渡邊廣吉の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(渡邊廣吉君) 全国町村会行政委員会の委員を務めております新潟県聖籠町長の渡邊でございます。
 本日は、持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案を審議する参議院厚生労働委員会に私どもが参考人として意見を述べる機会をいただき、まずは心から感謝を申し上げます。
 また、平素から町村行政の運営につきましては格別な御理解と御高配を賜っておりますことに、この場を借りまして厚く感謝と御礼を申し上げます。
 さて、この度の法案には各種の措置が盛り込まれておりますが、何分にも時間が限られておりますので、法案の最重要事項であり、かつ私ども町村にとって最も関係が深い国民健康保険に絞って意見を述べさせていただきます。
 初めに、国保の現状について申し述べます。
 委員の先生方には十分に御理解いただいているとは存じますが、国民皆保険制度の基盤を成す国民健康保険は、農林水産業や商工業などの自営業者を中心に私ども市町村が保険者となり運営する医療保険制度で、昭和三十六年に創設されて以来、五十年以上が経過いたしております。
 ほかの医療保険に属さない方全てを被保険者としているために、高齢化や産業構造の変化などの影響を受けやすく、制度の発足した当時と比べて農林水産業や自営業者の割合が減少する一方、高齢化の進展に伴い年金受給者を主とする無職者の割合が四割に達するとともに、社会経済情勢の変化により、被用者保険に加入できない失業者、非正規雇用者、長期療養者等も増加いたしております。このため、現在では、年齢構成が高く、所得の低い方が多いという構造的な問題を抱えております。
 さらに、年々、医療給付費が、後期高齢者医療支援金が増加していくという状況の中で、各市町村では、制度の安定的な運営を図るため、被保険者に何とか御理解いただきながら保険料を引き上げる努力をいたしているところでございます。
 加入者の所得に対する保険料負担の割合は平成二十四年度で九・九%、協会けんぽの七・六%、組合健保の五・三%と比較し著しく高くなっており、負担能力も限界に達しているため、多くの市町村では、苦しい財政状況ではあるものの、法律で定められた負担のほかに、やむなく一般会計からの繰入れをしなければならない状況下にあります。ここ数年は、このような法定外の負担分として約三千五百億円もの巨費が投入されております。
 一般会計から法定外で繰入れを行うということは、本来市町村が行うべき他の事業の予算を減額するという意味を示し、各種の福祉施策や行政サービスを阻害することにもなります。また、国保の被保険者のみならず、他の被用者保険の加入者を含めた全住民が国保の赤字を補填するための負担をしていることにもなります。
 このようなことから、私の聖籠町では、法定外の繰入れは極力行わないで、被保険者の皆さんに何とか御理解をいただきながら、三年ごとをめどに保険料の見直しを行ってきております。しかし、結果として私の町では、新潟県内においては割合医療費が低い現状にあるにもかかわらず、保険料は県平均を上回る高い水準になっており、これ以上の引上げは非常に厳しく、被保険者の御理解が得られない状況となっております。
 また、市町村間の格差の問題もございます。新潟県には合併後三十の市町村となっておりますが、平成二十四年度の県民一人当たりの保険料は、全国平均が約八万二千円であるのに対し約七万九千円と、若干低い水準となっておりますが、最も高い市町村の平均は約八万九千円、最も低い市町村の平均は約五万七千円と、一・六倍の格差が生じております。加えまして、被保険者数が少ない保険者においては、財政運営が不安定になるリスクを抱えております。例えば、人工透析の患者が一名出れば、年間五百万円以上の医療費が掛かり、直ちに保険財政が逼迫するおそれがあるなど、制度の持続可能性が危ぶまれる状況にもあります。
 こうしたことから、私たち全国町村会は、かねてより、都道府県を軸とした保険者の再編統合の推進を主張してきました。今回の改革はそのような方向に向けた第一歩となるものと大いに期待しておりますので、基本的に賛成の立場から改革案について意見を述べさせていただきます。
 まず、今回の国保改革の主なポイントとしては三点挙げられます。一つ目は財政基盤の安定と強化、二つ目は保険料負担の公平確保、三つ目が都道府県と市町村の役割分担についてです。
 初めに、一つ目の財政基盤の安定と強化でありますが、国保は被保険者の年齢構成が高く医療費が高い、低所得者が多いといった構造的な問題を解決するために、平成二十七年度から、低所得者が多い自治体を支援する制度の保険者支援制度を拡充するために、消費税財源を活用して千七百億円の公費を投入することが決定されました。さらに加えて、新たな国保制度がスタートする平成三十年度から、後期高齢者支援金の全面総報酬割導入により生ずる財源のうち千七百億円を優先的に投入することとされました。結果として、合わせて三千四百億円ものかつてない規模の公費が投入されますので、これまで三千億円の実質赤字を抱えて、赤字補填のため法定外で毎年度一般会計から三千五百億円もの繰入れを余儀なくされてきた保険者たる市町村の現状を考えますと、当面の財政基盤の強化策としては十分評価できるものと考えております。
 あわせて、国保改革では、財政運営の責任主体が市町村から都道府県に移り、財政基盤の強化が図られることは、小規模な保険者の多い町村にとっては重要な改革であると評価し、歓迎できます。
 また、改革では、財政リスクの分散、軽減のため財政安定化基金を創設し、予期せぬ給付の増加や保険料の収納不足に対応するため、基金の貸付け、交付を行うこととされました。介護保険や後期高齢者医療制度と異なり、これまで国保には財政安定化基金がありませんでしたので、このこと自体については率直に歓迎いたしておりますが、仮に安易な形で交付が行われることとなると、市町村の保険料収納に対する意欲がそがれ、モラルハザードとなるおそれがあります。今後、交付の基準や補填のルールにつきましては、地方と引き続き慎重に議論を行うよう求めてまいりたいと存じます。
 二つ目に、保険料負担の公平確保についてですが、現在、国保の保険料は、都道府県ごとに見た場合、最大で約三倍の格差があります。
 保険料格差が生ずる要因としては、医療水準や所得水準など様々なことが考えられますが、一般的には、町村地域は県庁所在地などの都市地域と比較して医療供給体制が必ずしも十分とは言えない地域事情があり、結果として医療費総額が低廉な実態であることから保険料水準が低く抑えられております。このため、保険者が都道府県に移行し、都道府県単位の保険料の算定をするとなると、町村地域の保険料は平準化されますので、大幅に上昇することが懸念され、危惧されてきました。
 私たち全国町村会は、このような実態に鑑み、納付金の算定に当たっては医療水準による保険料の格差に配慮するように強く求めてきたところでありますが、御理解いただき、医療水準と所得水準を反映させる算定方式を取ることになりました。このことは、社会保障制度改革国民会議において、医療費適正化のインセンティブとなるものとするという提言の方向性にも合致する結果となったことから、評価いたしております。さらに、激変緩和措置も講じられることとなっていますので、当面は急激な保険料の変動は回避されるものと考えています。
 なお、保険料水準の平準化を推進する必要性は私たち全国町村会も十分に理解はしておりますが、平準化を急ぐ余り議論を拙速に進めて無用な混乱を招くことのないように、時間を掛けて私ども町村の関係者の理解を得ながら進めていただきたく、お願いいたします。
 次に、三つ目の都道府県と市町村の役割分担についてであります。
 プログラム法では、財政運営は都道府県、保険料の賦課徴収と保健事業の実施は市町村が担うこととなり、残りの保険給付と資格管理の役割分担をどうするか国保基盤強化協議会では議論となり、私たち全国町村会は、都道府県が保険者になるのだから、できる限り都道府県に集約し、簡素で効率的な事務処理体制とすべきでないかと原則論に即した立場の主張を申し上げてきました。しかしながら、都道府県及び市町村は、国保改革の問題や課題に共通の認識と理解を示しながら、大義に立って政府の意向を尊重し、前向きに意見を主張し議論をさせていただいた結果と経過を踏まえて、国保基盤強化協議会の取りまとめの最後に、今回の改革後においても、国保制度の安定的な運営が持続するよう、都道府県と市町村との役割分担の在り方も含め、国保制度全般について必要な検討を進め、当該検討結果に基づき、所要の措置を講ずることとするという一文を入れていただくとともに、その趣旨を踏まえた法案の附則に盛り込んでいただきましたので、私たち全国町村会は、都道府県と市町村の役割分担のうち資格審査と保険給付に係る部分については、制度施行後においてできる限り早く見直しを行っていただくことを願っております。
 最後に、今回の法案にはございませんが、地方単独事業により医療費助成を行った自治体に係る国保の国庫補助の減額調整措置につきましても、引き続き地方の意見を踏まえて制度の見直しを検討していただきたいと思います。
 この度の見直しは国保制度創設以来の大きな改革でありまして、今後は都道府県と市町村が協力して制度運営に当たっていくこととなりますが、私ども市町村といたしましては、保険料の徴収や保健事業の実施などについてこれまで以上に尽力いたす所存でございます。
 特に、保健事業につきましては、一昨年六月に日本再興戦略が閣議決定され、効果的な予防サービスや健康管理を充実させるという方針が示され、レセプト等のデータの分析とそれに基づく加入者の健康増進のための計画の作成、事業実施、評価等の取組を行うこととされたところであります。いわゆるデータヘルス計画であり、国保保険者は今年度から計画を実施していくこととされており、今年度はまさにデータヘルス元年でもあります。集約できる部分は可能な限り集約して効率化し、一方で市町村は市町村にしかできない対人サービスに注力する、こうした適切な役割分担を行うことで国保制度の安定的な運営が確保され、被保険者の利益が向上するものと考えております。
 以上、基本的に法案に賛成の立場から主な課題について意見を申し上げましたが、今後、国に対しましては、制度施行に向けて詳細な検討を行っていく中でこれらの課題について地方と十分協議するよう改めて求めたいと思います。そして、今後、国と地方で協議の上、政省令やガイドラインなどで新たな制度の詳細を決定する必要があります。また、円滑に施行するためには、システム構築など十分な準備期間の確保が必要でありますので、委員の先生方には法案の早期成立をお願いいたしまして、私の意見陳述といたします。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 渡邊廣吉

speaker_id: 17589

日付: 2015-05-22

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会