小幡績の発言 (予算委員会公聴会)

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○小幡公述人 御紹介いただきました小幡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料は、熊谷さんの派手な資料の下に埋もれている資料で、「経済状況について」というものでございます。
 経済の現在の危機といいますか、経済自体は本来それほど悪くないんですけれども、過剰な政策による危機というものについて、ぜひ、この機会をもって、党派を超えた危機感を共有していただければと思います。
 ということで、タイトルは「静かな金融危機と着実な不況」と書いてありますが、その下を順番に説明していきたいと思います。
 日銀のマイナス金利導入後から、二月に入って市場は大混乱しておりますが、これはどうしたことかといいますと、本質的には、過剰な金融緩和のツケが一気に噴き出したということでございます。
 昨年から、マーケット、市場は荒れているわけですけれども、昨年あるいはことしの一月、中国あるいは原油ということが言われていましたが、実は、二月以降、これは銀行不安というものに全くさま変わりしてしまった。こうなると、原油市場崩壊というのは、原油バブルだったので、そこの一つのバブル市場が崩壊するだけですので部分的な危機なわけですけれども、銀行危機となりますと、金融市場から実体経済に危機が移ります。
 つまり、バブルで損失を受ける、あるいは金融的な損失を受ける。それが、普通に地道に経営を行っている企業、中小企業、個人へも、銀行融資の引き揚げという形で波及するということで、銀行危機というのは実体経済にとって本物の危機であるということで、二月から危機が急に実体を帯びて本格化してきたということです。
 銀行危機になぜなったかといいますと、そこに四つの圧迫要因が書かれていますけれども、要は、一方で収益機会がなくなり、一方で、リーマン・ショック後、金融規制が強まり、リスクをとる機会がなくなり、あるいは資本積み増しを要求され、コストが物すごく高くなった。両方から圧縮されて、銀行はやっていけないということでございます。
 典型的には、二月の頭にドイツ銀行の危機ということが最もクローズアップされて話題になったわけですが、ヨーロッパでは、昨年秋から、イタリアの銀行破綻、ポルトガルの銀行破綻、まあ、破綻というよりは危機ぐらいで言った方がいいかもしれませんが、起きておりますので、ヨーロッパではもともとあった。それが、日銀のマイナス金利によって再度クローズアップされ、また、アメリカが景気後退するのではないかという不安から、アメリカも金利が低下するのではないかと。
 金利低下による銀行圧迫、つまり、マイナス金利というのは銀行に負担になるということですけれども、実は、マイナス金利そのものよりも、国債金利は今やもうゼロですから、これは、銀行、とりわけ地方の地域金融機関は、融資先がありませんので預金を主に日本国債で運用している、その収益がゼロになるわけですから、国債を売って何かリスクをとれと言われてもリスクがとれないわけで、これは縮小均衡に行かざるを得ない。ですから、マイナス金利によってデフレが加速するという構図になってございます。
 ただ、これは日本だけの現象ではございませんで、世界的な現象だ。その根底には、リーマン・ショック、この敗戦処理といいますか、後遺症ということだと思います。
 一枚めくっていただきまして裏側を見ていただくと、危機はリアルだということで、先ほど御説明したように、リスク資産市場のバブル崩壊というものから実体経済の危機の可能性。ただ、まだ可能性ですので、すぐ、あす、あさって世界が崩壊する、あるいはリーマン・ショックのようなインパクトがあるものが起こると言っているわけではございません。
 ただ、静かに、着実に、銀行、とりわけ弱い金融機関から、イタリア、ポルトガルというのは弱い国ですから、国内でいえば、地方の弱い金融機関から追い詰められていく、そういうことが日本国内では起こる。ですから、これに対応する方法としてはダウンサイジングしかない。預金も受け入れない、融資もしない。そうすると、経済全体が縮小均衡になってデフレが進むということでございます。
 その下は、基本的な銀行危機の構造に加えまして、従来言われております原油危機、そして中国経済というものが上乗せされて、まさに世界的にも、リスクテークしなくなりますので、リスク資産価格も下落する、この逆資産効果も出てくるということです。
 裏に行っていただいて、次のページに「政策手段がない」、これは一番の問題ですね。これは、金融緩和をし過ぎたことによって国債の利回りが世界じゅうで下がって、これが銀行を追い詰めているというのが危機の根幹ですから、打つ手がないわけですよ、政策をやり過ぎたことが壊しているわけなので。では、これ以上金融緩和しろということになると、ますますよくない。
 つまり、黒田日銀総裁が三回サプライズの緩和をしたわけですけれども、一回目はイメージ戦略としてはプラス効果がありました。二度目は賛否両論です。今回はどう見ても非常にネガティブだということに市場ではなっております。なぜかというと、明らかにもうやり過ぎているところにさらに緩和を進めるという方向ですので、それが間違っているということです。
 ここではちょっと、自殺行為と書きましたが、金融市場の側あるいは投資家サイドとしてはそれを求めるわけですね。いわば金融緩和依存症、中毒症のようになっていますので、短期的には、そこで盛り上げてもらわないと短期に盛り返せないと。ところが、長期的には、それがどんどん金融市場をも追い詰めていく。
 実体経済はもともと影響がほとんど関係なくて、日本経済でいえば、投資すべきところには投資している。ただ、人口も減りますし、経済も縮小均衡だ。これは量から質の時代だ、それで皆さん、質に向けて一生懸命努力されている、その中で量をばらまいても、これはリスク資産で、いわゆる金融市場、投機にしか向かわないということで、リスク資産市場だけバブル的になる。そこへ持ってきて、バブルをも起こせないといいますか、限界に達してきたというのが現状だと思います。
 下の「今回の危機の構造」、これからもうちょっと細かく危機のことを説明しますが、昨年の夏にいきなり暴落が始まった、これは原油危機です。原油が下がったことによって、いわゆるシェールガス開発の関連の会社はジャンク債というリスクの高い債券でやっていた、その市場が破綻した、そうすると、そこに投資したファンドなどが破綻する、そのファンドなどがほかの株なんかを売るので、リスク資産市場全体に危機が波及した。
 一枚めくっていただいて、ことしの一月、昨年末から原油下落の継続によってこれがさらに広がって、さらに深く広くなったということでございます。これは、特徴なのは、中国、ロシア、日本が下がったんですけれども、なぜか日本が一番株が下がった。
 中国というのは、これは後で時間があれば説明しますが、これも実はリーマン・ショックの後遺症で、リーマン・ショック後、金融緩和をやり過ぎたという話を今までさせていただきました。一方、実体経済も、中国が頑張ってくれたという言い方もありますが、財政出動を物すごくして、設備投資を物すごく刺激して、設備をつくり過ぎたために供給過剰になって、今、中国を中心に大変な実体経済の不況になっている。ただ、これは量的な不況ですので、中国も質的な向上が沿岸部、富裕層を中心にあって、そこで補っているという状態です。
 ですから、中国が危機の中心、ロシアは原油ですから下がる、当然なんですが、なぜ日本なんだと。
 これは、昨年、日本株だけが物すごく上がりました。一種の日本株バブルと言って差し支えないと思います。GPIFの株の買い増し、日銀も株を買う、追加緩和もあったということで、ややミニバブルになってしまった。その部分が一月に調整で弾けたということで説明がつくということでございます。
 一応補足で、原油の下落というのは日本経済にプラスではないかという議論がありますが、これは世界全体で見ればプラス・マイナス・ゼロですね。産油国は困ります。日本はプラスです。プラス・マイナス・ゼロですが、現時点では世界全体は非常にマイナス。
 なぜかというと、今世界で経済が一番いいのはアメリカです。日本もまあまあです。ヨーロッパはいまいちになってきて、新興国は大変だ。弱いところがいじめられているということなんですね。原油で何とか稼いでいた国が、原油がやられちゃうと収入源が全部なくなって困る。日本とアメリカは、多少困難があっても、強い経済ですから何とかなる。ですから、世界経済の一番弱いところを攻められているので危機が始まったというのが現状ですので、それはマイナスだということです。
 一枚めくっていただいて、危機第三弾、この二月からというのは、先ほどから説明しております世界的銀行危機が始まったということでございます。
 細かいプロセスは下に書いてありますが、欧州の銀行が弱っていたところに日銀のニュースが重なり、アメリカの景気後退懸念というのが重なって起きたということです。
 一枚めくっていただいて、先ほどから説明しているように、この危機の根底にあるのはリーマン・ショックの後遺症だ。
 つまり、あれだけ大きなバブルが崩壊して、ただ、日本は一番うまくやったわけですけれども、意外と皆さん生き残っている。というのは何かというと、全て先送りにしてきた。異常な金融緩和で国債市場も下がった、そして財政出動をしてその国債を金融が買い上げたという構造です。その痛みが今来ているということでございます。
 下に行っていただくと、つまり、実体経済もやられたわけで、あそこで実体経済に出動する意欲は誰もありません。ところが、金融バブルが崩壊したのに、金融がとことん傷むのを抑えるために、そこを支えました。ということは、ミニバブル、あるいは違う形の国債市場バブルや不動産市場バブルをつくることによってしのいできたということでございます。
 そうなると、投資というのは、長期安定した将来を見通してリスクをとる、本当のリスクをとる、実体のリスクをとるということですけれども、今や短期的にしか動けないので、金融市場のリスクをとる。
 金融市場のリスクというのは、値動きの方向を当てるということです。今や、金融市場の値動きというのは、中央銀行の政策に左右されている。そうなりますと、中央銀行の政策を読み合うという、まさにギャンブル市場のようなものになってしまい、全員が投機家にならざるを得ない。
 その中で、長期的な投資家、安定的な国債投資家、地方銀行も含まれますが、そういう人たちが市場を追い出され、今、国債がいわば値上がりしているわけですね、金利が下がると。円も円高になっている。これはなぜかというと、日本の今後の金融政策が読めないということで大混乱しているので、この機会に乗じて投機家、トレーダーがいっぱい集まってきているということでございます。
 一枚めくっていただくと、根底には、金融機関に対する規制強化というのも一方でございます。BIS規制も強化された。これは当然のことですが、現状ではちょっと裏目に出てしまったということで、本質的なリスクがとれない、だから、国債とか形式的に安全なものを大量に保有する、その利回りもなくなってきたということで追い詰められているということでございます。
 三というところでは、先ほど申し上げた中国、これは実体経済における過剰がリーマン・ショックの反動として起きてきていたということでございます。
 一枚めくっていただいて、とどめを刺したのは、マイナス金利が最後にタイミング悪くいったということです。
 マイナス金利は、為替安をもたらすという意味で、一国経済にとっては短期的にプラスになる可能性はありますが、実は為替は日本一国では動かせなくて、ドル高の流れが変わると、世界的なドルの流れの中で一瞬でかき消されてしまう。そうなると、過大な金融緩和という副作用しか残らないという状況で、悪くなってしまった。
 下に行っていただいて、これは日銀だけを責めるわけにはいかなくて、世界じゅうで金融緩和をやり過ぎているわけで、世界的な病なわけです。
 ただ、日銀が今回最も失敗したというのはサプライズ戦略で、ショック療法、第一弾のときは日本経済が凍っていた、それでデフレマインド脱却というかけ声とともにやったのは、イメージ戦略としては成功しました。ところが、それをずっとやり続けているために、その後、全て副作用、やり過ぎというまさに本質的な悪い効果が出てきたということで、そのとどめを刺したのがマイナス金利、しかもサプライズ戦略。
 サプライズになりますと、さっきも言ったように、混乱して将来を読めない。ここで国債をやめて投資しろと言われても、先が読めない中では誰も投資も融資もできないというのが現状でございます。
 一枚めくっていただいて、先ほど申し上げたように、国債市場は投機家の狩り場になっているということでございます。
 下に行っていただくと、国債市場というのは、安全資産ですから、危機のときの逃げ場なんですね。その危機のときの逃げ場を失ってしまっては港に帰れない。今、漂流しているような状態でございます。
 もう一回危機を総括しますと、地味な世界不況というふうに書きましたが、リーマン・ショックの後遺症、敗戦処理を今まで先送りしてきたので、これから少しずつやっていかなきゃいけないということで、金融緩和中毒からどう抜け出すかということです。中毒ですから抜け出すのはなかなか大変で、ゆっくり慎重にいかなきゃいけないということでございます。
 一枚めくっていただいて、これは本質的には、もっと長期的に言うと、ずっと拡大志向で来た資本主義というのがどこかで縮小しなきゃいけないということで、一九八〇年以降、金融市場の自由化とともに膨らんできたものの反動という面もあると思います。
 もう一つ、政策マーケット。我々も責任があると思うんですけれども、何かやれと。例えば、アベノミクスであれば、アベノミクスはよくないとか金融緩和はよくないと言うなら、おまえ対案を出せと言われる、対案はありませんと言うと物すごく怒られるわけですが、実は、最後に申し上げますが、今、やり過ぎが問題なので、我慢のしどころだというふうに思っています。
 サッカーでいえば、アウエーの戦いでゼロ、ゼロで逃げ切らなきゃいけない。その中でゆっくり中毒から抜け出すということですから、どんなにやれと言われても我慢する。やれば投機家は喜びます。それ以外喜ばない。実体は迷惑する、それで地方銀行も困るというのが現在の構図でございます。
 一点だけ補足しますと、消費刺激というのも現状では実はマイナスで、景気という問題としては、今は普通なんですね。ところが、長期の成長力が落ちている。ゼロ成長です。これが一番の問題で、景気対策を打ち過ぎた余り、長期の成長にお金が向かわない、目先のことにばかり資源がとられるということで、長期成長力が落ちてきたということが問題でして、これを立て直さなきゃいけないということで、景気刺激策も実はよくないということです。ですから、政策的には手詰まりですが、我慢するしかないということです。
 一枚めくっていただいて、今後、一応、為替と日本経済の見通しを申し上げますと、これは、円高はやむを得ません。四つの状況、何をとっても、円安方向に振れ過ぎている。妥当なところは百円というコンセンサスですし、経常収支も黒字になり、アメリカも利上げしないという方向であればなる。それで一気に投機的な円買いポジションが膨らみ始めたところですので、この流れには逆らえないので、円安効果を狙う政策は空振りに終わり、むしろ副作用だけ残るということでございます。
 日本経済、現状を説明します。停滞してきましたが、これは今まで、随分株高もあって、ちょっとバブル的に、実力以上、実力ゼロ%の中で一%を超える成長をしてきたわけですから、GDPが増大してきたので、その反動が来ているということでございます。その中で異常な金融緩和の反動が来ていますから、とりわけ地域金融機関、上場したてのゆうちょ銀行、これらが一番困るということで、地方、弱いところがやられる。
 これまでの金融緩和自体、この三年を振り返っても、地方になかなか回らないという議論がありますが、これは当然です。地方にとっては金融緩和は地域金融機関を弱めることにすぎませんから、地域の中心である地域金融機関が弱くなれば、それは地域がよくなるはずがないので、金融緩和政策というのは実は地方を弱くする政策、この三年そうであったということでございます。今後は、これがさらに膨らみますと実体経済の不況にもなるということでございます。
 では、どうするかということで、一枚めくっていただきますと、「現状認識と政策対応」。もう一度まとめますと、これから緩やかな危機がやってくる。金融緩和、財政出動も実はマイナス、とりわけ金融緩和は一番よくない。中国も財政出動というのをやり過ぎた反動が今来ているわけですから、やれないので、彼らは金融緩和でしのごうとしているわけです。世界全体で政策協調といっても、緩和をやり過ぎていることをやめるぐらいしかないわけですけれども、それもなかなか難しいとなると、非常に難しい。
 では、日本はどうするかといいますと、先ほど申し上げたように、我慢のときなので動かないというのがあるわけです。これから危機は、静かなゆったりした不況ですけれども、着実に来る。それは先です。今先手を打っておいても、これは何の意味もありません。要は、金融機関にじわじわ来て、そこへ世界不況がやってきたときに、地域金融機関を支えるとか、そのような形で財政出動等、将来必要になってくるので、そのときまで力をためておくということでございます。金融緩和も景気刺激にならず、追い詰めることになるだけだと。
 予算委員会ということで、予算関連で、一番最後、補足ですけれども、そういうことで財源は非常に重要ということで、エコノミストや経済学者の間では、軽減税率は経済的には効果がない、ただ、導入上、政治的に痛みを和らげる政策としては全員に緩和が及ぶということで支持されているという理解です。ただ、増収効果は非常に弱くなりますので、これから先、非常に厳しいことを考えますと、財源が必要であることを考えますと、非常によくない。
 なぜかといいますと、今後、例えば、将来さらに消費税を引き上げるときにも軽減税率は残るわけで、一緒に上げていくというのはなかなか難しくて、政治的に痛みを和らげることにも使えない。その痛みを和らげるということでは、補助金などを配る方が、その一回配るごとに政治的なベネフィットがありますので、政治的効率性は高い。軽減税率というのは、そういう意味では政治的コストが高いということでございます。
 あと一つ、年金運用でございますけれども、これは、一部の国では、その年の運用成績に応じて給付を削るという国はございます。ですから、マクロスライドというのがありますけれども、予定利回りも同じように、予定利回りを下回った場合には、それに連動してその年から給付を下げる、あるいは財源的手当てをするということが安定のためには必要だと思いますので、蛇足ながら付言させていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 小幡績

speaker_id: 300

日付: 2016-02-24

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会