安藤実の発言 (財務金融委員会)

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○安藤参考人 安藤です。どうぞよろしくお願いします。
 お手元に簡単なレジュメをお配りしていると思いますので、それに従って御報告したいと思います。
 まず、財政法と公債との関係ですけれども、財政法第四条は公債発行を原則的に禁止しております。これは健全財政の原則とも言っておりますが、なぜ原則的に禁止したかといいますと、これは憲法九条と関係があるんだと。要するに、日本は憲法九条で平和主義をとっているわけですが、戦争しないと。近代の戦争というものは国債なしにはできないんだ、だから戦争と国債というのは非常に関係が深い、だから戦争しないということであれば国債を原則的に禁止してもいい、そういう関連でできたというふうに言われております。
 ただ、財政法第四条のただし書きがありまして、例外としまして、公共事業、出資金、貸付金、そういうものについては公債発行を認めておるわけであります。
 公共事業、出資金、貸付金と三つ並べているわけですが、この三者に共通な性格というのは一体何か。例えば、出資金であると配当金の収入がある、貸付金であれば利子収入がある、公共事業は、財政法の制定当時は国鉄だとか電信電話事業があったわけで料金収入がある。つまり、それ自体に償還性がある、つまり税金に頼らない、そういうことでただし書きで認めていた、そういう経緯であります。
 それで、二番ですが、一九六五年度に戦後初めて国債を発行するわけですが、これは特例公債として発行しております。いわば戦後初めての国債発行が赤字国債の発行であったというわけですが、このときの福田大蔵大臣の説明を見ますと、年度途中で税収が落ち込んだ、それに対して公債を出す、これは歳入補填の公債である、そういう性格の公債だ、だから、財政法第四条の特例として審議をしてもらいたいということであります。これは、赤字国債の発行ということを非常に明確に把握して出した、そういうことだと思います。
 それで、翌年の一九六六年度から、財政法四条に基づく公債と言われるいわゆる建設公債というものが発行されます。
 この財政法第四条のただし書きの公共事業を、当時の福田大蔵大臣は、資産として後に残るもの、そういう説明をしております。これは、公共事業に自償性がある、料金収入がある、そういうようなことではなくて、資産として残るといわば一種の拡大解釈をしている。そういうことで、その公債を建設公債というふうに呼びました。建設公債あるいは四条債という言い方をしたわけであります。いわば償還性ということに触れていない。償還性ということに触れずに、資産として後に残るということを理由にして建設公債なるものを発行したということであります。
 このときに、大蔵省は「財政新時代」という本を出しております。それを見ますと、福田大蔵大臣が一番主張していた点というのは、ここにありますように、政府は借金をする、そして政府が借金をして民間の肩がわりをするんだ、何を目指すかというと、ゆとりある家庭、蓄積ある企業を目指すと。当時、日本の企業というのは借金経営をやっていたわけですが、そこを政府が肩がわりして、ゆとりのある家庭、蓄積ある企業を目指すんだということであります。これが、いわばこの国債政策の目的というふうに言っていいかと思います。
 それから、四ですが、財政法の制定から、当時、約二十年たっております。この間、料金収入のある公共事業は公社、公団というふうになりまして、国の一般会計で残っていたのは道路や港湾など単なる資産であった。だから、建設国債というふうに名づけても、その元利償還は租税によるしかない。つまり、租税で元利を償還しなければならないということであれば、これは赤字公債と言わなきゃいけないわけですが、それを赤字公債と言わずに建設公債と名づけたというのが福田大蔵大臣の工夫であったというふうに思います。
 当時、一九六五年十二月の参議院大蔵委員会の議事録を見ますと、私ども財政学を研究している者は、大蔵委員会の議事録、この財務金融委員会がそうですけれども、そういうものを非常に資料としてよく使うということをやっております。その中で、当時の社会党の木村禧八郎議員と福田大蔵大臣とのやりとりというものは非常に興味深い内容のものであります。
 その中で、ちょっと一部ですが、ここで引用してあります。木村議員の発言です。国の資産として残っても会計上回収性と収益性がない場合は赤字公債であります、赤字公債であるのに建設的だからいいんだ、そういうふうに考えて出す場合は非常に膨張する危険性があるんですと。赤字公債だということをきちんと見ないで、別な何かいい公債であるかのように観念する、それの危険性をここでは指摘しております。
 当時、この問題について鈴木武雄東大教授がどういうことを言っているかというのをここで参考として出しました。不況にはむしろ赤字国債を発行するのが筋だ、景気回復に従ってその必要がなくなる、したがって一定の歯どめの効果がある、ところが、公共事業というものはいずれも長期財政計画にのっとってやられたわけですけれども、そういう長期財政計画の一環として建設国債を発行するのは、実質的に赤字国債なのに、それにあたかも健全な装いをさせ、かえって国債を累積するおそれがある、そういうことを指摘されています。これは「日本公債論」という本ですけれども。
 それで、五番ですが、一九七五年度から特例公債の発行というふうになります。
 一九七五年度中に生じた歳入欠陥というものは、補正予算で建設国債を目いっぱい発行する。目いっぱいということは、建設国債は公共事業を対象経費としてその対象をどんどん広げてきたという経緯がありますけれども、そういう対象経費いっぱいの公債発行ということをやっても足りない、そういうことであります。目いっぱい発行しても追いつかない。
 そこで、ついに財政法に特例法を設けての公債発行ということになりました。建設公債主義だというふうに言っていたものが、この段階で破綻したということだと思います。そういうことで、一九七六年度からは、財政運営としては異常な、当初予算からの特例公債発行というふうになります。
 異常だというふうに書きましたけれども、その異常の意味は、その後、一九七六年二月の衆議院予算委員会で、渡辺佐平法政大学教授、この方は金融論の学者ですけれども、この渡辺先生が、財政法特例法というものは、年度途中なら結果的に公債発行の限度が示されるが、予算提出の当初に制定するということは、歳出をまず決めて赤字公債の発行額を決めることになる、こういうやり方は赤字公債発行の限度をなくす、そしてこういう財政特例法というものが毎年制定される前例をつくることになると。
 つまり、七五年度は年度途中で特例公債を発行しているわけですが、七六年から、当初予算から特例公債というものを予算に組み込んで、そういうような運営をする。そういうことについて、こういうやり方が毎年制定される前例をつくることになる、これは、今日の事態も見通した指摘だというふうに思います。
 この渡辺教授は、別の機会に、こういう財政法特例法を年度当初に制定するやり口を恥知らずなことというふうに述べております。これは恥知らずな財政運営。日本人の道徳観としては、恥の意識ということが特徴だというふうに言われておりますが、日本の財政運営がそういう日本独特の恥の意識のない運営になっている、そういうことを指摘されているというふうに思います。
 それで、二枚目に移ります。
 特例公債の償還については、建設公債の場合は、その対象が資産として残る、物として残っている、だから、それの期限を考えて六十年で償還すればいい、そういう六十年償還というようなやり方をとっておりますが、特例公債の場合は、そういう見合いの資産がないから、期限が来れば、つまり満期になれば全額償還ということで始まっております。
 ところが、一九七五年以降発行した特例公債の満期が迫った約十年後、一九八四年に、全額現金で償還するということになると極端な歳出カットに陥る、そういう理由で借換債を発行するということに変更しました。
 その際、借換債の償還を、差し当たり建設公債と同じ六十年にしました。差し当たりというのは、ほとんど、暫定的といいますか、このときだけだというような意味合いなわけですが、この差し当たりの措置がそのままずるずると続く、そういうことになっております。日本の財政運営で、差し当たりとか暫時とか、そういう言い方が非常にルーズな使われ方をしている、その例だと思います。そういう意味からいけば、建設公債と特例公債を区分する意味がほとんどなくなっている、そういうふうに考えております。
 七ですが、財政法の第五条が形骸化したという問題です。
 財政法は、公債の日銀引き受けを禁止しております。しかし、異次元の金融緩和のため国債を買い続けた結果、日銀の国債保有額は急増して、二〇一五年八月現在で二百五十八兆円。国債保有の量的規制たるいわゆる日銀券ルールとか一年ルール、そういうものを破って国債を買い入れている。これはもう財政ファイナンスじゃないか、つまり、事実上の日銀の公債引き受けと変わらない、そういうような声も出ております。
 それで、問題の、このたびの公債の発行の特例に関する法律案ですけれども、これは五年先まで特例公債を発行し続ける、そういうことだと思います。これは、予算の単年度主義に反するというだけじゃなくて、財政法違反の赤字公債発行を常態化する、そういうことになるというふうに思います。これは、あえて言えば財政法暗殺法案ではないか、こういうものをこういう議会で認めるということは議会の自殺行為になるのではないか、そういうような言い方をあえて、忌憚なく言えというふうにさっき委員長がおっしゃいましたので、そういうふうに言いたいと思います。
 私の提案というのを最後に出しておりますが、これは原因者負担論と公債区分の廃止論であります。
 日本は、高度成長の結果、七〇年代の初めに非常に大きな公害問題が発生しました。今、中国はひどいそうですけれども。その公害問題を処理した。処理できたのは、原因者負担原則、つまり、公害の発生源の企業にその処理の責任を負わせる、そういうことが有効だったというふうに思います。
 公債累積の問題を解決するためには、公債発行政策を推進し、その恩恵を受けてきた財界がそれ相当の税負担を負う、それが筋だというふうに思います。
 そして、公債というのは租税と切り離すことができません。それはある意味で租税の先借りであります。あるいは、租税の変形であります。公債というものを媒介として、大法人や富裕層が負うべき租税負担を大衆の負担に置きかえるというようなことは許されないというふうに思います。そういう意味で、現在進められている逆進性の強い消費税増税路線というものは筋違いだというふうに考えております。
 それから、建設公債と特例公債の区分を廃止するという意味は、要するに、建設公債という考え方だと、これは公共事業の目的公債、あるいは公共事業の特定財源という位置づけになります。いわば、国家財政のいろいろな経費の中である特定の経費が財源的に優先経費として扱われる、そういうことになると、例えば財政合理化をする、節減をするという場合にその対象外になってしまう、そういうことではおかしいのではないか。ほかの経費と同じ扱いにする、そういう意味合いからも、建設公債という区分は廃止すべきであるというのが、私の提案というか意見であります。
 以上、意見を申し上げました。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 安藤実

speaker_id: 11484

日付: 2016-02-29

院: 衆議院

会議名: 財務金融委員会