予算委員会公聴会
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会
会議録情報#0
平成二十七年三月九日(月曜日)
午前九時二十分開議
出席委員
委員長 大島 理森君
理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君
理事 原田 義昭君 理事 平口 洋君
理事 平沢 勝栄君 理事 森山 裕君
理事 山井 和則君 理事 今井 雅人君
理事 上田 勇君
秋元 司君 石原 宏高君
岩屋 毅君 衛藤征士郎君
小倉 將信君 小田原 潔君
大岡 敏孝君 金子 一義君
金子めぐみ君 熊田 裕通君
小池百合子君 小林 鷹之君
今野 智博君 笹川 博義君
鈴木 俊一君 田所 嘉徳君
武部 新君 長坂 康正君
根本 匠君 野田 毅君
古屋 圭司君 星野 剛士君
宮崎 謙介君 保岡 興治君
山下 貴司君 山本 幸三君
山本 有二君 若狭 勝君
小川 淳也君 金子 恵美君
岸本 周平君 後藤 祐一君
郡 和子君 階 猛君
田嶋 要君 玉木雄一郎君
馬淵 澄夫君 山尾志桜里君
井坂 信彦君 重徳 和彦君
松木けんこう君 松浪 健太君
岡本 三成君 中野 洋昌君
樋口 尚也君 赤嶺 政賢君
池内さおり君 大平 喜信君
島津 幸広君 高橋千鶴子君
…………………………………
公述人
(株式会社大和総研主席研究員) 鈴木 準君
公述人
(日本大学国際関係学部教授) 水野 和夫君
公述人
(公益財団法人東京都医学総合研究所心の健康プロジェクト主席研究員) 西田 淳志君
公述人
(株式会社政策工房代表取締役社長) 原 英史君
公述人
(一橋大学国際・公共政策大学院教授) 佐藤 主光君
公述人
(日本労働組合総連合会副事務局長) 高橋 睦子君
公述人
(白梅学園大学子ども学部教授) 無藤 隆君
公述人
(全国労働組合総連合議長) 小田川義和君
予算委員会専門員 石崎 貴俊君
—————————————
委員の異動
三月九日
辞任 補欠選任
金子めぐみ君 大岡 敏孝君
小池百合子君 笹川 博義君
土井 亨君 今野 智博君
辻元 清美君 郡 和子君
前原 誠司君 田嶋 要君
赤嶺 政賢君 池内さおり君
高橋千鶴子君 島津 幸広君
同日
辞任 補欠選任
大岡 敏孝君 金子めぐみ君
今野 智博君 若狭 勝君
笹川 博義君 武部 新君
郡 和子君 金子 恵美君
田嶋 要君 玉木雄一郎君
池内さおり君 大平 喜信君
島津 幸広君 高橋千鶴子君
同日
辞任 補欠選任
武部 新君 小池百合子君
若狭 勝君 土井 亨君
金子 恵美君 辻元 清美君
玉木雄一郎君 山尾志桜里君
大平 喜信君 赤嶺 政賢君
同日
辞任 補欠選任
山尾志桜里君 前原 誠司君
—————————————
本日の公聴会で意見を聞いた案件
平成二十七年度一般会計予算
平成二十七年度特別会計予算
平成二十七年度政府関係機関予算
————◇—————
この発言だけを見る →午前九時二十分開議
出席委員
委員長 大島 理森君
理事 金田 勝年君 理事 萩生田光一君
理事 原田 義昭君 理事 平口 洋君
理事 平沢 勝栄君 理事 森山 裕君
理事 山井 和則君 理事 今井 雅人君
理事 上田 勇君
秋元 司君 石原 宏高君
岩屋 毅君 衛藤征士郎君
小倉 將信君 小田原 潔君
大岡 敏孝君 金子 一義君
金子めぐみ君 熊田 裕通君
小池百合子君 小林 鷹之君
今野 智博君 笹川 博義君
鈴木 俊一君 田所 嘉徳君
武部 新君 長坂 康正君
根本 匠君 野田 毅君
古屋 圭司君 星野 剛士君
宮崎 謙介君 保岡 興治君
山下 貴司君 山本 幸三君
山本 有二君 若狭 勝君
小川 淳也君 金子 恵美君
岸本 周平君 後藤 祐一君
郡 和子君 階 猛君
田嶋 要君 玉木雄一郎君
馬淵 澄夫君 山尾志桜里君
井坂 信彦君 重徳 和彦君
松木けんこう君 松浪 健太君
岡本 三成君 中野 洋昌君
樋口 尚也君 赤嶺 政賢君
池内さおり君 大平 喜信君
島津 幸広君 高橋千鶴子君
…………………………………
公述人
(株式会社大和総研主席研究員) 鈴木 準君
公述人
(日本大学国際関係学部教授) 水野 和夫君
公述人
(公益財団法人東京都医学総合研究所心の健康プロジェクト主席研究員) 西田 淳志君
公述人
(株式会社政策工房代表取締役社長) 原 英史君
公述人
(一橋大学国際・公共政策大学院教授) 佐藤 主光君
公述人
(日本労働組合総連合会副事務局長) 高橋 睦子君
公述人
(白梅学園大学子ども学部教授) 無藤 隆君
公述人
(全国労働組合総連合議長) 小田川義和君
予算委員会専門員 石崎 貴俊君
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委員の異動
三月九日
辞任 補欠選任
金子めぐみ君 大岡 敏孝君
小池百合子君 笹川 博義君
土井 亨君 今野 智博君
辻元 清美君 郡 和子君
前原 誠司君 田嶋 要君
赤嶺 政賢君 池内さおり君
高橋千鶴子君 島津 幸広君
同日
辞任 補欠選任
大岡 敏孝君 金子めぐみ君
今野 智博君 若狭 勝君
笹川 博義君 武部 新君
郡 和子君 金子 恵美君
田嶋 要君 玉木雄一郎君
池内さおり君 大平 喜信君
島津 幸広君 高橋千鶴子君
同日
辞任 補欠選任
武部 新君 小池百合子君
若狭 勝君 土井 亨君
金子 恵美君 辻元 清美君
玉木雄一郎君 山尾志桜里君
大平 喜信君 赤嶺 政賢君
同日
辞任 補欠選任
山尾志桜里君 前原 誠司君
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本日の公聴会で意見を聞いた案件
平成二十七年度一般会計予算
平成二十七年度特別会計予算
平成二十七年度政府関係機関予算
————◇—————
大
大島理森#1
○大島委員長 これより会議を開きます。
平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
この際、公述人各位に一言御挨拶申し上げます。
公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十七年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
御意見を賜る順序といたしましては、まず鈴木準公述人、次に水野和夫公述人、次に西田淳志公述人、次に原英史公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、鈴木公述人にお願いいたします。
この発言だけを見る →平成二十七年度一般会計予算、平成二十七年度特別会計予算、平成二十七年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
この際、公述人各位に一言御挨拶申し上げます。
公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十七年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
御意見を賜る順序といたしましては、まず鈴木準公述人、次に水野和夫公述人、次に西田淳志公述人、次に原英史公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
それでは、鈴木公述人にお願いいたします。
鈴
鈴木準#2
○鈴木公述人 おはようございます。大和総研で経済政策の調査をしております鈴木準と申します。
本日は、お招きをいただきまして大変光栄でございます。御審議の御参考としていただきたく、平成二十七年度予算案につきまして賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
早速でございますが、お手元の資料を少し使わせていただきます。
私の資料の一ページ目でございます。
日本経済は、大きな流れといたしまして、リーマン・ショックの後の世界同時不況、それから東日本大震災を経まして、二〇一三年以降かなりの明るさを取り戻していると思います。海外経済の要因などもございますけれども、成長志向、パイをふやすという現在の経済政策の基本スタンスは、もちろん課題もありますけれども、基本的に正しいものであると考えております。
一三年以降の景気回復は、マインドで消費がよくなる、あるいは公共投資でよくなるということでございましたけれども、ここに来て、ラグを伴って輸出なども動きを見せてきている。ここには、海外から観光客がたくさん来ているとか、そういったことも含まれます。
今後は、計画ベースでいい数字が出ておりますが、企業の設備投資が実際に動きを強めていくかどうか、ここに非常に注目しております。経済の好循環の強化ということでは、ここがポイントであろうと思います。
消費税増税の前後では、当然、景気は一時的に攪乱をしているわけでございますけれども、それを考慮するとしましても、昨年の夏以降、秋ごろからは回復の基調をたどっているというふうに判断をしております。
以上のことが税収増なんかに反映された予算かと存じます。
もちろん、課題は多うございまして、二ページ目にお進みいただきたいと思います。
バランスシート調整というのが長期に進んでまいりまして、それも一応収束して、それから、これは九〇年代以降の課題でございますけれども、内外価格差の是正もかなり進んできた。現在、非常にデフレ脱却の好機であるというふうに思います。
ただ、その水準が一%か二%かというのは非常に難しいですけれども、少なくとも、安定的な物価上昇を十分に見通せている状況ではない、道半ばということであります。
円安あるいはエネルギー価格、こういったことでインフレ期待を形成するのはなかなか持続性に欠けるというふうに私は思いますので、もちろん金融政策は重要ですけれども、実体経済面での取り組みがますます重要になってきていると考えております。一言で言いますと、供給力の強化ということであります。
供給力の強化と私が申し上げますのは、それで需給ギャップが拡大してむしろ物価が下がるとかいう話ではなくて、消費者が欲しがるような物やサービス、消費者が必要な物やサービスが絶え間なく市場に提供されて、きちんと需要が伴ったダイナミズムを取り戻す、こういう意味でございます。あるいは、輸出企業でいえば、円高になったときに価格を下げなくても売れるような、代替性のない、代替のきかない、日本のブランド力、こういったものをつけていくという意味で供給力の強化ということが必要だと思います。
同じことを、三ページもあわせてごらんいただきたいと思います。
結局、供給力の強化というのは、生産性を引き上げる、あるいは労働者の実質賃金を上げるということであります。成長戦略といいますのは、最終的には生産性、実質賃金あるいは生活水準を上げていくということが目的ですので、まさにそれを目的として、実質賃金と名目賃金を上げて、その結果として安定的な物価上昇が実現する、こういう道筋が求められているというふうに考えます。実体経済面から見ますれば、デフレの背景にある賃金低迷を克服することがポイントだということでございます。
生産性を引き上げるという意味でも、先ほど申し上げた設備投資にやはり注目しております。
設備投資というのは、何も伝統的な物づくりの工場をつくるということだけではなくて、IT投資ですとか研究開発投資、あるいは人材育成投資、今、製造業というのは別に物だけをつくっているわけではなくて、サービスと組み合わせてさまざまなビジネスを展開しているというのは、先生方御案内のとおりでございます。
その観点からは、法人税減税の実施、あるいは、例えば財政投融資なんかで、産業投資を使って民間投資の呼び水をやるといったようなことが盛り込まれた今回の予算というのは、今申し上げた考え方に一定程度即したものであろうというふうに見ております。
四ページにお進みいただきたいと思います。
資金の過不足でもって設備投資が十分に立ち上がっていないということを見ますと、企業部門が九〇年代半ば以降、いわゆる資金余剰の状況が続いております。これは、企業が借金の返済を行う、あるいは金融資産を積み増しているということでございます。後半で財政再建について申し上げたいと思いますけれども、政府の大幅な資金不足と民間の大幅な資金余剰というバランスにあるということであります。誰かの貯金は誰かの借金でございますので、これはどちらか一方だけを修正するというわけにはいかない。
景気回復と財政再建の二兎を追ってはならないという意見もございますけれども、私は、これは本来、二兎を追わないとどちらも解決できない問題だろうというふうに思っております。今回の予算案というのは、経済再生と財政再建の両立ということが一つの特徴でございますので、これは正しい捉え方であろうということであります。
さて、ここで重要なことは、マクロバランス上はこうなんですけれども、では、仮に民間の設備投資が立ち上がって企業の資金余剰が縮小したときに自動的に財政が再建されるかというと、決してそういうことではございません。このバランスというのは、それぞれの経済主体が行動した結果こういうことになっているということでございますので、政府は政府として財政再建をやっていただく必要があるということであろうと思います。
五ページにお進みいただきたいと思います。地方創生について、若干分析を提示させていただきました。
左図の横軸に示しましたように、都市部では今後高齢者数の絶対数が大きくふえますので、それに対応したインフラ整備が必要だというのはそのとおりなのでございます。ただ、高齢者人口が今後ふえるというのは、結局、今生活しやすい地域だからそうだということでありまして、雇用機会があって、賃金がある程度高くて、生活が便利だ、そういう地域にはこれからも若者や働き盛りの人たちというのは入ってまいりますので、縦軸の高齢化率は、むしろそういう地域は低くなるということになります。
つまり、若い人が高齢者を支えるとよくいいますが、そういった視点で考えますと、都市部は何とかなる、しかし地方部こそますます厳しいと予想されるということであります。
他方で、私は、だからといって地方が総悲観になる必要は全くないと思っております。
どういうことかといいますと、通常、地域別の将来推計人口というのは、基本的には、賃金ですとか地価ですとか、そういう価格を説明変数に入れずに予想しております。ですので、これは将来予測ではなくて現在の状況を示しているということでございます。現在の出生動向あるいは人口移動の状況を延長したり若干仮定を変えたりして未来にプロジェクション、投影している、こういうものでございますので、これは、今うまくいっているかいっていないかを示しているということであります。予測ではないということですね。
ですので、まさに地域の創意工夫が将来を決めるということでありまして、予算案で地方創生に関して重視されているということは、一定の評価ができると思います。
ただ、付言させていただきますと、今まで予算がなかったから地方創生ができなかったのかというと、当然そうではないと思いますので、体系的な地方分権政策が重要だと思いますし、少なくとも、従来の国土の均衡ある発展型の政策を国が主導して展開するということではなくて、やはり地域ごとの特徴、差異を認めていく、こういった方向が必要であろうかと考えております。
六ページから、財政再建について数点申し上げたいと思います。
ごらんいただきますように、二〇〇九年度以降の財政規模は、デフレ下の中にもかかわらず、膨張した状況が続いているように見えます。
一五年度予算案を拝見しますと、PB赤字GDP比の一〇年度比半減という目標を含めて財政健全化目標は堅持されているということでありますけれども、長期的に見ますと、財政の持続可能性が確保されたというふうにはなかなか言いにくい状況になっていると思います。
これまで、デフレで民間投資が低迷している中では、政府の利払いは、残高の巨額さと対比しますと極めて小さかったですし、むしろ、借金を累増させながらも利払いが減ってきたなんということもございました。
ところが、右の図にごらんいただきますように、さすがに借金の規模の方の圧力が大きくなってきて、いよいよ利払いがふえる構造に転換している。それだけしっかりした財政改革と財政運営が求められる局面を迎えているというふうに思います。これは、デフレ脱却あるいは民間投資の喚起という政策が成功すればするほど重要になるといいますか、それを成功させるためにも財政改革が重要になっているということだと思います。
七ページ、財政の金利負担ということで、さらにごらんいただきますと、二月の十二日に内閣府が経済財政諮問会議に提出された中長期の経済財政に関する試算を拝見しますと、経済再生ケースでは、長期金利が上昇していくわけですね。ただ、政府の利払い負担は、過去に発行された国債の満期ですとか発行時の金利にかなり規定されておりますので、実際の負担という点で見た、ここでは負債の利回りと書いているものがそうでございますけれども、これはかなりタイムラグを伴って、後から上がってきます。
当面、二〇二〇年前後までを見ますと、負債利回りが成長率をかなり下回っておりますので、公債等残高GDP比が低下をする。しかし、だからいいということではなくて、二〇二〇年代、その先を展望すれば、今後、二〇二〇年ごろまでが最後の猶予期間ということも言えるのではないか。
右のベースラインケースでごらんいただくと、デフレ脱却を前提とすれば、当然、金利、負債利回りは一定の上昇を見せますので、金利が成長率を上回るタイミングは前倒しされるということであります。
気づけば、日本の財政状況というのはG7諸国あるいは南欧諸国と比べても悪い状況になっておりますので、PBはもちろん重要でございますが、さらに金利負担も注視しなければいけない状況になっているかと思います。
八ページで、では残された時間はどれぐらいあるのかという点で、二点ほど申し上げたいと思います。
日本では超のつく高齢化が進むという意味では、団塊世代あるいは第二次ベビーブーム世代の方々の加齢を見通しますと、二〇二〇年代後半から三〇年代を乗り越えられる構造を早期につくることがやはり重要だと思います。
それから、市場の観点から見ますと、二〇二〇年代の後半には政府債務が時価ベースの家計金融資産を上回る可能性が出てくるということであります。
私は、日本の経常赤字化というのは二〇三〇年代かなというふうに予想しておりますけれども、そういう意味では、外から、ネットで入ってきているということではないんですが、残高で見て誰が国債を保有しているのかと考えたときに、家計金融資産を上回っているわけですので、これは、事業会社が生産設備を持たずに国債を持つ、金融機関が民間の預金を受け入れて貸し出しをせずに国債を持つ、あるいは中央銀行が国債を持つ、こういう状況というのは、極めて憂慮すべき状況になるということでありますので、二〇二〇年のPB黒字化目標というのは極めて重要だと思います。
九ページ、十ページというところは、経済と財政の関係について整理をしたものでございます。
結論だけ、ポイントを申し上げますと、九ページの方は、歳出を賄っている税収の割合の現状に照らしまして、その収支を改善させるに十分なほど税収弾性値が高いかというと、そうは考えがたいということであります。税収弾性値というのは、どちらかというと、いろいろな理由で低下していく方向にあるということが第一点。
第二点として、収支を左右しておりますのは、弾性値で説明がつかない、高齢化等による要因、自然増だということであります。
したがいまして、成長期待ではなくて、歳出と歳入について制度的な改革を財政民主主義の観点から政治プロセスを通じて実現する必要があるだろうということであります。
十ページの方は、デフレを脱却すれば税収増は期待できるわけですが、当然これは、政府調達コストとか、公務員賃金とか、マクロ経済スライドを除く社会保障の部分ですとか、こういったところで歳出もふえますので、物価上昇でもって財政収支改善というのは期待がなかなかできない。
ただ、過去のデータを分析しますと、実質成長の場合には成長率ほどは歳出がふえないということでございますので、その場合には収支改善の条件を満たす。実質成長というのは、まさに先ほど申し上げた生産性の向上ということでありますので、ここが重要であろうかと思います。
十一ページが、私どもの長期の試算でございます。
昨年十一月に、経済財政諮問会議の「選択する未来」委員会というところから、四つのマクロシナリオが提示されました。生産性が停滞するケースと上がるケース、人口が減少するケースと一億人程度で安定するケース、四つのケースがあるわけです。当然、生産性を上昇させて人口を安定化させるというのが選択すべき未来だと思いますけれども、私どもでそれぞれのシナリオに応じて財政がどうなるかを試算してみますと、現状のままいけば、いずれのケースでもPBは黒字化しないということであります。
その大きな理由が社会保障でありまして、十二ページでございます。
お示ししておりますように、今後は、医療給付、介護給付がかなりふえて、それに伴って公費負担もふえていくということであります。年金は、マクロ経済スライドという長期の財政制約を満たすような仕組みが一応入っているわけでございますけれども、医療や介護につきましては、需要を長期的にどうコントロールするのか、その購入費用をどういうふうに負担し合うかということについて、賃金、物価の将来予測に照らして従来のメカニズムで予測するとこういう形になるということでございます。
十三ページが、これまでの中央、地方政府、すなわち税負担、公費部分の財政収支の状況を見たものでございます。横軸に示した期間の間に収支のGDP比がどれだけ変化し、その内訳がどうだったかを見たものでございます。
八〇年代の中曽根内閣、二〇〇〇年代の小泉内閣では、その他の歳出、ここでは「行革等の効果」と書かせていただいておりまして、その効果も小さくないわけですが、やはり社会保障への公費負担が非常に大きい、徐々に大きくなっているということでございます。例えば、二〇〇七年から一三年という一番右側のところでごらんいただきますと、悪化分のうちの二%ポイントぐらいは社会保障への公費負担ということでございます。
かつては、建設国債等公共投資で財政赤字という時代がございましたけれども、今は赤字国債、いわば経常的な、日々、毎日、毎週、毎月を赤字で操業している、そういう状況になっているということでございます。
十四ページでございます。
したがいまして、当然、給付の部分でいろいろな改革が必要だと思います。公的保険のカバレッジですとか給付の効率化、それから当然保険料も、負担していただける方にどういうふうに負担していただくか。あるいは公費負担についても、保険料負担と公費負担、どういうバランスをとっていくのか。皆保険、皆年金を守る必要があると思いますので、その辺のビジョンと制度設計の議論を深めるべき局面を迎えているかなと思っております。
十五ページが、私どもが二〇一三年に発表させていただきましたマクロモデルを使ったシナリオでございます。
右の上の表をごらんいただきますと、ベースシナリオというのが、これは政府が幾ら借金をしても破綻しない、しかしどこかで破綻するだろうということなんですが、計算上は破綻をしていませんので、十年ごとの成長率、一・五、一・五、一・〇と書いてございます。右上の表でございます。
これに対しまして、改革シナリオ、ここでは、支給開始年齢を引き上げるとか、医療の窓口負担、高齢者の皆様にも二割ぐらいの負担をお願いするとか、消費税については、二〇三〇年ごろには日本の消費税は二〇%、二〇三〇年代半ばには二五%ぐらいの、そういう負担増も行っていく改革シナリオ、この場合にどうかということであります。
私は、何か将来展望が明るくなれば経済にマイナスはないという言い方は非常に無責任だと思うんですね。給付削減をやる、あるいは負担増をやれば、当然経済は下押しをされると思います。問題は、どれぐらい下押しされるかということを数字で議論すべきじゃないかと。
ここで改革シナリオをごらんいただきますと、成長率が、ならしますと〇・二%ポイントぐらい下がります。これは三十年ですので、〇・二%ポイントというのは非常に大きなコストであります。それだけ生活水準の向上を我慢しなければいけないということであります。ただ、逆に言うと、それだけのコストを払えば制度の破綻は回避できる、こういうシミュレーションでございます。
ただ、それでも問題解決まではいかないということで、超改革シナリオというのがございます。
ここではさらに給付削減を若干するんですけれども、では、給付削減と負担増をさらにもっと強くやったら財政の問題は解決するかというと、やはり経済が悪くなるわけでございますね。ですから、この問題というのは、負担増と給付削減を限りなくやれば解ける問題かというと、そういうことではない。
ここで、超改革シナリオというのは、政府は直接給付する部分というのを少しスリム化していく、他方で、規制を見直したり、税制でインセンティブをつけていただいたり、あるいはマイナンバー制度なんか、使い勝手よくしていただいたりして、民間が政府の削減する分を補完するような、企業年金ですとか健康産業市場ですとかいった市場が別途立ち上がってくる、こういう想定を置きますと、この超改革シナリオということで問題解決ができる。これは、先ほど申し上げた二兎を追わなければいけないということのまさに一つの姿でございます。
最後に、結びとしまして、十六ページでございます。
これまで、財政構造改革法あるいは骨太二〇〇六ということで、日本は財政再建について何度もチャレンジしてまいりました。そこから私なりにレッスンということで申し上げると、第一に、やはり政府だけではなくて、国会あるいは政党の皆様にも十分にコミットしていただかないと達成できない非常に難しい問題であるということ。二つ目に、公費部分だけを操作してもなかなかうまくいかないので、やはり社会保障全体をデザインし直す必要があるということ。それから三番目に、租税負担率、国民負担率が決して高くない日本でございますので、諸外国並みのサービスを求めるということであれば、やはり負担のシェアを、これは民主主義のプロセスで決めていく必要がある。それから四番目に、これは先行き三十年、四十年、五十年をにらんだタイプの政策でございますから、足元の景気、一年あるいは半年あるいは数カ月の景気でもって議論が混乱してしまわないような、そういう工夫が何らか必要ではないかということではないかと思います。
非常に駆け足で恐縮でございます。以上で私の公述とさせていただきます。
御清聴大変ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →本日は、お招きをいただきまして大変光栄でございます。御審議の御参考としていただきたく、平成二十七年度予算案につきまして賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
早速でございますが、お手元の資料を少し使わせていただきます。
私の資料の一ページ目でございます。
日本経済は、大きな流れといたしまして、リーマン・ショックの後の世界同時不況、それから東日本大震災を経まして、二〇一三年以降かなりの明るさを取り戻していると思います。海外経済の要因などもございますけれども、成長志向、パイをふやすという現在の経済政策の基本スタンスは、もちろん課題もありますけれども、基本的に正しいものであると考えております。
一三年以降の景気回復は、マインドで消費がよくなる、あるいは公共投資でよくなるということでございましたけれども、ここに来て、ラグを伴って輸出なども動きを見せてきている。ここには、海外から観光客がたくさん来ているとか、そういったことも含まれます。
今後は、計画ベースでいい数字が出ておりますが、企業の設備投資が実際に動きを強めていくかどうか、ここに非常に注目しております。経済の好循環の強化ということでは、ここがポイントであろうと思います。
消費税増税の前後では、当然、景気は一時的に攪乱をしているわけでございますけれども、それを考慮するとしましても、昨年の夏以降、秋ごろからは回復の基調をたどっているというふうに判断をしております。
以上のことが税収増なんかに反映された予算かと存じます。
もちろん、課題は多うございまして、二ページ目にお進みいただきたいと思います。
バランスシート調整というのが長期に進んでまいりまして、それも一応収束して、それから、これは九〇年代以降の課題でございますけれども、内外価格差の是正もかなり進んできた。現在、非常にデフレ脱却の好機であるというふうに思います。
ただ、その水準が一%か二%かというのは非常に難しいですけれども、少なくとも、安定的な物価上昇を十分に見通せている状況ではない、道半ばということであります。
円安あるいはエネルギー価格、こういったことでインフレ期待を形成するのはなかなか持続性に欠けるというふうに私は思いますので、もちろん金融政策は重要ですけれども、実体経済面での取り組みがますます重要になってきていると考えております。一言で言いますと、供給力の強化ということであります。
供給力の強化と私が申し上げますのは、それで需給ギャップが拡大してむしろ物価が下がるとかいう話ではなくて、消費者が欲しがるような物やサービス、消費者が必要な物やサービスが絶え間なく市場に提供されて、きちんと需要が伴ったダイナミズムを取り戻す、こういう意味でございます。あるいは、輸出企業でいえば、円高になったときに価格を下げなくても売れるような、代替性のない、代替のきかない、日本のブランド力、こういったものをつけていくという意味で供給力の強化ということが必要だと思います。
同じことを、三ページもあわせてごらんいただきたいと思います。
結局、供給力の強化というのは、生産性を引き上げる、あるいは労働者の実質賃金を上げるということであります。成長戦略といいますのは、最終的には生産性、実質賃金あるいは生活水準を上げていくということが目的ですので、まさにそれを目的として、実質賃金と名目賃金を上げて、その結果として安定的な物価上昇が実現する、こういう道筋が求められているというふうに考えます。実体経済面から見ますれば、デフレの背景にある賃金低迷を克服することがポイントだということでございます。
生産性を引き上げるという意味でも、先ほど申し上げた設備投資にやはり注目しております。
設備投資というのは、何も伝統的な物づくりの工場をつくるということだけではなくて、IT投資ですとか研究開発投資、あるいは人材育成投資、今、製造業というのは別に物だけをつくっているわけではなくて、サービスと組み合わせてさまざまなビジネスを展開しているというのは、先生方御案内のとおりでございます。
その観点からは、法人税減税の実施、あるいは、例えば財政投融資なんかで、産業投資を使って民間投資の呼び水をやるといったようなことが盛り込まれた今回の予算というのは、今申し上げた考え方に一定程度即したものであろうというふうに見ております。
四ページにお進みいただきたいと思います。
資金の過不足でもって設備投資が十分に立ち上がっていないということを見ますと、企業部門が九〇年代半ば以降、いわゆる資金余剰の状況が続いております。これは、企業が借金の返済を行う、あるいは金融資産を積み増しているということでございます。後半で財政再建について申し上げたいと思いますけれども、政府の大幅な資金不足と民間の大幅な資金余剰というバランスにあるということであります。誰かの貯金は誰かの借金でございますので、これはどちらか一方だけを修正するというわけにはいかない。
景気回復と財政再建の二兎を追ってはならないという意見もございますけれども、私は、これは本来、二兎を追わないとどちらも解決できない問題だろうというふうに思っております。今回の予算案というのは、経済再生と財政再建の両立ということが一つの特徴でございますので、これは正しい捉え方であろうということであります。
さて、ここで重要なことは、マクロバランス上はこうなんですけれども、では、仮に民間の設備投資が立ち上がって企業の資金余剰が縮小したときに自動的に財政が再建されるかというと、決してそういうことではございません。このバランスというのは、それぞれの経済主体が行動した結果こういうことになっているということでございますので、政府は政府として財政再建をやっていただく必要があるということであろうと思います。
五ページにお進みいただきたいと思います。地方創生について、若干分析を提示させていただきました。
左図の横軸に示しましたように、都市部では今後高齢者数の絶対数が大きくふえますので、それに対応したインフラ整備が必要だというのはそのとおりなのでございます。ただ、高齢者人口が今後ふえるというのは、結局、今生活しやすい地域だからそうだということでありまして、雇用機会があって、賃金がある程度高くて、生活が便利だ、そういう地域にはこれからも若者や働き盛りの人たちというのは入ってまいりますので、縦軸の高齢化率は、むしろそういう地域は低くなるということになります。
つまり、若い人が高齢者を支えるとよくいいますが、そういった視点で考えますと、都市部は何とかなる、しかし地方部こそますます厳しいと予想されるということであります。
他方で、私は、だからといって地方が総悲観になる必要は全くないと思っております。
どういうことかといいますと、通常、地域別の将来推計人口というのは、基本的には、賃金ですとか地価ですとか、そういう価格を説明変数に入れずに予想しております。ですので、これは将来予測ではなくて現在の状況を示しているということでございます。現在の出生動向あるいは人口移動の状況を延長したり若干仮定を変えたりして未来にプロジェクション、投影している、こういうものでございますので、これは、今うまくいっているかいっていないかを示しているということであります。予測ではないということですね。
ですので、まさに地域の創意工夫が将来を決めるということでありまして、予算案で地方創生に関して重視されているということは、一定の評価ができると思います。
ただ、付言させていただきますと、今まで予算がなかったから地方創生ができなかったのかというと、当然そうではないと思いますので、体系的な地方分権政策が重要だと思いますし、少なくとも、従来の国土の均衡ある発展型の政策を国が主導して展開するということではなくて、やはり地域ごとの特徴、差異を認めていく、こういった方向が必要であろうかと考えております。
六ページから、財政再建について数点申し上げたいと思います。
ごらんいただきますように、二〇〇九年度以降の財政規模は、デフレ下の中にもかかわらず、膨張した状況が続いているように見えます。
一五年度予算案を拝見しますと、PB赤字GDP比の一〇年度比半減という目標を含めて財政健全化目標は堅持されているということでありますけれども、長期的に見ますと、財政の持続可能性が確保されたというふうにはなかなか言いにくい状況になっていると思います。
これまで、デフレで民間投資が低迷している中では、政府の利払いは、残高の巨額さと対比しますと極めて小さかったですし、むしろ、借金を累増させながらも利払いが減ってきたなんということもございました。
ところが、右の図にごらんいただきますように、さすがに借金の規模の方の圧力が大きくなってきて、いよいよ利払いがふえる構造に転換している。それだけしっかりした財政改革と財政運営が求められる局面を迎えているというふうに思います。これは、デフレ脱却あるいは民間投資の喚起という政策が成功すればするほど重要になるといいますか、それを成功させるためにも財政改革が重要になっているということだと思います。
七ページ、財政の金利負担ということで、さらにごらんいただきますと、二月の十二日に内閣府が経済財政諮問会議に提出された中長期の経済財政に関する試算を拝見しますと、経済再生ケースでは、長期金利が上昇していくわけですね。ただ、政府の利払い負担は、過去に発行された国債の満期ですとか発行時の金利にかなり規定されておりますので、実際の負担という点で見た、ここでは負債の利回りと書いているものがそうでございますけれども、これはかなりタイムラグを伴って、後から上がってきます。
当面、二〇二〇年前後までを見ますと、負債利回りが成長率をかなり下回っておりますので、公債等残高GDP比が低下をする。しかし、だからいいということではなくて、二〇二〇年代、その先を展望すれば、今後、二〇二〇年ごろまでが最後の猶予期間ということも言えるのではないか。
右のベースラインケースでごらんいただくと、デフレ脱却を前提とすれば、当然、金利、負債利回りは一定の上昇を見せますので、金利が成長率を上回るタイミングは前倒しされるということであります。
気づけば、日本の財政状況というのはG7諸国あるいは南欧諸国と比べても悪い状況になっておりますので、PBはもちろん重要でございますが、さらに金利負担も注視しなければいけない状況になっているかと思います。
八ページで、では残された時間はどれぐらいあるのかという点で、二点ほど申し上げたいと思います。
日本では超のつく高齢化が進むという意味では、団塊世代あるいは第二次ベビーブーム世代の方々の加齢を見通しますと、二〇二〇年代後半から三〇年代を乗り越えられる構造を早期につくることがやはり重要だと思います。
それから、市場の観点から見ますと、二〇二〇年代の後半には政府債務が時価ベースの家計金融資産を上回る可能性が出てくるということであります。
私は、日本の経常赤字化というのは二〇三〇年代かなというふうに予想しておりますけれども、そういう意味では、外から、ネットで入ってきているということではないんですが、残高で見て誰が国債を保有しているのかと考えたときに、家計金融資産を上回っているわけですので、これは、事業会社が生産設備を持たずに国債を持つ、金融機関が民間の預金を受け入れて貸し出しをせずに国債を持つ、あるいは中央銀行が国債を持つ、こういう状況というのは、極めて憂慮すべき状況になるということでありますので、二〇二〇年のPB黒字化目標というのは極めて重要だと思います。
九ページ、十ページというところは、経済と財政の関係について整理をしたものでございます。
結論だけ、ポイントを申し上げますと、九ページの方は、歳出を賄っている税収の割合の現状に照らしまして、その収支を改善させるに十分なほど税収弾性値が高いかというと、そうは考えがたいということであります。税収弾性値というのは、どちらかというと、いろいろな理由で低下していく方向にあるということが第一点。
第二点として、収支を左右しておりますのは、弾性値で説明がつかない、高齢化等による要因、自然増だということであります。
したがいまして、成長期待ではなくて、歳出と歳入について制度的な改革を財政民主主義の観点から政治プロセスを通じて実現する必要があるだろうということであります。
十ページの方は、デフレを脱却すれば税収増は期待できるわけですが、当然これは、政府調達コストとか、公務員賃金とか、マクロ経済スライドを除く社会保障の部分ですとか、こういったところで歳出もふえますので、物価上昇でもって財政収支改善というのは期待がなかなかできない。
ただ、過去のデータを分析しますと、実質成長の場合には成長率ほどは歳出がふえないということでございますので、その場合には収支改善の条件を満たす。実質成長というのは、まさに先ほど申し上げた生産性の向上ということでありますので、ここが重要であろうかと思います。
十一ページが、私どもの長期の試算でございます。
昨年十一月に、経済財政諮問会議の「選択する未来」委員会というところから、四つのマクロシナリオが提示されました。生産性が停滞するケースと上がるケース、人口が減少するケースと一億人程度で安定するケース、四つのケースがあるわけです。当然、生産性を上昇させて人口を安定化させるというのが選択すべき未来だと思いますけれども、私どもでそれぞれのシナリオに応じて財政がどうなるかを試算してみますと、現状のままいけば、いずれのケースでもPBは黒字化しないということであります。
その大きな理由が社会保障でありまして、十二ページでございます。
お示ししておりますように、今後は、医療給付、介護給付がかなりふえて、それに伴って公費負担もふえていくということであります。年金は、マクロ経済スライドという長期の財政制約を満たすような仕組みが一応入っているわけでございますけれども、医療や介護につきましては、需要を長期的にどうコントロールするのか、その購入費用をどういうふうに負担し合うかということについて、賃金、物価の将来予測に照らして従来のメカニズムで予測するとこういう形になるということでございます。
十三ページが、これまでの中央、地方政府、すなわち税負担、公費部分の財政収支の状況を見たものでございます。横軸に示した期間の間に収支のGDP比がどれだけ変化し、その内訳がどうだったかを見たものでございます。
八〇年代の中曽根内閣、二〇〇〇年代の小泉内閣では、その他の歳出、ここでは「行革等の効果」と書かせていただいておりまして、その効果も小さくないわけですが、やはり社会保障への公費負担が非常に大きい、徐々に大きくなっているということでございます。例えば、二〇〇七年から一三年という一番右側のところでごらんいただきますと、悪化分のうちの二%ポイントぐらいは社会保障への公費負担ということでございます。
かつては、建設国債等公共投資で財政赤字という時代がございましたけれども、今は赤字国債、いわば経常的な、日々、毎日、毎週、毎月を赤字で操業している、そういう状況になっているということでございます。
十四ページでございます。
したがいまして、当然、給付の部分でいろいろな改革が必要だと思います。公的保険のカバレッジですとか給付の効率化、それから当然保険料も、負担していただける方にどういうふうに負担していただくか。あるいは公費負担についても、保険料負担と公費負担、どういうバランスをとっていくのか。皆保険、皆年金を守る必要があると思いますので、その辺のビジョンと制度設計の議論を深めるべき局面を迎えているかなと思っております。
十五ページが、私どもが二〇一三年に発表させていただきましたマクロモデルを使ったシナリオでございます。
右の上の表をごらんいただきますと、ベースシナリオというのが、これは政府が幾ら借金をしても破綻しない、しかしどこかで破綻するだろうということなんですが、計算上は破綻をしていませんので、十年ごとの成長率、一・五、一・五、一・〇と書いてございます。右上の表でございます。
これに対しまして、改革シナリオ、ここでは、支給開始年齢を引き上げるとか、医療の窓口負担、高齢者の皆様にも二割ぐらいの負担をお願いするとか、消費税については、二〇三〇年ごろには日本の消費税は二〇%、二〇三〇年代半ばには二五%ぐらいの、そういう負担増も行っていく改革シナリオ、この場合にどうかということであります。
私は、何か将来展望が明るくなれば経済にマイナスはないという言い方は非常に無責任だと思うんですね。給付削減をやる、あるいは負担増をやれば、当然経済は下押しをされると思います。問題は、どれぐらい下押しされるかということを数字で議論すべきじゃないかと。
ここで改革シナリオをごらんいただきますと、成長率が、ならしますと〇・二%ポイントぐらい下がります。これは三十年ですので、〇・二%ポイントというのは非常に大きなコストであります。それだけ生活水準の向上を我慢しなければいけないということであります。ただ、逆に言うと、それだけのコストを払えば制度の破綻は回避できる、こういうシミュレーションでございます。
ただ、それでも問題解決まではいかないということで、超改革シナリオというのがございます。
ここではさらに給付削減を若干するんですけれども、では、給付削減と負担増をさらにもっと強くやったら財政の問題は解決するかというと、やはり経済が悪くなるわけでございますね。ですから、この問題というのは、負担増と給付削減を限りなくやれば解ける問題かというと、そういうことではない。
ここで、超改革シナリオというのは、政府は直接給付する部分というのを少しスリム化していく、他方で、規制を見直したり、税制でインセンティブをつけていただいたり、あるいはマイナンバー制度なんか、使い勝手よくしていただいたりして、民間が政府の削減する分を補完するような、企業年金ですとか健康産業市場ですとかいった市場が別途立ち上がってくる、こういう想定を置きますと、この超改革シナリオということで問題解決ができる。これは、先ほど申し上げた二兎を追わなければいけないということのまさに一つの姿でございます。
最後に、結びとしまして、十六ページでございます。
これまで、財政構造改革法あるいは骨太二〇〇六ということで、日本は財政再建について何度もチャレンジしてまいりました。そこから私なりにレッスンということで申し上げると、第一に、やはり政府だけではなくて、国会あるいは政党の皆様にも十分にコミットしていただかないと達成できない非常に難しい問題であるということ。二つ目に、公費部分だけを操作してもなかなかうまくいかないので、やはり社会保障全体をデザインし直す必要があるということ。それから三番目に、租税負担率、国民負担率が決して高くない日本でございますので、諸外国並みのサービスを求めるということであれば、やはり負担のシェアを、これは民主主義のプロセスで決めていく必要がある。それから四番目に、これは先行き三十年、四十年、五十年をにらんだタイプの政策でございますから、足元の景気、一年あるいは半年あるいは数カ月の景気でもって議論が混乱してしまわないような、そういう工夫が何らか必要ではないかということではないかと思います。
非常に駆け足で恐縮でございます。以上で私の公述とさせていただきます。
御清聴大変ありがとうございました。拍手
大
水
水野和夫#4
○水野公述人 日本大学の国際関係学部で経済学を中心に教えております水野と申します。どうぞよろしくお願いします。
それでは、私は、今回の予算に関しまして、特に成長戦略についてお話し申し上げたいと思います。
資料のタイトルは、「「歴史の危機」における新しいシステム構築」でありますが、歴史の危機というのは、具体的には、近代システムがもう機能不全に陥っているというふうに認識しなければいけないんじゃないかなと思います。そう考えますと、想定外のことがこれまで何度も起きてきましたが、想定外と言って済まされることではないと思います。これからは想定外のことが常に起きる、そういう時代に入ってきているんじゃないかなと思います。
近代システムというのは、経済的な側面からいえば、経済成長の時代ということであります。特に、この二百年間というのは著しい経済成長を実現しました。失われた二十年に入りましてから、マイナス成長あるいはデフレというのが定着するようになりました。
プライマリーバランスを二〇一〇年代に均衡する、それから潜在成長率を二%に引き上げるといった政策が、二〇〇一年ないし二〇〇二年の骨太の方針からずっと実施されてきました。ところが、ちょうど今十数年たちましたが、全く目的が達成できていないというのが今の現状だと思います。
そこで、表紙の次のテーブルをごらんいただきたいと思います。
これはマクロ経済指標のこの十数年のパフォーマンスを示したものです。主に、包括的な指標であります名目GDPあるいは実質GDP、それから物価、GDPデフレーターと消費者物価の推移を、二〇〇二年というのは、骨太の方針が二〇〇一年に決まって、そして戦後最長の景気回復が始まって、あるいは金融システム危機がほぼ収束のめどがついてというところからであります。二〇一四年が現在であります。
特にここで申し上げたいことは、雇用者報酬、家計の生活水準がよくなっているかどうかということだと思います。
雇用者報酬につきましては、とりわけ、ちょうど真ん中あたりの実質GDPのすぐ下の雇用者報酬、これが実質雇用者報酬で、家計の購買力をあらわしております。
右半分のところになりますけれども、増減額、二〇〇二年から二〇一四年を通して十二年間のパフォーマンスが示してあります。それから、この二年間のパフォーマンスが一番右側の縦のところになります。
枠で囲ってありますところが、まず名目の雇用者報酬、bの欄でありますが、この十二年間におきまして名目雇用者報酬は七兆三千億円減りました。ただ、この二年間は所得は六・五兆円ふえています。
名目がふえているからいいじゃないかということになるかもしれませんが、家計からすれば、その所得でどれだけの数量的な財やサービスを購入できるかという実質雇用者報酬が大事だと思いますので、ちょうど中ほどのdの欄の右半分をごらんいただきたいと思います。
この十二年間で実質雇用者報酬は六・八兆円ふえました。名目では減っているんですけれども、物価が下がったことによって購買力はふえました。ところが、この二年間、マイナス一・〇、一兆円の減少ということで、むしろこの二年間は、物価が上昇して、購買力は下がってしまうということが起きました。
なぜ名目で上がって実質で下がっているのかということですが、それはGDPデフレーターと消費者物価の違いということになります。
家計の雇用者報酬は、消費者物価で購買力をはかるということになります。そこで、消費者物価はこの二年間、一・五%上がりました。実質GDPを計算するときのGDPデフレーターは〇・五%ということでありますので、消費者物価の上昇率の方が高くなっていますので、その結果、家計の購買力が一段と落ちてしまうということになりました。これは、第一の矢であります異次元の金融緩和、私はこれが家計にとっては大きなマイナスになっているというふうに言えると思います。
そして、潜在成長率のところをごらんいただきたいと思いますが、こちらは実質GDP二%という成長戦略に大きくかかわるところですけれども、潜在成長率は逆に、一%から現在〇・六%へと低下しているということになります。
次の三ページ目のところをごらんいただきたいと思います。
家計は、物価の増減、上がったり下がったりすることについてどういうふうに考えているのかということなんですけれども、日本銀行の生活意識に関するアンケート調査の調査項目でありますけれども、今六六・六%の人が、物価上昇を困ったことだというふうに回答しております。五〇%がちょうど分岐点でありますので、二〇一三年の夏以降、家計は、物価の上昇を困ったことだというふうに考えている人が半数を上回るということになりました。
そのタイミングよりほぼ一年間おくれまして、点線の推移でありますが、家計が実感する景況感ということなんですけれども、こちらは左目盛りになりますが、景況感、悪くなったと感じる人の方がふえ始めているという状況になっております。
次に四ページ目、今度は家計の所得と資産に限定したものであります。
給与所得は、二〇〇二年、四百四十七万円だったものが、二〇一三年には四百十三万円になりました。この十二年間で三十四万円減っているということになります。
ただ、この統計上はまだ二〇一三年の数字なんですけれども、ふえております。これは、名目GDPあるいは名目雇用者報酬がふえているということと対応しております。
問題なのは、年収二百万円以下で働いている人の数が、一九%から、今二四%、一千百万人ということになっております。
もちろん、働く機会がふえたということで、二百万円以下でも働く機会がふえたということであればそれはそれでいいことであると思いますが、もし二百万円以下でも働きたいという人がふえているということになれば、それは貯蓄残高に反映してくるということだと思います。
貯蓄残高、勤労者世帯のところをごらんいただきますと、しかも中央値なんですけれども、これは百人並べたらちょうど五十番目の人の所得ということになりますが、八百十七万円から七百三十五万円、八十二万円も減っているということになります。経済成長が全体に行き渡っているような状況であれば平均値で見て大丈夫だと思いますが、ばらつきが大きくなってくるような状況でありますと、むしろ中央値の方が重要な指標だと思います。
そうなりますと、二〇一三年の一年間、まだこちらも二〇一四年の数字が出ていないんですけれども、一番新しい一年間というのは、二十二万円、マイナス二十二・二という数字がありますが、減少しているということになります。この統計によれば、貯蓄が百万円以下の世帯が一〇%ありますので、次の不況が来た場合に貯蓄残高を取り崩さざるを得ないという人たちがかなりいるということになります。
一番下の金融資産を全く持っていない世帯というのが、一六%から三〇・四%へというふうにふえております。
ですから、トリクルダウンというのは、ほとんどこの十数年、行き渡っていないということが言えるんじゃないかなと思います。
次の五ページ目が、金融資産の非保有世帯の割合です。
これも日本銀行のアンケート調査であります。一九八七年には三・三%でありました。三十世帯に一世帯が金融資産を保有していないという状況だったんですが、現在は三〇・四%でありますので、ほぼ三世帯に一世帯が金融資産が全くないという状況であります。
これは、なぜ九〇年以降こんなにふえたのかということですが、ふえた局面を見ますと、いわゆるバブル崩壊型の不況に見舞われたときであります。九〇年に株式、それから九一年に不動産バブルが崩壊しました。そこから、九〇年代半ばに一〇%に上がる。それから九〇年代後半、九七年、九八年の金融システム危機、アメリカのインターネットバブル崩壊にかけまして、一〇%から、今度は二〇%を超えました。一気に一〇%上がる。それから次に、二〇〇八年のリーマン・ショックで二〇%から三〇%にふえました。いずれも、バブル崩壊によって一〇%ふえる。これは、貯蓄残高が百万円しかないといった層の人たちが、失業が長期化した場合に貯蓄を取り崩さざるを得ないということだと思います。
この三〇%というのはかなり高い、日本から見れば戦後で最悪の数字になっているんですけれども、今話題のピケティの「二十一世紀の資本」によりますと、いや、どんな時代だって、今の時代も、資産を持たない層というのは常に五割いるということであります。
ですから、まだ三〇%であれば先進国に比べればいいじゃないかということも言えるかもしれませんが、そんなことは私は言えないと思います。せっかく日本は、ほかの先進国にない、資産を持たない人がうんと低かったという世の中を実現したわけですから、ほかの先進国に悪いところまで見習う必要はないと思います。
ただ、これは放っておきますと、もうこれ以上、今後バブルが起きないということであれば、三〇%が四〇%になり、五〇%になる。あと二回大きなバブルが崩壊するということが起きれば、恐らくこの比率は五〇%になってしまうということだと思います。
ということは、バブルを起こさない。これは、グローバル化していますから、日本の中で幾らバブルを起こさない政策をとりましても、外国で起きればそれが日本に及んでくるということなんですが、次の六ページ目をごらんいただきたいと思います。
バブルがなぜ起きるかということですけれども、これは一番上の枠組みのところの2番で書いてありますが、成長のメカニズムというのは、常に新しい空間を発見するということだったと思います。もう一つが技術革新であります。
もう既に、アフリカのグローバリゼーションというところまで事実上到達しました。もちろん、実際にアフリカが近代化されて豊かな生活をするというのはまだ何十年もかかると思いますが、もうその先はないということが重要だと思います。アフリカの次、どこを探すのかということなんですが、宇宙空間とかあるいは海底とかというところを探さない限り、もうないと思います。
そうしますと、今何が起きているかというと、この概念図のところのバーチャル空間でありますが、ここは電子・金融空間。金融の自由化あるいはIT技術、これが融合しまして、ウォール街では十億分の一秒で証券売買ができるようになりました。時間を小刻みにするということは、空間が広がっている、空間の面積が広がっているということになります。でも、ここは無限に上昇していくということは難しいと思います。
世界じゅうで量的金融緩和を、アメリカは脱却しましたけれども、それでもゼロ金利が続いております。それ以外は量的緩和をするということは、本来ならば工場や店舗、オフィスビルなどの雇用を伴うところに投資が行われるはずなんですけれども、ここは既にいろいろな指標、例えば一単位のGDPを産出するのにどれだけの資本ストックを持っているのかという資本係数は、日本は世界で一位であります。私は、非常に資本は過剰になっていると思いますので、これ以上店舗、オフィスビルに投資するということはなかなか難しい。むしろ、これからMアンドAが起きて、既にコンビニ業界とか始まっていると思いますが、MアンドAが起きるということは、そんなに雇用がふえるわけではないということだと思います。
あと、資本が過剰であるということを示したものが、七ページ目の金利のグラフです。
金利といいましても、これは主に資本の利潤率で置きかえることができますので、資本の利潤率が低いということは、それだけ追加一単位、追加一万円の投資をすれば得られるリターンは減ってきているということをあらわしております。これは何も日本だけの特有の現象ではなくて、最近では日本よりもドイツの利回りの方が低いという状況になりました。日本もドイツも国内では過剰になっているということであります。
過去、過剰だったのはいつかというと、四百年前の中世が終わったときのイタリアであります。このときは一・一%で、もうこれ以上投資する機会がないというふうに当時の歴史書に記述が残っております。これ以上イタリアの中では投資する機会がないということなので、どうしたかというと、新しい空間を、かぎ括弧つきの新大陸ということで、そちらに投資を求めるということになりました。そこで、イタリア、スペインというのはその後百年間、事実上、世界の主役から消えてしまうということが起きました。ですから、日本も今、四百年前のイタリアと同じような危機に直面しているんじゃないかなと私は思います。
次の八ページ目は、歴史の危機とは何かということで、バーゼル大学のブルクハルトは過去三つ、一番、二番、三番を指摘しています。
今は、特に2番のイタリア・ジェノバ、当時は世界で最も繁栄した国だったんですけれども、これがその後一世紀にわたって長期停滞するということが起きました。これは、将来どういう方向に進むかという、時代は国民国家の時代だったのに、イタリアは都市国家の道をそのまま選びました。それから、スペインは世界帝国の道を選んで、結局、中規模の国民国家、イギリスとオランダの台頭に全くスペイン、イタリアが対応できないということで、その後、歴史の表舞台から消えてしまうということでありました。
そういう意味では、大事なことというのは、今後、どちらの方向に世界が向かっているのかということを考えて、その歯車を逆転させるというのは恐らく経済政策ではとてもできない、一旦もう歯車が回り始めたらそれに合わせるしかないというふうに私は思います。では、今のこれまでの十数年の成長戦略というのがその歯車にちゃんと合っているのかということを考えることが非常に大事じゃないかなと私は思っております。
以上であります。拍手
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資料のタイトルは、「「歴史の危機」における新しいシステム構築」でありますが、歴史の危機というのは、具体的には、近代システムがもう機能不全に陥っているというふうに認識しなければいけないんじゃないかなと思います。そう考えますと、想定外のことがこれまで何度も起きてきましたが、想定外と言って済まされることではないと思います。これからは想定外のことが常に起きる、そういう時代に入ってきているんじゃないかなと思います。
近代システムというのは、経済的な側面からいえば、経済成長の時代ということであります。特に、この二百年間というのは著しい経済成長を実現しました。失われた二十年に入りましてから、マイナス成長あるいはデフレというのが定着するようになりました。
プライマリーバランスを二〇一〇年代に均衡する、それから潜在成長率を二%に引き上げるといった政策が、二〇〇一年ないし二〇〇二年の骨太の方針からずっと実施されてきました。ところが、ちょうど今十数年たちましたが、全く目的が達成できていないというのが今の現状だと思います。
そこで、表紙の次のテーブルをごらんいただきたいと思います。
これはマクロ経済指標のこの十数年のパフォーマンスを示したものです。主に、包括的な指標であります名目GDPあるいは実質GDP、それから物価、GDPデフレーターと消費者物価の推移を、二〇〇二年というのは、骨太の方針が二〇〇一年に決まって、そして戦後最長の景気回復が始まって、あるいは金融システム危機がほぼ収束のめどがついてというところからであります。二〇一四年が現在であります。
特にここで申し上げたいことは、雇用者報酬、家計の生活水準がよくなっているかどうかということだと思います。
雇用者報酬につきましては、とりわけ、ちょうど真ん中あたりの実質GDPのすぐ下の雇用者報酬、これが実質雇用者報酬で、家計の購買力をあらわしております。
右半分のところになりますけれども、増減額、二〇〇二年から二〇一四年を通して十二年間のパフォーマンスが示してあります。それから、この二年間のパフォーマンスが一番右側の縦のところになります。
枠で囲ってありますところが、まず名目の雇用者報酬、bの欄でありますが、この十二年間におきまして名目雇用者報酬は七兆三千億円減りました。ただ、この二年間は所得は六・五兆円ふえています。
名目がふえているからいいじゃないかということになるかもしれませんが、家計からすれば、その所得でどれだけの数量的な財やサービスを購入できるかという実質雇用者報酬が大事だと思いますので、ちょうど中ほどのdの欄の右半分をごらんいただきたいと思います。
この十二年間で実質雇用者報酬は六・八兆円ふえました。名目では減っているんですけれども、物価が下がったことによって購買力はふえました。ところが、この二年間、マイナス一・〇、一兆円の減少ということで、むしろこの二年間は、物価が上昇して、購買力は下がってしまうということが起きました。
なぜ名目で上がって実質で下がっているのかということですが、それはGDPデフレーターと消費者物価の違いということになります。
家計の雇用者報酬は、消費者物価で購買力をはかるということになります。そこで、消費者物価はこの二年間、一・五%上がりました。実質GDPを計算するときのGDPデフレーターは〇・五%ということでありますので、消費者物価の上昇率の方が高くなっていますので、その結果、家計の購買力が一段と落ちてしまうということになりました。これは、第一の矢であります異次元の金融緩和、私はこれが家計にとっては大きなマイナスになっているというふうに言えると思います。
そして、潜在成長率のところをごらんいただきたいと思いますが、こちらは実質GDP二%という成長戦略に大きくかかわるところですけれども、潜在成長率は逆に、一%から現在〇・六%へと低下しているということになります。
次の三ページ目のところをごらんいただきたいと思います。
家計は、物価の増減、上がったり下がったりすることについてどういうふうに考えているのかということなんですけれども、日本銀行の生活意識に関するアンケート調査の調査項目でありますけれども、今六六・六%の人が、物価上昇を困ったことだというふうに回答しております。五〇%がちょうど分岐点でありますので、二〇一三年の夏以降、家計は、物価の上昇を困ったことだというふうに考えている人が半数を上回るということになりました。
そのタイミングよりほぼ一年間おくれまして、点線の推移でありますが、家計が実感する景況感ということなんですけれども、こちらは左目盛りになりますが、景況感、悪くなったと感じる人の方がふえ始めているという状況になっております。
次に四ページ目、今度は家計の所得と資産に限定したものであります。
給与所得は、二〇〇二年、四百四十七万円だったものが、二〇一三年には四百十三万円になりました。この十二年間で三十四万円減っているということになります。
ただ、この統計上はまだ二〇一三年の数字なんですけれども、ふえております。これは、名目GDPあるいは名目雇用者報酬がふえているということと対応しております。
問題なのは、年収二百万円以下で働いている人の数が、一九%から、今二四%、一千百万人ということになっております。
もちろん、働く機会がふえたということで、二百万円以下でも働く機会がふえたということであればそれはそれでいいことであると思いますが、もし二百万円以下でも働きたいという人がふえているということになれば、それは貯蓄残高に反映してくるということだと思います。
貯蓄残高、勤労者世帯のところをごらんいただきますと、しかも中央値なんですけれども、これは百人並べたらちょうど五十番目の人の所得ということになりますが、八百十七万円から七百三十五万円、八十二万円も減っているということになります。経済成長が全体に行き渡っているような状況であれば平均値で見て大丈夫だと思いますが、ばらつきが大きくなってくるような状況でありますと、むしろ中央値の方が重要な指標だと思います。
そうなりますと、二〇一三年の一年間、まだこちらも二〇一四年の数字が出ていないんですけれども、一番新しい一年間というのは、二十二万円、マイナス二十二・二という数字がありますが、減少しているということになります。この統計によれば、貯蓄が百万円以下の世帯が一〇%ありますので、次の不況が来た場合に貯蓄残高を取り崩さざるを得ないという人たちがかなりいるということになります。
一番下の金融資産を全く持っていない世帯というのが、一六%から三〇・四%へというふうにふえております。
ですから、トリクルダウンというのは、ほとんどこの十数年、行き渡っていないということが言えるんじゃないかなと思います。
次の五ページ目が、金融資産の非保有世帯の割合です。
これも日本銀行のアンケート調査であります。一九八七年には三・三%でありました。三十世帯に一世帯が金融資産を保有していないという状況だったんですが、現在は三〇・四%でありますので、ほぼ三世帯に一世帯が金融資産が全くないという状況であります。
これは、なぜ九〇年以降こんなにふえたのかということですが、ふえた局面を見ますと、いわゆるバブル崩壊型の不況に見舞われたときであります。九〇年に株式、それから九一年に不動産バブルが崩壊しました。そこから、九〇年代半ばに一〇%に上がる。それから九〇年代後半、九七年、九八年の金融システム危機、アメリカのインターネットバブル崩壊にかけまして、一〇%から、今度は二〇%を超えました。一気に一〇%上がる。それから次に、二〇〇八年のリーマン・ショックで二〇%から三〇%にふえました。いずれも、バブル崩壊によって一〇%ふえる。これは、貯蓄残高が百万円しかないといった層の人たちが、失業が長期化した場合に貯蓄を取り崩さざるを得ないということだと思います。
この三〇%というのはかなり高い、日本から見れば戦後で最悪の数字になっているんですけれども、今話題のピケティの「二十一世紀の資本」によりますと、いや、どんな時代だって、今の時代も、資産を持たない層というのは常に五割いるということであります。
ですから、まだ三〇%であれば先進国に比べればいいじゃないかということも言えるかもしれませんが、そんなことは私は言えないと思います。せっかく日本は、ほかの先進国にない、資産を持たない人がうんと低かったという世の中を実現したわけですから、ほかの先進国に悪いところまで見習う必要はないと思います。
ただ、これは放っておきますと、もうこれ以上、今後バブルが起きないということであれば、三〇%が四〇%になり、五〇%になる。あと二回大きなバブルが崩壊するということが起きれば、恐らくこの比率は五〇%になってしまうということだと思います。
ということは、バブルを起こさない。これは、グローバル化していますから、日本の中で幾らバブルを起こさない政策をとりましても、外国で起きればそれが日本に及んでくるということなんですが、次の六ページ目をごらんいただきたいと思います。
バブルがなぜ起きるかということですけれども、これは一番上の枠組みのところの2番で書いてありますが、成長のメカニズムというのは、常に新しい空間を発見するということだったと思います。もう一つが技術革新であります。
もう既に、アフリカのグローバリゼーションというところまで事実上到達しました。もちろん、実際にアフリカが近代化されて豊かな生活をするというのはまだ何十年もかかると思いますが、もうその先はないということが重要だと思います。アフリカの次、どこを探すのかということなんですが、宇宙空間とかあるいは海底とかというところを探さない限り、もうないと思います。
そうしますと、今何が起きているかというと、この概念図のところのバーチャル空間でありますが、ここは電子・金融空間。金融の自由化あるいはIT技術、これが融合しまして、ウォール街では十億分の一秒で証券売買ができるようになりました。時間を小刻みにするということは、空間が広がっている、空間の面積が広がっているということになります。でも、ここは無限に上昇していくということは難しいと思います。
世界じゅうで量的金融緩和を、アメリカは脱却しましたけれども、それでもゼロ金利が続いております。それ以外は量的緩和をするということは、本来ならば工場や店舗、オフィスビルなどの雇用を伴うところに投資が行われるはずなんですけれども、ここは既にいろいろな指標、例えば一単位のGDPを産出するのにどれだけの資本ストックを持っているのかという資本係数は、日本は世界で一位であります。私は、非常に資本は過剰になっていると思いますので、これ以上店舗、オフィスビルに投資するということはなかなか難しい。むしろ、これからMアンドAが起きて、既にコンビニ業界とか始まっていると思いますが、MアンドAが起きるということは、そんなに雇用がふえるわけではないということだと思います。
あと、資本が過剰であるということを示したものが、七ページ目の金利のグラフです。
金利といいましても、これは主に資本の利潤率で置きかえることができますので、資本の利潤率が低いということは、それだけ追加一単位、追加一万円の投資をすれば得られるリターンは減ってきているということをあらわしております。これは何も日本だけの特有の現象ではなくて、最近では日本よりもドイツの利回りの方が低いという状況になりました。日本もドイツも国内では過剰になっているということであります。
過去、過剰だったのはいつかというと、四百年前の中世が終わったときのイタリアであります。このときは一・一%で、もうこれ以上投資する機会がないというふうに当時の歴史書に記述が残っております。これ以上イタリアの中では投資する機会がないということなので、どうしたかというと、新しい空間を、かぎ括弧つきの新大陸ということで、そちらに投資を求めるということになりました。そこで、イタリア、スペインというのはその後百年間、事実上、世界の主役から消えてしまうということが起きました。ですから、日本も今、四百年前のイタリアと同じような危機に直面しているんじゃないかなと私は思います。
次の八ページ目は、歴史の危機とは何かということで、バーゼル大学のブルクハルトは過去三つ、一番、二番、三番を指摘しています。
今は、特に2番のイタリア・ジェノバ、当時は世界で最も繁栄した国だったんですけれども、これがその後一世紀にわたって長期停滞するということが起きました。これは、将来どういう方向に進むかという、時代は国民国家の時代だったのに、イタリアは都市国家の道をそのまま選びました。それから、スペインは世界帝国の道を選んで、結局、中規模の国民国家、イギリスとオランダの台頭に全くスペイン、イタリアが対応できないということで、その後、歴史の表舞台から消えてしまうということでありました。
そういう意味では、大事なことというのは、今後、どちらの方向に世界が向かっているのかということを考えて、その歯車を逆転させるというのは恐らく経済政策ではとてもできない、一旦もう歯車が回り始めたらそれに合わせるしかないというふうに私は思います。では、今のこれまでの十数年の成長戦略というのがその歯車にちゃんと合っているのかということを考えることが非常に大事じゃないかなと私は思っております。
以上であります。拍手
大
西
西田淳志#6
○西田公述人 東京都医学総合研究所の西田と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、このような公述の機会をいただきまして、大島委員長を初め委員の先生方に感謝申し上げます。
本日、私の方からは、認知症の国家戦略の国際動向というテーマでお話をさせていただきます。
本年の一月二十七日に、関係閣僚会議を経まして、省庁横断的な推進体制のもと、我が国初となる認知症国家戦略が発表され、多くの国民がその成果に期待を寄せているところかと存じます。
さて一方、海外では、認知症国家戦略が打ち出されて既に久しい国々もありまして、認知症国家戦略に関する国際的な情報の蓄積が昨今進んでまいりました。
こうした各国の経験を踏まえつつ、我が国の認知症国家戦略をさらに発展、進化させていくにはどのようなことがポイントとなるのか、そういった観点から本日はお話をさせていただきたいと思います。
お手元の資料二ページ目をごらんいただければと存じますが、ここには「私は」で始まる九つの文章が並んでおります。
幾つかここで読み上げますが、一つ目は、私は、適切なタイミングで認知症の診断を受けた、三つ目、私の認知症並びに私の人生にとって最良の支援と治療が受けられている、四つ目、私の周囲の人々、特にケアをしてくれている家族が十分なサポートを受けられている、五つ目、私は、尊厳と敬意を持って扱われている、七つ目、私は、人生を楽しんでいる、八つ目、私は、コミュニティーの一員であると感じられる。
さて、既にお気づきのとおり、この「私」とは、認知症の人、御本人のことであります。先生方の御親族にも、認知症を経験されておられる方々、また、経験され、既に旅立たれた方々もいらっしゃると思います。そうした方々にこうした質問を投げかけた際、どの程度の方々がこれらの問いに丸をつけることができるでしょうか。
実は、この九つの質問は、イギリスの認知症国家戦略の成果を評価するために策定されたものです。イギリスでは、認知症国家戦略の最終年に、第三者機関によって、相当数の認知症の御本人にこれらの質問に回答していただき、それをもって国家戦略の成果を見きわめるということになっています。
資料三ページ目をごらんください。
さて、今御紹介したイギリスの認知症国家戦略の評価基準からもおわかりになりますように、各国の認知症国家戦略においては、今現在、認知症を抱えておられる人、その御家族の視点に立って、五年程度の集中改革期間内に具体的なよい変化を起こすことが目標とされています。すなわち、相当なスピード感を持って、認知症の人がよい生活を送ることができる環境や仕組みを構築していくことが求められているわけであります。
次の四ページ目をごらんください。
それでは、なぜ、各国は国を挙げて、また、スピードを上げて認知症政策の推進に取り組むようになったのか、その主な背景要因として、少なくとも二つ挙げることができます。
一つは、経済的な背景です。
認知症人口の急激な増加に伴い、認知症に関連する社会的なコストが今後大幅に増大することが、各国の推計で明らかになっております。特に、認知症関連のコストで最も大きな割合を占めるのが、インフォーマルケアコストと呼ばれるものでありまして、これには、家族介護者が認知症の人の介護のために就労ができなくなることによる経済損失が含まれています。少子高齢社会における限られた労働人口が認知症の介護に縛られることによって、さらに労働力が減少するということが見込まれています。
こうした観点から、認知症政策の成否は、社会保障のみならず、経済や財政、また地方創生等にも決定的な影響を与えることになってまいります。
二つ目の背景要因としては、認知症に対する国民の関心が高まってきた、特に、認知症とともに生きる人たちがみずから声を上げることによって、それまで無視されてきたニーズを社会の中で顕在化させてきたことが大きく影響しています。
既に、第二期、第三期の国家戦略へと進んでいる国も多くありますが、仮に政権が交代しても、国民の認知症に対する関心の高さゆえに、認知症政策の優先度が下がることはまれであります。こうした国民のニーズを踏まえて、各国では、認知症を持ちながらも、住みなれた地域で在宅生活が最大限可能となる環境の整備並びにサービスの改革が強力に進められております。
資料五ページ目をごらんください。
さて、私どもは二〇一三年に、認知症国家戦略を打ち出している国々の政策関係者を招聘いたしまして、各国の戦略の方向性やその具体策についての情報を共有するための国際政策会議を開催いたしました。各国の国家戦略の理念は、認知症の人の思いを尊重し、住みなれた地域での生活の継続を可能とすることを目指すという点において、全て一致しておりました。
その理念実現のための個別施策についてのポイントは、ここで全て述べる時間がございませんので割愛させていただきますが、詳細は、六ページまたは七ページを後ほど御参照いただければと思います。
一つ二つ各国での共通政策、共通課題について御説明いたしますが、認知症に対する早期発見、早期診断ということは非常に耳にするわけですけれども、日本を含めた各国で共通する問題は、診断の後の支援がないという問題があります。多くの人々は、早期発見、早期絶望の状態に至ってしまうということがよく聞かれるわけです。
各国では、診断に至らない人を診断に結びつけることと同様に、それ以上に、診断した後の人に対する具体的な生活支援、そういったもののきちんとした政策を進めるということが重視されています。
もう一つ申し上げますと、認知症の人に対する抗精神病薬の処方が各国で大きな問題になっております。抗精神病薬の処方は、認知症の人の心理・行動症状と呼ばれる興奮や幻覚、妄想に対して処方されるお薬でありますけれども、そういう処方が非常に多いことによって認知症の人が多く死亡しているということが問題になり、英国議会でも非常にスキャンダルとして議論された経緯があります。
こうした認知症の方々に対する各国が抱える問題は共通性を持ち、そういった問題を協力しながら、各国の政策が進展していっているという状況でございます。
さて、八ページをごらんください。
各国が認知症国家戦略によって推し進めようとしているのは、認知症の人がサービスの都合に合わせて循環させられる旧来のサービス中心モデルから、認知症の人のニーズに合わせて必要なサービスが届けられる当事者中心モデルへの転換であります。
これまで認知症の人やその御家族は、医療や介護のサービスがばらばらに分断されていて、そのサービスのはざまに落ちてしまい、結果として必要な支援や対応がおくれ、問題が増悪した後、入院、入所を余儀なくされてきました。こうした分断的、事後的、また収容的なサービスモデルからの脱却、すなわち、問題が増悪する前に、統合された適切な支援が認知症の人とその御家族にタイムリーに届けられるサービスモデルへの転換が、各国で強力に推進されているわけであります。
次の九ページをごらんください。
さて、こうした認知症国家戦略の国際動向を踏まえた上で、このたびの我が国の認知症国家戦略、新オレンジプランについて若干の考察を述べさせていただきます。
まず、前提として、我が国の高齢化率は二五%と世界首位であり、認知症国家戦略が打ち出されたタイミングとしては、早いとは言えない、遅かったと言わざるを得ません。しかしながら、このたび省庁横断的な推進体制のもとで国家戦略が打ち出されたことは、非常に大きな意義があると存じます。
その基本理念も、住みなれた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるために必要なことに的確に応えるというもので、各国同様に当事者中心モデルへの転換を目指そうとしています。この理念実現のための施策、七本柱の中でも、認知症の人やその家族の視点を重視し、施策の企画立案、評価への、当事者、御家族の参加を進めることが明記されていることは極めて大きな意義があるというふうに思います。
一方で、政策的に課題が残る部分も一部見られます。次のページをごらんください。
認知症の人の地域生活の継続が困難となる最大の要因は、先ほども申し上げましたように、認知機能の低下というよりも、不安感や焦燥感、幻覚や妄想、興奮などが出現する心理・行動症状というものが最大要因であります。この心理・行動症状が出現すると、家族の介護負担も急激に増してきます。こうした症状の出現に対して、早期に適切な支援がなされないことによって危機が発生し、地域生活の継続が困難になることが少なくありません。
この心理・行動症状は、不適切なケアの環境、環境変化によるストレス、言語化できない身体的な苦痛などが原因となっていることが少なくありません。各国の国家戦略においては、この心理・行動症状の出現をできる限り予防して、発生した場合には迅速に在宅でその問題を解決する仕組みが構築されています。
認知症国家戦略を持つヨーロッパ八カ国及びオーストラリアなどでも、この心理・行動症状に対する中心施策として、訪問型の医療チーム、すなわち、アウトリーチ型、出前型の医療チームによって、在宅で危機を回避、解決するサービスの普及が進んでおります。こうしたサービスの効果によって、認知症の人の精神科病院の入院が大幅に減少することが報告されています。
一方、国際的に見て異常な我が国の現状として、認知症の人が精神科病院に多く入院し、極めてその入院が長期化しているということがあります。平均在院日数が七百日以上または九百日以上との調査結果があり、認知症の方が精神科病院に入院したまま亡くなられるということも少なくないことが示唆されています。まさに、この新オレンジプランの掲げる理念と逆行する現状であります。精神科病院に入院する際の理由の九割以上が心理・行動症状であり、こうした危機を適切なタイミングで地域の中で解決するための対策が、諸外国以上に我が国では必要であります。
しかしながら、今回の新オレンジプランの中では、各国の認知症国家戦略の中で中心施策として位置づけられる訪問型の医療普及が明記されておらず、その点は大きな課題として残ったというふうに考えております。
次のページを御参照ください。
実は、この心理・行動症状に対して、在宅診療で対応していく試みが我が国においても始められています。
この、こころのホームクリニック世田谷と呼ばれるクリニックは、世田谷の烏山にございまして、二〇一三年の四月に開設されています。認知症や精神疾患を抱える人及びその御家族を在宅で支援、診療する専門クリニックとして今診療されておられまして、開設して一年三カ月で合計百四十七名の方が患者さんとしておられます。そのうち認知症の人が六一%を占めるということであります。認知症の在宅医療のニーズがとても高いということが、こういったことからもうかがえます。
このクリニックの強みは、各国の認知症国家戦略で行われている訪問型のサービスと同様に、二つの特徴があります。
一つは、いつでも相談できる、二十四時間、医師や看護師に電話がつながるということがポイントです。これによって家族介護者の方々は安心感を持たれて、その安心感が認知症の人にも伝わるのか、非常に御本人も安定するということがあります。
二つ目の強みは、タイムリーな訪問支援ができるということで、危機が発生し始めたときに在宅に行って、何が問題でこういう状態が起きているかをその場で見きわめて、その場で問題を解決する。それによって危機が収束し、入院に至らず在宅生活の継続が可能になるということであります。
こういった電話、それから迅速なアウトリーチで対応することによって、現在、定期外来受診が不能な状態にある重度の認知症の方七十一人のうち、精神科病院への入院が必要になった方が一名のみということであります。二十四時間の電話対応とアウトリーチで入院事例はまれとなり、地域生活の継続を効果的にサポートできるということが、こういった実践からも明らかとなっております。
次のページを御参照ください。
認知症国家戦略の目標を達成するために、理念を達成するためにということで、新オレンジプランによって構築された省庁横断的な認知症国家戦略の推進体制を生かして、施設収容型のケアモデルから地域包括型のケアモデルへ着実な転換を果たしていただきたいと願っております。
認知症国家戦略の進捗プロセスやアウトカムについて、当事者や介護者の視点による評価を。冒頭御紹介したイギリスのように、国民が状況がよくなったと実感できるような進捗プロセス管理、アウトカム評価が必要だというふうに思います。
最後に、先ほど申し上げました、認知症の人を在宅で支えるための訪問型、出前型の医療サービスの普及を推進するための施策を、診療報酬等の改定を含めて具体化していくことが今後の課題であるというふうに考えております。
以上でございます。どうもありがとうございました。拍手
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本日、私の方からは、認知症の国家戦略の国際動向というテーマでお話をさせていただきます。
本年の一月二十七日に、関係閣僚会議を経まして、省庁横断的な推進体制のもと、我が国初となる認知症国家戦略が発表され、多くの国民がその成果に期待を寄せているところかと存じます。
さて一方、海外では、認知症国家戦略が打ち出されて既に久しい国々もありまして、認知症国家戦略に関する国際的な情報の蓄積が昨今進んでまいりました。
こうした各国の経験を踏まえつつ、我が国の認知症国家戦略をさらに発展、進化させていくにはどのようなことがポイントとなるのか、そういった観点から本日はお話をさせていただきたいと思います。
お手元の資料二ページ目をごらんいただければと存じますが、ここには「私は」で始まる九つの文章が並んでおります。
幾つかここで読み上げますが、一つ目は、私は、適切なタイミングで認知症の診断を受けた、三つ目、私の認知症並びに私の人生にとって最良の支援と治療が受けられている、四つ目、私の周囲の人々、特にケアをしてくれている家族が十分なサポートを受けられている、五つ目、私は、尊厳と敬意を持って扱われている、七つ目、私は、人生を楽しんでいる、八つ目、私は、コミュニティーの一員であると感じられる。
さて、既にお気づきのとおり、この「私」とは、認知症の人、御本人のことであります。先生方の御親族にも、認知症を経験されておられる方々、また、経験され、既に旅立たれた方々もいらっしゃると思います。そうした方々にこうした質問を投げかけた際、どの程度の方々がこれらの問いに丸をつけることができるでしょうか。
実は、この九つの質問は、イギリスの認知症国家戦略の成果を評価するために策定されたものです。イギリスでは、認知症国家戦略の最終年に、第三者機関によって、相当数の認知症の御本人にこれらの質問に回答していただき、それをもって国家戦略の成果を見きわめるということになっています。
資料三ページ目をごらんください。
さて、今御紹介したイギリスの認知症国家戦略の評価基準からもおわかりになりますように、各国の認知症国家戦略においては、今現在、認知症を抱えておられる人、その御家族の視点に立って、五年程度の集中改革期間内に具体的なよい変化を起こすことが目標とされています。すなわち、相当なスピード感を持って、認知症の人がよい生活を送ることができる環境や仕組みを構築していくことが求められているわけであります。
次の四ページ目をごらんください。
それでは、なぜ、各国は国を挙げて、また、スピードを上げて認知症政策の推進に取り組むようになったのか、その主な背景要因として、少なくとも二つ挙げることができます。
一つは、経済的な背景です。
認知症人口の急激な増加に伴い、認知症に関連する社会的なコストが今後大幅に増大することが、各国の推計で明らかになっております。特に、認知症関連のコストで最も大きな割合を占めるのが、インフォーマルケアコストと呼ばれるものでありまして、これには、家族介護者が認知症の人の介護のために就労ができなくなることによる経済損失が含まれています。少子高齢社会における限られた労働人口が認知症の介護に縛られることによって、さらに労働力が減少するということが見込まれています。
こうした観点から、認知症政策の成否は、社会保障のみならず、経済や財政、また地方創生等にも決定的な影響を与えることになってまいります。
二つ目の背景要因としては、認知症に対する国民の関心が高まってきた、特に、認知症とともに生きる人たちがみずから声を上げることによって、それまで無視されてきたニーズを社会の中で顕在化させてきたことが大きく影響しています。
既に、第二期、第三期の国家戦略へと進んでいる国も多くありますが、仮に政権が交代しても、国民の認知症に対する関心の高さゆえに、認知症政策の優先度が下がることはまれであります。こうした国民のニーズを踏まえて、各国では、認知症を持ちながらも、住みなれた地域で在宅生活が最大限可能となる環境の整備並びにサービスの改革が強力に進められております。
資料五ページ目をごらんください。
さて、私どもは二〇一三年に、認知症国家戦略を打ち出している国々の政策関係者を招聘いたしまして、各国の戦略の方向性やその具体策についての情報を共有するための国際政策会議を開催いたしました。各国の国家戦略の理念は、認知症の人の思いを尊重し、住みなれた地域での生活の継続を可能とすることを目指すという点において、全て一致しておりました。
その理念実現のための個別施策についてのポイントは、ここで全て述べる時間がございませんので割愛させていただきますが、詳細は、六ページまたは七ページを後ほど御参照いただければと思います。
一つ二つ各国での共通政策、共通課題について御説明いたしますが、認知症に対する早期発見、早期診断ということは非常に耳にするわけですけれども、日本を含めた各国で共通する問題は、診断の後の支援がないという問題があります。多くの人々は、早期発見、早期絶望の状態に至ってしまうということがよく聞かれるわけです。
各国では、診断に至らない人を診断に結びつけることと同様に、それ以上に、診断した後の人に対する具体的な生活支援、そういったもののきちんとした政策を進めるということが重視されています。
もう一つ申し上げますと、認知症の人に対する抗精神病薬の処方が各国で大きな問題になっております。抗精神病薬の処方は、認知症の人の心理・行動症状と呼ばれる興奮や幻覚、妄想に対して処方されるお薬でありますけれども、そういう処方が非常に多いことによって認知症の人が多く死亡しているということが問題になり、英国議会でも非常にスキャンダルとして議論された経緯があります。
こうした認知症の方々に対する各国が抱える問題は共通性を持ち、そういった問題を協力しながら、各国の政策が進展していっているという状況でございます。
さて、八ページをごらんください。
各国が認知症国家戦略によって推し進めようとしているのは、認知症の人がサービスの都合に合わせて循環させられる旧来のサービス中心モデルから、認知症の人のニーズに合わせて必要なサービスが届けられる当事者中心モデルへの転換であります。
これまで認知症の人やその御家族は、医療や介護のサービスがばらばらに分断されていて、そのサービスのはざまに落ちてしまい、結果として必要な支援や対応がおくれ、問題が増悪した後、入院、入所を余儀なくされてきました。こうした分断的、事後的、また収容的なサービスモデルからの脱却、すなわち、問題が増悪する前に、統合された適切な支援が認知症の人とその御家族にタイムリーに届けられるサービスモデルへの転換が、各国で強力に推進されているわけであります。
次の九ページをごらんください。
さて、こうした認知症国家戦略の国際動向を踏まえた上で、このたびの我が国の認知症国家戦略、新オレンジプランについて若干の考察を述べさせていただきます。
まず、前提として、我が国の高齢化率は二五%と世界首位であり、認知症国家戦略が打ち出されたタイミングとしては、早いとは言えない、遅かったと言わざるを得ません。しかしながら、このたび省庁横断的な推進体制のもとで国家戦略が打ち出されたことは、非常に大きな意義があると存じます。
その基本理念も、住みなれた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるために必要なことに的確に応えるというもので、各国同様に当事者中心モデルへの転換を目指そうとしています。この理念実現のための施策、七本柱の中でも、認知症の人やその家族の視点を重視し、施策の企画立案、評価への、当事者、御家族の参加を進めることが明記されていることは極めて大きな意義があるというふうに思います。
一方で、政策的に課題が残る部分も一部見られます。次のページをごらんください。
認知症の人の地域生活の継続が困難となる最大の要因は、先ほども申し上げましたように、認知機能の低下というよりも、不安感や焦燥感、幻覚や妄想、興奮などが出現する心理・行動症状というものが最大要因であります。この心理・行動症状が出現すると、家族の介護負担も急激に増してきます。こうした症状の出現に対して、早期に適切な支援がなされないことによって危機が発生し、地域生活の継続が困難になることが少なくありません。
この心理・行動症状は、不適切なケアの環境、環境変化によるストレス、言語化できない身体的な苦痛などが原因となっていることが少なくありません。各国の国家戦略においては、この心理・行動症状の出現をできる限り予防して、発生した場合には迅速に在宅でその問題を解決する仕組みが構築されています。
認知症国家戦略を持つヨーロッパ八カ国及びオーストラリアなどでも、この心理・行動症状に対する中心施策として、訪問型の医療チーム、すなわち、アウトリーチ型、出前型の医療チームによって、在宅で危機を回避、解決するサービスの普及が進んでおります。こうしたサービスの効果によって、認知症の人の精神科病院の入院が大幅に減少することが報告されています。
一方、国際的に見て異常な我が国の現状として、認知症の人が精神科病院に多く入院し、極めてその入院が長期化しているということがあります。平均在院日数が七百日以上または九百日以上との調査結果があり、認知症の方が精神科病院に入院したまま亡くなられるということも少なくないことが示唆されています。まさに、この新オレンジプランの掲げる理念と逆行する現状であります。精神科病院に入院する際の理由の九割以上が心理・行動症状であり、こうした危機を適切なタイミングで地域の中で解決するための対策が、諸外国以上に我が国では必要であります。
しかしながら、今回の新オレンジプランの中では、各国の認知症国家戦略の中で中心施策として位置づけられる訪問型の医療普及が明記されておらず、その点は大きな課題として残ったというふうに考えております。
次のページを御参照ください。
実は、この心理・行動症状に対して、在宅診療で対応していく試みが我が国においても始められています。
この、こころのホームクリニック世田谷と呼ばれるクリニックは、世田谷の烏山にございまして、二〇一三年の四月に開設されています。認知症や精神疾患を抱える人及びその御家族を在宅で支援、診療する専門クリニックとして今診療されておられまして、開設して一年三カ月で合計百四十七名の方が患者さんとしておられます。そのうち認知症の人が六一%を占めるということであります。認知症の在宅医療のニーズがとても高いということが、こういったことからもうかがえます。
このクリニックの強みは、各国の認知症国家戦略で行われている訪問型のサービスと同様に、二つの特徴があります。
一つは、いつでも相談できる、二十四時間、医師や看護師に電話がつながるということがポイントです。これによって家族介護者の方々は安心感を持たれて、その安心感が認知症の人にも伝わるのか、非常に御本人も安定するということがあります。
二つ目の強みは、タイムリーな訪問支援ができるということで、危機が発生し始めたときに在宅に行って、何が問題でこういう状態が起きているかをその場で見きわめて、その場で問題を解決する。それによって危機が収束し、入院に至らず在宅生活の継続が可能になるということであります。
こういった電話、それから迅速なアウトリーチで対応することによって、現在、定期外来受診が不能な状態にある重度の認知症の方七十一人のうち、精神科病院への入院が必要になった方が一名のみということであります。二十四時間の電話対応とアウトリーチで入院事例はまれとなり、地域生活の継続を効果的にサポートできるということが、こういった実践からも明らかとなっております。
次のページを御参照ください。
認知症国家戦略の目標を達成するために、理念を達成するためにということで、新オレンジプランによって構築された省庁横断的な認知症国家戦略の推進体制を生かして、施設収容型のケアモデルから地域包括型のケアモデルへ着実な転換を果たしていただきたいと願っております。
認知症国家戦略の進捗プロセスやアウトカムについて、当事者や介護者の視点による評価を。冒頭御紹介したイギリスのように、国民が状況がよくなったと実感できるような進捗プロセス管理、アウトカム評価が必要だというふうに思います。
最後に、先ほど申し上げました、認知症の人を在宅で支えるための訪問型、出前型の医療サービスの普及を推進するための施策を、診療報酬等の改定を含めて具体化していくことが今後の課題であるというふうに考えております。
以上でございます。どうもありがとうございました。拍手
大
原
原英史#8
○原公述人 おはようございます。政策コンサルティングの会社を運営しております、原と申します。
本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、政府の国家戦略特区のワーキンググループの委員、また大阪府、大阪市の特別顧問なども務めており、国や地方の規制改革、行政改革などにかかわってきております。
きょうは、特に規制改革、行政改革の観点からお話をさせていただきたいと思います。
まず第一に、安倍内閣の施政方針演説によれば、今国会は改革断行国会と位置づけられていると承知しております。アベノミクスの第三の矢、つまり成長戦略を進める上で、いわゆる岩盤規制の改革は特に重要と考えます。
お配りしております資料の二ページで、ちょっと字が細かくて恐縮ですが、世銀グループの公表している世界各国ガバナンス指標のデータをお示しいたしました。
ここでは、政府のパフォーマンスに関する四つの指標、政府の有効性、汚職の抑制、法の支配、規制の質という四つについて、世界各国の中でのトップテン、それから日本を含む主要先進国の順位を示しています。
全般に我が国政府は、世界の中では比較的頑張っている方だと思います。政府の有効性は、この指標では世界で十四位。それから、汚職の抑制については十六位。法の支配については二十三位であります。これは全体で二百数十カ国の中での順位ですが、こういった順位です。トップテンにこそ入っていませんが、欧米の主要先進国の中では上位に位置しているわけであります。
一方で、もう一つの指標である規制の質、これは、健全な規制を導入し、民間セクターの発展を促進できているかという指標なわけでありますが、これについては順位が三十六位とかなり低くなります。主要先進国と比べましても最底辺に位置しているということであります。つまり、ここが日本政府のいわば苦手分野なわけであります。
ですから、いわゆる岩盤規制と言われるような、十年も二十年も、こんな規制はおかしいと言われながら岩盤のように維持されている規制が残っているわけであります。
安倍内閣が成長戦略の根幹として二年で岩盤規制を打ち破るという方針を掲げられていることは、高く評価されるべきと考えます。これまでの政権でさまざまな成長戦略が策定されてきておりますが、いずれも、これからの成長分野として、農業、あるいは健康・医療、環境・エネルギーといった分野を掲げて政策的な支援、誘導が図られてきました。しかし、残念ながら、いずれの分野もいまだに、これからの成長分野のままであると思います。
これは理由は簡単で、これらの分野はいずれも岩盤規制の残されている代表的な領域だからであります。新規参入や新たな創意工夫が規制によって制約されている状態のまま、幾らこれからの成長分野であると旗を振っても、成長は難しいということだと思われます。
問題は、岩盤規制改革が本当に実現できるかどうかです。二年で岩盤規制を打ち破るという表明を安倍総理がなさったのは、昨年の一月、スイスのダボス会議でのスピーチでありました。ということは、残された期間はあと十カ月しかありません。
これまで一年数カ月の間に、実現にまでたどり着いた改革はまだ決して多くはありません。既に法律が成立したものという意味では、昨年の通常国会での電力改革の第二弾、つまり小売参入の自由化ぐらいであります。農協改革、患者申し出療養、労働時間規制改革、電力改革の第三弾、発送電分離といったものについては、今国会でこれから審議される段階であります。
さらに、まだ残されている課題も少なくありません。例えば、長年の懸案となっている、農業分野でいえば株式会社の農地所有、医療の分野であれば医療機器、医薬品の承認の迅速化、雇用の分野では同一労働同一賃金の実現といったようなものが残されています。こうした課題に、残り一年弱の間にどのタイミングでどのように取り組んでいくのか、早急に見通しを明確にすることが重要であると考えます。
国家戦略特区については、私も政府のワーキンググループの一員として運営にかかわってきております。兵庫県養父市での農業改革、福岡市での創業促進のための改革といった先鋭的な取り組みのほかに、東京圏、関西圏といった広域的なエリアでの制度運用も本格化してきています。
国家戦略特区は、いきなり全国規模では困難な岩盤規制を、まずは地域限定で実験的に改革していくという仕組みであります。この仕組みを最大限に活用して、さらに強力に進めていけるように、私もできる限りのお手伝いをしていきたいと考えております。
改革を促進するための予算への転換という視点も重要と考えます。
いわゆる岩盤規制と言われる領域では、多くの場合、規制によって利益を得ている利益集団が存在し、そのために改革がなかなか進まないという実態があります。これまで得られていた利益を補填ないし補償するということで改革が進むのであれば、有力な手法になると思います。
改革すべき状態を維持することにお金を使うのではなく、円滑に改革を進めるためにお金を使うということに重きを置くべきではないかと考えます。
ただ、規制改革会議や国家戦略特区での規制改革の議論は、予算の査定、見直し、あるいは要求といったスケジュールとは必ずしも合致せずに、別トラックでなされております。このため、規制改革の議論と予算の連動は不足しがちであります。関係省庁との規制改革の議論の進展とも連動して、機動的に予算の見直し、手当てができるような仕組みなども検討されるべきではないかと考えます。
二点目に、成長戦略の前提としての公務員制度改革の重要性についてお話ししたいと思います。
別紙の二でお示ししておりますが、これはお配りしている資料の三枚目ですが、ここでは、政策の製造過程である官僚機構に問題があると、そこからでき上がってくる政策にもゆがみが生じるということを示しています。
例えば、よく言われます縦割り、セクショナリズムという問題は、役所の各部署がそれぞれ所管をしている特定利益が優先されるということにつながります。それから、よく言われます年功序列、あるいは裏からいえば能力・実績主義の不徹底という問題は、事なかれ主義であるとか人材の死蔵、組織優先の意識といったことをもたらし、これらがいずれも政策のゆがみにつながっていくわけであります。それで、このゆがみの代表例が岩盤規制ということであります。
公務員制度改革は、一般には成長戦略とは無関係と捉えられがちであります。しかし、こうして見ると、公務員制度改革は、政策のゆがみの構造を取り除くための改革であって、実は成長戦略の重要な柱と考えられるわけであります。
安倍内閣の発足以降、二〇〇八年に制定された国家公務員制度改革基本法以来の懸案であった内閣人事局が創設され、昨年から稼働を始めました。長い間停滞した公務員制度改革がようやく前進しているということは評価してよいと思います。一方で、制度改革が本当に成果をもたらすのかどうかは運用次第であります。
かつて橋本龍太郎内閣のもとで推進された橋本行革は、中央省庁再編と並んで内閣機能の強化が重要な柱とされていました。内閣府の設置、経済財政諮問会議の創設、民間人の登用のための制度の新設など、さまざまな制度改革がなされました。
しかし、この制度改革が本当の真価を発揮したのは、その後、小泉内閣で制度がフル活用され、首相主導の枠組みが運用上確立していったときだったと考えられます。
その意味で、内閣人事局、大臣補佐官制度といった新たに導入された仕組みについて、その真価を発揮できるのかどうか、運用が問われている段階だと考えます。
現状で心配な点もあります。
例えば、能力・実績主義の徹底のために二〇〇七年の国家公務員法改正で導入された新たな人事評価制度の運用状況です。
新たな人事評価制度では、一般職員の場合、SからDまでの五段階評価がなされます。Sが最上位、Bが標準、Dが最下位であります。
現実になされている評価を見ますと、これは総務省で二〇一四年に出されている報告書から引用しておりますが、五段階のうち、上から二番目のAが五〇%を超え、一方で、Cつまり「通常より物足りない」という評価は〇・五%、Dつまり「はるかに及ばない」という評価は〇・一%ということであります。これはどう考えられるでしょうか。
私は、今の会社をつくる前に二十年以上官庁に勤め、その後の仕事の中でも役所の人たちと仕事をする機会を多く持っておりますが、国家公務員三十万人のうち、物足りないに相当する方が千人に五、六人しかいないというのは、私の実感とはかなり異なります。
また、幹部職員については、これはAからCの三段階評価になっています。実際の評価を見ると、上位のAが八割、Cは〇・〇%ということであります。
もちろん、幹部に上り詰めた方々ですから全般にレベルが高いことは、そのとおりだと思います。しかし、そうはいっても、一旦幹部に登用されたが職責を十分果たせていませんという人が皆無であるというのは、これまた私の実感とは異なります。また、求められる水準を上回る業績、Aということですが、こういう方が八割もいるとしたら、政府はもっとすばらしく機能しているのではないかと思います。
要するに、現状の人事評価の実態は、だめな人にだめだということをせずに、余り差をつけないようにしているということだと思います。せっかく新しい人事評価制度を導入しても、これでは効果が十分にはあらわれません。
役所組織の大きな問題の一つは、頑張っても頑張らなくても余り差がつかず、同じように昇進し、同じように給与が上がっていくということであります。こうした組織では、どうしても頑張らない人の比率がふえてしまいがちです。組織内に頑張らない人がふえれば、政府が十分に機能を果たせない、発揮できない、それだけでなく、公務員人件費の無駄が生まれるわけであります。
こうした人事運用は、国に限ったことではありません。地方自治体でも同様の問題があります。能力・実績主義の不徹底によって、日本全国で莫大な公務員人件費の無駄がもたらされているということであります。
この関連で、私もかかわりました大阪府、大阪市での取り組み例にも触れておきたいと思います。
大阪府、大阪市では、二〇一二年に職員基本条例を制定し、能力・実績主義の徹底、人事評価に相対評価の導入ということを定めています。大阪府、大阪市の場合も、やはり形式上は五段階評価がなされていましたが、かつては、C評価、D評価は、先ほどと同様、千人に数人、一万人に数人といったレベルでありました。これを解消するために、条例で、Sは五%、Aは二〇%、Bは六〇%、Cは一〇%、Dは五%という枠を定め、既に運用がなされています。
人事評価について、絶対評価がいいのか相対評価がいいのか、本来どちらが適切なのかという問題は議論の分かれる点であります。しかし、少なくとも、低い評価をつけないことが常態化してしまっている現状を変えるためには、国でもこうした手だてが検討されてよいのではないかと考えます。
こうした課題を含めて、創設された内閣人事局を核として、これまでの公務員制度改革の成果が最大限に発揮されるように、運用面での改革推進が期待されます。
第三に、地方分権改革について触れたいと思います。
規制改革の議論は、具体論のレベルでは、しばしば地方分権と表裏一体です。というのは、地域での固有の事情、独自の創意工夫が、国が全国一律で定めている法律によって阻まれるということがしばしば問題を引き起こしているからです。この意味で、地方分権改革も成長戦略の重要な柱の一つと考えられるわけであります。
規制改革や公務員制度改革と同様に、地方分権改革も長年にわたって取り組みがなされ、第一次分権改革、第二次分権改革を経て、権限移譲、義務づけ、枠づけの見直しなどが進められてきました。しかし、例えば、出先機関改革などでは課題がまだ多く残されていますし、その先の道州制に向けて道はまだ遠い状況と考えられます。
これまでの分権改革でどうしても限界があったのは、地方自治体側の行政機能の限界、つまり、本当に委ねて大丈夫なのかという問題にしばしば突き当たったためではないかと考えられます。
今後、分権改革をさらに進めていくということのためには、地方自治体の行政機能を高めることが必須だと考えます。そして、横並び、一律方式で分権を進めていくということではなく、行政機能を高めるための取り組みを突出して進めた自治体には、突出して権限や財源を移譲するといった進め方に切りかえていくことも必要と考えます。
中央官庁から県庁、市役所への分権だけでなく、ルール設定の分権、つまり、国会から地方議会への分権も重要です。このためには、地方議会の機能強化も重要と考えます。
昨年二〇一四年は、地方議員の質を問われる問題というのが続出しましたが、地方議員の質の向上は、分権を進める観点でも避けて通ることのできない課題と考えます。
こうした観点で、従来から地方制度調査会などでもなされている議論として、地方議会は土日、夜間開催にして、普通の仕事をしている人がそのまま議員になれるようにしたらよいのではないかというものがあります。
欧米諸国の場合、特に基礎自治体の議会の場合、土日、夜間に開催し、普通の仕事をしている人が普通に議員も務めるということが広く見られます。そのかわり、報酬は、無報酬あるいは年間数十万円の実費程度ということであります。
一方、日本の場合、地方議員への支出額は、報酬のほか、期末手当、政務活動費、費用弁償を合算して試算すると、年間総計二千七百億円程度という金額であります。これは諸外国と比べるとかなり突出した支出額であります。それでも、日本の地方議会がその分だけ突出してよく機能しているということならばまだよいのですが、決してそうは言えないと思います。
これは朝日新聞の二〇一一年の調査結果ですが、例えば、首長の提出した議案を全く修正、否決したことのない丸のみ議会が五〇%、議員提案の政策条例が一本もない無提案議会が九一%といった状況とされています。
むしろ、日本の場合は、地方議員に相当額の支出をしているがゆえに、市町村議会でも、議員になるといったら、会社はやめて、全てをなげうって立候補するということが一般的であります。その結果、議員になろうとする人材の幅を狭めてしまい、かえって議会の機能を弱めているという面もあるのではないかと考えられます。
地方制度調査会では、今から十年前の二〇〇五年でありますが、住民を代表する議会の議員に幅広い人材を確保できるように、女性や勤労者が議員として活動する上での便宜に資するよう、休日、夜間などに議会を開催するといった運用上の工夫をすべきである、また制度面では、勤労者が議員に立候補でき、また議員として活動することができるような環境の整備、さらには地方公共団体の議会の議員と当該団体以外の地方公共団体の職員との兼職を可能にする、こういったことも検討すべき課題であるという答申がなされています。
しかし、これも岩盤の一つと言うべきか、その後、普通の人がそのまま議員になれるようにするといった改革は全く進んでいません。地方議員の質を高めて地方議会の機能を強化していくというためには、こうした改革も前進させる必要があるのではないかと考えます。
最後に、四点目でございますが、改革推進体制全般についてお話ししたいと思います。
かつての一九六〇年代の第一次臨調、それから八〇年代の第二次臨調から橋本行革のころまでは、行政改革というのは今よりも幅の広い概念でありました。当時は財政再建、行政機構改革、特殊法人改革、公務員制度改革、規制改革、地方分権改革といった課題に包括的に取り組みがなされていました。
九〇年代半ばごろから、規制改革、分権改革など、それぞれの課題への本格的な取り組みが進む中で、それぞれ専門の担当部局が独立して強化されていきました。これは決して悪いことではありません。しかし、反面では、改革の細分化という面もあったと思います。
それでも、例えば二〇〇〇年代の前半には、初期の経済財政諮問会議がさまざまな改革全般のエンジンとして機能し、ここが統合の役割を果たしていたといったこともありました。
現時点で見ますと、この行政改革の抱える大きな問題の一つは、改革が細分化されていて、これを束ねて統合的に推進する機能が欠落しているということではないかと考えられます。行政改革、規制改革、地方創生、国家戦略特区、産業競争力強化、こういったそれぞれの課題についてそれぞれ会議体が設けられ、事務局が置かれていますが、一方で、これらを束ねる機能というのは不十分であります。これは、時に改革勢力の分断をもたらします。
私が実際に国家戦略特区のワーキンググループなどで関係省庁との協議をしている中でも、関係省庁側から、それは地方分権の方で対応していますとか、あるいは、それは規制改革会議で議論をしていますといった反応がなされることがしばしばあります。規制改革、地方分権改革、国家戦略特区といった取り組みは、本来密接に関連する一体の課題であるにもかかわらず、改革担当部局の側がばらばらになって連携不足になっていることは、改革にとって決して有利に働きません。事務局間の連携強化、会議体の合同開催といったことは一部なされつつありますが、そうはいっても、役所の縦割り組織での水平的連携にはやはり限界もあります。
今後、限られた期間の中で大改革を推進していくということに向けては、やはり、かつてあったような改革全般を統合的に束ねる体制をつくることで改革推進をさらに加速し、深めるということが必要ではないかと考えます。
以上、今後の予算審議で多少なりとも御参考になれば幸いです。
御清聴大変ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →本日は、このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、政府の国家戦略特区のワーキンググループの委員、また大阪府、大阪市の特別顧問なども務めており、国や地方の規制改革、行政改革などにかかわってきております。
きょうは、特に規制改革、行政改革の観点からお話をさせていただきたいと思います。
まず第一に、安倍内閣の施政方針演説によれば、今国会は改革断行国会と位置づけられていると承知しております。アベノミクスの第三の矢、つまり成長戦略を進める上で、いわゆる岩盤規制の改革は特に重要と考えます。
お配りしております資料の二ページで、ちょっと字が細かくて恐縮ですが、世銀グループの公表している世界各国ガバナンス指標のデータをお示しいたしました。
ここでは、政府のパフォーマンスに関する四つの指標、政府の有効性、汚職の抑制、法の支配、規制の質という四つについて、世界各国の中でのトップテン、それから日本を含む主要先進国の順位を示しています。
全般に我が国政府は、世界の中では比較的頑張っている方だと思います。政府の有効性は、この指標では世界で十四位。それから、汚職の抑制については十六位。法の支配については二十三位であります。これは全体で二百数十カ国の中での順位ですが、こういった順位です。トップテンにこそ入っていませんが、欧米の主要先進国の中では上位に位置しているわけであります。
一方で、もう一つの指標である規制の質、これは、健全な規制を導入し、民間セクターの発展を促進できているかという指標なわけでありますが、これについては順位が三十六位とかなり低くなります。主要先進国と比べましても最底辺に位置しているということであります。つまり、ここが日本政府のいわば苦手分野なわけであります。
ですから、いわゆる岩盤規制と言われるような、十年も二十年も、こんな規制はおかしいと言われながら岩盤のように維持されている規制が残っているわけであります。
安倍内閣が成長戦略の根幹として二年で岩盤規制を打ち破るという方針を掲げられていることは、高く評価されるべきと考えます。これまでの政権でさまざまな成長戦略が策定されてきておりますが、いずれも、これからの成長分野として、農業、あるいは健康・医療、環境・エネルギーといった分野を掲げて政策的な支援、誘導が図られてきました。しかし、残念ながら、いずれの分野もいまだに、これからの成長分野のままであると思います。
これは理由は簡単で、これらの分野はいずれも岩盤規制の残されている代表的な領域だからであります。新規参入や新たな創意工夫が規制によって制約されている状態のまま、幾らこれからの成長分野であると旗を振っても、成長は難しいということだと思われます。
問題は、岩盤規制改革が本当に実現できるかどうかです。二年で岩盤規制を打ち破るという表明を安倍総理がなさったのは、昨年の一月、スイスのダボス会議でのスピーチでありました。ということは、残された期間はあと十カ月しかありません。
これまで一年数カ月の間に、実現にまでたどり着いた改革はまだ決して多くはありません。既に法律が成立したものという意味では、昨年の通常国会での電力改革の第二弾、つまり小売参入の自由化ぐらいであります。農協改革、患者申し出療養、労働時間規制改革、電力改革の第三弾、発送電分離といったものについては、今国会でこれから審議される段階であります。
さらに、まだ残されている課題も少なくありません。例えば、長年の懸案となっている、農業分野でいえば株式会社の農地所有、医療の分野であれば医療機器、医薬品の承認の迅速化、雇用の分野では同一労働同一賃金の実現といったようなものが残されています。こうした課題に、残り一年弱の間にどのタイミングでどのように取り組んでいくのか、早急に見通しを明確にすることが重要であると考えます。
国家戦略特区については、私も政府のワーキンググループの一員として運営にかかわってきております。兵庫県養父市での農業改革、福岡市での創業促進のための改革といった先鋭的な取り組みのほかに、東京圏、関西圏といった広域的なエリアでの制度運用も本格化してきています。
国家戦略特区は、いきなり全国規模では困難な岩盤規制を、まずは地域限定で実験的に改革していくという仕組みであります。この仕組みを最大限に活用して、さらに強力に進めていけるように、私もできる限りのお手伝いをしていきたいと考えております。
改革を促進するための予算への転換という視点も重要と考えます。
いわゆる岩盤規制と言われる領域では、多くの場合、規制によって利益を得ている利益集団が存在し、そのために改革がなかなか進まないという実態があります。これまで得られていた利益を補填ないし補償するということで改革が進むのであれば、有力な手法になると思います。
改革すべき状態を維持することにお金を使うのではなく、円滑に改革を進めるためにお金を使うということに重きを置くべきではないかと考えます。
ただ、規制改革会議や国家戦略特区での規制改革の議論は、予算の査定、見直し、あるいは要求といったスケジュールとは必ずしも合致せずに、別トラックでなされております。このため、規制改革の議論と予算の連動は不足しがちであります。関係省庁との規制改革の議論の進展とも連動して、機動的に予算の見直し、手当てができるような仕組みなども検討されるべきではないかと考えます。
二点目に、成長戦略の前提としての公務員制度改革の重要性についてお話ししたいと思います。
別紙の二でお示ししておりますが、これはお配りしている資料の三枚目ですが、ここでは、政策の製造過程である官僚機構に問題があると、そこからでき上がってくる政策にもゆがみが生じるということを示しています。
例えば、よく言われます縦割り、セクショナリズムという問題は、役所の各部署がそれぞれ所管をしている特定利益が優先されるということにつながります。それから、よく言われます年功序列、あるいは裏からいえば能力・実績主義の不徹底という問題は、事なかれ主義であるとか人材の死蔵、組織優先の意識といったことをもたらし、これらがいずれも政策のゆがみにつながっていくわけであります。それで、このゆがみの代表例が岩盤規制ということであります。
公務員制度改革は、一般には成長戦略とは無関係と捉えられがちであります。しかし、こうして見ると、公務員制度改革は、政策のゆがみの構造を取り除くための改革であって、実は成長戦略の重要な柱と考えられるわけであります。
安倍内閣の発足以降、二〇〇八年に制定された国家公務員制度改革基本法以来の懸案であった内閣人事局が創設され、昨年から稼働を始めました。長い間停滞した公務員制度改革がようやく前進しているということは評価してよいと思います。一方で、制度改革が本当に成果をもたらすのかどうかは運用次第であります。
かつて橋本龍太郎内閣のもとで推進された橋本行革は、中央省庁再編と並んで内閣機能の強化が重要な柱とされていました。内閣府の設置、経済財政諮問会議の創設、民間人の登用のための制度の新設など、さまざまな制度改革がなされました。
しかし、この制度改革が本当の真価を発揮したのは、その後、小泉内閣で制度がフル活用され、首相主導の枠組みが運用上確立していったときだったと考えられます。
その意味で、内閣人事局、大臣補佐官制度といった新たに導入された仕組みについて、その真価を発揮できるのかどうか、運用が問われている段階だと考えます。
現状で心配な点もあります。
例えば、能力・実績主義の徹底のために二〇〇七年の国家公務員法改正で導入された新たな人事評価制度の運用状況です。
新たな人事評価制度では、一般職員の場合、SからDまでの五段階評価がなされます。Sが最上位、Bが標準、Dが最下位であります。
現実になされている評価を見ますと、これは総務省で二〇一四年に出されている報告書から引用しておりますが、五段階のうち、上から二番目のAが五〇%を超え、一方で、Cつまり「通常より物足りない」という評価は〇・五%、Dつまり「はるかに及ばない」という評価は〇・一%ということであります。これはどう考えられるでしょうか。
私は、今の会社をつくる前に二十年以上官庁に勤め、その後の仕事の中でも役所の人たちと仕事をする機会を多く持っておりますが、国家公務員三十万人のうち、物足りないに相当する方が千人に五、六人しかいないというのは、私の実感とはかなり異なります。
また、幹部職員については、これはAからCの三段階評価になっています。実際の評価を見ると、上位のAが八割、Cは〇・〇%ということであります。
もちろん、幹部に上り詰めた方々ですから全般にレベルが高いことは、そのとおりだと思います。しかし、そうはいっても、一旦幹部に登用されたが職責を十分果たせていませんという人が皆無であるというのは、これまた私の実感とは異なります。また、求められる水準を上回る業績、Aということですが、こういう方が八割もいるとしたら、政府はもっとすばらしく機能しているのではないかと思います。
要するに、現状の人事評価の実態は、だめな人にだめだということをせずに、余り差をつけないようにしているということだと思います。せっかく新しい人事評価制度を導入しても、これでは効果が十分にはあらわれません。
役所組織の大きな問題の一つは、頑張っても頑張らなくても余り差がつかず、同じように昇進し、同じように給与が上がっていくということであります。こうした組織では、どうしても頑張らない人の比率がふえてしまいがちです。組織内に頑張らない人がふえれば、政府が十分に機能を果たせない、発揮できない、それだけでなく、公務員人件費の無駄が生まれるわけであります。
こうした人事運用は、国に限ったことではありません。地方自治体でも同様の問題があります。能力・実績主義の不徹底によって、日本全国で莫大な公務員人件費の無駄がもたらされているということであります。
この関連で、私もかかわりました大阪府、大阪市での取り組み例にも触れておきたいと思います。
大阪府、大阪市では、二〇一二年に職員基本条例を制定し、能力・実績主義の徹底、人事評価に相対評価の導入ということを定めています。大阪府、大阪市の場合も、やはり形式上は五段階評価がなされていましたが、かつては、C評価、D評価は、先ほどと同様、千人に数人、一万人に数人といったレベルでありました。これを解消するために、条例で、Sは五%、Aは二〇%、Bは六〇%、Cは一〇%、Dは五%という枠を定め、既に運用がなされています。
人事評価について、絶対評価がいいのか相対評価がいいのか、本来どちらが適切なのかという問題は議論の分かれる点であります。しかし、少なくとも、低い評価をつけないことが常態化してしまっている現状を変えるためには、国でもこうした手だてが検討されてよいのではないかと考えます。
こうした課題を含めて、創設された内閣人事局を核として、これまでの公務員制度改革の成果が最大限に発揮されるように、運用面での改革推進が期待されます。
第三に、地方分権改革について触れたいと思います。
規制改革の議論は、具体論のレベルでは、しばしば地方分権と表裏一体です。というのは、地域での固有の事情、独自の創意工夫が、国が全国一律で定めている法律によって阻まれるということがしばしば問題を引き起こしているからです。この意味で、地方分権改革も成長戦略の重要な柱の一つと考えられるわけであります。
規制改革や公務員制度改革と同様に、地方分権改革も長年にわたって取り組みがなされ、第一次分権改革、第二次分権改革を経て、権限移譲、義務づけ、枠づけの見直しなどが進められてきました。しかし、例えば、出先機関改革などでは課題がまだ多く残されていますし、その先の道州制に向けて道はまだ遠い状況と考えられます。
これまでの分権改革でどうしても限界があったのは、地方自治体側の行政機能の限界、つまり、本当に委ねて大丈夫なのかという問題にしばしば突き当たったためではないかと考えられます。
今後、分権改革をさらに進めていくということのためには、地方自治体の行政機能を高めることが必須だと考えます。そして、横並び、一律方式で分権を進めていくということではなく、行政機能を高めるための取り組みを突出して進めた自治体には、突出して権限や財源を移譲するといった進め方に切りかえていくことも必要と考えます。
中央官庁から県庁、市役所への分権だけでなく、ルール設定の分権、つまり、国会から地方議会への分権も重要です。このためには、地方議会の機能強化も重要と考えます。
昨年二〇一四年は、地方議員の質を問われる問題というのが続出しましたが、地方議員の質の向上は、分権を進める観点でも避けて通ることのできない課題と考えます。
こうした観点で、従来から地方制度調査会などでもなされている議論として、地方議会は土日、夜間開催にして、普通の仕事をしている人がそのまま議員になれるようにしたらよいのではないかというものがあります。
欧米諸国の場合、特に基礎自治体の議会の場合、土日、夜間に開催し、普通の仕事をしている人が普通に議員も務めるということが広く見られます。そのかわり、報酬は、無報酬あるいは年間数十万円の実費程度ということであります。
一方、日本の場合、地方議員への支出額は、報酬のほか、期末手当、政務活動費、費用弁償を合算して試算すると、年間総計二千七百億円程度という金額であります。これは諸外国と比べるとかなり突出した支出額であります。それでも、日本の地方議会がその分だけ突出してよく機能しているということならばまだよいのですが、決してそうは言えないと思います。
これは朝日新聞の二〇一一年の調査結果ですが、例えば、首長の提出した議案を全く修正、否決したことのない丸のみ議会が五〇%、議員提案の政策条例が一本もない無提案議会が九一%といった状況とされています。
むしろ、日本の場合は、地方議員に相当額の支出をしているがゆえに、市町村議会でも、議員になるといったら、会社はやめて、全てをなげうって立候補するということが一般的であります。その結果、議員になろうとする人材の幅を狭めてしまい、かえって議会の機能を弱めているという面もあるのではないかと考えられます。
地方制度調査会では、今から十年前の二〇〇五年でありますが、住民を代表する議会の議員に幅広い人材を確保できるように、女性や勤労者が議員として活動する上での便宜に資するよう、休日、夜間などに議会を開催するといった運用上の工夫をすべきである、また制度面では、勤労者が議員に立候補でき、また議員として活動することができるような環境の整備、さらには地方公共団体の議会の議員と当該団体以外の地方公共団体の職員との兼職を可能にする、こういったことも検討すべき課題であるという答申がなされています。
しかし、これも岩盤の一つと言うべきか、その後、普通の人がそのまま議員になれるようにするといった改革は全く進んでいません。地方議員の質を高めて地方議会の機能を強化していくというためには、こうした改革も前進させる必要があるのではないかと考えます。
最後に、四点目でございますが、改革推進体制全般についてお話ししたいと思います。
かつての一九六〇年代の第一次臨調、それから八〇年代の第二次臨調から橋本行革のころまでは、行政改革というのは今よりも幅の広い概念でありました。当時は財政再建、行政機構改革、特殊法人改革、公務員制度改革、規制改革、地方分権改革といった課題に包括的に取り組みがなされていました。
九〇年代半ばごろから、規制改革、分権改革など、それぞれの課題への本格的な取り組みが進む中で、それぞれ専門の担当部局が独立して強化されていきました。これは決して悪いことではありません。しかし、反面では、改革の細分化という面もあったと思います。
それでも、例えば二〇〇〇年代の前半には、初期の経済財政諮問会議がさまざまな改革全般のエンジンとして機能し、ここが統合の役割を果たしていたといったこともありました。
現時点で見ますと、この行政改革の抱える大きな問題の一つは、改革が細分化されていて、これを束ねて統合的に推進する機能が欠落しているということではないかと考えられます。行政改革、規制改革、地方創生、国家戦略特区、産業競争力強化、こういったそれぞれの課題についてそれぞれ会議体が設けられ、事務局が置かれていますが、一方で、これらを束ねる機能というのは不十分であります。これは、時に改革勢力の分断をもたらします。
私が実際に国家戦略特区のワーキンググループなどで関係省庁との協議をしている中でも、関係省庁側から、それは地方分権の方で対応していますとか、あるいは、それは規制改革会議で議論をしていますといった反応がなされることがしばしばあります。規制改革、地方分権改革、国家戦略特区といった取り組みは、本来密接に関連する一体の課題であるにもかかわらず、改革担当部局の側がばらばらになって連携不足になっていることは、改革にとって決して有利に働きません。事務局間の連携強化、会議体の合同開催といったことは一部なされつつありますが、そうはいっても、役所の縦割り組織での水平的連携にはやはり限界もあります。
今後、限られた期間の中で大改革を推進していくということに向けては、やはり、かつてあったような改革全般を統合的に束ねる体制をつくることで改革推進をさらに加速し、深めるということが必要ではないかと考えます。
以上、今後の予算審議で多少なりとも御参考になれば幸いです。
御清聴大変ありがとうございました。拍手
大
大
星
星野剛士#11
○星野委員 おはようございます。自由民主党の星野剛士でございます。
本日は、大変お忙しい中、衆議院の予算委員会公聴会にお出ましをいただきまして、また大変貴重な御意見をいただきまして、心から感謝をしております。まことにありがとうございます。
それでは、時間も限られておりますので、お二人、大和総研の鈴木公述人と、日本大学、これは私の母校でもありますが、水野公述人に順次御質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず、鈴木公述人に数点お伺いをしたいというふうに思います。
今、この委員会で審議をしている来年度予算案について肯定的な御評価もいただきました。そして、公述人の意見表明の中で、歳出改革、歳入改革、これは同時に二兎を追わなければうまくいかないという点についても、大変参考になりました。
どちらかというと、予算または経済運営、財政、どちらかに偏った議論が非常に大きく、とにかく、財政再建のためにはこれを削りこれも削り、あとは増収でという、何かやはりバランスを欠いた、私は、経済は生き物だと思いますし、その経済に立脚して財政というものもつくられていくわけでありますから、そこはしっかりとバランスをとりながら考えていかないといけないんだろうというふうに思います。
そして、本日は法人税の改革について焦点を少し絞らせていただいて、御質問をさせていただきたいと思います。
法人税の実効税率は、世界を見渡しますと、OECD諸国平均で二五%、英国はキャメロン首相が二〇%への引き下げを明言しておりますし、現在最も税率の高い米国も連邦法人税を三五%から二八%に引き下げ、特に製造業については二五%にする予定であります。日本では、今、東京都で三五・六四%、来年度には二・五一%を引き下げ三二・一一%、そして二十八年には三一・三三%とする予定であります。そして、数年内に三〇%を切る水準まで引き下げる予定を我々は考えております。
ただし、私は、この程度の水準で国際競争を勝ち抜くことができるのか、大変疑問を持っております。安倍総理は、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す、国際的に遜色のない水準へ法人税改革を進めていくと発言をされております。
そこで、鈴木公述人にお伺いをしたいと思います。
立地競争力強化の観点から、日本は法人実効税率を国際的に遜色のない水準にすべきだと考えますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。あわせて、法人実効税率の効果を最大限に発揮するためには、制度・規制改革やコーポレートガバナンスの強化等が必要とのお考えですが、これらを実施したと想定する構造変化シナリオでは、実質GDPをどの程度押し上げる可能性があるとお考えになっているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
この発言だけを見る →本日は、大変お忙しい中、衆議院の予算委員会公聴会にお出ましをいただきまして、また大変貴重な御意見をいただきまして、心から感謝をしております。まことにありがとうございます。
それでは、時間も限られておりますので、お二人、大和総研の鈴木公述人と、日本大学、これは私の母校でもありますが、水野公述人に順次御質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず、鈴木公述人に数点お伺いをしたいというふうに思います。
今、この委員会で審議をしている来年度予算案について肯定的な御評価もいただきました。そして、公述人の意見表明の中で、歳出改革、歳入改革、これは同時に二兎を追わなければうまくいかないという点についても、大変参考になりました。
どちらかというと、予算または経済運営、財政、どちらかに偏った議論が非常に大きく、とにかく、財政再建のためにはこれを削りこれも削り、あとは増収でという、何かやはりバランスを欠いた、私は、経済は生き物だと思いますし、その経済に立脚して財政というものもつくられていくわけでありますから、そこはしっかりとバランスをとりながら考えていかないといけないんだろうというふうに思います。
そして、本日は法人税の改革について焦点を少し絞らせていただいて、御質問をさせていただきたいと思います。
法人税の実効税率は、世界を見渡しますと、OECD諸国平均で二五%、英国はキャメロン首相が二〇%への引き下げを明言しておりますし、現在最も税率の高い米国も連邦法人税を三五%から二八%に引き下げ、特に製造業については二五%にする予定であります。日本では、今、東京都で三五・六四%、来年度には二・五一%を引き下げ三二・一一%、そして二十八年には三一・三三%とする予定であります。そして、数年内に三〇%を切る水準まで引き下げる予定を我々は考えております。
ただし、私は、この程度の水準で国際競争を勝ち抜くことができるのか、大変疑問を持っております。安倍総理は、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す、国際的に遜色のない水準へ法人税改革を進めていくと発言をされております。
そこで、鈴木公述人にお伺いをしたいと思います。
立地競争力強化の観点から、日本は法人実効税率を国際的に遜色のない水準にすべきだと考えますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。あわせて、法人実効税率の効果を最大限に発揮するためには、制度・規制改革やコーポレートガバナンスの強化等が必要とのお考えですが、これらを実施したと想定する構造変化シナリオでは、実質GDPをどの程度押し上げる可能性があるとお考えになっているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
鈴
鈴木準#12
○鈴木公述人 御質問ありがとうございます。お答え申し上げます。
法人税改革に関してということでございますが、私は、国際的な調和といいますか、企業はグローバルに行動しておりますので、諸外国の動きを見ながら法人税率を国際的に調和させていくということが重要だと思います。ただ、一方で、引き下げ競争のようなことになりますと、税の世界でそれはどうなのかということにもなってまいりますので、そこのバランスが難しいわけでございます。
その効果を最大限発揮させていくためには、結局、法人税率引き下げだけでは恐らく難しいのだろう、今も先生おっしゃっていただきましたけれども、やはり規制改革を行って新しく投資をしていけるような市場をつくっていく、あるいは、コーポレートガバナンスの改革をして企業経営がきちんとそれに応えていくような体制をつくっていくということが重要だというふうに思います。
さらに、全体として体系的な、政策体系が必要だということなんですが、その中には当然財政規律ということもございまして、財源をきちんと確保して税率を下げていく、つまり課税ベースを拡大するということだと思います。
その意味では、さらに申し上げると、いろいろな租税特別措置があって、本当の実効税率、本当の税負担率、表面上の実効税率ということではなくて租税特別措置も含めた本当の実効税率を考えた場合に、現状ですと、いろいろな業種によってかなり異なっております。最近の新しいビジネスというのはなかなか租税特別措置がかかっていない部分も多うございますので、結局、業種によって本当の実効税率がかなり違う。ですから、そこをできるだけイコールフッティングにする形で全体の税率を下げていく。
こういう戦略をとっていくことによって、なかなかこれはほかの政策とのバランスが難しいので、どれぐらいの数字かということは、いろいろな計算がございますけれども、かなり時間をかけてということであれば、それなりに大きな効果が出てくるのではないかというふうに考えております。
この発言だけを見る →法人税改革に関してということでございますが、私は、国際的な調和といいますか、企業はグローバルに行動しておりますので、諸外国の動きを見ながら法人税率を国際的に調和させていくということが重要だと思います。ただ、一方で、引き下げ競争のようなことになりますと、税の世界でそれはどうなのかということにもなってまいりますので、そこのバランスが難しいわけでございます。
その効果を最大限発揮させていくためには、結局、法人税率引き下げだけでは恐らく難しいのだろう、今も先生おっしゃっていただきましたけれども、やはり規制改革を行って新しく投資をしていけるような市場をつくっていく、あるいは、コーポレートガバナンスの改革をして企業経営がきちんとそれに応えていくような体制をつくっていくということが重要だというふうに思います。
さらに、全体として体系的な、政策体系が必要だということなんですが、その中には当然財政規律ということもございまして、財源をきちんと確保して税率を下げていく、つまり課税ベースを拡大するということだと思います。
その意味では、さらに申し上げると、いろいろな租税特別措置があって、本当の実効税率、本当の税負担率、表面上の実効税率ということではなくて租税特別措置も含めた本当の実効税率を考えた場合に、現状ですと、いろいろな業種によってかなり異なっております。最近の新しいビジネスというのはなかなか租税特別措置がかかっていない部分も多うございますので、結局、業種によって本当の実効税率がかなり違う。ですから、そこをできるだけイコールフッティングにする形で全体の税率を下げていく。
こういう戦略をとっていくことによって、なかなかこれはほかの政策とのバランスが難しいので、どれぐらいの数字かということは、いろいろな計算がございますけれども、かなり時間をかけてということであれば、それなりに大きな効果が出てくるのではないかというふうに考えております。
星
星野剛士#13
○星野委員 ありがとうございます。
次に、法人実効税率の引き下げの目的についてお伺いをしたいというふうに思います。
経済の好循環への寄与はもちろんですが、そもそも論としては、事業環境の国際的イコールフッティング、競争条件の不利を是正することが原点であると私は考えております。その競争条件とは、単に税率の問題だけではなくて課税ベースもあると念頭に置くべきではないかと私は思っております。今、公述人からも御指摘をいただきました。
今回の法人税改革では、厳しい財政制約の中で、欠損金の繰越控除制度の大幅縮減を初め、産業界に対して、世界と比較しても大変厳しい課税ベースの拡大がなされました。
そこで、御質問したいと思います。
今後、法人実効税率の引き下げを実施する上では、課税ベースも含めて国際的イコールフッティングを図るべきではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。
この発言だけを見る →次に、法人実効税率の引き下げの目的についてお伺いをしたいというふうに思います。
経済の好循環への寄与はもちろんですが、そもそも論としては、事業環境の国際的イコールフッティング、競争条件の不利を是正することが原点であると私は考えております。その競争条件とは、単に税率の問題だけではなくて課税ベースもあると念頭に置くべきではないかと私は思っております。今、公述人からも御指摘をいただきました。
今回の法人税改革では、厳しい財政制約の中で、欠損金の繰越控除制度の大幅縮減を初め、産業界に対して、世界と比較しても大変厳しい課税ベースの拡大がなされました。
そこで、御質問したいと思います。
今後、法人実効税率の引き下げを実施する上では、課税ベースも含めて国際的イコールフッティングを図るべきではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。
鈴
鈴木準#14
○鈴木公述人 お答え申し上げます。
課税ベースの拡大は、まさに先生おっしゃるとおり、重要だと思います。
目的という意味では、もちろん、対外投資、工場が外に出ていくというのは税だけではございませんけれども、税も一部要因としてあろうかと思いますので、そこの部分はきちんと取り払う。それから、長期的には対内投資を呼び込む。それから、やはり、パイをつくるエンジンの一つである企業に対するメッセージとして、これは広く中小企業等も含めて、基本的には法人に対する税のあり方を考えていくんだ、そういうことでもって企業家マインドを鼓舞していくということが目的だと思います。
そのとき、課税ベースという意味では、繰欠制度をどのぐらい、どういう制限を設けるかというのは非常に難しい問題です。
それから、やはり日本の場合は地方法人二税が非常に、諸外国と比べて特異といいますか、高いという問題がございますので、それを外形標準化して付加価値割にすれば、消費税と非常に近い、経済に対して中立性がより増すような形になって、財源としても非常に安定的なものになっていくということで、地方法人二税の改革。
それから、地方の消費税といいますか付加価値税といいますか、そういったものとの、税制全体のデザインの中で課税ベースのところを、外形標準課税化を含めて考えていくということではないかと思います。
この発言だけを見る →課税ベースの拡大は、まさに先生おっしゃるとおり、重要だと思います。
目的という意味では、もちろん、対外投資、工場が外に出ていくというのは税だけではございませんけれども、税も一部要因としてあろうかと思いますので、そこの部分はきちんと取り払う。それから、長期的には対内投資を呼び込む。それから、やはり、パイをつくるエンジンの一つである企業に対するメッセージとして、これは広く中小企業等も含めて、基本的には法人に対する税のあり方を考えていくんだ、そういうことでもって企業家マインドを鼓舞していくということが目的だと思います。
そのとき、課税ベースという意味では、繰欠制度をどのぐらい、どういう制限を設けるかというのは非常に難しい問題です。
それから、やはり日本の場合は地方法人二税が非常に、諸外国と比べて特異といいますか、高いという問題がございますので、それを外形標準化して付加価値割にすれば、消費税と非常に近い、経済に対して中立性がより増すような形になって、財源としても非常に安定的なものになっていくということで、地方法人二税の改革。
それから、地方の消費税といいますか付加価値税といいますか、そういったものとの、税制全体のデザインの中で課税ベースのところを、外形標準課税化を含めて考えていくということではないかと思います。
星
星野剛士#15
○星野委員 ありがとうございます。
繰欠、繰越欠損金の控除制度、国際比較しますと、実は大変厳しいんですね。最も厳しいフランスと同じですし、繰越期間を考えると、フランスが無制限であるのに対し、日本は十年であります。ここら辺も少し付言をさせていただきたいというふうに思います。
そして、三番目の質問に移りたいと思います。今お話も出ていました外形標準課税の問題ですね。
外形標準課税の拡充によって、実は、利益の多い大企業は大きな減税となりますが、地方で頑張っている赤字の中堅企業や利益の少ない黒字の中堅企業は増税となる傾向があります。
今回の法人税改革においても賃上げへの配慮措置などが講じられたことは大変意義深い、重要だというふうに思っておりますけれども、しかし、今後の方向性を考えるに当たっては、外形標準課税の構造的問題から慎重に議論をする必要があると思います。具体的には、外形標準課税が固定費である賃金を中心とする課税体系であるという点も含めて慎重に議論をすべきだと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。
この発言だけを見る →繰欠、繰越欠損金の控除制度、国際比較しますと、実は大変厳しいんですね。最も厳しいフランスと同じですし、繰越期間を考えると、フランスが無制限であるのに対し、日本は十年であります。ここら辺も少し付言をさせていただきたいというふうに思います。
そして、三番目の質問に移りたいと思います。今お話も出ていました外形標準課税の問題ですね。
外形標準課税の拡充によって、実は、利益の多い大企業は大きな減税となりますが、地方で頑張っている赤字の中堅企業や利益の少ない黒字の中堅企業は増税となる傾向があります。
今回の法人税改革においても賃上げへの配慮措置などが講じられたことは大変意義深い、重要だというふうに思っておりますけれども、しかし、今後の方向性を考えるに当たっては、外形標準課税の構造的問題から慎重に議論をする必要があると思います。具体的には、外形標準課税が固定費である賃金を中心とする課税体系であるという点も含めて慎重に議論をすべきだと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。
鈴
鈴木準#16
○鈴木公述人 お答え申し上げます。
外形標準課税というのが赤字法人課税という側面は、おっしゃるとおりございます。
今回の法人税改革というのは、やはり成果に対する応援といいますか、頑張って成果が上がったところに応援をする、そういうメッセージだろうと思います。
先生御指摘の賃金という意味では、賃金を払っていればそれは費用ということになります。法人税の世界では、当然、賃金を払えば法人税は減るということになりますので、経済活動に対する中立性という意味では、外形標準課税というのは適しているのではないか。
一点申し上げると、付加価値割というのは、利益にも当然入ってきます、付加価値ですので。そうすると、投資も課税ベースなんですね。今の消費税というのは、消費が課税ベースで、投資が入っておりません。ですから、外形標準課税は投資も入っているというところで、私は若干、投資に対してディスインセンティブかなと思っておりまして、そこにちょっと注意をしながら外形標準課税の今後を考えるべきではないかと考えております。
この発言だけを見る →外形標準課税というのが赤字法人課税という側面は、おっしゃるとおりございます。
今回の法人税改革というのは、やはり成果に対する応援といいますか、頑張って成果が上がったところに応援をする、そういうメッセージだろうと思います。
先生御指摘の賃金という意味では、賃金を払っていればそれは費用ということになります。法人税の世界では、当然、賃金を払えば法人税は減るということになりますので、経済活動に対する中立性という意味では、外形標準課税というのは適しているのではないか。
一点申し上げると、付加価値割というのは、利益にも当然入ってきます、付加価値ですので。そうすると、投資も課税ベースなんですね。今の消費税というのは、消費が課税ベースで、投資が入っておりません。ですから、外形標準課税は投資も入っているというところで、私は若干、投資に対してディスインセンティブかなと思っておりまして、そこにちょっと注意をしながら外形標準課税の今後を考えるべきではないかと考えております。
星
星野剛士#17
○星野委員 ありがとうございます。大変参考になりました。
安倍政権でも訴えておりますけれども、まず、成長のエンジン、そして経済の好循環をしっかりと回していく、そのことによってそれぞれの、働く方々の賃金も上げていく、設備投資もふやす、雇用も拡大をする、これを好循環と我々は考えているわけであります。その中核をなすのが法人税改革だというふうに思っておりますので、今後とも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは、時間も限られておりますので、水野公述人にお話を聞きたいと思います。
公述人は、御著書、これは私の愛読書でもありますが、「資本主義の終焉と歴史の危機」の中で、グローバル資本主義について、「グローバル資本主義の暴走にブレーキをかけるとしたら、それは世界国家のようなものを想定せざるをえません。」「世界国家、世界政府というものが想定しにくい以上、少なくともG20が連帯して、巨大企業に対抗する必要があります。具体的には法人税の引き下げ競争に歯止めをかけたり、国際的な金融取引に課税するトービン税のような仕組みを導入したりする。」と述べられております。
そこで、お尋ねをしたいと思います。
仮に、法人税引き下げ競争にブレーキをかける場合、G20はその目的達成のためにどのような仕組みを導入すべきだとお考えになりますでしょうか。一口にG20と申しましても、主権国家の集まりです。思惑はそれぞればらばらで、経済の発展状況にも差異があります。どのように意思統一を図るのかも含めて御教示をいただければ幸いでございます。
この発言だけを見る →安倍政権でも訴えておりますけれども、まず、成長のエンジン、そして経済の好循環をしっかりと回していく、そのことによってそれぞれの、働く方々の賃金も上げていく、設備投資もふやす、雇用も拡大をする、これを好循環と我々は考えているわけであります。その中核をなすのが法人税改革だというふうに思っておりますので、今後とも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。
それでは、時間も限られておりますので、水野公述人にお話を聞きたいと思います。
公述人は、御著書、これは私の愛読書でもありますが、「資本主義の終焉と歴史の危機」の中で、グローバル資本主義について、「グローバル資本主義の暴走にブレーキをかけるとしたら、それは世界国家のようなものを想定せざるをえません。」「世界国家、世界政府というものが想定しにくい以上、少なくともG20が連帯して、巨大企業に対抗する必要があります。具体的には法人税の引き下げ競争に歯止めをかけたり、国際的な金融取引に課税するトービン税のような仕組みを導入したりする。」と述べられております。
そこで、お尋ねをしたいと思います。
仮に、法人税引き下げ競争にブレーキをかける場合、G20はその目的達成のためにどのような仕組みを導入すべきだとお考えになりますでしょうか。一口にG20と申しましても、主権国家の集まりです。思惑はそれぞればらばらで、経済の発展状況にも差異があります。どのように意思統一を図るのかも含めて御教示をいただければ幸いでございます。
水
水野和夫#18
○水野公述人 お答えします。
私は、G20というのは、先進国と、それからBRICS等のような新興国が両方まざっているということですけれども、これは、長い時間、恐らく十年とかかければ、新興国が相当先進国に追いついてくると思います。追いついてくるということは、そもそも投資機会が、今は新興国にいっぱい投資機会があるということなんですけれども、新興国も日本やドイツの路線を追いかけているわけですから、十年で追いつくわけではないと思いますが、いずれ、ある程度の水準に追いつくということになれば、投資機会はほとんどの国でそんなに差がなくなってくると思います。今の段階から議論をして、それぞれ、これ以上の水準までには引き下げない、引き下げ競争をやっていますとゼロになってしまいますので、例えば、二〇なら二〇、二五なら二五というところで合意をするような議論をしていくべきじゃないかなと私は思います。
それから、トービン・タックスですけれども、これは、国際資本の移動が事実上自由になりました九〇年代半ばから、国境を自由に越えるという動きが確認できるようになりました。
そうしますと、何が起きるかといいますと、工場、店舗、オフィスビルだけではなくて、資産と資産の交換というのが国境を越えて行われる。それが、世界のGDP七十兆ドルの恐らく何十倍というお金が国境を越えるということですので、そうすれば、その国境を越えるのに対して〇・数%、〇・〇幾つでもいいと思いますけれども、その場合は資産と資産の交換に対してトービン・タックスをかけるべきだと私は思います。そうしないと、新興国の方は外国からの投資が呼び込めなくなるという不利な状況が出てくると思いますので、資産と資産の交換だけに対しては〇・〇何%をかけて、少しでも資産価格がバブル化しないようにということを、それは、どの国にとっても私はプラス、新興国だって、バブルが起きて、それがはじければ大変なことだと思います。
私は、G20で、ほぼ同じような土俵でもう議論できる状況になってきている、向こう十年間、二十年間を考えれば、同じ議論ができるような土俵にもうなってきているんじゃないかなと考えております。
この発言だけを見る →私は、G20というのは、先進国と、それからBRICS等のような新興国が両方まざっているということですけれども、これは、長い時間、恐らく十年とかかければ、新興国が相当先進国に追いついてくると思います。追いついてくるということは、そもそも投資機会が、今は新興国にいっぱい投資機会があるということなんですけれども、新興国も日本やドイツの路線を追いかけているわけですから、十年で追いつくわけではないと思いますが、いずれ、ある程度の水準に追いつくということになれば、投資機会はほとんどの国でそんなに差がなくなってくると思います。今の段階から議論をして、それぞれ、これ以上の水準までには引き下げない、引き下げ競争をやっていますとゼロになってしまいますので、例えば、二〇なら二〇、二五なら二五というところで合意をするような議論をしていくべきじゃないかなと私は思います。
それから、トービン・タックスですけれども、これは、国際資本の移動が事実上自由になりました九〇年代半ばから、国境を自由に越えるという動きが確認できるようになりました。
そうしますと、何が起きるかといいますと、工場、店舗、オフィスビルだけではなくて、資産と資産の交換というのが国境を越えて行われる。それが、世界のGDP七十兆ドルの恐らく何十倍というお金が国境を越えるということですので、そうすれば、その国境を越えるのに対して〇・数%、〇・〇幾つでもいいと思いますけれども、その場合は資産と資産の交換に対してトービン・タックスをかけるべきだと私は思います。そうしないと、新興国の方は外国からの投資が呼び込めなくなるという不利な状況が出てくると思いますので、資産と資産の交換だけに対しては〇・〇何%をかけて、少しでも資産価格がバブル化しないようにということを、それは、どの国にとっても私はプラス、新興国だって、バブルが起きて、それがはじければ大変なことだと思います。
私は、G20で、ほぼ同じような土俵でもう議論できる状況になってきている、向こう十年間、二十年間を考えれば、同じ議論ができるような土俵にもうなってきているんじゃないかなと考えております。
星
大
岡
岡本三成#21
○岡本(三)委員 公述人の皆様、きょうは、お運びいただきまして、ありがとうございます。
早速質問させてください。
まず、鈴木さんに質問いたします。
お話を伺いますと、要は、資産の裏側は負債なので、これは二兎を追わなければ実現不可能だというお話、よく理解できました。
日本においては設備投資がとりわけ重要で、生産性の低さを考えるとIT投資をやっていくべきだということと、負債サイド、支出、財政健全化においては、社会保障費の伸びが大きな負債をもたらしたことは間違いないので、ここを抑制して、消費税も適切なタイミングでということで、よく理解できるんですけれども、一方で、昨年四月の消費税上げというのが経済拡大の頭を押さえたことは事実だというふうに思います。
議論の中といたしましては、それは両方とも大事なんだけれども、若干の時間差をつけた方がいいんじゃないかという議論があります。十分に経済拡大ができるように集中投資をやった後に、その果実を負債の返済に充てるようなことで、時間差をつけてやった方が両方ともかち得ることができるんじゃないか、これは決してポピュリズムの話ではなくて、その方が経済改革のためにもいいのではないかという議論がありますが、どのように思われますでしょうか。
〔委員長退席、原田(義)委員長代理着席〕
この発言だけを見る →早速質問させてください。
まず、鈴木さんに質問いたします。
お話を伺いますと、要は、資産の裏側は負債なので、これは二兎を追わなければ実現不可能だというお話、よく理解できました。
日本においては設備投資がとりわけ重要で、生産性の低さを考えるとIT投資をやっていくべきだということと、負債サイド、支出、財政健全化においては、社会保障費の伸びが大きな負債をもたらしたことは間違いないので、ここを抑制して、消費税も適切なタイミングでということで、よく理解できるんですけれども、一方で、昨年四月の消費税上げというのが経済拡大の頭を押さえたことは事実だというふうに思います。
議論の中といたしましては、それは両方とも大事なんだけれども、若干の時間差をつけた方がいいんじゃないかという議論があります。十分に経済拡大ができるように集中投資をやった後に、その果実を負債の返済に充てるようなことで、時間差をつけてやった方が両方ともかち得ることができるんじゃないか、これは決してポピュリズムの話ではなくて、その方が経済改革のためにもいいのではないかという議論がありますが、どのように思われますでしょうか。
〔委員長退席、原田(義)委員長代理着席〕
鈴
鈴木準#22
○鈴木公述人 お答え申し上げます。
財政構造改革法のときには、三年ぐらい所得税減税を先行させて景気を立ち上げるとか、それから小泉政権のときには、消費税の引き上げはある意味封印をして、それで歳出削減をやって成長戦略をやったということでございますけれども、いずれも、結果的には、環境が大きく変わってうまくいかなかったということであります。
消費税を上げるというのはまさに家計の実質所得を政府に移すということですので、当然経済は悪くなるわけですね。今回は予想以上に悪くなったということはおっしゃるとおりだと思いますけれども、では、一体どれぐらい悪くなるのか、どれぐらい悪くなったら問題なのか。それから、いわゆる弾力条項のような考え方、どれぐらい我々は今我慢すべきなのか、どれぐらい悪くなったら先送りすべきなのかとか、そういったことをもう少し議論するということが、先行させるという考え方についてどうかというお答えになるのではないかというふうに思います。
この発言だけを見る →財政構造改革法のときには、三年ぐらい所得税減税を先行させて景気を立ち上げるとか、それから小泉政権のときには、消費税の引き上げはある意味封印をして、それで歳出削減をやって成長戦略をやったということでございますけれども、いずれも、結果的には、環境が大きく変わってうまくいかなかったということであります。
消費税を上げるというのはまさに家計の実質所得を政府に移すということですので、当然経済は悪くなるわけですね。今回は予想以上に悪くなったということはおっしゃるとおりだと思いますけれども、では、一体どれぐらい悪くなるのか、どれぐらい悪くなったら問題なのか。それから、いわゆる弾力条項のような考え方、どれぐらい我々は今我慢すべきなのか、どれぐらい悪くなったら先送りすべきなのかとか、そういったことをもう少し議論するということが、先行させるという考え方についてどうかというお答えになるのではないかというふうに思います。
岡
岡本三成#23
○岡本(三)委員 ありがとうございます。
続きまして、水野さんに質問させてください。
非常に長いタイムスパンで過去のデータを示しながら、大きな転換点ではないかというのは、示唆に富まれる御意見だというふうに思います。
それで、頂戴しました資料の一番最後のところに、ではどうすればいいんだという御提案に関しまして、今までの歴史と反対のことをやっていけばいいんだと。より速く、より遠くへ、より合理的にというのを、よりゆっくり、より近くへ、より寛容にと。
そのほか、日本国内における経済圏のことであったり、大学のことであったり、定年制の延長であったり、さまざまアドバイスをいただいておりまして、示唆に富むところが多いんですけれども、比較的ハードルの高い目標であるがゆえに、私たちがこれから三年、五年という短中期で取り組むに当たっての第一歩として、これは十年、二十年の単位では実現可能なことかもしれませんけれども、仮に先生の仮説が正しいとしたときに、これから三年、五年という短中期で政府に取り組んでほしいことがあれば、ぜひアドバイスをいただければと思います。
この発言だけを見る →続きまして、水野さんに質問させてください。
非常に長いタイムスパンで過去のデータを示しながら、大きな転換点ではないかというのは、示唆に富まれる御意見だというふうに思います。
それで、頂戴しました資料の一番最後のところに、ではどうすればいいんだという御提案に関しまして、今までの歴史と反対のことをやっていけばいいんだと。より速く、より遠くへ、より合理的にというのを、よりゆっくり、より近くへ、より寛容にと。
そのほか、日本国内における経済圏のことであったり、大学のことであったり、定年制の延長であったり、さまざまアドバイスをいただいておりまして、示唆に富むところが多いんですけれども、比較的ハードルの高い目標であるがゆえに、私たちがこれから三年、五年という短中期で取り組むに当たっての第一歩として、これは十年、二十年の単位では実現可能なことかもしれませんけれども、仮に先生の仮説が正しいとしたときに、これから三年、五年という短中期で政府に取り組んでほしいことがあれば、ぜひアドバイスをいただければと思います。
水
水野和夫#24
○水野公述人 私が今一番短期的にできることというのは、大学の地方分散。私が勤めている日本大学が三島にあるわけでそういうことを申し上げているわけじゃないんですけれども、明らかに東京に大学が、東京だけじゃないんですけれども、若い人も東京に集中している。大学で地方から東京に出てくると、地方にもう一回帰る人が少ない。とりわけ女子の方が地元には帰らないというふうに言われています。
そうすると、東京でも人口のアンバランスが起き、それから地方でも若い人たちの人口のアンバランスが起きるということになりますので、ますます晩婚化と未婚化、それから少子化になっていくということでありますので、私は、大学を地方分散させて、そして、例えば県庁とか地元の有力企業、地銀とかそういったところは地元大学生の採用を優先するということが大事だと思いますし、これはもう三年以内にすぐできるんじゃないかなと思います。
それから、このレジュメに大学を四年制から八年制にと書いてありますが、これはなぜそういうことを申し上げるかといいますと、今、時代がどっちの方向に向かうかわからないという状況だと思います。これまで引いてあったレールの延長線上に進んでいっていいのかどうかもわからない状況だと思います。
そうすると、例えば経済学部、法学部、文学部といった一つの科目だけ四年間学んでいわゆる専門家となっても、時代の変化に対応できないと思います。一番いい例が、イギリスが工業化に成功したというのはアダム・スミスの国富論ということになっていますが、アダム・スミスは、倫理学と道徳学と法律学、そして四番目に経済学を学びました。御本人は、倫理学あるいは道徳学が生涯の研究テーマということでした。
ですから、四つぐらいの科目を学ばないと新しい時代に対応できないということだと思いますので、私は、大学に入ったら、四つというのは大変かもしれませんが、最低二つ以上の専門科目をちゃんとマスターするということ、それで初めて社会に出て、経済だけで物を見るとか法律だけで物を見るということをしないで両面から見る、そういう若い人をつくっていくことが大事じゃないかなと思います。
そうすれば、連動して、社会に出る年齢が後ろにずれるわけですから、ちょうど健康年齢も十歳若返っているということでありますから、生産年齢人口を後ろにずらすという、目盛りを変えるだけで随分と変わってくるというふうに私は考えています。
この発言だけを見る →そうすると、東京でも人口のアンバランスが起き、それから地方でも若い人たちの人口のアンバランスが起きるということになりますので、ますます晩婚化と未婚化、それから少子化になっていくということでありますので、私は、大学を地方分散させて、そして、例えば県庁とか地元の有力企業、地銀とかそういったところは地元大学生の採用を優先するということが大事だと思いますし、これはもう三年以内にすぐできるんじゃないかなと思います。
それから、このレジュメに大学を四年制から八年制にと書いてありますが、これはなぜそういうことを申し上げるかといいますと、今、時代がどっちの方向に向かうかわからないという状況だと思います。これまで引いてあったレールの延長線上に進んでいっていいのかどうかもわからない状況だと思います。
そうすると、例えば経済学部、法学部、文学部といった一つの科目だけ四年間学んでいわゆる専門家となっても、時代の変化に対応できないと思います。一番いい例が、イギリスが工業化に成功したというのはアダム・スミスの国富論ということになっていますが、アダム・スミスは、倫理学と道徳学と法律学、そして四番目に経済学を学びました。御本人は、倫理学あるいは道徳学が生涯の研究テーマということでした。
ですから、四つぐらいの科目を学ばないと新しい時代に対応できないということだと思いますので、私は、大学に入ったら、四つというのは大変かもしれませんが、最低二つ以上の専門科目をちゃんとマスターするということ、それで初めて社会に出て、経済だけで物を見るとか法律だけで物を見るということをしないで両面から見る、そういう若い人をつくっていくことが大事じゃないかなと思います。
そうすれば、連動して、社会に出る年齢が後ろにずれるわけですから、ちょうど健康年齢も十歳若返っているということでありますから、生産年齢人口を後ろにずらすという、目盛りを変えるだけで随分と変わってくるというふうに私は考えています。
岡
岡本三成#25
○岡本(三)委員 ありがとうございます。
続きまして、西田さんに質問させてください。
西田さんには何点かあるんですが、まず、御説明いただきました中で、世界的に認知症が最大のリスクファクターというふうに捉えられて、各国の首脳が積極的な取り組みをされていることを認識いたしました。
その中で、世界全体では、例えば二〇一〇年に関連コストで五十兆円と試算されているみたいですが、日本も大変な拡大を見せているわけですが、コストとして、危機感として持ってはいるんですけれども、実際的なコストとして、日本の認知症関連に関するコストをどのように推計していらっしゃるのかというのが一点目です。
加えまして、この中で世田谷の例を引かれまして、施設から訪問の方に大きくかじ取りをしていくことが、ケアとしても質が高くなるし、求められている方向性ではないかというふうに御指摘をいただきました。
私どもも、公明党、地方の議員のネットワークの中で包括ケアをやろうとしているわけですけれども、施設介護から訪問ということに加えて、その地域ごとの特性みたいなものも加味する必要があるのかどうかということに関して御意見を伺えればと思います。
この発言だけを見る →続きまして、西田さんに質問させてください。
西田さんには何点かあるんですが、まず、御説明いただきました中で、世界的に認知症が最大のリスクファクターというふうに捉えられて、各国の首脳が積極的な取り組みをされていることを認識いたしました。
その中で、世界全体では、例えば二〇一〇年に関連コストで五十兆円と試算されているみたいですが、日本も大変な拡大を見せているわけですが、コストとして、危機感として持ってはいるんですけれども、実際的なコストとして、日本の認知症関連に関するコストをどのように推計していらっしゃるのかというのが一点目です。
加えまして、この中で世田谷の例を引かれまして、施設から訪問の方に大きくかじ取りをしていくことが、ケアとしても質が高くなるし、求められている方向性ではないかというふうに御指摘をいただきました。
私どもも、公明党、地方の議員のネットワークの中で包括ケアをやろうとしているわけですけれども、施設介護から訪問ということに加えて、その地域ごとの特性みたいなものも加味する必要があるのかどうかということに関して御意見を伺えればと思います。
西
西田淳志#26
○西田公述人 御質問ありがとうございます。
まず、認知症の関連コストということでありますけれども、各国で国家戦略に踏み切っていく前の年ぐらいに必ずコストが発表されて、それで財務省を含めて危機感を持ってこの施策の優先性を確立していくということで進んでいくわけですが、我が国においては、今現在ちょうど推計の最終段階にあって、この三月、四月ぐらいに公表というふうに聞いております。慶応大学の佐渡先生という方の研究班で今推計中で、御報告が間もなくあるというふうに思います。
各国、国家戦略を出している国の高齢化率は一七%台が平均ですので、そうしますと、二五%の我が国においては、少なからず、やはり相当なコストを見越した対策がこれから必要になってくるんじゃないかというふうに思います。
そして、地域包括モデルへの移行に際して、地域ごとの特性を踏まえた展開ということを先生御指摘いただきましたけれども、まさに重要な点だと思います。
例えば、東京などでは非常に人口密度が多いですので、ある意味、訪問をするのに非常に適している。そういうところでは、世田谷の今の実践のような訪問モデルというものを広げていくことで、認知症の人の在宅生活の可能性が非常に高まっていくというふうに思います。
では、地方でそのようなことができるか、人口密度が低いところで訪問サービスができるかというと、なかなかそういうことは難しいと思いますけれども、各国でやられていますのはテレメディシンで、要は、介護現場や医療現場の人たちの指導を含めて、都市部のコンサルタントの人がテレメディシンで相談に乗る、これでかなりの成果が上げられています。
そういうことも、地域ごとの特性を踏まえ、地方でのこういう認知症の地域モデルをつくっていくときの一つの大事な対策になるというふうに思います。
この発言だけを見る →まず、認知症の関連コストということでありますけれども、各国で国家戦略に踏み切っていく前の年ぐらいに必ずコストが発表されて、それで財務省を含めて危機感を持ってこの施策の優先性を確立していくということで進んでいくわけですが、我が国においては、今現在ちょうど推計の最終段階にあって、この三月、四月ぐらいに公表というふうに聞いております。慶応大学の佐渡先生という方の研究班で今推計中で、御報告が間もなくあるというふうに思います。
各国、国家戦略を出している国の高齢化率は一七%台が平均ですので、そうしますと、二五%の我が国においては、少なからず、やはり相当なコストを見越した対策がこれから必要になってくるんじゃないかというふうに思います。
そして、地域包括モデルへの移行に際して、地域ごとの特性を踏まえた展開ということを先生御指摘いただきましたけれども、まさに重要な点だと思います。
例えば、東京などでは非常に人口密度が多いですので、ある意味、訪問をするのに非常に適している。そういうところでは、世田谷の今の実践のような訪問モデルというものを広げていくことで、認知症の人の在宅生活の可能性が非常に高まっていくというふうに思います。
では、地方でそのようなことができるか、人口密度が低いところで訪問サービスができるかというと、なかなかそういうことは難しいと思いますけれども、各国でやられていますのはテレメディシンで、要は、介護現場や医療現場の人たちの指導を含めて、都市部のコンサルタントの人がテレメディシンで相談に乗る、これでかなりの成果が上げられています。
そういうことも、地域ごとの特性を踏まえ、地方でのこういう認知症の地域モデルをつくっていくときの一つの大事な対策になるというふうに思います。
岡
岡本三成#27
○岡本(三)委員 ありがとうございます。
続きまして、原さんに質問させてください。
このいただきましたペーパーの一つ目に、岩盤規制改革に対する御意見と、その手段の一つとして公務員制度の改革とおっしゃったわけですが、岩盤規制なわけですから大変に強固な規制なんですけれども、スピードと質ということをお伺いしたいんです。
当然、根底から改革が行われた方がいいですし、それがスピーディーに行われた方がいいわけですけれども、規制自体が、ある程度、緩和がメッセージ性を込めていることを考えると、根底からの改革とはならないまでも、スピーディーにその改革が行われて結果を残していく方がよりよいという意見があるわけですけれども、そのことをどう思われるかというのが一つ目。
加えまして、その手段の一つに公務員の評価があるということになると、先ほどおっしゃった絶対評価、相対評価ということであれば、絶対評価したものを標準偏差をつくって相対的に見ていけばいいと思うので、それは改革の方法は幾らでもあると思うんですが、評価をする方が、誰が評価をしているかということを変えることをどう思うかということについて御意見を伺いたいんですね。
私、会社員の時代、アメリカの会社に長く勤めていたんですが、三百六十度評価で、上司も同僚も私の部下もネットで私の評価をするというふうな体制になっておりまして、それがそのままボーナスに評価をされたんですけれども、この二つの点、何か御意見があればお願いいたします。
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このいただきましたペーパーの一つ目に、岩盤規制改革に対する御意見と、その手段の一つとして公務員制度の改革とおっしゃったわけですが、岩盤規制なわけですから大変に強固な規制なんですけれども、スピードと質ということをお伺いしたいんです。
当然、根底から改革が行われた方がいいですし、それがスピーディーに行われた方がいいわけですけれども、規制自体が、ある程度、緩和がメッセージ性を込めていることを考えると、根底からの改革とはならないまでも、スピーディーにその改革が行われて結果を残していく方がよりよいという意見があるわけですけれども、そのことをどう思われるかというのが一つ目。
加えまして、その手段の一つに公務員の評価があるということになると、先ほどおっしゃった絶対評価、相対評価ということであれば、絶対評価したものを標準偏差をつくって相対的に見ていけばいいと思うので、それは改革の方法は幾らでもあると思うんですが、評価をする方が、誰が評価をしているかということを変えることをどう思うかということについて御意見を伺いたいんですね。
私、会社員の時代、アメリカの会社に長く勤めていたんですが、三百六十度評価で、上司も同僚も私の部下もネットで私の評価をするというふうな体制になっておりまして、それがそのままボーナスに評価をされたんですけれども、この二つの点、何か御意見があればお願いいたします。
原
原英史#28
○原公述人 ありがとうございます。
まず一点目、岩盤規制改革のスピードという点でありますが、これは、スピーディーな改革をやるということとそれから抜本的な改革をやるということを両建てでやっていく必要があるのではないかと思います。
先ほどのお話の中でも触れました国家戦略特区というのは、スピーディーな改革を、まず場所を限って、あるいは対象を絞って、限定的に、実験的に進めてみる、そういう取り組みの一つだと思いますが、そういった形で、スピーディーに象徴的なところ、実験的なところに取り組んでいく、これが第一で、その上で、全般的な、抜本的な改革を進めていく。これは、まずその第一歩が進まないとめどが立たないということだと思いますので、そういった両建てが必要なのかと思います。
それから二点目、評価の点でありますが、まず、現状の問題というのは、これは相対評価で後からならそうとしても、絶対評価のところで全然差がついていないので差のつけようがありませんというところが問題なのかなと思います。
それから、御指摘をされた評価をする人の問題というのは、これはもう限りなく重要な問題だと思います。これは三百六十度評価なんかも一部進められているところもありますし、それからあと、評価をする人の評価軸の問題というのも大変重要だろうと思います。
これは、かつての役所でよくあったような、組織防衛的な仕事をしたら評価をされるとか、そんなことになっていたら全く意味がないわけでありまして、しっかりと公益、公共のためのお仕事をした人が評価をされるという軸を、それこそ最終的には内閣主導で確立していかないといけない課題だと思いますが、内閣人事局のもとでいかにそういったことを確立していけるのかということではないかと思います。
この発言だけを見る →まず一点目、岩盤規制改革のスピードという点でありますが、これは、スピーディーな改革をやるということとそれから抜本的な改革をやるということを両建てでやっていく必要があるのではないかと思います。
先ほどのお話の中でも触れました国家戦略特区というのは、スピーディーな改革を、まず場所を限って、あるいは対象を絞って、限定的に、実験的に進めてみる、そういう取り組みの一つだと思いますが、そういった形で、スピーディーに象徴的なところ、実験的なところに取り組んでいく、これが第一で、その上で、全般的な、抜本的な改革を進めていく。これは、まずその第一歩が進まないとめどが立たないということだと思いますので、そういった両建てが必要なのかと思います。
それから二点目、評価の点でありますが、まず、現状の問題というのは、これは相対評価で後からならそうとしても、絶対評価のところで全然差がついていないので差のつけようがありませんというところが問題なのかなと思います。
それから、御指摘をされた評価をする人の問題というのは、これはもう限りなく重要な問題だと思います。これは三百六十度評価なんかも一部進められているところもありますし、それからあと、評価をする人の評価軸の問題というのも大変重要だろうと思います。
これは、かつての役所でよくあったような、組織防衛的な仕事をしたら評価をされるとか、そんなことになっていたら全く意味がないわけでありまして、しっかりと公益、公共のためのお仕事をした人が評価をされるという軸を、それこそ最終的には内閣主導で確立していかないといけない課題だと思いますが、内閣人事局のもとでいかにそういったことを確立していけるのかということではないかと思います。
岡