浜田寿美男の発言 (法務委員会)
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○参考人(浜田寿美男君) うそをなぜ見抜けないのかという話なんですけれども、普通は、うそはつかれる人間が相手のうそを暴こうとする、うそというのはつかれた人間が相手を暴こうとするというものだと一般には思われていますけど、虚偽自白というのは逆で、おまえがやったんじゃないかということで追及する、真犯人がうそで否認をしているとすれば、それを暴くというのはうそを暴くという形でぴったりはまるんですけど、虚偽自白は逆なんですね。おまえがやっただろう、おまえがやっただろうと言って、やっていません、やっていませんというのが、最後、とうとうやりましたと言うと、ああ、やっぱりおまえかということで、その後、犯行のストーリーを語って、妙なものが出てきても、それは間違ったんじゃないかという形でうそを支えるんですね。
うそは暴かれるものとして考えられていますけど、虚偽自白というのはついた途端に相手が支えてくれるんです。多少違うものが出てきても、ええ、そうかという形で問いただしたら、うそで言っているものですから、自分の方で、ああ、間違ったんだと思って直すという形になりますから。
うそは暴かれるものだというのが世間の常識ですけど、支えられるうそがあるということを余り知られていない。裁判官も真犯人にだまされたくはないと思っているんですけど、実は、虚偽自白をした人間がいれば、これだけの重罪事件で自白をするというのはよっぽどの、うそであることはまずないだろうからというところで、うそを支えてしまう一翼を担ってしまっている現実があるんじゃないかと思います。私も、まだ再審が果たされていない事件を幾つも重ねて分析せざるを得ない立場にいるんですけど、何でこれが見抜けなかったんだろうかということを本当につくづく思います。
だから、その虚偽自白というのが、先ほど言いましたように、本人が言わば犯人になって語らざるを得ない状況に置かれているんだということさえ分かれば、いろいろ間違ったことを言うわけですから、それが調査上も残っているわけですね。録音テープになれば、ましてまさにそれがはっきり残っていくわけですから。虚偽自白はこういうものだということを知っていれば見抜けるはず、知らないので見抜けないという現実があったんじゃないかと思います。
もう一つ言っておくと、九九・九%の有罪率という言われ方をされていますけど、もう少し今は下がってきたかもしれませんけれども、逆に言うと、裁判官から見ると、目の前に座る被告人のほとんどが有罪者なんですね、千件に一件ということですから。だから、裁判官をずっとやってきて、一生の間一度も無罪判決を書いたことのない人もいると私は思うんです。
ですから、まあ大体座ったら犯人だろうという目で見てしまうというところがやっぱり現実的にあるんじゃないかというふうに思います。その点でも、虚偽自白がなぜ起こるのか、これは例外的に起こるんじゃなくて、私の目から見ますと、ほとんど誰もが落ちてしまうんじゃないか、同じ状況の中に置かれたらという部分を裁判官が知ってさえいれば相当見抜けるはず、それを知らないというところが最大の原因だというふうに思っております。