太田義郎の発言 (財務金融委員会)

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○太田参考人 私は、太田義郎と申します。
 名古屋市内の中村区で米穀業を五十年以上やっております。いわば町の米屋のおやじであります。今回、自営業者の代表として意見表明の機会を与えていただいたことは大変ありがたく、感謝申し上げたいと思います。
 私は、全国商工団体連合会の副会長をしております。私どもの団体について一言だけ御紹介をさせていただきます。
 私どもは、私の業種であります米屋だとか酒屋、肉屋、八百屋はもとより、町の飲食店、それから建設業者、そして物づくりに携わる町工場など、異業種で構成されており、全国に約二十万人の中小業者が組織をされております。
 何よりの特徴は、その中でも五人以下の小規模の事業者と個人業者を中心に構成をされている点であります。そのような町の事業者の営業と生活、諸権利を守り、社会的、経済的地位の向上を図ることを目的に、この六十五年間、終戦後からずっと活動してまいりました。
 本委員会で審議をされている所得税法の一部を改正する法律案には、消費税の軽減税率導入のための消費税法の一部改正が含まれております。二〇一七年四月に予定される消費税率一〇%への増税と同時に、一部の品目を現行税率の八%に据え置く、いわゆる軽減税率を導入するというものです。この改正案はぜひ取り下げていただきたい、廃案にしていただくようにお願いしたいと思います。
 この点について、なぜなのかという理由を三点述べたいというふうに思います。
 理由の第一は、軽減税率の導入は、適格請求書等保存方式、すなわちインボイスの導入が前提とされています。
 インボイスの導入は、課税業者に新たなる膨大な事務負担を負わせるものとなります。中小業者の経営を直撃するものとなるからです。レジ変更だけで数十万円の負担、軽減税率で八万店が消滅すると述べている経済アナリスト、東京商工リサーチの方からこんな意見も寄せられております。
 先生方はよく御存じのように、今の経済環境は引き続き大変厳しい状況が続いております。先日発表されましたGDPもマイナスが続いております。デフレを脱却したとは言いがたいというふうに思います。
 二月二十三日に発表された全国中小企業団体中央会の一月の中小企業景況調査によりますと、一月のDIは全指標で悪化し、中でも売上高DIは前月比マイナス一〇・六ポイントになっております。世界的な株価下落に加え、円相場も上昇傾向にあるため、内需のさらなる縮減を懸念する声も高まっております。中小企業の先行きは不透明で、一層増大しているとここで述べられております。
 こうした中で、軽減税率導入は、中小業者にいわばどえらい事務負担を要求することになります。複数税率に対応するためのレジの導入、あるいはシステムの仕様変更、値札の変更、税率区分集計など、事務負担が求められます。人件費もかさみます。一人、二人の小さな商売でも、今の実務の二倍、三倍の時間がかかると言われております。夜中まで伝票と格闘しなければならないことになるでしょう。
 政府は、レジの導入には二十万円の補助やシステム変更についても助成すると言われておりますが、問題は、日々の実務負担がふえて煩雑化するということです。私について言えば、業務用のお米の配達の伝票四枚複写を毎回発行し、それを長期間保存し、整理して、その実務だけでも大変になります。
 私ども中小業者というのは、地域で生まれて育って、こよなく地域を愛して過ごしてまいりました。営業をやっているだけでなく、町の町内会の役員をやり、消防団をやり、防火をやり、防犯をやり、いわば営業をやりながら町のコミュニティーの中心になっております。私も、毎週火曜日の朝、学校へ行く子供の見守り隊の隊員として、町内会の役員として、地域に貢献をし、頑張ってきております。
 ほとんどの業者はインボイスなど知らないのが現状です。聞いたことがない、そういうのが現状だと思います。日本には、商習慣上、全くこういうものはありません。税の知識も不十分な中に、このような複雑な仕組みを押しつけること自体が問題だと思います。新たな事務負担に耐えられず、廃業や倒産に至る業者がふえることになることは間違いありません。新規開業の若い芽も出なくなるのではないのかという心配があります。
 理由の第二は、免税業者を取引から排除するという問題です。
 本委員会でも御審議されていますように、全事業者八百二十五万者のうち、売り上げ一千万未満の免税業者というのは五百十三万者に上っております。インボイスの導入は、この免税業者を取引から排除するという大変大きな問題があります。免税業者は、免税でありながら課税業者になるか、あるいはインボイス不要なBツーC、つまり、直接消費者相手の商売に特化すればいいのではないかという議論もあるようですが、問題は、現場ではそんなに簡単なものではありません。
 そこで、幾つか事例を紹介させていただきます。
 まず第一です。
 山梨県の笛吹市の電気工事業、この人は個人でやっております。免税業者であります。したがって、税金八%をいただいていないという方です。創業四十年、お客さんは個人宅や工場、工務店です。得意先には、地域の名産品である和菓子を製造している店も含まれています。インボイス制度が導入されると、その得意先からは適格請求書が多分求められる、本人はそう言ってみえます。売上高の三、四〇%をそこで占めております。得意先を失うことはできないので、免税業者でありながら、課税業者の選択を本人は考えている。そうすると、今まで消費税をもらっていなかった個人宅や工務店にも消費税を今になって求めるということになります。当然価格は高くなりますので、影響は出るだろう。果たして消費税納税ができるのかと考えると、それも厳しい。どっちを選んでも苦しい状況に追い込まれる、困ったなと本人は言ってみえます。
 次に、岐阜の方の例です。
 岐阜で三十五年間にわたって、夫婦二人でお持ち帰りのすし店を営んでみえる方です。この業者は、お客のほとんどは個人なんです。しかし、近くの観光ホテルやスポーツ団体からまとまった注文があります。そういった個人以外の売り上げが約一五%ですが、みずから進んで課税業者にならない限り、この一五%のお客さんは消えてなくなるということになります。営業が成り立たない、困ったと言ってみえます。
 このように、免税業者は個人だけを相手に商売をしているわけではありません。法人や課税業者のお客さんとの取引も一〇%とか三割とかあります。それが営業の存続のためにはなくてはならない売り上げの一部なんです。課税業者になるのかBツーCでいくか、選択は免税業者にとって大変悩ましいものになり、結局、どちらを選んでも、将来的には潰れるんじゃないかという思いがしている。これは岐阜の方の御意見です。
 第三の理由は、軽減税率の導入の狙いは低所得者への配慮ということですが、その効果は薄いばかりでなく、対象品目の線引きを初め、経済、社会に混乱を拡大するという点です。
 食料品といっても、食材そのものだけでなくて、包装費や運送費など、さまざまなコストがかかります。全体の税率が一〇%に上がれば、商品の価格は現行のまま据え置くことはできません。軽減なのになぜ値上がりしているのか、業者はお客さんにお叱りを受けることになります。また、八%に据え置きたいと考えている販売店から納入業者にコスト削減、値引きを求められて、苦境に陥ることも必定です。
 うどん屋、そば屋、ラーメン屋という外食の業者では、食材を八%の税率で仕入れて、お客さんからは一〇%をいただくという形になりますけれども、結局、この場合、差し引きの消費税納税額はふえることになります。価格は競争関係の中で売れるかどうかで決まりますから、計算上、消費税は受け取っていても、納税できない、滞納になるという苦境に陥ります。結局、こういう業者では売り値を上げることが非常に難しい。外食産業では、十円、二十円上げるのに死ぬ思いをして上げざるを得ない、そういうのが現状です。
 私は、かつて、カナダやヨーロッパの付加価値税の調査に全商連を代表して行ってまいりました。カナダでもEU各国でも、この軽減税率は、範囲の設定をどうするのかということで、限りなく混乱が続いております。適用範囲を合理的に設定することは困難だと言われております。
 新聞には軽減税率が適用されるということですが、国民の知る権利に奉仕するものは新聞だけではありません。書籍、雑誌はなぜ対象にならないのか。イギリスでは全部これは対象になっております。こういう疑問です。
 また、軽減があるからと、際限のない税率引き上げに道を開くのではないのかとの不安も高まっています。
 このように、軽減税率は社会や経済に大変な混乱をもたらすものである。ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
 最後に申し上げたいことは、二〇一七年の消費税一〇%への増税はぜひとも中止をしていただきたいという点です。
 総務省が発表した平成二十六年経済センサスによりますと、小規模事業者は、二〇一二年の三百三十四万者から、二〇一四年までの二年間で三百二十五万者へ、九万者減少しております。二〇一四年四月の消費税増税による消費の落ち込みから今日まで、依然これは抜け出せない状況であります。こういう中で一〇%へのさらなる増税とインボイス導入が行われれば、困難にあえぐ中小企業、小規模事業者はひとたまりもありません。
 大阪のビニール加工の業者、この人は売り上げが数億円あります。当然、課税業者です。商品の代金の請求時には消費税八%を漏れなく請求し、いただいております。本体価格は、結局、顧客の要望を受けざるを得ない。なぜなら、見積もり段階でお客さんの希望に応えなければ、黙って注文はよそへ行きます。加えて、資材の高騰、仕入れ価格が下がらない、適切な利益確保が極めて困難な状況にある。結果、転嫁ができていた消費税は利益の中に埋没をして、納税資金が足らなくなる。後になって、消費税一〇%になった、このお金を納めないかぬということで、大変心配をしている。結局、えらいこっちゃということになる。
 消費税の問題というのは、八%、一〇%と転嫁できている人もできない人も、問題は、取引の段階で価格はお客さんが決めるということです。現実の相対取引はお客さんが価格を決めてくる。そうすると、それに対応するために、仕事を確保するために価格を引き下げて受注をする、仕事をとるということになります。
 当然、大阪のビニール加工業者は、転嫁して八%を請求して、いただいておるそうです。しかし、本体の価格を値引きして受注すれば、それは結局苦しいことになります。
 そもそも、日本の卸、小売、流通、飲食、そして建設業の下請、こういった庶民の生活にかかわった営業所では、粗利益がおおむね卸では一割、小売では二割というのが長い日本の歴史と伝統です。小売が三割も四割も利益があるなんというのは聞いたことがありません。卸も二割、三割あるなんというのは聞いたことがありません。
 したがって、日本の商習慣として、小売は二割前後、卸は一割前後、こういう中で、今八%で、結局、小売業では粗利益を三割近くに上げないと営業が続けられないということになります。まさに消費税は、業者にとって、転嫁できても転嫁できなくても最悪の税金です。
 私どもが実施をしております二〇一五年下期の営業動向調査によりますと、消費税問題が営業上困っていることのトップであります。四三・三%です。消費税が転嫁できない免税業者が六七・七%です。一〇%になった場合、廃業せざるを得ないという業者は、流通、小売、商業関係で一〇・二%、宿泊、飲食業で一五・三%に上ります。
 そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重い、大変不公平な最悪の大衆課税です。生活費非課税、応能負担というあるべき税制の原則。税制は再配分をするということで、納税の義務が課せられております。したがって、消費税は廃止こそが求められています。
 この経済状況で消費税の一〇%への増税が果たして可能なのかということも含めて御論議をいただきたいというふうに思います。
 事業所の六割、五百万者を占める免税業者を取引から排除するようなインボイス制度は、多くの免税業者を市場から退場させることを強いるものになります。地域経済への打撃ははかり知れません。政府が掲げる一億総活躍社会のスローガンにも反するものになるのではないでしょうか。
 所得税法等の一部改正に関する法案を廃案にし、消費税増税を中止し、真の景気回復を講じられることをお願いしたいというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 太田義郎

speaker_id: 12674

日付: 2016-02-29

院: 衆議院

会議名: 財務金融委員会