岩田一政の発言 (国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会)

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○参考人(岩田一政君) それでは、十月末についてですけど、既に申し上げましたが、十月末に逆に日銀が何もしなかった場合に何が起こるかということをやっぱり考えるべきだと思うんですね。
 その場合に私が恐れますのは、日本銀行は二年で、二年程度で二%と言っているけれども、物価の上昇率が一%を現実に割ってきてゼロに近づいていくような動きがある中で、行動を何も取らない中央銀行だというように仮にマーケットが受け取ると、そうすると、二%の目標、もうちょっと言うとデフレ脱却まで難しくなる。
 私は、先ほど民間も中央銀行もそれぞれ学習過程にあると、本当の構造を知らない、少しずつ学んでいくんだと申し上げましたが、それはどういうことかというと、例えば日銀は一%割れでも何も行動しないというと、マーケットの参加者は、ああ、日銀というのは言葉で言っているけれども本当はそんなに実現するつもりを持っていないんだと。つまり、そういうアクションを通じて学んでいるんですよね。日銀の決意がどのぐらい固いかということを少しずつ確かめながら予測をするわけですね、将来ちゃんと二%の方に向かっていくことになるのかどうかという。
 日銀の方は、逆に、こういう刺激政策を取ったときに民間がどのように反応してくれるか、これは思ったよりも輸出が出なかったり、金利が少しは下がったけど設備投資は思ったほど出なかったりということを、言ってみますと一回一回確かめながらやっているんですね。それで、今の構造はどういうことになっているのかというのを学びながらやっているということなんだと思うんですね、現実はですね。
 私は、やっぱり十月にやらなかった場合には、日本銀行は本当はやる気ないというふうに思われる方が増えて、結果的にはデフレ脱却が難しくなる、そういうコストを考えれば、やっぱりやるべきだったんじゃないかと。
 もう一つは、円安については、私若干違った見解を持っていて、為替レートというのは、変動レート制というのは上限幾らでも上がってもいいし下限どこまで行ってもいい、普通はそう思うわけですね。しかし、現実の経済では、例えば日本が苦しんだように、二〇一二年のように円高が続きますと、八十円切るような、産業がもたないんですよね、経済が円滑に運営できなくなる。つまり、上限の方は非常に理解しやすいんですね。ですから、その意味では、ある経済に均衡の為替レートがあるとして、それから余りに乖離するともう経済がもたない、そういう上限がある。これは割合、比較的理解されやすい。
 ところが、私は下限もあるというふうに思っていまして、それは先ほど申し上げた交易条件なんですけど、円安が進みますと輸入物価がたくさん上がります。輸入物価がたくさん上がっちゃいますと、国内で労働生産性が仮に向上していても実質賃金が上がらないんですね。それは、実質所得が産油国の方に流れてしまうということなんですね。
 ですから、過度に円安に行くと、私は自国窮乏化と呼んでいるんですけど、普通は為替レートを下げて輸出を増やして他国を窮乏化するから拡大的金融政策はいけないということになっているんですが、私は自国窮乏化のリスクというのもあると思っていまして、それに近いことが起こったのはいつかというと、先ほど早川参考人のおっしゃったような二〇〇八年の前半ですね。あのときは消費者物価が二・四%上がりました。でも、誰も評価しないですね。主にあのときは原油価格がどんどん上がって、為替レートも百二十円ぐらいでした。結局、原油価格はバブルで崩壊しました、上がりましたけどね。そうしたら、またすぐマイナスに戻ってしまった。
 ですから、あのエピソードは、やっぱり私、ある種の自国窮乏化ですね。余りに、つまり原油価格が上がると同時に為替レートが下がっているというような状況がありますと、実質所得がむしろ失われて、消費者が消費をむしろ控えてしまうといいますか、マイナスが及ぶ。こういうようなことが起こるとすれば、それが仮に金融政策が円安を加速することによってそうなったとしたら、ある種のやはりそれは窮乏化になると思います。
 同時に、為替レートというのは、一国だけじゃなくて必ず相手がいるんですよね。相手の国がどのくらい均衡レートから離れているかということによっても私は制約があるというふうに思います。変動レート制といいながら、実は、どこまででも上がってもいいし、どこまででも下がってもいいという世界ではないと思います。
 例えば、今ドル高なんですよね。ドル高なんですけど、過去、一九七〇年からずっと長期の実質実効為替レートを見ますと、これまでドルは安かったんです。二〇〇二年以降、ずっとドル安なんです。でもしかし、このところ急に上がりまして、独りでドルが上がっているんですね。既に長期の何十年かの平均を上回っているんですね。
 それで、これからイエレンさんは金利を上げようとしているんですが、その一つの条件は、インフレ率がこれから二%に近づいていきますという条件の下なんですね。ですけれども、ドル高が更に加速していった場合は二%は難しいんですよね。それをどうするんですかという問題が、これはアメリカもそうですし、イギリスもそうなんです、あるいはECBもそうなんですね。ECBがどうして量的緩和、もちろん原油価格除いてもかなり物価上昇率下がっていますけれども、とうとうその原油価格も含めたベースではマイナスになってしまったということがもちろんあるわけですね。
 元々、じゃ、下がってきた一つの理由としてECBが挙げていたのが、ユーロのレートが高くなり過ぎていると。明らかに、二十年の平均取りますとユーロは過去よりも高かったんですね。それが今、大体過去の平均に近づいているんですね、近づいてきている。ほぼ恐らく長期的な値が均衡に近いとすると、いいところまで来ていて、アメリカはちょっともう上に出始めて、日本はもちろん均衡よりかなり下の方に今あるんですね、実質実効為替レートで見ますと。
 そういうときに、更に円安を加速するような政策が適切であるというふうに判断してくださるかどうか、これはちょっと微妙だと思っていますし、もう一つの例を挙げますと、TPPの交渉をやっていて、私は本当に早くやってもらいたいと思いますが、議会にTPAという大統領の交渉権限を認める法案がありますが、その中に、議会のいろいろ証言をこの前ビデオで見ておりましたら、ある方が通貨条項というのを入れるべきだと。通貨の為替レートを操作しているような、人為的に操作しているような国に対しては罰を加えるべきだという条項を入れるべきだというのがありまして、ある別の研究所は、その対象国としては日本とマレーシアとシンガポールだと名前まで挙げております。
 これは分かりません。これから議会でTPPを議論しますが、そのときに、為替レートを更に円安に持っていくことがいいのかどうかというのは、これは金融政策だけの問題ではありませんけど、言ってみますと、スピルオーバー効果といいますか、金融政策のですね、ことに関して全く考慮を払わないでやれるのかどうかというのは、これは一つの課題になっていまして、連邦準備の長い宿題はまだ解決していませんが、そういう国際的なスピルオーバーをどのくらい考えながらやるべきかという、これは宿題のままで、グリーンスパンさんができなかった一つの宿題でありまして、今も宿題のまま残っているということかと思います。

発言情報

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発言者: 岩田一政

speaker_id: 27201

日付: 2015-02-25

院: 参議院

会議名: 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会