2016-04-26
衆議院
佐々木毅
政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会
佐々木毅の発言 (政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会)
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○佐々木参考人 衆議院選挙制度に関する調査会の座長を務めました佐々木でございます。
本日は、調査会が本年一月十四日に大島議長に提出しました答申につきまして、お手元に答申をお配りしておりますので、まず、それに沿って概略御説明し、また、調査会の座長として御質問に答えさせていただきたいと存じます。
調査会は、平成二十六年九月十一日に第一回の会議を開き、答申を決定しました本年一月十四日までの間、全部で十七回の会議を開きました。
議長からの諮問事項は、答申の一ページにありますように四項目で、それら四つにつきまして一つ一つお答えをしたという形で答申をつくらせていただきました。
答申本体の二ページ目の次に、水色の紙を挟んで、オレンジの枠がついているものが説明文になりますが、オレンジの枠の中は答申そのものですので、この説明文に沿って御説明をいたします。
一番目が「衆議院議員の選挙制度の在り方」でございます。
そこにありますように、「現行の小選挙区比例代表並立制を維持する。」ということとあわせて、「ただし、制度の信頼性を確保するため、人口動態に合わせて、選挙区間の一票の較差、選挙区の区割りなどを定期的に見直す仕組みとする必要がある。その点からして、較差是正は喫緊の最重要課題である。」というのが答申の本文でございます。
それに至る議論の経過、理由につきましては、一ページの下から二つ目の丸に、「本調査会としては、ようやく国民の間に定着した現行制度の信頼性を確保するため、客観性のある制度の運用原則を定めるとともに、とくに小選挙区選挙については衆議院議員選挙区画定審議会という独自の機関の機能を高めることによって、安定した透明性のある制度運営に努めるのが適切であると考える。」そのような文言をつけ加えました。
あわせて、次の丸で、「なお、制度の根幹である二つの機能の確保のため、民意の集約機能と民意の反映機能とのバランスには今後とも十分な配慮が必要である。」ということを述べさせていただきました。
次に、二ページの「定数削減」でございます。
「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」というのが(1)でございます。
(2)としまして、「一方、衆議院議員の定数削減は多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」ということがございます。
(3)として、「このことから、削減案を求められるとするならば、以下の案が考えられる。」といたしまして、1として、「衆議院議員の定数を十人削減して四百六十五人とする。」二つ目として、「小選挙区選挙と比例代表選挙のそれぞれの定数は、小選挙区選挙の定数を六人削減して二百八十九人とし、比例代表選挙の定数を四人削減して百七十六人とする。」ということを本文で答申いたしました。
結論に至った理由は、いろいろ書いてございますが、一つ目の丸の「衆議院議員の定数を何人とするかについて、絶対的基準があるわけではない。歴史的経緯、政治体制、統治構造、選挙制度や国会運営など様々な要素に基づき決定されることとなる。」というのが委員の大宗の意見でございました。
それから、衆議院議員の定数を国際比較するということが二つ目の丸でございますが、諸外国の下院と我が国の衆議院とを比べると、衆議院の場合は議員一人当たりの人口が他の国と比べて非常に多いということを改めて確認したわけでございます。
そして、三ページの一つ目の丸、「小選挙区比例代表並立制の下では、小選挙区選挙と比例代表選挙は別々に行われるものであり、小選挙区選挙及び比例代表選挙がそれぞれの意義をもち、有効に機能するためには、相応の定数が必要とされる。」ということでございます。
さらに、その下にありますように、「小選挙区選挙において、都道府県を単位に議席配分することを前提として大幅に定数を削減すると、都道府県間の一票の較差、ひいては選挙区間の一票の較差の縮小は難しくなる。定数の大幅削減と議席の比例配分及び較差の最小化という要請を同時に達成することは困難である。」という意見が非常に繰り返し述べられまして、これをここに記したところでございます。
議員数を考えるに際しましては、調査会の委員の中にもいろいろなお考えがあり、議席は有権者にとっては選ぶ権利であるという視点、いわば代表者を派遣する権利を有権者が持っているというのが、議席が削減されることによって事実上弱体化するというか削減されるというような観点、それから、有為な人材を集めることによる国民の代表議会としての国会の機能強化、その他、行政府との緊張関係の維持等々、削減するということについてはいろいろな要素を考えなければいけないので、増税と削減の組み合わせというものを一度慎重に検討し直す必要があるという意見も多くありまして、そういう意味で、大幅に定数を削減することは適当であるとは言えないということが調査会の大体の意見になったわけでございます。
そういうことで、「大幅に定数を削減することは適当であるとはいえない。」ということになりましたが、下から三つ目の丸にあるとおり、「しかしながら、定数の削減は、ヒアリングを実施した政党のうち日本共産党及び社会民主党を除くすべての政党の選挙公約であり、多くの政党の選挙公約は、いわば公党の国民との約束として、できる限り尊重されなければならない。」という意見も多く、さらに、具体の削減数につきましては、調査会の中でも、一桁でよい、やはり二桁という意見もございまして、最後の最後になりまして、先ほど申し上げたような結論になったわけでございます。大正十四年に男子による普通選挙が実現して以降、四百六十五人は最も少ない数になるということを確認させていただいたところでございます。
次に、四ページの「一票の較差是正」でございます。
まず、小選挙区選挙につきましては、「選挙区間の一票の較差を二倍未満とする。」ということを大原則としてまず掲げ、そして、「小選挙区選挙の定数を、各都道府県に人口に比例して配分する。」ということでございます。
その都道府県への議席配分方式については、いろいろな条件を満たしてもらわなければ困るという観点から、(ア)比例性のある配分方式に基づいて都道府県に配分すること、(イ)選挙区間の一票の格差を小さくするために、都道府県間の一票の格差をできるだけ少なくすること、(ウ)都道府県の配分議席の増減幅が小さいこと、すなわち変動幅が小さいことということでございます。(エ)として、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であること、これらの条件を加味しながら、実は議席の配分方式についてたくさんの方式がありますので、これを比較考量しました。答申の参考資料の5にも、いろいろな方式の差異について表が掲げてございますので、御参考にしていただければと思います。
このような諸条件に照らした結果、都道府県への議席配分の方式として、いわゆるアダムズ方式を提案させていただいたところでございます。
それと同時に、これも実は調査会の当初からいろいろ話題になっておりましたが、制度の安定性という問題をどういうふうに考えるかということでございます。
そこで、5といたしまして、「都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行う。」といたしました。
これは、現在の制度の基本的な骨格を継承したものであると私は認識しておりますが、その意味で十年ごとということであり、また、国勢調査に基づくこと、有権者数ではなく人口というものを基準に見るということでございます。
ただ、よく指摘されますように、十年の間に起こる変化をどう考えるかという問題もありますので、6といたしまして、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果、格差二倍以上の選挙区が生じたときは、区画審は、各選挙区間の格差が二倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとし、この見直しについては、本来の選挙区の区割りの見直しが十年ごとに行われることを踏まえ、必要最小限のものとし、都道府県への議席配分の変更を行わないとしたところでございます。
都道府県への議席配分は変更せず、その内部の区割りの見直しによって格差を縮小するような努力、これはかなり義務づけ的な規定を調査会としてはできればお願いしたいというふうに思ったわけでございます。
この意味は、できればそのようなことが起こらないように最初に区割りをしてもらうと大変ありがたいという気持ちも背後にありまして、そのような選挙区の改定案を区画審に作成してもらいたいというのが我々の期待でありますので、必ず五年ごとに大規模な区割りの見直しを行うことをアプリオリに義務づけるという趣旨ではないことを御理解賜りたいと思っております。
次に、比例代表選挙につきましては、「現行の十一ブロックを維持する。」と。
これは、比例代表の議席を大幅に減らさなければ、現行の十一ブロックを維持することができるということでございます。
それから、各ブロックへの議席配分も、アダムズ方式により行うこととしました。これは、現行の配分方式では変動が激しく、そうしますと、比例区が比例区の名に値しないような小さな議席数になってしまうということは、できれば避けたいという気持ちもありまして、アダムズ方式により行うということにしました。
また、「各ブロックへの議席配分の見直しは、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行う。」としました。
小選挙区の方が専らの関心事になっておりますが、比例区の人口変動に伴う議席配分の見直しについても一緒に行っていただくようにルール化していただきたいと思い、ここに一項をつけ加えたところでございます。
最後に、九ページが四番目の諮問事項「現行憲法下での衆参両議院選挙制度の在り方」であり、正直なところ、大変難しかったところでございますが、ただ、「公正かつ効果的な代表という目的を具現化するために適切な制度を実現するよう、不断に見直していく」ことはお願いしたいということでございます。
そして、「憲法の定める二院制の下において、衆参両議院にはそれぞれ期待される役割や機能があり、今後も、将来における我が国の代表民主制のあるべき姿を念頭に、「国権の最高機関」としての国会の在り方や「全国民を代表する」議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方を、広く国民の意見を踏まえ、明治以来長い歴史とともに発展してきた我が国民主政治における意思決定過程の制度と運用を見据えて、国会として継続的に考えていくべきである。」としたところでございます。
つまり、やはり国会として考えていただく、国民目線からするとそういうことになるのではないかということでございます。
ここについては、実は、さまざまな国会にかかわる議論が委員から述べられまして、それをできるだけ記すように努力したところでございます。
「結論に至った経緯・理由」の二つ目に、「もとより、選挙制度の在り方は、代表民主制の根幹にかかわるものであって、」云々と書いてありまして、「本調査会において検討した議員定数と一票の較差のそれに尽きるものではなく、選挙人・被選挙人の資格から、立候補制度、代表方法又は選出方法、選挙区の区分と画定、投票方式、選挙争訟の在り方などにいたるまで、多岐にわたり慎重な検討を要する多くの事項を含んでいる。」ということでございます。
定数削減と一票の格差にとどまらない形での国会の御努力を期待したいということも込めて、僣越ではありますが、こういった事項も挙げさせていただいたところでございます。
そこに、十八歳選挙についてもこういう一つの制度の見直しの結果として出てきたのだろうということで、その意味では、本調査会の検討事項はこういう不断の見直しの諸課題の一部にすぎないという認識を我々としては持っているということを申し上げたところでございます。
また、最高裁との関係についても少し言及させていただきました。
十ページの二つ目、「今日、日本の社会は、人口動態を含め少子高齢化やグローバル化などの要因により大きな変動期に入っている。こうした中で、国会には、「国権の最高機関」として、種々の重要な政策課題に対する基本的な道筋を示すことが求められており、将来における我が国の代表民主制のあるべき姿を展望し、「国権の最高機関」としての国会の権限・手続や「全国民を代表する」議員を選出するための国会両議院の望ましい選挙制度の在り方に」云々、こういうことを書いてございます。
委員の間からも、格差の問題を扱う過程で、今までなかったような非常に大きな変化がこれから起こっていくことは間違いないという認識がございますので、格差の問題を超えて代表民主制のあり方について国会においてお考えいただき、その結果として選挙制度のあり方をどうするかというお話もしていただくようにお願いできないかという気持ちを込めて、こういうことを書かせていただいたところでございます。
もちろん、そうはいうものの、政治制度には完全というものがないということ、そういう中で我々にできることは、引き続き検討を繰り返し重ねていくということが取り組むべき態度だろうということを最後に述べまして、報告書を結んでいるところでございます。
以上、私の陳述でございます。どうもありがとうございました。(拍手)