石黒直樹の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(石黒直樹君) 名古屋大学の石黒でございます。
 では、お時間をいただきまして、私、資料を用意してまいりました。この資料でございます。それに従って説明申し上げたいと思います。
 めくっていただきまして、私は、この制度を評価療養制度、現在七種類が認められておりますけれども、そこの中に加えていただきたいというふうに主張しております。これ考えますと、ここで四角で囲ってあります一番下の部分ですけれども、私、医師になってからもう三十年以上たちますけれども、この制度を利用したことがありません、一番下の大きな四角は。二番目は、これ企業治験ですから広く行われております。三番目は、今話題になりました先進医療制度というやつで、最近認めていただいて随分良くなったというふうに考えております。
 それでは、なぜこの患者申出制度が必要かということを大学病院の立場から説明したいと思います。めくっていただきまして、次のページです。
 大学病院が直面する現状の問題点と題させていただきました。まず、医療のグローバル化、複雑化に実は皆保険制度というのが追い付いていないのではないかという疑問を私どもは持っております。
 まず、未承認薬の問題です。先ほども指摘がありましたように、確かに官公庁、PMDAの御理解によってかなり短縮されましたけれども、メーカーはそれを申請したがりません。なぜかというと、お金と費用が掛かるから。
 例えば、多剤耐性の緑膿菌に対する抗菌剤、これ、別に最近出てきたわけじゃなくて、数年前から疑問になっていますけれども、このコリスチンという薬剤は二〇一五年三月に製造販売承認を受けました。ですから、それ以前はこれに対する抗菌剤は我が国ではなかったという。これを使って、抗生剤でたたいていきますと、最後にこの菌が残ります。この菌が残って、じゃ、これが生命に関わるときになるとコリスチンを並行輸入して使わざるを得ない。そうすると、途端に患者さんにそれは請求できなくなります。そんなことを私どもは初めに説明していませんから、全部医療機関がこれをかぶることになります。
 もう一つ、経口GVHD治療薬、これクリッパーといいますけれども、ちょっとかわいい名前が付いていますけれども、これは実は小児科の領域で骨髄移植をして、GVHD、消化管の出血等が起こった場合に使う全く吸収されないステロイド剤です。非常に優れた薬効を持ちますけれども、小児のGVHDを生じる、要するに骨髄移植を生じるという領域は非常に限られていますから、これも開発しようとしない。これはEMAでは承認されています。
 もう一つ、未承認医療機材というところでいいますと、これは大動脈ステント、今、トリプルA、要するに大動脈瘤・解離あるいは胸部大動脈解離、胸腹部大動脈解離といったものは高齢者に起こる場合が多いですし、糖尿病の患者に起こる場合が多いものですから、できるだけステントでやろうという動きがあります。ところが、ステントというものは非常に開発が速いということ。開発が速いと、一つの形式を認定しても、その次の形式が出てくるわけですね。あるいは、今もっとあるのは、テーラーメードといってオーダーで作るというものもあります。そういったものも日本ではなかなか承認が得られないといったことがあります。
 次に、適応拡大での医療機器使用、これは小児外科領域での内視鏡手術があります。赤ちゃんが生まれます。例えば食道裂孔ヘルニアなんかがありますと、早く手術しておなかに臓器を戻してやらないと、肺、呼吸ができなくなって死んでしまいます。だけれども、たかだか三キロあるいは四キロといった患者さんに対して胸部と腹部の開腹を行うのかといった問題、これは非常に高度な技術が必要になりますけれども、こういった問題は患者さんが少ないがゆえになかなか保険収載されません。ですから、小児領域はほとんど内視鏡手術ペケになっています。
 結局、そうすると、自費診療を選ばざるを得ないということになりますと、若いお母さんあるいはお年寄りの方々に非常に高額な自費を請求せざるを得ないというのが大きな問題です。でも、彼らはちゃんと国民保険の保険料を払っているんです。でも、その途端に受けられなくなって、その分を何とかしろということになってしまいます。
 じゃ、この制度を導入することによって予想される効果と課題、私の考えをまとめてまいりました。
 先ほど来問題になっていますデバイスラグ及びドラッグラグの最小限化、これは確かにありますけれども、こういったものを広く行えば薬事法が形骸化します。
 もう一つ、最先端医療技術の迅速な導入、提供といったことは、非常に聞こえがいいんですけれども、一方で、医療者の能力を超えた技術導入が行われ、結局ラーニングカーブ、要するに、新しい医療技術は我々は学ばねばなりません。学ぶためには何例かを経験を積むことによって徐々に蓄積されてくるわけで、初めから野方図に広げてしまえば、ラーニングカーブ、習熟する機会を医療者は得ることができなくて、非常に危険な手技が行われるであろうという問題です。
 続きまして、患者による治療選択肢の拡大、これは非常に良いことです。でも、情報の非対称性、後で述べますけれども、あくまでも医療者はよく知っていて、患者さんは余りその情報をお持ちにならないといったところで、この問題ですね。ですから、情報の非対称性によるミスリーディング、例えばがんも切らずに治る式の発言とかが行われて、それを信じてしまう。そうすると、結局、患者さんの人権保護、治療機会が失われるということになります。
 続きまして、そもそもは希少疾患、難病患者への対応であるということです。そうなると、普遍性を求めるものではない。例えば、大学病院にあるCPCと呼ばれる細胞加工技術とか、そういうものを用いて治療する、あるいは高度なステントを用いて治療するというのは、一般的な病院あるいは診療所で行われるようなことではありません。となると、そもそも皆保険の、誰もがどこでも受けられるという趣旨に合っているのかという根源的な疑問が出てまいります。そうすると、皆保険制度になじむものでないかもしれないということを御審議いただきたいと思います。
 それで、保険併用による医療費負担の軽減というものが考えられていますけれども、これは新しい需要喚起を起こす可能性があります。特に広げれば、民間保険が導入されれば、その民間保険のカバーするところ、でも基礎部分は公的保険ですから、これによってかえって医療費が増大する可能性も全くないとは思いませんから、これ、よく御議論いただきたいと思います。
 一番大きな問題は、社会的な不公平感の拡大がこれによって、高額な医療費を設定することによって、私はこの医療が受けられるけれども、この医療を私は受けられないということになると、これは皆保険の根幹を揺るがす、あるいは社会的な要因としても非常にマイナスです。こういったことを考えますと、特定な機能を持つ病院群での対応が一番よいのではないかというのが私の意見であります。
 この中で特に重視されるのは、治療の妥当性の検証、医療者の教育、治療経過の管理監督、そして最終的には社会への開示が必要である、開示責任を負って、それをやるということが絶対に必要である、以上の機能を果たせる病院群を選ぶべきであるというのが私の主張であります。
 続きまして、めくっていただきます。
 医療における情報の非対称性。特に新規性が高い、あるいは希少疾患領域では、これが著しくなります。医療に関わる情報は常に非対称性があります。一方で、国民皆保険というものは治療を規定することによってそのリスクを軽減しております。間違った医療が行われないようにしているわけです。ですけど、その一方で、審査には時間と金が掛かるという、ですからメーカーはやりたがらないという問題が発生します。要するに、せっかくそれでやったとしても、時間と掛けるお金にペイしないような保険領域においては、彼らは開発しようとしないんです。
 もう一つ問題点は、供給者誘発需要の存在。これはどういうことかといいますと、間違った医療にしろ、自分が持っている以上は、患者さんに、こういうのがありますよ、ああいうのがありますよと訴えて、大して有効性もない医療が行われるという側面であります。これは非常に大きな問題で、先ほども言いましたように、そうすると患者さんは治療機会を失い、機会喪失ですね、そして病状が進行した段階で初めて正規の医療機関を訪れられると。そうすると、最後は医療保険になってしまって、しかも社会的なロスが起こり、患者のロスが起こり、生命の損失が起こるという、患者に人権侵害が起こるであろうという問題点です。
 非対称性のマネジメントをどうするべきか。これはシグナリング、一つは、そういう医療機関を定めて、そこの技能等を開示させる、あるいは開示するといったことである程度の縛りを掛けるということです。もう一つは、エージェント、第三者による妥当性の助言といったところにあります。ですから、セカンドオピニオンを求めるといったところが一番大きなポイントになるかと私は思います。
 続きまして、不公平感の問題、階層医療の発生について少し議論していただきたいと私は思います。
 これはどういうことかといいますと、このグラフの右側の部分なんですけれども、もしもこの制度で十万円の医療負担が患者さんに起こるとすれば、恐らく保険診療で三十万円、これは仮定法の話ですけれども、であったものが四十万円になりますから、多くの方は制度が利用できると思います。
 ところが、百五十万円の医療費増加ということになりますと、これは随分患者負担が発生しますから、余り多くの方がこの制度を利用することができなくなります。ですから、お金持ちしかできなくなるということで不公平感が非常に強くなると。皆さん、基礎的な部分で皆保険のお金を払っているにもかかわらず、最後の部分がお金が払えないがゆえに、随分ハードルの高いことになるということであります。
 一方、現行保険制度でいいますと、先進医療では、当該部分の医療行為が患者請求、自費となっています。ですから、実は非常に高額なものが発生しているというところがあります。これでは皆保険の趣旨が全うされませんから、やはり患者申出制度においてはそこら辺の部分をよく考えていただいて、その新しく導入されたものだけ、例えばステントの置換でしたらば、ステントが新しいんだからステントは患者申出制度にしましょう、だけど、それに関わる麻酔料、術料というのは、そもそもは手術が必要なんですから、それは患者さんに請求しないような、そういう制度をしていただきたい。
 あるいは、薬剤についても、今ですとそこの部分に関わる部分が全部外れてしまいますけれども、そうじゃなくて、その薬剤だけが違っているんだから、そこの部分を面倒見てほしいと。そういう制度にしていただければ、患者さんにとってみれば随分いい制度になると私は思いますし、負担感、不公平感が軽減されると私は信じております。
 以上であります。

発言情報

speech_id: 118914260X01320150521_005

発言者: 石黒直樹

speaker_id: 33163

日付: 2015-05-21

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会