浅野直人の発言 (環境委員会)
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○浅野参考人 本日は、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律の衆議院環境委員会での審議に際し、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝いたします。
この温対法は、平成十年に、省エネ法改正によって規制をすれば十分、このような法律は不要との反対もあった中で制定されたものでございまして、当初は、国等各主体の責務、政府による基本方針と実行計画の策定、さらに、地球温暖化防止活動推進員や地球温暖化防止活動推進センターの設置、国による温室効果ガス総排出量の算定、公表を規定する十六カ条の簡潔なものでございました。
しかし、お配りした資料の二ページ後半以降にありますように、その後、平成十四年以降五回の改正を経まして、既に六十九カ条のかなり大きな法律に成長してまいりました。
平成十四年の改正では、京都議定書目標達成計画を法定計画とし、内閣に地球温暖化対策推進本部を設置、地球温暖化対策地域協議会を法定し、森林吸収源対策の強化が盛り込まれました。
続く十七年改正では、地球温暖化対策推進本部の所掌事務に長期的展望に立った地球温暖化対策の実施の推進に関する総合調整が追加され、事業者の排出量算定、報告、公表制度が新設されたほか、十八年改正では、京都メカニズムクレジット、割り当て量口座、管理口座制度が位置づけられました。
また、二十年改正では、地方公共団体の実行計画に区域施策編を追加する、事業者の排出抑制指針制度を新設、国民の日常生活での排出抑制への事業者の寄与の責務等を規定したほか、温暖化防止活動推進センターの政令市への拡大などが行われました。
直近の二十五年改正では、京都議定書の第一約束期間終了に伴う措置として、京都議定書目標達成計画にかえて地球温暖化対策計画制度が設けられましたほか、地球温暖化の定義を拡張し、温室効果ガスの追加が行われました。
今回の改正でこの法律の内容がさらに充実していくことは、大変喜ばしいことだと存じます。
今回の改正では、三条の国の責務に普及啓発を位置づける、また、八条の政府の地球温暖化対策計画に盛り込むべき内容として、啓発普及と国際協力が位置づけられております。
温暖化対策や循環型社会形成のような政策課題は、規制だけに頼ってその実現を図ることは困難で、各主体がその行動のあり方を変え、自主的な取り組みによって政策目的を達成させることが重要であります。このためには、さまざまな政策実現手法を統合させていくことが不可欠でございます。
情報的な政策実現手法としての啓発普及は、政策実現手法の基礎的、基盤的な位置にありますから、地球温暖化対策計画に盛り込むべき事項として啓発普及が加えられることは適切だと思います。
なお、温対法の制定当時から地球温暖化防止活動推進員の制度や中央及び各地域の地球温暖化防止活動推進センターが制度化され、また、さらに、十四年の改正で地球温暖化対策地域協議会の制度がつくられましたが、これらは普及啓発の施策の推進に多くの役割を果たしてきております。しかし、これらの組織の働きについての政府の理解が十分であったとは言えないように思われますし、環境省のこれらの組織の育成支援が十分組織的に行われてきたとは評価できません。
既存の組織を育成し活用することは、新たな組織をつくるような派手さがありませんので、とかく目新しい仕掛けをつくることに力が注がれがちでありますけれども、次々に新しい運動や組織をつくることだけに予算が配分されるのではなくて、地道な取り組みが着実に伸びていくということが必要であると思います。
我が国の温室効果ガスの排出量は世界の三%の割合であることを考えますと、日本の世界での役割として、着実な国内対策による国内での温室効果ガス排出量を国際約束どおり着実に実行することによって世界に範を示すことはもちろんでありますが、それだけではなく、国境の外での日本の貢献による地球全体の温室効果ガス削減への寄与を図ることにも大きな意義があります。国際協力推進に関する事項が温暖化対策計画に追加されることも適切だと評価いたします。
現在策定準備が進められております政府の地球温暖化対策計画は、大筋では適切な方向を示しておりますので、今後、計画に沿って着実に温室効果ガス排出削減への取り組みが進んでいくことを期待しておりますが、改正法案の内容も、その中に先取りしてしっかりと位置づけられることが必要だと思います。
さらに、現行二十条以下の改正によりまして、地方公共団体の実行計画については複数の地方公共団体の共同での策定、実施が可能なものとされること、実行計画の区域施策編に掲げられるべき施策の例示として、その利用に伴って排出される温室効果ガスの量がより少ない製品や役務の利用、あるいは都市機能の集約の促進が加えられます。これは、地域の実行計画にどのような内容を盛り込まなければならないかという点について、より具体的なメッセージを発信するものでありまして、これによって、地域での温暖化対策がより総合化されたものになることが期待できることになりますから、この点も評価されてよいと考えております。
地方公共団体の実行計画はこれから改定作業が進められる地域が多いと思われますので、今回の法改正は、より充実した地域の実行計画の策定に資することになろうと思います。
ところで、四月から電力の小売自由化が始まりまして、多くの電力小売事業者の新規参入が始まりました。さきにも述べましたように、温対法には平成十七年改正で事業者の排出量算定、報告、公表制度が新設されました。こういうような報告手続を義務づけるという仕組みは、手続を通じて、自分の活動による環境負荷の状況を把握させまして、自主的な負荷低減に向けての取り組みを促進させるという意義を持っております。また、報告のデータは、地域での温室効果ガス排出の状況を行政機関が把握して地域での施策の改善に資するという意義もあります。
現在の温対法は、特定排出者に政令で定める方法によって算定することを求めておりまして、これを受けた施行令では、他人から供給された電気については、環境省及び経済産業省の省令による係数の使用を定めております。そして、これについて定めた省令及びこれに基づく告示では、主要な電気事業者ごとに、電気一キロワット当たりのトンで表示した二酸化炭素の量としての係数が示されています。しかし、告示で示された供給事業者別の係数によることができない場合には、全国一律の係数で代替可能ということが、省令の二条四項三号、告示にも示されております。
現行の二十一条の十一、改正された後が三十五条でございますが、エネルギー供給事業者がエネルギー供給の相手方に二酸化炭素排出量の把握に必要な情報の提供に努めなければならないと規定はしておりますけれども、これは努力義務にとどまっておりまして、強制力がない点が少々気になる点でございます。
現行の二十一条の九、改正の三十三条でございますが、主務大臣が排出量算定の適正な実施のために特定排出者への技術的助言、情報の提供その他の援助を行うものとしておりますから、これらの規定が的確に執行されまして、報告制度による数値の信頼性が危うくならないように、制度運用上の努力が払われることを強く希望いたしております。
今後の課題としてこの際指摘しておきたいことの一つは、パリ協定を初めこれまでの国際的な合意の中でも、また、我が国のこれまでの環境基本計画の中でも、気候変動の対策は緩和と適応をその両輪として進めていくべきであるということが広く認められている点でございます。日本でも、この緩和と適応という二つの政策課題を気候変動対策の中で適切に体系化していくということが課題だろうと思います。
もっとも、適応の施策は、緩和のための施策以上に、例えば防災、減災でありますとか農作物の品種改良でありますとかいった関連する他の領域において、しかもしばしば既に先行して展開されている政策、施策との関連が深いものがございます。
現行の温対法は、平成十年の法制定時の温暖化問題への一般的な理解、あるいは法律制定当時の事情などもありまして、温室効果ガスの排出削減を中心課題とする、そして全ての者の自主的かつ積極的な取り組みの重要性を強調するという枠組みを持っております。この現行法の枠組みをそのままにいたしまして、ここに適応も必要であるという形で条文を付加するという対応だけでは、済まされない面もございます。
ですから、適応と緩和の全体をいかなる政策体系として整えていくべきか、また、これをどのような立法の形で対応すべきかということにつきましては、既に昨年十一月に閣議決定をされました気候変動の影響への適応計画の実施や評価についての知見を深めながら、丁寧な検討をする必要があると思われます。
ただし、余り長い時間をかけることなく、しかし関係者間では十分に議論を重ねた上で合意を形成して、必要な答えを出すべきであろうと思います。
なお、政府の温暖化対策計画案には、長期的に二〇五〇年に八〇%削減を目指すということが明記されております。このことは既に、平成二十四年に閣議決定されました第四次環境基本計画にも書かれていることでございまして、当然のことであると考えておりますが、その実現を目指してこれからどのように政策を進めていくのかということについては、より具体的な見通しを立てていくことも必要であろうかと思います。
日本学術会議の大西隆議長を座長といたしまして、伊藤元重経済財政諮問会議委員や川口順子元外務大臣もメンバーに加わられました懇談会が、この二月に既に、社会構造のイノベーションが必要であるという提言を丸川環境大臣に提出しております。
こういった提言などを踏まえた着実な検討も急がれるということを申し上げまして、私の意見の陳述を終えさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)