片岡剛士の発言 (財務金融委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○片岡参考人 皆さん、こんにちは。三菱UFJリサーチ&コンサルティングで主任研究員を務めております片岡と申します。
本日は、お招きをいただきまして、まことにありがとうございます。二十分程度、私の意見を述べさせていただければと思います。
お手元の方に、「日本経済の動向と財政健全化」、こういう題名の資料がありますけれども、そちらをごらんいただければと思います。
一枚おめくりいただければと思いますが、最初に、アベノミクス以降の日本経済の概観ということで何点か挙げさせていただいております。
日本経済は、二〇一三年以降、株高、円安を起点としまして民間消費と公共投資の回復が進んでいたといったところでございますけれども、二〇一四年四月以降、消費税増税を機に消費が大きく落ち込んだまま回復せず、内需の弱さが露呈した状態でございます。輸出及び設備投資の増加も、現状、マイルドなものにとどまっている、こういったような状況です。
こうした中で、二〇一四年の半ば以降、先ほどお話もありましたけれども、ギリシャ危機ですとか新興国景気の停滞、それからアメリカのFRBの利上げといったようなリスク要因が顕在化、深刻化をしまして、現状、外需頼みの景気回復はなかなか望めない、こういった状況です。
二〇一四年の末に、政府は、消費税増税を延期する、こういう判断をされたわけですけれども、このときのマクロ経済シナリオ自体は、二〇一六年の半ばまでに二%のインフレ目標を達成する、それから二〇一七年四月に消費税増税、そして増税の影響が一服した段階で出口政策を実行する、こういうような形で財政金融政策、ポリシーミックスをしていこうというものであったというふうに考えられるわけですけれども、現状はなかなか物価が二%の目標に届かない、こういう状況でありまして、政策枠組みの変更が必須の状況であるということです。
日本銀行自体は、二%のインフレ目標達成時期を二〇一七年度の前半ごろとしております。一七年度の前半ということですので、二〇一七年の四月以降ということですよね。こうなりますと、ちょうど消費増税のタイミングとバッティングしてしまうわけですね。これは、過去、二〇一四年の四月に増税をしたときと同じことになりますので、今回はこういった愚を繰り返すべきではない、こういうふうに考えています。
以上からは、政府、日銀の経済政策プランを見直すべき段階である、こういうふうに言えると思います。
次をおめくりいただければと思いますが、足元の経済状況というところでございまして、こちらの方は、一番左側が実質GDP成長率、右側の方に消費、住宅投資、設備投資、それから輸入までのGDPの成長率に与える寄与度というものを棒グラフで描いております。
青い棒グラフが二〇一三年度でございますが、これを見ていただくとおわかりのとおり、二〇一三年度は二・〇%であって、そして、民間消費の寄与度というのが一・四%、消費主導で成長率が高まった、こういったところでございます。
ただ、二〇一四年度、実質GDP成長率はマイナスになりまして、これは、消費税増税等々によって消費と住宅投資が大きく落ち込んだ、こういう流れになっております。
二〇一五年度、現状まだ二〇一六年の一—三月期のデータが出ておりませんので、三四半期の平均値をここでは挙げておりますけれども、現状ではマイナス、こういう状況であります。この中で、依然として消費が弱いというのが、先ほどお話ししたとおりの展開になっております。
それから、四ページ目でございますが、GDPの中で落ち込みが非常に深刻であるというところでございますけれども、四つ図表がございますが、まず一番左上をごらんいただければと思います。
現状、足元、二〇一五年度ですけれども、実質GDPの水準はどうなのかといったところでございますが、二〇一五年の十—十二月期が五百二十七・四兆円、こういう状況でございまして、二〇一五年に入って、GDPはほぼ横ばいで、上下しながら推移している、景気は足踏みといったところがこうしたところからもわかるというところでございます。
それから、左下の図をごらんいただければと思いますが、消費が落ち込んでいるわけですけれども、今回、二〇一五年の十—十二月期のデータからは、過去十年間の消費のトレンドから有意に下振れた動きになっているというところが確認できます。
こちらの方は、青い線で実際の家計最終消費支出を並べておりますけれども、それに対して黒い点線といいますのが、二〇〇二年の一—三月期から二〇一二年の十—十二月期までのデータから計算しました家計消費のトレンドです。
前期比の伸び率は〇・二%ぐらいなんですが、一三年に入りまして、このトレンドから青い線が有意に上振れてくるような感じで、要は、前期比〇・二%の伸びからだんだんだんだん家計消費が高まりつつある、こういう状況であったわけですけれども、そこから、一四年の駆け込み需要で、赤い点線、これは統計的にトレンドに入るというところを超えたことを意味しているんですが、そこを越えて上振れるような状態になったんですね。
ただ、消費増税以降、大きく家計消費は落ち込みまして、今度は赤い点線の下限を超えるような形で二〇一五年の十—十二月期が入ってしまった、こういったところがわかります。
では、この家計消費の落ち込みはどういった原因によるのかというところですけれども、右下の図をごらんいただければと思いますが、これは、GDP統計ベースで、耐久財、それから半耐久財、非耐久財、サービス別に家計消費を見たものです。
これを足した合計の伸びというのは当然ながら落ち込んでいるんですけれども、これを見ていただきますと、青い棒グラフ、耐久財の落ち込みというのが深刻であることによって消費が落ち込んでいる、こういったところがわかるというところです。
次の五ページ目でございますけれども、増税と原油安によって後ずれしたインフレ目標達成時期、こういったところでございます。赤い線は、これは消費動向調査から計算できる予想インフレ率なんですが、二〇一三年に入りまして予想インフレ率はぐっと上がっていくといったところが観測されたわけですけれども、二〇一四年の四月以降、がくんと予想インフレ率が落ちまして、それから、原油安等も相まって、今、足元では急速に落ちてきている、こういった状況であります。
それによって物価も、二〇一四年の前半までは、点線で描いております二〇一五年四月に二%インフレを達成する経路を若干超えるような形で推移していたわけですけれども、物価上昇率は落ち込んできている、こういった話になっております。
それから、次の六ページ目でございますけれども、金融政策、財政政策をどう考えるかというところでございますが、私自身は、金融政策は非常によくやっているというふうに思います。ただ、財政的にやや緊縮していますので、それによって金融政策への負荷が非常に高まっている、それによって例えば日本銀行はマイナス金利政策のようなことを導入している、こういう話になっていると思います。
次をおめくりいただければと思いますが、では、財政健全化をどう考えればいいのかというところでございますけれども、七ページ目をごらんいただければと思います。
財政再建の定義といいますのは、債務残高の名目GDP比が安定的に横ばいから減少に転ずることです。これを達成するためには、二つの必要条件がございます。
一つは、プライマリーバランスの名目GDP比を、赤字を減らしていって黒字化していくこと、それから、ドーマー条件というふうに言われますが、名目GDPの成長率が実際の国債の利回りよりも高くなる状態をつくり続ける、この二つであります。この二つを、どちらかないしは両方満たしていけば、長期債務残高の名目GDP比は横ばいから低下にいく、こういう話になります。
現状、日本経済はどうなのかというところなんですが、八ページ目をごらんいただければと思います。
こうしたことを申し上げますと、是が非でもプライマリーバランスを黒字化しないといけない、それから財政を緊縮して健全化を一刻でも早く達成しないといけない、こういう話になるわけですけれども、私自身は、日本経済のフェーズに合わせて回復をしていくことが大事だと。
ここでいろいろフェーズを書いておりますけれども、現状はデフレ脱却期であります。このときには、プライマリーバランスというのは緩やかな黒を目指すということで、現状、政府はそうやっておりますけれども、赤字でも長期債務残高のGDP比というのは改善できます。
なぜ改善できるのかということなんですけれども、成長率と金利の関係でいいますドーマー条件が満たされてくるから、そういった状況になるわけですね。デフレから脱却しますと、名目GDP成長率は伸びます。それから、金利につきましては、日銀の金融緩和によって長期金利は非常に低位に抑えられます、今起きていることでございますが。そうなりますと、ドーマー条件が満たされていくので、プライマリーバランスの黒字化を必ずしも急がなくても長期債務残高のGDP比が減っていく。
ただ、経済が正常化していくあたりになりますと、プライマリーバランスの黒字化は緩やかに必須になるということであります。
次をおめくりいただきまして、そうしたところを考えるに当たりまして、幾つか図表を挙げておりますけれども、日本の特徴、名目GDPは、過去、一九九〇年から二〇一三年までほぼ一貫して横ばいでした。前年比の平均の伸び率でいきますと〇・三%ぐらいですので、これは諸外国と比べますと非常に低率な伸びということがわかります。
それから、金利なんですけれども、名目長期金利自体は世界的に低下傾向であります。その中で、日本は最も低いわけですね。ただ、二〇一三年までは、名目成長率よりも名目の長期金利の方が高い状態が続いていました。ドーマー条件が満たされていなかったわけですが、なぜ満たされていなかったのか。これは、名目成長率が高まらなかったからということになります。
そして、現状の財政状況でございますが、左下、右下両方に書いておりますけれども、こちらは内閣府の中長期試算の結果を見ておりますけれども、二〇一四、一五あたり、プライマリーバランスは緩やかに黒字化の方向に向かっております。二〇二三年度あたりで、ちょうど、経済再生ケースであればプラス・マイナス・ゼロぐらいになるといったところです。
そして、国、地方の公債等残高、長期債務残高のGDP比でございますけれども、二〇一四、一五、一六年度あたり、緩やかに拡大傾向にあったものが、現状、横ばいになっているわけですね。
ですから、非常に微妙な、財政状況としては重要な情勢で、ここで対応を間違えるとまた再び財政悪化の方向に向かってしまうということです。
十ページ目でございますが、ギリシャの事例を挙げております。
ギリシャといいますと、財政が非常に悪いということで、日本としてはギリシャのようにならないようにしないといけない、そういう教訓として挙げられている国だと思うんですけれども、ギリシャ自体は、次をおめくりいただければと思うんですが、プライマリーバランスの名目GDP比といいますのは、二〇〇九年の時期ですとマイナス一〇・二%の赤字だったんですね。二〇一四年になりますと、一・五%の黒字になります。真ん中あたりに書いてありますけれども、黒字になったんですね。五年間で黒字になりました。日本の場合ですと、五年間で三・二%ぐらい減らしたということなんですけれども、ギリシャはプライマリーバランスの黒字化を五年間で達成したんですね。
では、それで何が起こったのか。右の長期債務残高名目GDP比をごらんいただきますと、一二六・二%から逆に一七七・二%まで拡大してしまいまして、この結果から何が言えるかといいますと、要は、プライマリーバランスの黒字化を急ぎ過ぎると、名目GDPが減って失業率は高まり、デフレになり、それによって国民生活は破壊されて、結果として財政健全化も達成できない、こういったようなことがギリシャの事例としてはわかるということでございます。
次の十二ページ目でございますが、軽減税率自体は、これは経済学者のほぼ九割あたりが反対であります。なぜかといいますと、逆進性対策たり得ないからでございます。ここにはいろいろ理由が書いてございますけれども、さまざまな観点から見て軽減税率は愚策である、こういうふうに言わざるを得ないというふうに思います。
そして、十三ページ目ですが、今、株価は大きく低下してきているわけですけれども、二〇一六年、それから一九九〇年、一九九八年、二〇〇八年、二〇一四年、これらは、年初来の株価というのが去年末から比べて大幅に下がった年であります。こうした年といいますのは、大きな経済変動が起きているという年ですね。例えば、九〇年ですとバブル崩壊、それから九八年ですとアジア金融危機、そして二〇〇八年はリーマン・ショック、一四年は消費税増税による景気の停滞、こういう話でございます。
お手元の図表、十三ページの方は、青い線で二〇一六年の株価の動きを見ています。これは、前年末の株価一万九千円をちょっと超えたところを一〇〇にしまして、足元、三十八日ぐらい営業日で経過しているんですけれども、それを見ますと、大体一五%ぐらい下がっている、八五・一ということであります。この株価の推移といいますのは、九〇年、九八年、二〇〇八年、二〇一四年と比べても最も悪いということであります。
もちろん、株価の状況が実体経済に即座に影響するわけではございませんが、ことしは非常に大きな変動が起こる可能性があるということを株価の動きは示唆しています。
最後なんですが、現下必要な財政金融政策ということでお話をさせていただければと思います。
まず、財政政策につきましては、現状、政府は、名目GDP水準目標政策、六百兆円達成という話をやっておりますけれども、これは非常に考え方としては私は真っ当だと思います。ただ、問題は、そのための具体策が全く出てきていないといったところが問題で、特に財政健全化につきましては、名目GDP水準を六百兆達成するということ、これは年当たりの平均の名目成長率を三%強にしないといけないわけですけれども、過去は〇・三%なんです。このためには、財政金融政策、成長戦略、全てを使って成長のために政策を機動的にやっていく必要があります。
ですから、こうした観点からいきますと、私は、近く予定されている増税ですとかそういったものはとんでもないというふうに考えているわけです。
それから、二点目は、増税の凍結という話です。
そして、三点目なんですけれども、私自身は、財政政策のメニューとして、一時的に消費税減税もありかなというふうに考えます。
それはなぜかといいますと、要は、足元の消費というのは非常に低迷しているわけですね。国民としては、わかりにくい経済対策をやっても効果はありません。ですから、先行きの消費税の凍結と、それから、現状、足元を、一時的に消費税を減税してみる。こういったような話は、例えばイギリスですとかもしくはカナダですとか、こういったところでもやられていますので、全くやったことがない話では当然ないんですね。こういうことも一つのメニューであります。
それから、低所得労働者を対象とする給付つきの税額控除、こういったようなものを主なメニューとする経済対策、現状ですと十兆円ぐらい必要かな、こういうふうに思っています。
そして、こういうことを申し上げると必ず財源という話になりますが、この財源は、三・四%の名目成長を前提とした税収増、それから特会整理を通じた歳入改革、国債増発等によって行うということが必要になります。例えば外為特会ですとか、いろいろありますけれども、そうしたような特会の整理ということも重要だと思います。
それから、最後なんですが、公共投資なんですけれども、足元、増発しても人手不足とかそういったような問題もあるかもしれませんが、ただ、重要な点は、中長期的に、緩やかながらも公共投資を拡大しながら必要なインフラ整備をやっていくというスタンスを国会ないしは政府できちんとお示しいただくことだと思うんですね。こうしたことをしますと、建設業者の方もその先の事業展開をしやすくなりますし、仕事もしやすくなる。ですから、こうした公共工事計画の策定、実行というのをぜひやっていただきたいというふうに思います。
金融政策につきましては、時間もあれですので、簡単にお話しさせていただければと思いますけれども、ポイントは、やはり、政府と日銀のデフレ脱却に対するコミットメント、約束というのをきちんと強めていくということが必要になります。
現状、足元では、物価上昇率はゼロ%ぐらいですね、生鮮食品を除く総合で。ただ、これはエネルギーが含まれております。エネルギー価格といいますのは、これは世界経済、世界のマーケットで決まりますので、日本国内ではコントロールできません。現状、例えば中央銀行の幾つかは、食料とエネルギーを除く総合とか、そういったベースで見ております。日銀でも、生鮮食品を除く、エネルギーを除く総合といった指数で基調を見ておりますので、これを目標値にしてもいいんじゃないかなというふうに考えています。
あと、日銀法の改正ですとかこうしたところを通じて、雇用の安定化といったようなものをより強調するような形で中央銀行は変わっていくべきだ、こういうふうに私は考えております。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)