長有紀枝の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)

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○参考人(長有紀枝君) 長でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 参議院の先生方は、長い期間にわたりましてじっくりと政策に向き合う先生方であるというふうに承知しております。そういう先生方の前でこのような機会をNGO、市民社会としていただけましたことをまず心より御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。
 初めに、私が理事長を務めております難民を助ける会のお話からさせていただきたいと思います。
 こちらは、一九七九年、今から三十六年前にできた組織ですが、先生方とも御縁の深い憲政の父とも言われております尾崎咢堂、尾崎行雄の三女であります相馬雪香がつくった組織です。そのとき相馬が口にしていたのが、日本の善意の伝統を世界に広めていこうと。そう言うと何かすごく難しく聞こえるのですが、善意の伝統というのは、一言で言ってしまいますと、困ったときはお互いさまという発想を身近な人だけではなくて、見ず知らずの方々、難民の方々にも広げていこうと。さらには、尾崎咢堂が、自分が政治家であった時代に日本が第二次世界大戦に突き進んでしまった当時の環境への痛烈な反省から、日本を世界の孤児にしてはいけないと、日本を世界から孤立させてはいけないと、そういう信念からつくった組織でございます。何を今更というふうに思われるかもしれませんが、今の時代だからこそ、またこの開発協力大綱や私たちの国の国際協力を考える上で大きな示唆があるのではないかと思い、冒頭に紹介をさせていただきました。
 今般の開発協力大綱、新大綱と呼ばせていただきますが、こちらの大綱について薬師寺先生が有識者の座長となり進めてこられたものでございますけれども、私たちも大変大きく共感するものであります。
 まず、順番に参りますが、今回の見直しの背景や現状認識、こちらは新大綱の前文に書かれてございますが、共感しております。
 また、理念、こちらも高く評価し、賛同しているものです。特に、開発協力の目的と基本方針につきまして、それから人間の安全保障の考え方が、私たちの国の開発協力の根本にある指導理念として、様々な課題ですとか主体、援助をする主体とか、重要な概念を束ねる接着剤といいますかハブのような役割をしている、そういうものとして人間の安全保障が捉えられていて、非常に良い形で発展していると感じました。
 具体的には、多様化、複雑化、あるいは広範化した課題や領域、こちらのレジュメにも書きましたが、貧困、開発、気候変動、人道支援、復興支援、平和構築、全部は読み上げませんが、こういった様々な領域、でもどれ一つも欠くことができないものです。また、多様な主体、政府、JICA、国際機関はもとより、民間の企業、地方自治体、NGO、市民社会組織、そして大学や研究機関、そして最後に国民一人一人まで言及されているというものです。
 また、さらには重要な概念がたくさん展開されています。薬師寺先生からもお話がありましたが、包摂性。このODA大綱の中に、私は、一人ひとりというのがこれ検索しますと四回出てくるんですが、一人ひとりという言葉が非常に多く出ていることにも感銘を受けました。対話と協働、さらには相手国の、こちらが勝手にやるのではなくて、これは日本のODA、日本の国際協力の強みだと存じますが、相手国の自主性、意思や固有性の尊重をして質の高い成長をすると、こういった点を高く評価したいと思います。
 また、重点課題を見ていきますが、こちらも、貧困層への支援、絶対的貧困の撲滅あるいは脆弱な状況に置かれた人々の支援というものを質の高い成長より前に置かれていること、この位置も含めて積極的に評価したいと思います。
 また、こちらも薬師寺先生から御指摘ございましたが、単なる成長戦略ではなくて、誰一人取り残されないという意味で包摂的というふうな表現がありましたが、本当に誰一人取り残されないということを新大綱が意識的に書かれているというのは非常に重要なことだと思います。また、紛争や政治的不安定さの要因の一つに、貧困についても言及がございます。そして、切れ目のない支援や包括性、こちらも非常に重要なことが明記されているかと思います。
 また、地域別の方針では、ASEAN諸国への支援において、経済成長のみならず、人命を守る防災ですとか災害対処能力、こちらに重点を置いていることも非常に重要な点と存じます。また、アフリカといいますと、近年目覚ましい経済発展が語られておりまして、そちらにもちろん言及する一方で、依然として紛争が頻発していて深刻な開発課題が山積していると、こういう実態も述べてくださったことを本当に評価したいと思います。
 次に、新大綱の実施ですが、こちらについては、評価とともに多くの課題と強い懸念も抱いておりますことをお伝え申し上げたいと思います。
 まず、戦略性の強化におきまして、日本のODAの戦略性の強化をうたいながら、他方で、先ほども申し上げましたが、開発途上国自身の開発政策や開発計画を踏まえるといった点を、これは日本のODAの強みと思いまして高く評価いたします。
 また、同時に、ここまで評価点を申し上げたのですが、軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避という点では、これまで事実上禁じてきた他国の軍への直接支援を、民生目的、災害救助など非軍事的目的の開発協力において、その実質的意義に着目し、個別具体的に検討するとしたことにつきましては、大きな疑問とともに危惧を抱くものです。特にこの実質的意義というのがよく分からないというような感じを受けました。
 私自身、難民を助ける会の活動を通じまして、失礼な言い方かもしれませんが、私だけではなくてNGOの人間の多くが紛争地、戦争中の国々に行った経緯がございます。軍隊というものがどういうものかというのもこの目で見てまいりました。そこで思いますのが、特に途上国の軍、もちろん国連PKOに最大の兵員を出しているのがインドであったりバングラデシュであったりパキスタンであったりするわけですが、同時に、途上国の軍が国内においては治安の維持装置として働いたり、あるいは、この大綱の中で支援をしていこうとしていく少数者の方たちや先住民の方へのまさに圧制のための道具に使われているような場合もあり、そういった途上国の軍というのは規律や文民統制の点で私たちの国の自衛隊とは大きく異なるものです。
 私自身、年に何回か自衛隊の方々にNGOの活動とはとか人道支援とかをお話し申し上げますが、そこでいつも感じますのは、自衛隊の方たちの志の高さであったり規律の高さです。そういう方たちだけを見ていますと、世界中の軍隊がそうというふうに誤解される方があるかもしれませんが、例えば、昨年、発生から二十年を数えましたルワンダのジェノサイドにおいては、国軍がそういった圧制といいますかジェノサイド、虐殺をしたこともあるわけです。ですので、途上国の軍、実質的な意義ということはありながら、また、災害救助と限定しながらも、ここの部分については非常に注意が必要ではないかということを申し上げたいと思います。
 それから、開発協力の適正性確保のために女性が社会的弱者として位置付けられるのではなくて、開発の担い手と位置付けられたことを大変高く評価したいと思います。
 他方で、今回女性という言葉が非常にたくさん出て、言葉といいますか、出てきておりまして、それはそれでとても良いことだと思うのですが、女性が十二回、実は数えたんですけれども出てきておりまして、女性を重視する余りに、ほかのこの大綱に出てきている様々な社会的弱者の方たちへの配慮がゼロサムにならない形で女性の支援というのを是非進めていただきたいと思います。女性だけではなくて、こういった社会的弱者の方々が中心になるような支援を続けていただきたいと思っております。
 また、今回開発協力の適正性確保のための原則で、私たち開発協力関係者の安全配慮が明記されました。明記されたこと自体は非常に高く評価したいと存じますが、ただし実践面では不確実な要素が大変多いのではないかと思います。
 また、実施体制、こちらは官民の連携強化、自治体との連携、国際機関や他のドナー、新興国とともに、市民社会との連携の強化がうたわれたことは大変すばらしいと存じます。そして、実施基盤の強化において、対国民総所得、GNI比でODAの量を〇・七%とする国際的目標を念頭としつつも、我が国の極めて厳しい財政状況も十分踏まえつつ、基盤強化のための必要な努力を行うというのは、何かとても極めて弱い書きぶりなのではないかというふうに感じました。
 まとめまして、今後の課題でございます。
 僣越ではございますが、こういったODA新大綱を拝見して、また日々国際協力に携わる中で、今日の国際情勢をめぐる認識、あるいは新大綱でうたわれているODAの理念と現実の実施体制との落差、格差、これが余りにも不均衡な状況にあるのではないかと存じます。
 こちらも既に薬師寺先生が御指摘されたことを繰り返すような形になりますが、今のODAの現状、今年度五千七百八十億円ですが、これをどのように考えたらよろしいのでしょうか。一般会計予算の〇・五%、一%にも満たないと。こちらは、日本のODAの対GNI比では〇・一七%で、DAC加盟の二十八か国中では第二十位です。また、NGOの支援と連携の強化をうたいつつも、NGO予算はその少ないODAの予算の中の一%でございます。
 ODAの予算は減らされてもNGO向けの予算は減らなくていいですねということをよくおっしゃっていただくのですけれども、確かにそのとおりではあるのですが、そもそもがこのような低い水準でございますので、何も私は国際協力だけをどうぞ推進してくださいですとか、あるいはNGOの支援だけをしてくださいと申し上げているわけではなくて、国益に準じた日本政府ならではのODAをしつつも、それ以外の部分もバランスの取れた形で重視していただきたいということを申し上げたいと思います。
 さらには、外務省の定数についても申し上げたいと思います。
 私は別に外務省の回し者ではなくて、日々私たちが国際協力を行う中で外務省の助成金などもいただいておりまして、その際に、やはり人数の制限から、もちろん定数以外の方たち、臨時の方たちが、大勢優秀な方たちがいるのも存じ上げておりますが、とはいえ、そういった物理的な人数の不足などから、せっかくあるスキームが滞ったり、そういった経験などもしております。そういったことから、やはり外務省の定数、これを情報発信ですとか情報収集とか情報分析、これは当然、安全関係も含みます。また、助成スキームの運用に多大な影響があるという意味で、こちらも是非御検討いただきたいと思います。
 附属の資料を付けましたが、私も改めてこれを見てびっくりしてしまったのですが、外務省の職員の方の定員というのは国土交通省の北海道開発局とほとんど変わらないと。あるいは財務省と比べるのはよくないかも、十二分の一、あるいは厚生労働省の五・五分の一、国土交通省自体と比べますと十分の一でしかないと。この人数で日本の国益をどういうふうに担うといいますか、ちょっと僣越ながらそういった御指摘もさせていただきたいと思います。
 また、あと四点ほど急ぎ申し上げます。
 真の意味での人道支援の拡充、これも重要かと思います。人道支援というのは、真の意味で敵味方の区別なく、困難な状況にある方たち一人一人を支援することです。この原則を改めて申し上げたいと思います。また、国益に沿った戦略的支援ということであるならば、市民社会、私たち市民社会をより生かした援助の多様化、こちらによって、狭義の国益を度外視した、あるいは目先の国益を度外視した活動から得られる広義の国益というのが必ずやあるというふうに私たちは信じております。また、人間の安全保障という日本の宝物とも言えるこの概念をODAの理念にとどめずに、外交や内政においても、東日本大震災の被災地支援においても指導理念になればすばらしいと思います。
 今後も、新大綱にうたわれたとおり、日本の強みを生かした質の高い、きめの細かい一人一人に届く支援を私たちNGOも心掛けたいと思いますし、先生方からの御支援もお願いする次第です。
 早口で大変失礼いたしました。ありがとうございます。

発言情報

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発言者: 長有紀枝

speaker_id: 26649

日付: 2015-03-04

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等に関する特別委員会