武石惠美子の発言 (厚生労働委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(武石惠美子君) おはようございます。法政大学の武石でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
私の専門は、企業の人事管理あるいはそこで働く女性を含めた労働者のキャリアというのが専門でございます。その立場から今日は意見を申し述べさせていただきます。また、私、労働政策審議会の雇用均等分科会のメンバーでもございまして、そちらの方でも議論をさせていただきましたが、そういうことも踏まえまして、意見を述べさせていただくことになります。主として、仕事と介護、育児の両立という問題に関しての意見陳述ということになります。
お手元に資料をお配りいただいておりますので、そちらに沿って意見を申し述べさせていただきます。仕事と介護、それから仕事と育児の問題に分けまして、現状、課題、残された今後の方向性ということに関しまして順番に意見を申し上げます。
まず、仕事と介護の両立に関してになります。右下に小さく一と書いてありますページを御覧いただきたいと思いますが、現状ですけれども、これは御承知のとおり、少子高齢化により要介護者が増え、働きながら介護をする人というのが大変増えてきております。そして、今後、人口構造の観点から見ますと、ますます働く介護者というのが増えていく、そして、企業の人事管理においてこの問題が大変重要な課題になってまいりました。
次の二ページにデータがございますが、介護を理由とする離職者、年間十万人と言われていますが、育児と異なりまして、男性の離職というのも大変高いというのが特徴でございます。
そして、三ページに介護離職の理由がございますが、一番多いのが仕事と介護等の両立が難しいと、そういう職場だったという理由が大変多くなっています。
ところが、四ページを御覧いただきますと、現行でも介護に関する両立支援制度というのがあるわけですが、その利用が十分なされているかというと、利用率が低調という現状がございます。四ページの赤で囲んであるところが制度の利用率になりますが、介護をしている人を一〇〇とした場合に、何らかの制度を利用している人というのが全体で一五・七%でございますので、こういう制度が利用されずに介護をしている。そして、その後辞めてしまうということにつながっているという課題があるということでございます。
五ページにその制度を利用しない理由というのがありますが、これは両立をしながら就業している人と辞めてしまった人で分かれていますが、特に辞めてしまった人は、両立支援制度がないためと答えている人が多くなっています。法律で制度があるんですが、それが十分活用されない、ないと思って辞めていくという状況があるわけでございます。
次の六ページを御覧いただきますと、介護をしている人も大変で辞めていくという状況があるんですが、介護をしていない人たちも今後自分が介護の責任を担うのではないかという不安がございます。上の図は、不安を感じるという割合が、非常にとそれから不安を感じるまで含めますと、男性、女性ともにかなり高い割合になっている。そして、下のグラフでございますが、介護をすることになったら、じゃ、仕事が続けられるかというと、続けられると思うという人は三分の一程度ということで、将来の介護に対する不安が大きい。この辺りが仕事と介護の両立に関する現状の課題と言えると思います。
七ページですが、では、こういった課題に関して今回の育児・介護休業法でどういうふうにこの両立の在り方を考えたらいいかということでございます。
まず、介護に関しては、育児と相当特徴が異なってまいります。いつ始まるか分からなくて、いつまで続くか分からない、しかも、年齢層が比較的年齢の高い人たち、それから男性もかなりの割合で介護の主たる介護者になっていくということで、非常に育児のように将来が見通せてだんだん子供が離れていくという状況とはかなり異なってくるという現状がございます。実際に、介護の期間というのが平均四十五か月、在宅の介護でいえば三十か月というようなデータがございますので、この期間全て介護をしながら、働く人が自分で介護をして、そして両立をするというのはなかなか難しいという現状がございます。
そこで、仕事と介護に関しては、自分で介護をするということを基本にするのではなくて、介護サービスを活用して仕事を続けながら両立を目指すという、これを基本にした制度設計が必要ではないかというのがまず重要な点ではないかと思います。
仕事と介護の両立に関しましては状況が大きく二つに分かれるというのが、次の②でございます。
まず、一つは、まとまった期間、集中的に対応が必要な状況というのがございます。これ、例えば要介護者が倒れたとか、それから状況が変わって病院に入院しなくてはいけないというような、状況の変化に応じてまとまった休みが必要になるというところがございます。これが今介護休業制度で対応されている部分になります。
それから、もう一つが、介護をしている間、ケアマネジャーさんと打合せをするとか、デイケアを使っている場合にその送迎の時間を家にいなくてはならないとか、そういう定期的、スポット的に対応が必要な状況というのがございまして、この両方にトータルに対応していく制度というのが必要になるということでございます。
bに関しては、特にこれまで介護休暇制度というのがございましたが、介護期間を通じて利用できる制度というのが休暇制度しかなかったので、もっと柔軟に働ける仕組みというのもこの介護期間を通じて利用できる制度として今回法制化した方がいいのではないかということで法律に盛り込まれたということでございます。
ですので、休業だけであると休業を長くしなくてはいけないという議論になるんですが、bの部分を、介護期間を通じて所定外労働の免除ができる、それから、三年間フレックスタイム、短時間勤務ができるというような選択的措置義務を導入することによって、aとbをトータルに活用することによって介護に対応するというのが今回の法改正であり、これは非常に重要な制度改正ではないかというふうに思っております。
それから、③ですけれども、将来介護の可能性がある労働者は非常に不安であるということで情報提供等が重要である。これはなかなか法制化しにくい部分ですが、企業の皆様にこういう取組を促していくということが非常に重要ではないかと思います。
介護に関しては、できるだけ充実した制度というのが求められるわけですが、法制化ということになりますと、中小企業も含めて義務付けられるということになりますので、企業の負担ということも併せて考えなくてはならないということであります。したがって、今回の法律、かなり介護が充実した内容で改正法がスタートするのではないかというふうに考えております。
八ページのところが、仕事をしながら介護をする場合に、自分で介護をすると離職をしてしまうという、右側が離職していた人のデータなんですが、特にこの赤で囲ってある排せつ、入浴等の身体介護、これが左側の就労者と比べて離職者は自分がしているという割合が高くなっておりますので、この辺りをサービスに委ねていくということが両立して働き続ける上では重要ではないかということでございます。
九ページですが、今回の法律で介護に関しては相当両立の対応ができますが、重要なこれからの課題といたしまして、企業においてやはり職場環境の整備を進めるということではないかと思います。
特に、企業の皆さんは介護に関して非常にこれからは大変だという思いはあるんですが、現状労働者がどのぐらいの介護責任を担っているか等について十分把握していない、ですので必要な制度も対応が取れていないというような現状がございますので、そういったことをこの法律施行を契機に検討していただく、これが重要だと思います。また、恒常的な長時間労働というのは、次の育児も同様ですが、仕事と家庭の両立のためには非常に大きなネックになりますので、これを改革していくということが大変重要だと思っております。
それから②に関しては、職場の両立支援と公的な介護サービスというのは、今回車の両輪ということで大変これが重要になってまいりますので、介護サービスをきちんと確保していくこと、これが大変求められると思っております。また、働く介護者という状況をよく理解してケアプランを作成いただけるようなケアマネジャーの育成というのも両立に当たって大変重要になってくるというふうに考えております。
次に十ページですが、仕事と育児の両立に関して現状を申し上げたいと思います。
まず、育児休業、短時間勤務制度などがこの間非常に充実してまいりまして、特に女性の正社員においては制度利用が増えております。これは、次の十一ページを御覧いただきますと、正社員の利用が増えているというデータがございますが、一方で、制度利用が増える中で妊娠、出産、育児期を通じて長期的にキャリア形成あるいは女性の活躍というのが進んでいるかというと、この妊娠、出産、育児期にキャリアが止まってしまうとかモチベーションが下がってしまうというような課題が顕在化してきたという問題がございます。
それから、正規は継続就業が増えているんですが、非正規に関しては、十一ページにもございますように、制度利用、継続就業において課題が残っている、特に若年女性の非正規化が進んでいますので、これは大きな問題だと思います。
それから、男性に関しては育児休業の取得等低いという問題があり、また、妊娠、出産等におけるいわゆるマタニティーハラスメントなどの問題も生じてきているというような現状がございます。
それを踏まえまして、済みません、十三ページに参ります。
仕事と育児の両立の在り方についてどういうふうに考えたらいいかということなんですが、まず両立支援制度を利用すること、これが大変重要なんですが、それとともに、やはり長期的なスキル形成あるいは能力発揮、これができるということも併せて考えないといけないということで、このための制度設計、運用というのが不可欠ではないかということです。ですので、今回育児に関しては、両立支援制度が介護のように大きく進んだという部分は余りないかもしれないんですが、むしろ男性の育児休業とか柔軟な働き方というのを進めることによってキャリア形成それから両立支援を進めていくということが重要ではないかと思います。
それから②ですが、この両立支援制度が特に育児に関しては女性に大変偏在しておりますので、それによって特に女性の能力発揮が阻害されているという問題がございます。ですので、こういった観点からも男性の育児への関わりを高めること、これが重要になってくると思います。
それから、有期契約の労働者、これが大変今回大きな課題になって法律の対応がなされた部分ですが、取得要件の休業後の復帰の見込みというのが非常に分かりにくかったということがありますので、この要件を取り除いたということが大変重要な改正点ではなかったかというふうに思います。また、派遣労働者に関しても、派遣元の責任というのが明確になったというふうに思います。
それから、ハラスメントなどの環境整備ということで対応が行われたということが評価できるというふうに考えております。
十五ページで、済みません、飛びますが、仕事と育児の両立のため残された課題、これは介護と同じですが、職場環境の整備ということで、やはり長時間労働の是正等を含めた働き方の見直しというのは、これは不可欠であろうと。
それから、女性の能力発揮というものと両立する両立支援策、これを検討していくことが大変重要になってきているということ。
それから、介護サービスと同様に、育児に関しては、特に保育所に関して今大きな問題になっておりますので、都市部を中心にこれに対して対応していくということが求められているというふうに考えております。
今回の法改正は、こういった現状に対して課題を解決するためのものというふうに考えて、私は評価しております。
仕事と介護の両立というのは、労働者の福祉という側面もございますが、一方で企業が持続的に発展していくという、両方を見据えて法律などの制度を考えていかなくてはならないと思いますので、その観点から、今後も労働政策審議会等で両方の意見を聴きながらより良いものになっていくということを期待したいというふうに考えております。
本日はありがとうございました。以上でございます。