松田元の発言 (予算委員会公聴会)

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○松田公述人 皆様、おはようございます。御紹介にあずかりました公述人の松田元でございます。
 本日は、こうした場所にお招きいただきましたことを大変光栄に存じます。
 お手元に青い資料がございますけれども、衆議院予算委員会公述人資料というのをごらんいただきながら、私からの御提言を申し上げたいというふうに思ってございます。
 まず初めに、私からは、今回の予算、そして現状の政策、政府の皆様の政策に関して、賛成の立場をとらせていただきながら、その中で提言をさせていただきたいというふうに思っております。
 実は、かく言う私自身が、大学で教員をさせていただく傍ら、自分で事業をやっている経緯もございまして、投資会社の代表をやっている関係もありますので、ぜひ今回のアベノミクスには成功いただかないと困るという個人的な思いも大変強く入っておりまして、二〇一三年度、二〇一四年度は大変恩恵を賜りまして感謝を申し上げたいと思っております。その上で、昨今の金融情勢が荒れているものですから、この損失を何とか取り返したいという思いもございますので、あわせてお聞きいただければ幸いでございます。
 雑談が過ぎましたけれども、今回私の方からは、基本的には賛成という立場で現状の政策に関しての御提言を申し上げたいんです。一方で、先ほどもお話ございましたけれども、今明らかにリスクとして想定され得る国債に関するリスク提言というのを三点ほどきょうはさせていただきたいと思っております。
 まず、一ページ目でございますけれども、下の方のスライドで、提言の全体像というのを書かせていただいてございます。
 量的緩和政策、追加緩和、マイナス金利を含めてさまざまな政策が行われているわけでございますけれども、現時点において大きく三点ほど本質的なリスクが介在しておりまして、こちらを念頭に置いた上で今後の政策を展開しないと、非常に、国債の格付のダウン、それから空売りのリスク等々があるというふうに考えてございます。
 まず、一点目でございますけれども、後ほど御説明させていただきますが、異次元緩和、それからマイナス金利の導入に伴う実体経済に対する影響のリスクでございます。
 このマイナス金利の導入が本当の意味で実体景気に好影響を与えるかどうかということは、後ほど、欧州で既に導入している各国のデータを比較してお見せしますが、必ずしも好転しているという保証はございませんので、マイナス金利導入に伴う実体景気の悪化というのが非常に大きな一つのリスクとしてございます。
 それから、二点目でございますけれども、提言の全体像の左下の枠にございますが、実は、格付会社と、外国人勢の空売り、ヘッジファンドによる空売りというのが往々にしてセットで来るケースが多くございます。
 格付会社といいますと、代表する会社が数社ございますけれども、基本的には、海外の格付会社の格付の基準というのが、勝手格付と言われるケースも非常に多く、なぜか我が国の国債の格付が不当に低く評価されたりするケースが多くて、個人的にはこれに非常に疑問を感じるんですけれども、この格付が下げられるところとあわせてヘッジファンドの売りが来るケースが非常に多くて、これが同時に発動した際の国債リスクというのは非常に高いのではなかろうかと個人的には考えてございます。
 それから、三点目でございますけれども、先ほどもある資料にございましたが、バーゼル委が現在、日本国債に限らず世界の銀行の国債を、今まではリスクゼロアセットで評価していたんですが、これをやめていこうという、いわゆるリスクアセット化に向けた検討を始めているようでございます。これが同時に来ますと、今大量に国債を国内で償還されているわけでございますが、国債が日本国内で償還されているから日本は大丈夫だよという理屈がだんだん通じなくなってまいります。
 以上申しました三点のリスクについて、私から御提言を申し上げたいというふうに思ってございます。
 何点かデータを御参照いただきながら、一つ一つ御説明を申し上げたいというふうに思ってございますが、まず、めくっていただきまして、二ページ目の下のスライドでございます。
 御参考資料といたしまして、異次元緩和以降の日銀、金融機関の国債保有率の推移というのがデータとして出てございます。これは、いわゆる民間銀行が緩やかに日本国債の保有比率を下げてきていて、一方で、中央銀行でございますけれども、日銀が保有比率を上げているというデータをあらわしたものでございます。
 三年前にいわゆるアベノミクスが始まりまして、日銀がかなりのボリュームで量的緩和をしておりますので、政府、日銀が保有する国債が上がるのは当然ではございますけれども、一方で、民間銀行の保有比率がやや下がりぎみでありまして、この下がっている比率が非常に多い状況でございます。
 国内で果たしてこのまま国債が順調に消化されるのか、あるいは保有され続けるのかということに関してやや疑義の残るデータが出始めてきておりまして、こちらのデータはぜひ注視していただいた方がよろしいのではないのかなというのがまず御提言としてございます。
 次でございますけれども、めくっていただきまして、四ページ目のスライドでございます。
 実は、海外投資家の国債保有額、それから保有割合というのが緩やかに上昇傾向にあるというデータも出ております。これは平成十七年末でございますけれども、当時四・四%ほどでございました海外投資家の日本国債保有比率でございますが、現状、倍以上になってございます。
 つまり、海外の機関投資家、それからヘッジファンド、政府が日本国債を保有する比率が上がるということは、その比率が上昇した分、国内の保有比率が下がるというケースにございますので、日本国債の緩やかな国外流出が起こっているという考え方もございます。
 それから、もう一つおもしろいデータがございまして、少しデータが飛んで恐縮でございますけれども、九ページ目をごらんいただきたいんですが、下のスライドでございます。
 実は、勝手格付と私は今回引用させていただいておりますが、格付会社が日本国債の格付を下げるとなぜか海外の保有比率が上がるという、やや奇妙なデータが出ております。
 なぜここで、格付会社が日本国債の格付を下げた際に、海外の機関投資家やヘッジファンド、それから政府が日本国債を購入しているのかはやや疑義が残る点ではございますけれども、非常にこのあたりの格付会社の恣意性といいますか、恣意的な格付によって当国の国債のリスクが上がるということは、御提言の価値が一つあるのではないのかなと個人的には考えてございます。
 それから、少しページを戻っていただきまして、五ページ目をごらんいただきたいんですけれども、これは、冒頭申し上げました、マイナス金利の導入が果たして我が国の実体景気に影響を与えるのか、これの御参考データを記述させていただいてございます。
 大きく分けまして四つの比較データをこちらで記載させていただいてございますけれども、ECB、それからデンマーク、スイス、リクスバンクと、先行してマイナス金利を導入しているそれぞれの各国のデータがこちらに挙がってございます。
 御参考までに、ECB、デンマークをごらんいただきますと、中銀預金金利をマイナス〇・一%にすることを決めまして、今はマイナス〇・三%まで拡充されていると記憶しておりますけれども、ずっと継続をしておりますが、現時点においては、マイナス金利の効果が本当にECBで出ているかどうかというのはわからないというコメントが出てございます。
 それから、最も早く明確な傾向として効果が出ていると評されるデンマークのデータが非常に興味深いわけなんですけれども、デンマークは、二〇一二年七月にマイナス金利を導入いたしまして、通貨クローネの急上昇がとまって成長率が安定しました。一方で、市場に合わせて変動するタイプの住宅ローン、これをマイナスにする機関が出てきており、借り手の金利負担を金融機関が肩がわりすることになり、銀行側の負担がふえている。要するに、マイナス金利が導入されて借り手の負担を銀行がかぶる、一方で、金利の低下によって住宅価格の上昇を招いている。
 これは、景気指数で申し上げると、やや改善傾向にあるように捉えられるわけなんですけれども、今後、住宅価格が極大に上がっていきますと、当然ながらバブルが発生してまいります。バブルが発生した際には、ある程度の金融引き締めによって金利を引き上げてくる、金利の暴騰につながる可能性がございますので、短期的には景気に対する好影響は出てきておりますけれども、果たしてこれが本当にバブルの始まりにならないという保証はないという状況でございます。
 したがいまして、マイナス金利の導入によって実体経済が確実によくなるかというデータはまだ出ておらず、まさに未曽有の挑戦になっているというのが現状の分析でわかるようになっております。
 それから、行ったり来たりで恐縮でございますけれども、少しまたページをめくっていただきまして、七ページ目のところでございます。三点目のリスクで申し上げましたバーゼル3、それから今後のBIS規制の強化に関してのコメントをさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、下の方のバーゼル3の概要というところでございますが、ロイター、ブルームバーグが記事を書いてございます。これは読み上げさせていただきますけれども、二〇一九年にはリスクアセットの加重割合が一〇%に拡充される予定でございますという記事でございます。左側がロイターの記事でございまして、右側がブルームバーグの記事でございます。
 ロイターの方は、二〇一五年の方ですね、国債のゼロリスク評価を見直ししますと。今までは、国債というのはリスクゼロの資産だということで、それを前提に中央銀行が量的緩和政策等々、組み込んできたわけでございますけれども、今度、国債を対象とする資産評価がリスクゼロじゃないよというふうになった場合に、その国債を保有することに対するある程度のリスクを織り込まなきゃいけなくなりますので、金融機関それぞれに対して、自己資本比率に大きな影響が出てくるだろうということが想定されております。
 それから、ブルームバーグの方でございますけれども、同じような記事でございます。これはことしの一月十五日に出てきたものでございますけれども、現状のリスク加重資産の割合というのが、これまでの規則のもとで今までは六%であったものが一〇%に引き上げられるということが記事となってございます。
 これも、いわゆるバーゼルのBISの規制の強化に伴って、金融機関に対する圧迫につながりかねないという状況が出始めておりますので、この三点目のリスクというのは非常にリスキーだなと個人的には感じてございます。
 一方で、もう一回一ページ目に戻っていただきまして、一番最初の下のスライドでございますけれども、申し上げた、マイナス金利の実体景気に対する影響と、格付会社と外国人、ヘッジファンドに伴う空売りのリスク、それからバーゼルのリスクという三つのリスクがございます。
 このリスクを踏まえると、当然ながら、量的緩和をちょっと気をつけようとか国債を買うのをとめようという提言につなげたくはなるんですけれども、一方、現状のマーケットで、今度は投資会社の代表として考えたときに、このまま政策をとめてしまったことの金融ショックの方が、さらに実体景気に影響を与えるケースが非常に多いと考えております。
 したがいまして、次のページに御提言をまとめておりますけれども、当然、基本的な姿勢としては、国債のアセットリスクについてしっかりと認識を皆様で持っていただきたいというのがまず御提言でございますが、一方で、だからといって、これから金融引き締めをやるともっと大変なことになってしまいますので、ある程度の量的緩和、それから、特に私が強く感じておりますのが積極的な為替介入でございます。
 極端に、二月一日から、百二十円近辺をつけていた為替が十日で十円落ちるというのはちょっと異常だなというふうに感じてございます。これは、私自身が一トレーダーとして、投資会社の代表をやっておりますので、マーケットを見ておりますけれども、明らかにヘッジファンドに売りを仕掛けられております。材料とデータと売りで実体景気以上に売り込まれているというのを私個人としては強く感じておりまして、これは早急に為替介入をしていく。
 もちろん、G20の各国協調の姿勢を合わせる必要はあるとは存じますけれども、その一方で、このまま円高に振れていくのを放置し続けた方が、当然、輸出産業に対する実体景気のダメージも大きいわけでございますし、これは介入するべきだなと非常に強く感じている次第でございます。
 それから、恐らく三月でしょうか、決定会合で御検討の話題に上がるとは思うんですけれども、量的緩和の拡充というのも視野に入ってくると思います。
 同時に、私自身が思っております緩和の一つの方策といたしまして、郵政マネーというのが今二百数十兆眠っていると言われているんですけれども、基本的には、ゆうちょ銀行が、貸し出しができない状況の中で、マイナス金利を導入されて最もダメージを受けると言われております。ゆうちょ銀行に眠っている莫大な国内の国民の金融資産というのをこのままマイナス金利で毀損してしまうのは非常にリスキーなものですから、この郵政の中に眠っている資金を、アセットアロケーションの変更等々を考慮に入れて、前向きな形で株式市場にポジティブに影響を与えられるような、いわゆるマネタリーベースの政策というのもあわせて検討いただきたいというふうに思っております。
 私自身がトレードの現場におりまして、当然研究者という立場もあるんですけれども、一番まずいのは、表現は少し荒いんですけれども、要するに、なめられることなんですね。日本政府やあるいは日本の政策の姿勢が外資系ヘッジファンドそれから外国金融機関になめられて、空売りがはまったときのショックというのは、トレードをしている現場の人間でないと非常に表現が難しいんですが、じくじたる思いがございます。
 十分に日本国という実体経済の力、それから、もちろん、GDP比率で見たら債務比率は二倍以上でございますけれども、ほとんどの国債がまだ現時点においては国内で償還されているわけでございますし、実体景気でいったら文句なくいい国で、いい財政状況でございますし、基本的にアベノミクスの方針も非常にすばらしいと思っている一方で、理屈をつけて格付を下げられて、格付を下げられたと同時にヘッジファンドの空売りが入りますと、問答無用で、よかろうが悪かろうが下がるのはマーケットの実情でございます。
 ですので、ここのいわゆるタイミングといいますか、今の日本政府が置かれている状況、そして日本政府の実体景気の状況、財政状況という事実はもちろん大事でございますけれども、その事実をマーケットに対して最も効率的に情報発信していく、メッセージを発信していく。よく市場との対話なんという表現をされますけれども、この市場との対話というところを重視していただきまして、ぜひ継続して、より効果的な金融緩和の政策を続けていただきたいというのが私からの御提言でございます。
 ただ一方で、繰り返しになりますけれども、現在、日本政府、それから中央銀行が置かれている現状といたしまして、国債の格付に対するリスクというのは非常に高まってございます。バーゼル、格付ダウンと空売り、それからマイナス金利の影響というのは、ぜひ皆様の頭の片隅に置いていただきまして、動向を注視していただきたいというふうに考えております。
 私の方からは、以上をもって御提言とさせていただきたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119005262X00120160224_008

発言者: 松田元

speaker_id: 29319

日付: 2016-02-24

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会