宇山洋美の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(宇山洋美君) よろしくお願いいたします。宇山洋美と申します。今回は、このような場を与えていただき、ありがとうございます。
私は、現在派遣労働者として働いている者でございます。その立場から、今回の派遣法改正案による影響、派遣労働者の実態等を当事者として述べさせていただきます。
私は、登録型派遣で、専門二十六業務の一つである事務用機器操作として働いています。専門業務であるため、派遣でありながら受入れ期間の制限がなく、十五年同じ派遣先で勤務しております。私は、これまで、好きで派遣を続けてきたわけではありません。今の職場でも、かつて正社員にしていただけるというお話があり、それを本当に期待していたこともありました。ですが、それを裏切られ、今となっては、年齢の問題もあり、派遣を長く続けてきた私のキャリアで今更、正社員の仕事など見付かるはずもなく、不本意ながら派遣を続けてきたのです。
数年前までは、正社員の嫌がる残業や休日出勤も引き受け、出張もしてきました。残業時間が一か月に百時間に迫る月数が年間の半分を占めるというパターンが五、六年続いたときがあります。その際、過労で意識を失い、救急車で病院に運び込まれたこともありました。労災を派遣元会社に申請したところ、あなたの健康管理が悪いからだ、申請には健康管理の不備が問われるとして申請を却下され、仕事による体調不良を訴えても、雇用主である派遣元会社は派遣労働者を守らないことをそのとき痛感しました。事務用機器操作の範囲を逸脱し、英語が話せない正社員に代わり海外招聘者の受入れ、アテンド、顧客である官公庁に提出する報告書を作成するなど、日々の定型業務以外の業務もこなしてきたために残業時間が増えたのです。しかし、残業を引き受けざるを得ない私が責められたわけです。
百時間近い残業時間が発生していても、そのままの残業代が支給されたことはありません。実際の長時間労働が明らかになったら辞めさせられるのはあなただから、半分程度に減らして申請せよと言われました。雇い止めかサービス残業かの二つの選択肢しかない場合、後者を選ばざるを得ませんでした。
十五年の間には部長が七名替わっています。部長によっては、それまでの業務を取り上げるというパワハラをされたこともありました。派遣元会社に解決を訴えるしかないのですが、派遣先からは、パワハラはしていないと言われるだけでした。その際に、業務の種類が変わった、ミスが多いなどの理由で、時給がピーク時から比較し二百五十円も下げられました。派遣元会社は派遣先と交渉すべき役割にありますが、顧客である派遣先の言いなりになるしかない立場であり、その不利益変更を強いられたまま現在に至っています。
そもそも、今の派遣先には知り合いの紹介で来たもので、会社は正社員としては雇用できないので、適当な派遣元に登録をさせて勤務に就かせたというのが派遣労働者になったきっかけです。リーマン・ショックの際には、そのときの派遣元会社が事業を撤退し、派遣先公認で別の大手の派遣元会社に移籍をしました。その際、派遣先の雇用責任が発生するはずですが、私は正社員あるいは直接雇用を希望し派遣先に要求しましたが、直雇用の制度はないとの理由で却下されています。
残業が百時間近くになった際には、正社員登用の推薦を部長からもらい、派遣先に依頼したこともありました。正社員以上の業務をこなしているとの評価を得ましたが、そのときも、事務職は直雇用はしないという理由で却下されています。その場で役員に、派遣労働者には何年勤務しても退職金がない不安を訴えたところ、派遣の老後など知ったことか、派遣は正社員の雇用の調整弁なのだと、派遣先としての本音を言われました。残業が多いときは残業時間の多さを理由に雇い止めをすると脅されたり、夏休み、五日間の有休申請をしたところ雇い止めすると言われたり、派遣労働者ゆえの幾多の違法行為、人権侵害的行為も受けてきました。
でも、派遣労働者のことは誰も守ってくれません。労働組合に加入するなどの行為を派遣先に知られたら、即座に雇い止めになると思います。そのための派遣先による三か月更新です。雇い止めの理由を設ける必要もありません。当然の期間満了と言われるだけだと思います。
交通費が支給されないことも経済的痛手ですが、忌引がないことにも派遣労働者としての悲しさを感じます。正社員であれば、御親族が亡くなった情報が社内に流されますが、何年勤務しても会社のメンバーとして認めてもらえない派遣労働者にはそれもありません。派遣労働者も人間です。家族がいます。それは正社員と変わりません。しかし、忌引がないということは、人間扱いされていないことだと思います。派遣のみならず、その家族も物扱いなのです。
残業時間が以前のように発生することのない現在は、事務用機器操作だけではありませんで、その業務に付随する業務である付随業務、付随的業務、ひいては自由化業務の割合が多くなっております。メーンの専門業務が全体の九割を切りますと違法となりますが、実際にはその違法状態が横行しております。
私も、電話応対、来客へのお茶出し、コピー用紙の補充など、庶務、雑務が占める割合は全体の一割をはるかに超えております。これは、女性事務派遣の典型的パターンかと思います。私の部署には庶務を担う者がほかにおりませんので、電話応対は誰がするのかと部長に言われております。電話応対の業務以外の業務の遂行を派遣労働者が拒否することは、力関係において不可能なことです。
私の賃金は、派遣先における私より十歳若い女性正社員のそれの半分以下です。正社員に支給されるものが派遣には一切支給されないからです。賞与、退職金、手当はございません。昇給、昇格もございません。交通費もございません。それにもかかわらず、担当する業務に差異はございません。もし正社員にしか担えない業務があるとすれば、正社員がいなくなれば別の正社員が着任するはずですが、そこに派遣労働者が派遣されることは珍しくございません。ほかの部署においては、女性正社員の産休代用員として女性の派遣があてがわれ、正社員の仕事をそのまま引き継ぐ、そういう常用代替が派遣先では何ら支障なく行われております。
こういったところから、同じ業務を担っても、賃金において二倍もの格差があるという点で、職務において何をするのかではなく、誰がするのかで賃金、処遇が決められる身分制度を感じざるを得ません。正社員には内部労働市場における職能型が、派遣には外部労働市場における職務型が適用されるとの説明もありますが、同じ勤務体系、同じ職場、同じ業務を遂行するに当たって、その説明は首肯し難いものがございます。
社員教育においても差別的です。正社員ならば就業時間内に会社の経費で研修や試験を受けられ、合格したときにも手当等あるでしょう。しかし、派遣は自分のお金で、仕事が終わった後、独習をしなければなりません。私も年に一個ずつ資格を取ってきました。それが時給アップになることはありませんでした。派遣先の上司からは、派遣だから努力しても無駄だと言われております。
元々、一般職の女性正社員が担ってきた事務をそのまま派遣の方に移行させております。業務は定型、補助的業務であり、一定期間を経過するとスキルアップを上昇させる必要のない行き止まりの仕事であるため、能力向上の伸び代が低いものです。女性正社員の中には、年功序列により在籍年数で賃金が上昇する一方、業務の難易度が向上することはないため、処遇と賃金が見合わないという問題があります。その女性一般職の事務職の問題を解決することなく、派遣だったら低い賃金でも問題ないとばかりにその業務を丸ごと移行させたことが、女性派遣には事務職と庶務をさせるという結果となったと思います。
今年の五月末には、まだ成立していない派遣法改正案を前提として、既に派遣先の社長から三年後には辞めてもらうとの通告を受けております。現在五十六歳ですので、三年後には五十九歳になります。その年齢になってもまだ事務として使用し続けるほど私は優秀ではないのだそうです。そして、優秀な派遣だけは部署を異動させて使うというふうにも言っております。それは、明らかに派遣法の禁止行為である特定目的行為です。さらに、三年間という猶予があるのだから、その後の仕事の準備としては十分だろうという言い分です。三年後には十八年勤務することになりますが、一銭の退職金ももらえず、年齢というハンディを負って雇用市場に放り出されます。優秀ではない私のような派遣をなぜ十五年も使ったか、その理由については説明していただけませんでした。
そもそも、業務についてのコミュニケーションを派遣と持とうとしない企業がどのようにして派遣の能力の優劣を把握しているのでしょうか。人事考課もございません。雇用責任を持っていないのですから、キャリアプランニングもしないと思います。把握しているとしても、評価の基準を派遣に明示していないのではフェアではありません。合理的、客観的な評価基準は明示しておらず、周囲の評判という恣意的で不安定かつインフォーマルなもので一方的に判断しているのではないでしょうか。
派遣元会社に三年後雇い止めの旨を伝え、雇用安定措置について尋ねました。営業担当は、企業様がおっしゃるのですから、法令遵守にものっとって三年後には辞めていただくということです。派遣先の直接雇用は、既に社長から雇い止め通告されているので、依頼するまでもございません。しかも、依頼という行為には実効性が希薄で、結果責任を伴いません。ですので、最も望むべき方法は使用不可能です。
次いで、新たな派遣先の提供ですが、派遣元本来の業務でありながら、高年齢の私にはこれまでの経験を生かした類似業務は紹介できないと言われました。そして、派遣元での無期雇用においては、当社には派遣のあなたにやってもらう仕事はないとのことです。
そして、派遣が嫌なら請負業務という形態もあると言われました。公開入札で請負価格の安さだけで競って落札して、派遣労働者は労働者性を失った最低賃金の規制を受けない低い金額で働かされると思います。現在のような不当な扱いを受ける派遣労働も不本意就労ですが、更に低劣な就労形態を余儀なくされるのではと、希望を失います。
キャリアアップのための教育訓練計画はまだ策定していないとの回答です。特に、一般の事務職においては、ほかの会計、貿易とは異なり、カリキュラムが存在していないとのことです。よしんば派遣元が教育訓練を施したとしても、派遣先がそれをもって派遣を使用するという保障は改正案のどこにもありません。まして、正社員化への道を開く要素など、どこにも見出せません。業務区分をなくすことも眼目の一つですが、そうなると、正社員と同様の業務と責任を派遣という身分のまま担わされ、差別と格差は一層強まり、拡大します。同一価値労働同一賃金の法令化が必要だと思います。
三年ごとに失職だけが確定されては、派遣労働者にとって不安を抱えた状況が常態化し、そのような派遣を受け入れる派遣先も、本腰を入れて業務を覚えてもらうというインセンティブが働かなくなります。三年ごとに失職し、次の派遣先で以前より好待遇、高賃金で働ける保障はどこにもありません。企業横断的に雇用において通用するエンプロイアビリティーの存在の不確かな日本の雇用市場においては、派遣先が変わるたびに加齢によって不利になっていくだけです。
既に述べているように、キャリアアップの構築が不可能な一般事務において、キャリアの積み重ねは本来的に不能ですし、三年ごとに入れ替わる派遣労働者のキャリアプランニングなど派遣先企業にとっては関心のないことです。しかも、派遣労働は、派遣先が主導権を握り、そこのニーズありきですので、幾ら派遣元に種々の業務を課しても、ほとんど意味のないことになってしまいます。
また、派遣労働者に教育訓練を施すことが正社員化に寄与するとの考えは、派遣労働者の能力が正社員より劣っていることが前提となっています。しかし、正社員のように企業内研修を何ら受けることなく、派遣されるたびに派遣先の業務などをのみ込んで即戦力として働ける派遣労働者の方が、むしろ能力においては勝っている部分があるとも考えられます。
ずっと違法派遣で働いてきた私の希望は、今年の十月一日に、みなし規定がようやく適用されて、派遣先に直接雇用されるというものでした。ですが、今回の改悪で、直接雇用されるどころか、私は職を失うのです。本当に納得できません。
今回の派遣法改正案は、三年後には雇い止めという派遣労働者にとって最もダメージを受ける法令だけが確定し、そのダメージを補修すべきセーフティーネットが実際には機能しないことを伝えさせていただきました。派遣労働者にとってメリットは何一つありません。完全廃案を望みます。
御清聴ありがとうございました。