがゆえに、市町村議会でも、議員になるといったら、会社はやめて、全てをなげうって立候補するということが一般的であります。その結果、議員になろうとする人材の幅を狭めてしまい、かえって議会の機能を弱めているという面もあるのではないかと考えられます。
地方制度調査会では、今から十年前の二〇〇五年でありますが、住民を代表する議会の議員に幅広い人材を確保できるように、女性や勤労者が議員として活動する上での便宜に資するよう、休日、夜間などに議会を開催するといった運用上の工夫をすべきである、また制度面では、勤労者が議員に立候補でき、また議員として活動することができるような環境の整備、さらには地方公共団体の議会の議員と当該団体以外の地方公共団体の職員との兼職を可能にする、こういったことも検討すべき課題であるという答申がなされています。
しかし、これも岩盤の一つと言うべきか、その後、普通の人がそのまま議員になれるようにするといった改革は全く進んでいません。地方議員の質を高めて地方議会の機能を強化していくというためには、こうした改革も前進させる必要があるのではないかと考えます。
最後に、四点目でございますが、改革推進体制全般についてお話ししたいと思います。
かつての一九六〇年代の第一次臨調、それから八〇年代の第二次臨調から橋本行革のころまでは、行政改革というのは今よりも幅の広い概念でありました。当時は財政再建、行政機構改革、特殊法人改革、公務員制度改革、規制改革、地方分権改革といった課題に包括的に取り組みがなされていました。
九〇年代半ばごろから、規制改革、分権改革など、それぞれの課題への本格的な取り組みが進む中で、それぞれ専門の担当部局が独立して強化されていきました。これは決して悪いことではありません。しかし、反面では、改革の細分化という面もあったと思います。
それでも、例えば二〇〇〇年代の前半には、初期の経済財政諮問会議がさまざまな改革全般のエンジンとして機能し、ここが統合の役割を果たしていたといったこともありました。
現時点で見ますと、この行政改革の抱える大きな問題の一つは、改革が細分化されていて、これを束ねて統合的に推進する機能が欠落しているということではないかと考えられます。行政改革、規制改革、地方創生、国家戦略特区、産業競争力強化、こういったそれぞれの課題についてそれぞれ会議体が設けられ、事務局が置かれていますが、一方で、これらを束ねる機能というのは不十分であります。これは、時に改革勢力の分断をもたらします。
私が実際に国家戦略特区のワーキンググループなどで関係省庁との協議をしている中でも、関係省庁側から、それは地方分権の方で対応していますとか、あるいは、それは規制改革会議で議論をしていますといった反応がなされることがしばしばあります。規制改革、地方分権改革、国家戦略特区といった取り組みは、本来密接に関連する一体の課題であるにもかかわらず、改革担当部局の側がばらばらになって連携不足になっていることは、改革にとって決して有利に働きません。事務局間の連携強化、会議体の合同開催といったことは一部なされつつありますが、そうはいっても、役所の縦割り組織での水平的連携にはやはり限界もあります。
今後、限られた期間の中で大改革を推進していくということに向けては、やはり、かつてあったような改革全般を統合的に束ねる体制をつくることで改革推進をさらに加速し、深めるということが必要ではないかと考えます。
以上、今後の予算審議で多少なりとも御参考になれば幸いです。
御清聴大変ありがとうございました。(拍手)