田代洋一の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(田代洋一君) 田代です。よろしくお願いします。
 お手元にレジュメがございますので、ほとんどそのとおりに読み上げていきますので、よろしくお願いします。
 まず、今度の農協法等改正の本質ということでございますけれども、これはもう既に皆さん十分御案内のとおりですけれども、私は、何か日本が独自に、いわんやこの参議院が独自に作ったものじゃなくて、あくまでもやっぱりアメリカ発アベノミクス経由の農協法等改正であって、メード・イン・ジャパンではないなということでございます。
 御承知のように、在日米国商工会議所、ACCJが、まず第一番目に、JAグループの金融事業を金融庁監督下にある金融機関と同等の規制に置くべしと、要するに農水省から金融庁に移すべしということを言っているわけですね。これはもう、言葉を換えれば、要するに農協監査ではなくて公認会計士監査に移せということだと思うんですね。
 二、もし平等な競争環境が確立されなければ、要するに、金融庁監督、公認会計士監査に移されるまでの期間については次の規制を見直すべしとして挙げていることが、員外利用が認められている、これをやめろと、准組合員制度、これをやめろと、三つ目に独禁法の適用除外、これもやめろと、こういうことをアメリカが日本に指示しているわけですね。
 既に、今回のこの農協法改正が通れば、金融庁監督には移らないけれども公認会計士監査に移すという形で実現をしちゃうと。更にプラスして、プレゼントでもって准組合員制度も五年後には規制をするよという、こういうことを約束しております。
 ということから考えますと、この法律の本質は、何か農業所得の増大だとかそういうことを文言上は書いておりますけれども、中身はアメリカ金融資本への従属だなというふうに私は考えております。
 二番目に、農業所得の増大に最大限に配慮しろということが七条二項に書かれています。私は、結論的に、この条項は不適切であると思っています。
 といいますのは、第一項で組合員及び会員のために最大の奉仕をするのが農協だというふうに書いてあるんですけれども、まさに組合員及び会員のために最大の奉仕をするということと農業所得の増大に最大限に配慮することとは矛盾します。農業所得の増大というのは農業者のためだけのものでありますけれども、組合員の中にはこれは准組合員も含まれるわけですから、こういう規定を置くことは正組合員だけを優遇するものである、そういう意味では適当ではないというふうに考えております。
 それから、農業所得の増大という言葉が独り歩きしております。しかし、共益組織、あくまでも組合員の組織としての農協は、何も農業所得の増大一般に責任を持つ必要は全くない、持つべきは組合員の農業所得に配慮すべきである、こういうことだと思うんですね。したがって、農業所得の増大にというような言葉はやめて、組合員の農業所得の増大、あるいは組合員の所得、あるいは組合員の福利、こういう点に私は改めるべきだというふうに思っております。
 特に強調したいのは、じゃ、日本の農業所得全体に誰が責任を持つのかと。もちろん農協も責任を持ちますけれども、日本の農業所得全体に責任を持つのは、政府、あんたじゃないですかということを申し上げたいですね。ところが、その政府は、TPPをやるだとか、あるいは生産調整政策を廃止するだとか、米の戸別所得補償をやめるだとか、ことごとく農業所得を減少させる方向に行きながら、やっぱり農業所得を減少させておいて農業所得増大の責任を農協に転嫁する、こういう法律じゃないかなというふうに思うんですね。
 皆様方十分御案内のように、既に先進国農政は、もう農業所得はなかなか農業者の努力だけでは確保できないということでもって国が直接所得支払政策で確保するという、こういう方向に動いております。先進国でも農産物価格で確保できるのはもう物財費の部分しかありません。所得の部分は政府が保障する。こういう中でやっぱり日本の農政だけが逆行しているということでございます。
 三点目、ここは私は法律としては全く駄目だと思うんですけれども、七条三項では収益という言葉を使って、今、関先生がおっしゃった収益という言葉を使っているんですね。ところが、五十二条一項の剰余金という言葉はそのまま残すということをやっております。特に国会、この間の八月二十日のこのやっぱり参議院のところでもって、奥原参考人は、答弁で、非営利規定、今先生がおっしゃった非営利規定は、イコール、五十二条一項の出資配当の上限規定と同じなんだという、こういう発言をしているんですね。しかも、彼は、出資配当を目的として仕事をしてはいけないという、これだけの意味でございますということを非常に強調しています。それは決して、だけど、そうではございません。非営利とは何かといいますと、それは、組合員への最大限の奉仕ということが非営利だということだということだと思うんですね。出資配当制限はそういう組合員への最大の奉仕の一環でしかありません。言ってみれば、非営利規定が農協の本質規定である。これを削除しちゃうのは、関先生と同様に、私は決定的な間違いだというふうに思っております。
 さらに、七条三項は、高い収益性を実現し、収益を投資又は事業分量配当に充てるということを書いております。しかし、事業分量配当だけに充てると書きながら、五十二条一項の剰余金の配当規定は残すんですね。要するに、出資配当は行って、その出資配当の制限は残すということでございます。
 議員の皆様方に一番強調したいのは、この同じ法律の中に、収益という言葉が一方で使われながら、片一方で剰余という言葉も使われております。しかし、収益と剰余という概念は、これは同じ法律の中に書けるものではない、全く違う概念でございます。どういうことかというと、高い収益性を実現するということは、組合員への奉仕も削ってなるべくコストとして削減して期末にどれだけ利益が上がるかという、言ってみれば、やっぱり収益というのは目的になってきます。ところが、剰余というものは、そういうものじゃありません。期中に最大限に組合員に奉仕をして、その結果として剰余が、余ったね、これを配分しようよというのが剰余であるわけですね。協同組合には剰余という概念はあったとしても収益という概念はこれはございません。そういう意味で、収益という言葉と剰余という言葉を同じ法律の中に併存させるなんということをよく内閣法制局は通したなというのが私の感じでございまして、第七条三項は、これはやっぱり削除するしかないということでございます。
 それから、もうちょっと具体的に言いますと、出資配当制限をしていると言いますけれども、現実にやっぱり全中の資料なんかでも、出資金の八割は正組合員なんですよ。准組合員はたった二割なんですね。したがって、出資配当制限をすると、かえって法律が考えている正組合員の利益を損なっちゃうということになってくるという、この点もやっぱりお考えいただく必要があると思うんですね。
 四点目に、理事等の構成への過剰介入である三十条十二項。これはもう関先生もおっしゃいました。協同組合は、ICAの第四原則で、自主と自立の民間組織でございます。そういう民間組織の役員構成に農業所得増大という特定の国の政策目的、この政策目的でそういうやっぱり自治と自立であるべき組織に法的に介入するというのは、これは今まさに安倍内閣がやりたい規制緩和というものに対して全く反する過剰規制であるというふうに考えるんですね。しかも、農協というのは地域密着業態であります。組合員と農協の企業体を結ぶのは、地域代表としての理事であります。その理事の大半が企業の出身者になりかねない、こういうことになってくると、農協の地域代表性、理事の地域代表性が阻害されてしまいます。これは私は、法律による営業妨害だというふうに考えております。
 次のページに移りまして、監査費用の負担、信用事業の支店化の、これ支店化と書いてあるのは、これ代理店にちょっと訂正をしてください。代理店化の手数料が不明であるということであります。
 今、残念ながら、この農協法改正等を通じて農協にも動揺が広がっております。非常にやっぱり状況が厳しくなってくる中で、更なる広域合併あるいは一県一農協化ということも各地で検討されております。しかし、いたずらに合併するよりは、そしていたずらに合併して地域離れするよりは、それだったならば、信用事業を中金の代理店化、こちらを選択する道もこれから出てくるだろうというふうに思うんですね。どっちを選択するか、広域合併を取るか、それとも中金の代理店になるかというときにポイントになってくるのは、会計監査の費用でございます。あるいは、代理店になったときの手数料が問題になってきます。
 ところが、国会でこの点が全然はっきりしていないんですね。会計監査費用については、附則の五十条三項で「実質的な負担が増加することがないこと。」というのは書いています。皆さん方、何で国会でもっと追及しないのかと思うんです。私も昔、役人をやっておりましたけれども、実質的ななんという言葉を入れたときは、もう役所は手を握って、それでしかるべきことはもう考えているはずなんです。しかし、その実質的なの中身は全然分かっておりません。
 事務局からこの厚い、今日これ茅ケ崎からずっと持ってきたんですけれども、この厚い法案を逐一読ませていただきますと、この法案の中で実質的な負担軽減に相当するのは、農水産業協同組合貯金保険法の一部改正であります。この中で、「納付された保険料の一部を返還することができる。」、五十条三項の規定があるんですね。恐らく政府は、この農水産業協同組合貯金保険法の一部改正をこの農協法等改正の中に滑り込ませておいて、この銭を使って会計監査の費用の実質的な負担を減らすということを考えているのかなとも思うんですね。是非、国会議員の先生方には、一体実質的な負担を軽減するとは何なんですかということはもっと厳しく追及してほしいと思うんですね。
 ところが、この協同組合貯金保険法は、これはもうペイオフ対策なんですね。これのやっぱり保険料を軽減した場合に、じゃ今度はペイオフ対策がきちっとできるのか、こういう点ももっと追及をしていただきたいというふうに思っております。要するに、もう少し具体的な点に踏み込んでいただきたいということでございます。
 それから、この代理店の手数料、これは法案マターではございませんけれども、やっぱり単協にとっては切実な問題であります。この点も、中金が一体何を考えているのか明確にしていただけると有り難いなというふうに思っております。
 それから、六、准組合員の利用調査、五年間やるということを書いてございます。法案は、准組合員事業の、ちょっとゴチで書いていますが、規制の在り方について五年間調査、検討すると書いてあるんですね。規制の在り方ですよ。これはもう規制をするということが前提となっております。これはやっぱり私は錯覚があるんじゃないかと思うんですけれども、農協は共益組織でございますから、員外利用規制を受ける、これはある意味じゃそういうことはあり得るということであります。ところが、准組合員は、これは員外ではありません。あくまでも組合員の一人です。ですから、そういう組合員について幾ら調査してみても組合員の利用規制をする論理はどこからも出てこないと、立案者は員外利用と准組利用とを混同しているんじゃないのかなというのが私の考えであります。
 一番けしからぬのは、国会答弁で奥原参考人はいつも、調査の中身はこれから検討すると言っているんですね。冗談じゃないよと。我々が学生に対して、おまえら、自己改革をしろということを言いながら、そういう課題を与えながら、じゃ、どういう形を取ったら自己改革したということになるんですかという、まあ言ってみれば、課題の具体的な、これこれをせいということの課題を与えずに解答だけをやらせる、これは学生たちは後出しじゃんけんというふうに言っていますけれども、農協が何をやっても、後から、おまえけしからぬということでもって切っちゃうという、これはやっぱり全くけしからぬと。
 奥原参考人は、正組合員と准組合員の利用割合を調査するだとか、同業他社の存在がある場合には規制をするだとかということが書かれていますけれども、正組合員と准組合員の利用割合を、実態を調査したからといって、そこから具体的にじゃ何%にするなんという規制が出てくるんですか。論理的に考えたら、それは無理だと思うんですね。
 同業他社ということについては、これは関先生も私も生協なんかについても勉強しておりますけれども、言ってみれば、やっぱり同業他社というのは、協同組合と株式会社と両方が同じ地域にある、どっちの方がより多く組合員にサービスできるんですかという、まさに協同組合と株式会社とが同じ分野でもってお互いに競争しようじゃないですか、その競争の結果としてどちらが優れているんですかというのを判断してもらおうじゃないですかというのが我々が生きている市場社会の在り方であるんですね。
 ところが、他の同業者がいるから准組の利用を制限するなんというのは、これは言ってみれば日本が社会主義社会に戻るような話でもって、極めて反市場メカニズム的なこういう論理である。こんなことを許してよろしいのか、よく市場経済国としてお考えいただきたいと思うんですね。
 要するに、同条は、法が准組合員利用規制というブラフを、脅かしをちらつかせているだけであって、削除すべきだというふうに考えております。
 七番目に、先ほどの伊藤参考人と同じ言葉になりますけれども、農業委員会を私は机上委員会にしちゃうものだなというふうに思っております。
 従来の農業委員の定数と任務、これを二つに分けて、農業委員さんは法定業務と農地利用最適化の推進に関する事務を行う、推進委員の方は区域内の農地等の利用の最適化の推進のための活動を行うというふうに書いてあるんですよね。
 要するに、もう農業委員さんは机の上に座って、上がってくる書類の審査だけをすればいい、実際の地域の活動は推進委員に任せればいいという、こういうことになってきております。これでは、農業委員をまず選挙制から選任制に変える、それから、先ほど伊藤参考人がおっしゃったように、農業委員の定数を減らす、三つ目には農業委員会を机上委員会化しちゃうと、こういう形でもって本当に地域、地権者の信頼を得て最適の農地管理、集積が一体できるのかということを私としては非常に懸念しております。
 八番目に、農地所有適格法人化ということは、限りなき農業生産法人の一般法人化かなというふうに思っております。最終的には、企業の所有権取得へのコースになるんじゃないかなというふうに思っております。
 議員の先生方には是非御認識いただきたいんですけれども、この国会で二〇〇八年、九年当時、国がどう答弁していたかというと、農業生産法人は地域に根差した農業者の共同体だという、こういう規定を何回も繰り返しているんですよ。だから、単なる、農業生産法人は所有権取得可能な法人ではございません。
 ところが、そういう農業生産法人を農地所有適格法人にして、農外者の議決権を二分の一以下に緩和する、農業従事の役員を一人以上でいい、こういうことになってくると、事実上、農業生産法人は一般法人に近づいていく、結果的には一般法人でも農業生産法人でも農地所有ができるねということになりかねない。
 時間ですので御意見をおまとめくださいというふうにメモが来ておりますので、まとめます。
 結論として、最後の一ページであります。改正案は出自が悪い、アメリカ発ということで出自が悪い。やっぱり日本としての独立性を維持しよう。論理が不整合である。特に、やっぱり剰余と収益を一緒にさせているなんというのはまずい。それから、いろいろ不適切な面がある。具体的に、実質的な負担の軽減なんという言葉について明確でない。こういう点を併せると、私は、結論的にこれは廃案が相当であるというふうに考えております。
 特に申し上げたいのは、こんなひどい法案を通しちゃって、あのときの農水委員は誰だったのか、農水委員長は誰だったのか、山田委員であった、農協出身の方がそんなことをやったらこれは後世の恥になる。そういうことを考えたら、是非御賢察のほどをよろしくお願いしたいと思います。
 どうも時間をオーバーして済みません。

発言情報

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発言者: 田代洋一

speaker_id: 22665

日付: 2015-08-25

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会