法務委員会

2016-04-26 参議院 全198発言

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会議録情報#0
平成二十八年四月二十六日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     石井 正弘君     溝手 顕正君
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     柳本 卓治君     三木  亨君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                西田 昌司君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                矢倉 克夫君
    委 員
                猪口 邦子君
                田中  茂君
                鶴保 庸介君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                三木  亨君
                溝手 顕正君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                加藤 敏幸君
                真山 勇一君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
       発議者      西田 昌司君
       発議者      矢倉 克夫君
   国務大臣
       法務大臣     岩城 光英君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    河野 太郎君
   副大臣
       外務副大臣    武藤 容治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   法制局側
       第五部長     加藤 敏博君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       総括審議官    村田  隆君
       警察庁長官官房
       審議官      斉藤  実君
       法務省人権擁護
       局長       岡村 和美君
       厚生労働省社会
       ・援護局障害保
       健福祉部長    藤井 康弘君
   参考人
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      川出 敏裕君
       弁護士      西村 幸三君
       立命館大学特別
       招聘教授
       奈良女子大学名
       誉教授      浜田寿美男君
       立命館大学大学
       院法務研究科教
       授        渕野 貴生君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(第百八
 十九回国会内閣提出、衆議院送付)(継続案件
 )
○政府参考人の出席要求に関する件
○本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消
 に向けた取組の推進に関する法律案(愛知治郎
 君外二名発議)
    ─────────────
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魚住裕一郎#1
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、石井正弘君及び柳本卓治君が委員を辞任され、その補欠として溝手顕正君及び三木亨君が選任されました。
    ─────────────
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魚住裕一郎#2
○委員長(魚住裕一郎君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
 本日御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授川出敏裕君、弁護士西村幸三君、立命館大学特別招聘教授・奈良女子大学名誉教授浜田寿美男君及び立命館大学大学院法務研究科教授渕野貴生君でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、川出参考人、西村参考人、浜田参考人、渕野参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、川出参考人からお願いいたします。川出参考人。
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川出敏裕#3
○参考人(川出敏裕君) 皆様、おはようございます。
 まず最初に、このような機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。
 私は、今回の法案の基となりました答申を決議しました法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会に幹事として参加をいたしましたので、特別部会の議論を踏まえまして、法案に賛成の立場から意見を申し上げたいと思います。
 また、時間も限られておりますので、本日は、通信傍受法の改正案に絞ってお話をさせていただきます。
 今回の改正案の主たる内容は、通信傍受の対象犯罪の拡大と、通信傍受の手続の合理化、効率化です。
 まず、対象犯罪の拡大の点ですが、この当否については、それが憲法上許されるのかという観点と、仮に合憲であるとしてその拡大に合理性があるのかという二つの観点から考えてみる必要があると思います。
 まず第一の点ですが、これは、通信傍受が通信の秘密やプライバシーを侵害するものであることから、それが憲法十三条及び二十一条二項に反しないと言えるためには、それに見合うだけの重大な犯罪でなければならないという観点から問題とされるものです。
 通信傍受法の制定前に検証許可状によって電話傍受したことの合憲性が問題とされた事件において最高裁は、電話傍受は一定の要件の下では捜査の手段として憲法上全く許されないものではないと解すべきであるとした上で、それが憲法上許容されるための要素の一つとして、重大な犯罪に係る被疑事件についてなされたものであるということを挙げていました。この決定は覚醒剤の営利目的譲渡事件を対象としたものでしたので、判例上は、覚醒剤の営利目的譲渡は電話傍受の合憲性を認め得る重大な犯罪であるという立場が取られていることになります。
 通信傍受が合憲であるためには対象犯罪が重大なものでなければならないとする考え方は、通信傍受法の下においても同様に妥当します。
 そして、通信傍受法は、判例上合憲性を認め得るとされた覚醒剤の営利目的譲渡を含む現在の四種類の犯罪は、この意味での犯罪の重大性を満たすものだという前提で制定されたものであるわけですから、そうだとすれば、少なくとも、これらの罪に匹敵するような重大性を持った犯罪に対象を拡大したとしても合憲と言い得ることになります。
 そして、この意味での犯罪の重大性は、要は、通信の秘密やプライバシーの権利を制約しても、その事実を解明し、犯人を処罰すべき必要性が認められるかどうかによって決まるわけですから、重大な犯罪に当たるか否かは、罪名や法定刑だけで判断されるものではなく、その犯罪が国民の権利利益を侵害する程度が大きいかどうかという観点から、その社会的有害性や危険性をも考慮して判断されるべきものだと言えます。
 その観点から見ますと、今回対象犯罪として加えることが予定されている罪は、いずれもそれに見合ったものであると言えると思います。これは、暴力団によってその意に沿わない行動を取る一般市民を標的にその生命、身体に対して危害を加えられる事案はもちろんのことですが、多数の国民の老後の蓄えを奪うような振り込め詐欺の事案、さらには、児童の心身に計り知れない危害を及ぼす児童ポルノの組織的な製造、提供事案などが、侵害される権利利益の性質やその侵害の程度から見て、薬物の密売事案と比べて重大性に劣るということは到底言えないと思います。
 もっとも、例えば窃盗や詐欺などについては、その罪名だけからはこの意味での重大性を持たない軽微な事案が対象に含まれる可能性があります。そこで、改正法案では、重大な犯罪が対象であることを明確にするため、新たに対象犯罪に加えられる罪については、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものという組織性の要件を付加しています。
 特別部会における議論では、こういった要件を付加しなくても、数人共謀の要件と補充性の要件を満たす場合というのは、実際には組織によって行われるものに限定されるのだという意見もありました。現実にはそうであるのかもしれませんが、しかし、そうなるという保証はありませんので、それを法律上も担保するためにこの要件が入ったという経緯がございます。
 他方で、これだけでは組織犯罪に限定するには不十分であり、例えば組織的犯罪処罰法でいう組織や団体の定義を適用すべきだという意見もありました。しかし、組織的に行われる犯罪の中には、ここでいう組織や団体の定義には当てはまらない形態もありますし、また、改正案の組織性の要件というのは、捜査機関として傍受令状を請求する時点で疎明ができるぎりぎりの線を規定したものです。したがって、これ以上のことを要求すると傍受制度自体が機能しなくなるおそれがあります。また、実際問題としても、単発に行われる共同正犯のような軽微な事案を外すという点からは、今回の改正案の要件で十分であろうと思います。
 以上のように、今回の対象犯罪の拡大は憲法に適合したものであると言えると思いますが、その上で、次の問題は、現行法が四種類の罪に限定していることとの関係で、対象犯罪を拡大することに合理性があるのかということです。
 現行法上、対象犯罪が四種類の罪に限定された経緯を見ますと、政府提出法案では、一定の重罪と組織的に敢行されることが多い犯罪を広く通信傍受の対象としていたのですが、その時点では通信傍受制度を導入することへの反対論が強かったということもありまして、国会審議において、その当時の犯罪情勢に照らしてこの捜査手法が必要不可欠と考えられる最小限度の範囲に限定されたという経緯をたどっております。四種類の罪の中に、その当時深刻な問題とされていた集団密航が含まれている点にそれはよく表れています。
 そうであるとしますと、その後の犯罪現象の変化を踏まえて、既存の対象犯罪に匹敵するだけの必要性が認められる犯罪を通信傍受の対象に加えることは十分に合理性が認められるはずです。そして、振り込め詐欺事案を典型として今回対象犯罪に加えるものとされている罪については、現時点において、この意味での必要性が認められると言えると思います。
 以上が対象犯罪の拡大の問題です。
 次に、通信傍受の手続の合理化、効率化の方に移ります。
 現在の通信傍受は、通信事業者の施設で事業者の立会いの下にリアルタイムで行う形になっています。このことが捜査機関、事業者双方にとって大きな負担となっているということが特別部会のヒアリング等でも紹介されました。そして、負担が大きいということだけならまだしも、それが通信傍受に対する事実上の障害となっているとの指摘もなされています。例えば、深夜に傍受を行うということは立会人の確保という観点から困難であることは容易に想像が付くところですし、ましてや、二十四時間体制で傍受を行うのは事実上不可能です。また、傍受を行う場所の準備や立会人の確保のためには、捜査機関と通信事業者との間での協議と通信事業者側の準備期間が必要となりますので、緊急に傍受を行う必要が生じたとしてもそれには対応できないということになります。
 こうした点を考えますと、これまでは、本来傍受できたはずの犯罪関連通話が傍受できないままに終わっていた例が少なからずあったものと推測されます。しかし、傍受の必要性があり、かつ法律上の要件が備わっているにもかかわらず事実上の理由から傍受ができない、実施できないというのは適当ではありませんので、それに対しては何らかの対応をする必要があると思います。
 これに対しては、他方で、通信事業者の施設で事業者の常時立会いの下にリアルタイムで傍受を行うことが必要とされていることにより運用上通信傍受の実施が抑制され、そのことが補充性の要件を担保してきたのであるから現在の制度を維持すべきだという意見もあります。
 しかし、通信傍受法で求められている補充性の要件というのは、通信傍受以外の捜査方法によっては犯人の特定や犯行状況、内容の解明が著しく困難であるということを意味していまして、事実上の制約から実施を差し控えることは補充性とは全く関係がないことです。この意見は、傍受の実施は少なければ少ないほどよいという考え方を背景として、誤った要件解釈を行っているものと言わざるを得ないように思います。
 そこで、さきに述べた問題を解決する必要があるわけですが、今回の改正法案では、そのために、大きくは三つの点で新たな傍受の仕組みを設けるものとしています。第一に、一時的保存による傍受の仕組みをつくり、捜査機関がリアルタイムではなく一旦保存された通信を事後的に再生していくことができる形も取れるようにしています。それから第二に、通信事業者の施設で傍受をするのではなく、通信事業者から通信を送信させ、捜査機関の施設でそれを傍受することができる形を取り入れています。第三に、特定電子計算機を用いた捜査機関の施設での傍受については、それを立会いなしで行うことができるものとしております。
 こうした三つの新たな傍受の方法を導入することについては、それぞれに問題となり得る点がございますが、ここでは、最も多くの懸念が表明されています最後の立会いなし、立会人なしの傍受の問題について意見を申し上げたいと思います。
 通信事業者による立会いをなくすことについては、これにより不適正な傍受がなされるのではないかという懸念が表明されております。この点につきましては、そもそも現行法の下で立会人にはどのような役割が期待されており、それが今回の新たな仕組みによって代替し得るのかということが問題となります。
 立会人の主たる役割は、通信の外形的な状況についてチェックすることです。具体的には、第一に、傍受のための機器を接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないのかどうか、第二に、傍受令状により許可された傍受ができる期間や時間等が遵守されているか、第三に、傍受すべき通信か否かの該当性判断のための傍受、いわゆるスポット傍受が適正な方法で行われているか、第四に、傍受をした通信について全て録音がなされているか、この四つの点がチェックの対象になります。
 これが今回取り入れられることになる新たな仕組みによって代替できるのかということですが、まず、一点目と二点目については、新たな仕組みの下では通信事業者が傍受令状によって許可された傍受実施期間内において令状で対象とされた通信手段を用いて行われた全ての通信を暗号化した上で捜査機関の施設にある特定電子計算機に送るということになりますので、これは、通信事業者自身によってこの二つの点の適正は担保されることになります。
 それから四点目についても、特定電子計算機は傍受ないし再生させた通信をそれと同時に全て自動的に暗号化して記録するように設定されておりますので、この点も代替し得るということになります。
 また、三点目のスポット傍受のチェックについても、特定電子計算機にスポット傍受の形でしか傍受ないし再生を行うことができない機能を装備することが予定されているというふうに伺っておりますので、これにより代替が可能となります。
 更に言いますと、現行法の下でも立会人は通信の内容を聞くことはできませんので、立会人がなし得ることは外形的にスポット傍受と思われる措置を捜査機関が行っているかどうかのチェックにとどまります。スポット傍受の適正さを担保する核となるのは、むしろ傍受の経過が全て記録されることによりそれを事後的に検証できるということにあるわけでして、この点は新たな仕組みの下でも担保されておりますので、立会人がいる場合と差異はないと言うことができます。
 以上が外形的な状況のチェックということですが、それと並ぶ立会人のもう一つの役割は、傍受の終了後に裁判官に提出する記録媒体を封印することです。この趣旨は、記録の改ざんを防ぎ、傍受が行われたか否かを事後的にチェックできるようにすることにあります。これについても、新たな仕組みの下では、特定電子計算機が傍受をした通信の全てと通信の経過を自動的にかつ暗号を掛ける形で改変できないように記録することになっておりますので、封印に代わる機能を果たし得るということになります。
 以上のとおり、現行法の下で想定されている立会人の役割は新たな仕組みによって代替し得るものと考えられますが、これに対しては、立会いには人の目があることにより捜査機関が違法行為を行いにくくなるという事実上の効果があり、立会いを廃止することによってそれが失われてしまうという批判もあります。こういった事実上の効果は法律が立会いの機能として予定したものではありませんが、立会いがそうした効果を持つ、そのこと自体はそうであろうと思います。
 そこで、立会いをなくすことによってこうした抑止効果がなくなることをどう考えるかということが問題となりますが、その前提として、こうした抑止効果、そこで抑止が想定されていた違法行為とは一体何であるのかということを具体的に考えてみる必要があるだろうと思います。
 まず、新たな仕組みの下では、そもそも現在立会いによって事実上抑止されると想定されている違法行為自体が想定できなくなる場合があります。例えば傍受期間の不遵守といったことは、これは、先ほど申し上げましたように、通信事業者が傍受令状によって許可された傍受実施期間内の通信だけを送信しますので、そもそもあり得ないということになります。
 さらに、違法行為をしても無意味となるという場合もあります。例えば、指定された特定電子計算機に他の電子計算機を接続することによって通信事業者から伝送された通信を二重に傍受するということ、これは違法であるわけですが、こういうことをやったとしても、暗号鍵というのは特定電子計算機でしか利用できないようにする技術的措置が施されておりますので、捜査機関は二重に傍受した通信を復号化することができず、そういったことをしても意味がありません。したがって、そういう違法行為というのはやらないだろうということです。
 それから、問題はそれ以外の場合ですが、例えば無関係な通信の傍受といったことですけれども、これも、先ほど申し上げましたように、傍受をした通信の全てと傍受の経過が自動的に記録され事後的に検証可能である以上、その過程で捜査機関が違法行為をすれば当然に発覚するということになりますので、そのことが立会いがなくとも抑止効果として機能するであろうと思います。
 以上のとおり、新たな仕組みの下では立会いをなくすことが不適正な傍受につながることはないという理解の下に特別部会でも合意が得られております。もちろん、それは暗号化や特定電子計算機が想定どおりに機能するということを前提とするものですので、そこが担保される必要がありますが、特定電子計算機については仕様書が公開されると伺っておりますし、さらに、改正法の下ではこうした新たな仕組みを使った傍受を行うかどうかも裁判官の審査対象になりますので、それを通じて装置等の適正さが担保されるということになると思います。
 早口でしたが、以上で終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
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魚住裕一郎#4
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、西村参考人にお願いいたします。西村参考人。
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西
西村幸三#5
○参考人(西村幸三君) 私は、平成十三、四年頃から闇金融対策や振り込め詐欺対策に関わってまいりましたが、やくざ同然の闇金融業者と対峙し続けてきた中で、余りの悲惨な被害に目を覆うしかないような経験を何度も味わいました。
 法外な利息により膨大な借金を背負わされるだけではなく、その過酷な取立てから家族関係を壊されたり、身も心も追い詰められ、実際に亡くなった方もいました。また、私自身も、闇金融業者から脅迫まがいの暴言を受けたことは一度や二度ではありません。こんな理不尽な暴力がまかり通るのかと憤りを感じると同時に、組織犯罪の陰湿さ、その隠蔽性の高さも実感したのです。
 そして、このような被害を少しでも減らしたいとの思いから、携帯電話不正利用防止法の立法の必要性も訴える活動もしてきました。それでも、昨今の情勢でも被害が減っていきません。逃げ得を決め込む組織犯罪集団を上層部まで摘発し、被害を元から断つにはどうすればよいのか、私自身の経験からずっと問題意識を持ち続けてきました。
 現在、私は、日弁連の民事介入暴力対策委員会幹事も務めておりますが、本日申し上げることは、所属する組織としてではなく、あくまで個人の知見と経験に基づき、犯罪組織の壊滅のために何が必要なのか、どうすればよいのかといった観点から、主に改正通信傍受法について御意見を申し上げたいと思います。
 振り込め詐欺対策を始めとする特殊詐欺は、認知件数、被害総額共に増加傾向にあります。被害者の多くはお年寄りです。家族を思う心に付け込んで老後の資産を奪い、あるいはまだ未熟で弱い若者に恐怖心を植え付け金品を詐取するなど卑劣な犯罪で、その被害は深刻です。また、振り込め詐欺被害に遭われたお年寄りが家族から嘆かれ、叱られ、被害を申告することすらつらく、後悔でさいなまれて心が折れてしまう事例も見てきました。幸せだった老後が、お金も家族関係も奪われ、残された人生そのものが奪われてしまうのです。
 犯罪組織から追い込まれたある家族の悲劇を私は忘れることができません。知的障害を持ったお嫁さんが闇金に手を出してしまい、追い込まれましたのをおしゅうとめさんがかばい、二人で約七十件の闇金から恐喝された事例がありました。怖くて家に帰れないというので日中は私の法律事務所に居続けてもらい、励ましながら、私自身も脅迫を受けながら何日も闇金業者に電話を掛け続け、ようやく脅迫電話が止まってきたので、もう大丈夫ですよと言って帰っていただいたその翌日の朝におしゅうとめさんが脳溢血で亡くなっていました。御主人から掛かってきた電話口での号泣ばかりは、今思い出しても胸が締め付けられます。何とか救えたと思った命が救えなかった、今でも思い出すたびに無念でなりません。
 このような弱者を食い物にする振り込め詐欺等の犯行を行うグループは、リーダーや中枢メンバーを中心として、掛け子や受け子など役割を細分化して分担し、組織的に犯罪を敢行しています。出し子や受け子などの末端のメンバーであれば、現金の受渡しの場面やATMでの引き出しなどの場面である程度被疑者を割り出すことは可能でしょう。しかし、彼らは上位者から口止めされていたり、そもそもグループの構成やリーダーを把握していないこともあるため、このような末端被疑者が判明したからといって犯行グループの中枢の関与までが判明することは非常にまれなことです。摘発という点でも被害回復という点でも、組織犯罪の中枢が捜査の追及を逃げ切ることで多くの被害者は泣き寝入りしてきたのです。犯罪組織によるトカゲの尻尾切りがまかり通ってしまっている現状には大変理不尽さを感じます。
 次に、暴力団犯罪という観点でお話しします。
 御存じのとおり、暴力団は、その威力を背景として経済的利益を追求し、様々な不法、不当な活動を行っています。最近では山口組が分裂したことにより対立抗争と思われる事件も頻発していますし、過去には暴力団排除活動に賛同した事業者襲撃事件も発生しており、その存在はまさに国民生活の平穏や安全を脅かすものです。
 私は、平成七年に発生した山口組と会津小鉄との対立抗争事件で警察官が射殺された事件、いわゆる藤武事件の遺族代理人として、暴力団組長に対するいわゆる使用者責任を求める訴訟に原告側弁護団の一員として加わってまいりました。
 この訴訟は、最終的には高裁、最高裁で勝訴いたしましたが、地裁では敗訴しており、まさに薄氷の勝利と言えるほど暴力団幹部に民事上の責任を認めさせるのは困難なことでした。擬制血縁関係に基づく絶対的な服従統制など強固な組織性の下、上層部からの指揮監督や組員同士の連絡は携帯電話などを隠れみのにして行われ、機動的かつ隠密裏に組織犯罪が遂行され、末端組員は上層部の組織的関与を一貫して否認します。関与が隠蔽される中で暴力団上層部に対する責任を立証することは極めてハードルが高いのです。
 我々原告弁護団は、暴力団の強固な組織性や指揮監督関係の立証に大変苦しみました。証拠の優越によって判断がなされる民事訴訟においてすら、膨大な資料を一つ一つ積み上げ、暴力団という特殊な組織性、事業性を立証してようやく使用者責任を認めさせることができたのですから、刑事事件の立証となれば、そのハードルは更に高くなることは必至です。現に、襲撃事件や抗争事件における暴力団幹部の刑事責任の追及は余り進んでいないとも聞いています。
 今回の改正で傍受の対象となる殺傷犯、窃盗、詐欺などの新たな罪種については、現行法上も規定されている厳格な要件に加えて更に組織要件が課されることとなっており、組織犯罪に焦点を絞った改正と理解します。
 弁護士としての活動を通じて、国民の多くは、振り込め詐欺などの被害がない、暴力団から平穏な生活が脅かされない生活を望んでいることを痛感しております。地元府警の捜査員からも、振り込め詐欺や暴力団関連事件での捜査で組織実態を解明する捜査の困難性を伺ってきました。振り込め詐欺グループや暴力団が通信手段を隠れみのに利用して、その実態の隠蔽を図りつつ組織的に犯行を繰り返している以上、組織犯罪捜査に通信傍受を活用し、その実態を解明することが被害の撲滅につながると考えております。
 弁護士の中には今回の通信傍受の拡大について反対意見を主張される方も多く、その内容もおおむね承知しております。もちろん、制度の運用においては、今後も引き続きその運用の適正性に関する検証を続けることは大切だと思います。
 とはいえ、例えば中高生の万引きにも通信傍受が適用されるといった情緒的批判も目に付きました。倉庫荒らし、商店荒らし、事務所荒らしといった侵入盗の被害のすさまじさは大変なものがありますし、そういった組織窃盗団の犯行の組織性、隠蔽性に照らせば、通信傍受の対象罰条に組織的な窃盗を加えることには十分な根拠があると思います。
 しかしながら、中高生がする万引きで組織的窃盗団が見せるような強い組織性や隠蔽性を持っていたり、活動の広域性を持っていたりすることはほとんど考えられず、通常の捜査方法では共犯関係などの解明が困難と言えるほどの事件はほとんどないか、あっても極めてまれでしょうから、通信傍受の法定の要件である補充性の観点から裁判所が令状を出さないのではないかと思いますし、それ以前に、捜査機関がわざわざ捜査方法として大掛かりな通信傍受を選択しないと思われますから、中高生の万引きに通信傍受という批判は、的外れで現実的ではないと思います。
 本論からは余談となりますが、万引きについて、たかが万引きともう言わんばかりに引き合いに出されることに私は大変強い違和感がありまして、万引きが町の商店の方たちにとって大変に深刻な被害をもたらしているという現実は是非御理解いただきたいと思います。
 例えば、書店の経常利益率は、最近の書店経営指標という統計では平均一%をかなり割っています。つまり、一冊万引きされてしまえば百冊以上余分に売り上げないとその損を取り戻せません。一方、平成十四年十月と少し前ですけれども、経済産業省の統計では、書店の売上げに占める万引き被害額の割合は推計で一%から二%に上ります。そのほかの資料でも似た数値が出ており、漫画や写真集の被害が多いとされています。つまり、万引き被害で利益が吹き飛んでいるわけです。
 万引きで店が潰されてしまうというのは、町の書店から実際に上がっている悲痛な叫び声です。書店のみならず、スーパー始め町の商店での万引き被害も深刻だということも、被害を受ける側がどれだけ苦しめられているのかという目線でよく御理解いただきたいと思うのです。私自身も弁護士として刑事弁護事件を真摯に扱ってまいりましたが、犯罪を行う者が適正かつ効果的に検挙され、被害をなくせるような法制度を築いていくことが、弁護士法一条にも言う人権擁護と社会正義の実現にとって大切なことと考えます。
 少々話は変わりますが、平成十六年、私は、米国におけるテレマーケティング対策、通信手段利用詐欺対策について訪米調査を行う機会がありました。その際、日本で機運が高まっていた携帯電話不正利用防止法のアイデアを話題にしたところ、米国の捜査官から、日本では通信傍受ができないから犯罪に使用された携帯電話を止めるという発想になるようだが、米国なら通信機関はその携帯電話を傍受する、そうして組織の実態を解明し、犯人たちを検挙すると言われました。
 通信傍受に対する批判の中に、通信傍受は犯罪検挙の役には立たないから反対だという批判もありますが、これは批判としては当たらないのではないかと感じます。
 被害者と向き合う立場としては、日本と米国との法制度の違いにより犯罪組織への追及の強さに差が生じてしまうことにはじくじたる思いがあります。法制審議会においても諸外国との比較調査があったと承知しております。例えば、先ほども例に挙げたアメリカでは、対象犯罪も百以上、組織要件は設けられておらず、年間実施件数も約三千六百件に上ると聞きます。このように、通信傍受が捜査手法としての有用性も認められ、高く評価されており、米国以外の諸外国と比較しても、日本での今回の改正は、慎重と評しこそすれ、安易な拡大という批判も当たらないと考えています。
 さらに、新制度における通信傍受では、暗号技術を活用し、記録の改変等ができない機器を用いるなどの技術的措置が講じられ、これを通じて通信傍受の合理化が図られているものと理解しております。十分な強度を有する暗号技術は、近年の国際商取引などの基盤ともなる信頼性の高いものです。通信事業者の立会人がなくなることについて懸念を示す意見も承知しておりますが、暗号などの技術は十分に信頼に足りるものとして既に広く実用化されていますし、機械的なシステムにより人為的な管理ミスが防止され、事後検証の客観性も含め、少なくとも現行制度の立会いと同等の手続の適正性が担保されると考えています。
 また、通信傍受の合理化は、現状の通信事業者や遠隔地の捜査機関の過大な負担を軽減し、機動的、効果的な通信傍受捜査の実施につながるものです。貴重な国民の税金を限られた資源として使う上で、合理化できるところは合理化し、信頼できる技術は活用すべきです。犯罪集団の側が高度に発展した通信手段を利用して犯罪を遂行している現実がある以上、摘発する側の法執行機関もまた時代に即し法制度を整備していかなければ立法のサボタージュとなってしまいます。
 繰り返しますが、私自身、弁護士としての活動を通じて、振り込め詐欺や暴力団犯罪の被害に遭わない平穏な生活の実現を国民が切に願っていることを実感しており、組織犯罪捜査に通信傍受をより積極的に活用していく必要性も高まっているのではないかと感じております。諸外国の状況も踏まえ、自白に過度に頼らない捜査の在り方を目指す一連の改正の中で、今回の通信傍受法の改正は時宜を得たものと考えております。
 以上です。
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魚住裕一郎#6
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、浜田参考人にお願いいたします。浜田参考人。
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浜田寿美男#7
○参考人(浜田寿美男君) 浜田です。
 今日は刑訴法の改正ということで、通信傍受がお三方のテーマのようですけど、私は、先週行われました委員会での可視化の問題にむしろ焦点が当たりますので、少し議論が重なるところが少なくなるかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 私は、法の人間でもなくて、どちらかというと一般の方たちに近い形で刑事事件の問題に関わってきました。専門は心理学です。
 元々が、甲山事件という、一九七四年に起こりました、兵庫県で知的障害児の入所施設で二人の子供が行方不明になって、後に学園内で浄化槽で見付かったというこの事件で、当時職員をしていました、保母をしていました方が疑われて逮捕されるという中で、自白も出たんですけれども、証拠が十分じゃないということで一旦不起訴になった。ところが、亡くなったお子さんの親御さんが諦められないということで検察審査会にかけて、不起訴が不相当じゃないかということで改めて検察側の方で再捜査を行って、元々疑われたのが、知的障害の子供がその先生が連れていくところを見たというそういう目撃供述があって最初疑われ、一旦十分じゃないということで不起訴になったんですが、三年後開始されました再捜査では、同じく学園で住んでいました知的障害の子供たちに事情聴取をしたところ、私も見た、僕も見たということで更に三人の子供たちが目撃者として登場するということで、その子供たちの証言が果たして信用できるかどうかということで、私、元々は子供の心理学を専門にしておりましたので、知的障害の子供の目撃供述をどう見たらいいのかということで、刑事裁判に初めて関与することになりました。それが一九七八年、七四年の事件で七八年から裁判が始まりましたので。いろんな因縁がありまして、特別弁護人という形でこの裁判に弁護人の一人として関与することになりました。
 以来四十年近く、弁護士さんとの付き合いの中でいろんな冤罪主張の事件に出会うことになって、外からは全然見えなかったんですが、中に入ってみますと、被疑者、被告人の自白の問題がすごく大きなテーマになっているということに改めて気付かされ、心理学の視点から、虚偽自白というのは一体どうして起こるのかということを私なりに勉強させていただきました。その中で、本当にたくさんの冤罪被害の方たちと出会い、また文献的にもいろんな形で調べていった結果として、世間の人たちが思う以上に虚偽自白は頻繁に起こっている、しかも、世間の人たちが思う形ではなくて予想外のところで虚偽自白が起こっているという現実を突き付けられました。
 ということで、例えば刑事訴訟法の中では、今回の刑訴法の改正による可視化問題については、可視化によって取調べ室の中で行われている供述についての任意性をチェックするというのが本来の筋のようですけれども、その任意性のチェックということで、可視化が全面的になされなければ十分それが機能するのかどうかということをすごく懸念をしているわけです。
 刑事訴訟法の中には、強制、拷問又は脅迫による自白、あるいは不当に長く抑留された、勾留された後の自白は任意性がないという形になっていますけれども、私が出会ってきた事件の多くは、形の上だけ見ますと刑訴法の上でのこの任意性チェックをクリアしているというふうに見えるものが多いんですね。つまり、一般の方たちは拷問とか暴力とかそういうものでやむなく自白してしまうんじゃないかというふうに思っている方が多い。これは、弁護士さんの中にもそういう方も多いし、裁判官もまたそういう形で考えられる方が多いと思うんですけれども、実際には、むしろ、もちろん言わせられるという点では一緒なんですけれども、自ら犯人として語らざるを得ない状況に心理的に追い込まれるという現実があるんですね。ですから、一見自発的に自分からしゃべっているように見えます。ですから、録音テープでその外形だけ捉えたときに、果たして一般の方たち、あるいは裁判官も含めて、これを任意性がないという形でチェックできるかどうかということについてすごく懸念を持っております。
 実際にどういう形で、じゃ、虚偽自白が起こっているのかということですけれども、これを十五分という僅かな時間で語ることはほとんど不可能ですので、お手元に、これは警察学校で私がしゃべったときのレジュメなんですけれども、これをまた読んでいただいたらいいかと思うんですけれども。
 無実の人が虚偽自白をする、どうしてそんなことになるのかということなんですけれども、任意性が一見あるかのように見えるような取調べ状況でも起こる。非常に簡単に言うと、今の日本の刑事取調べの基本的な形は謝罪追求型になっているんですね。ある事件が起こって、とんでもない事件だ、ひどいやつだということで一定の容疑があって取調べ室にやってきたときに、謝れというところから始まるケースが非常に多いように見えます。諸外国から日本の警察研究をしている研究もありますけれども、その中でも、日本の刑事取調べというのは謝罪追求型になっていないかと。
 例えば足利事件の菅家さんという、これはDNA鑑定で再審が認められ、物証上無実だということが明らかになった方ですけれども、彼の自白なんかも、任意同行の一日目で落ちているわけですけれども、その中で、暴力的なことがというか、ちょっと肘鉄を食らうような形になったということはありましたけれども、基本的には、外から見ますと直接的な暴力はないし、ただ問題は、謝罪追求型ということを言いましたけれども、任意同行で連れていくときに、被害者の女の子の、四歳の女の子が被害者なんですけれども、写真を用意しておいて、それを見せて、これに謝れというところから始まっているわけです。
 世間の常識でも、とんでもない事件を起こした犯人に対しては当然ながら憎しみが湧いてきますし、許されないという思いが付きまといますから、謝れという気持ち、捜査官の気持ちもよく分かるんですけれども、しかし、謝罪追求型ということは、実は有罪前提なんですね。有罪前提だから謝罪追求ができるわけで、捜査官の心理の中にしばしばその謝罪追求、有罪前提での謝罪追求に走りやすい。ですから、捜査官が分かっていて無実の人間を自白に追い込んでいるわけじゃなくて、ある意味で職務上の熱意で、あるいは善意でもって本人に謝罪を求めている。
 有罪前提で迫りますとどういうことが起こるかというと、被疑者が幾ら弁明しても、有罪前提ですから聞いてくれないんですね。ほとんど聞く耳持たないという形で対応されることになる。それぐらいで落ちるのかと皆さん思われるかもしれませんけれども、朝から晩まで、やっただろう、やっていません、やっただろう、やっていませんが続いたときに、どれだけの無力感を味わうことになるのかということ、これは想像ではなかなか考えることが難しいんですが、それこそ、実際にそれを体験した人は、これはこういうことを体験した人にしか分からないということをしばしばおっしゃいます。
 その中で、つまりそういう無力感で落ちるという、これは、それだけ聞いたら、そんなことでは普通の根性を持っているやつだったらそんなことはないだろうと思われるかもしれませんけれども、多くの冤罪事件でその無力感の中で落ちているということを知ってほしいと私は思っているわけです。
 逆に言うと、真犯人の方が落ちにくい。何でかというと、真犯人がやっただろうと言われて否認している場合は、自分がうそで否認をしているということが分かっていますから、やっていないということを言って相手が納得しないのは当然なんですね。ですから、開き直って否認をしても相手が納得しないということで無力感を感じることがないわけです。
 一般には、無実の人を落とすのはよほどのことがないと落ちないだろうと思っている。真犯人は反省の気持ちとかなんとかがあって落ちることがあるかもしれませんけれども、無実の人が落ちることはあるまいと思っていらっしゃる方たちにとっては非常に分かりにくいことかもしれませんけれども、しかし、実はその無力感でさえ人は落ちるんだということなんです。幾ら言っても聞いてくれないというその無力感で落ちるという、そのことをまず一つ知ってほしい。
 しかも、落ちた後、私がやりましたと認めてしまった後は、当然、捜査官はますます犯人としての確信を深めますから、それじゃどうやったんだというふうに犯行のストーリーを語ることを求めることになります。もちろん、やっていない人間は分からないわけです。だから、分からないから分かりませんと言えるかというと、分かりませんと言うと、また否認するのかということに戻ります。また元のつらさに戻ることになってしまいます。したがって、分かりませんでは通らないということになります。そこでどうするかというと、結局、自分が犯人として振る舞う以外にないということになるんです。その中で、突き付けられた事件について自分だったらどうしただろうかということを自分の側から想像して語るということが起こるわけです。
 一般に虚偽自白というのは、捜査官がストーリーを考えておいて、でっち上げてのみ込ませるみたいなイメージが強いので、犯行筋書を語らされてしまうというふうに思われるかもしれませんけど、実は、犯行を自分から考えて、自分がやったとしたらどうなっただろうかということを想像して自分の側から語るという側面があるんだということを知っていなければ、録音テープを聞いても任意性でチェックすることはできないと私は思うんですね。
 今市の事件が前回の委員会の中で話題になっておりましたけれども、被疑者が身ぶり手ぶりで犯行の過程を語った、それを見て任意だ、しかも迫真性があるという形で有罪判決が出たわけですけど、非常に危ないと私は思うんですね。虚偽自白は、実は本人が引き受けて語らざるを得ない部分がある。実際にそういう形で捜査官が犯人だと思い、自分自身、被疑者本人は犯人だと振る舞わざるを得ないという中で、ある種の人間関係ができるんですね。これも非常に奇妙ですけれども、被疑者と捜査官との間で、犯人と振る舞う被疑者を犯人として処遇するという非常に奇妙な人間関係ができ上がってしまいます。
 足利事件の菅家さんのケースなんかは典型的でしたけれども、そういう人間関係ができ上がったところで起訴されて、法廷に出てきたときも、自分の自白を取った捜査官が傍聴席に来ているんじゃないかという思いだけで、そのときに否認に転じることができなかったわけですね。彼の場合は一年余り法廷で自白を維持したわけです。
 そういうことが現実の刑事事件の中で起こる。これは、彼に根性がないからとか彼自身の個性の問題みたいな形で言われることもありますけど、実はそうじゃなくて、誰でも同じ立場に置かれれば同じことが起こるんじゃないかと私は思いますし、虚偽自白が一体どういうものかということを十分に知っておかなければ任意性判断も信用性判断も正確にできないということを、私自身、この自白に付き合う中で痛感させられてきました。
 その意味で、録音テープを取るということで一定程度、捜査の外部から見て何が起こっているかということを見ることができるようになる第一歩だという考え方はありますけれども、一方で、非常に危険だという部分を感じるんですね。少なくとも、身柄を取られて以降、つまり逮捕以降の取調べを可視化するということになっていますけど、現実の事件を見ますと、かなりが任意の段階で自白に落ちて、それから逮捕されているケースが多いんですね。
 そういうものになりますと、もう言わば捜査官と被疑者との間で、おまえが犯人だ、私たちはおまえを今後の更生も含めて関係をつくって面倒を見てやるんだという中で、人間関係ができ上がってしまったところで録音テープが取られてしまったときに、それを誰が見抜くことができるのかということになる。したがって、それは逮捕以前の任意の段階も含めて、あるいは別件で逮捕されて起訴されて以降の形の上で任意になった段階も含めて可視化をしておかないと虚偽自白は防げないというふうに私自身思います。
 これは、よく私自身は比喩で言っているんですけれども、虚偽自白を見抜こうと思えば虚偽自白がどういうものかを知っておかなきゃいかぬ。例えば、きらきら光る金属があったときに、そのきらきら光る金属が本物の金なのかどうかということを判別しようと思えば、本物の金がどういう物理的特性を持っていて、偽物のきらきら光る金属の中にどういうものがあるかということを正確に知っておかなければ本物の金とまがいものの金の区別ができないわけですね。それと同じように、自白があったときに、その自白が虚偽のものであるか、それとも本物の真犯人の自白であるのかということを判別するためには、虚偽自白がどういうものであるかを知っておかなきゃいけない。
 私自身は、虚偽自白を曲がりなりにも四十年近く具体的な例を通して学ぶ中で本物の、本物の虚偽自白って変ですが、虚偽自白が一体どういうものかということについて一般の方たちが本当に知らない、そのことをしっかり認識してもらわないと可視化は怖いというふうに、部分的な可視化は怖い、例外を設けるような形のものは非常に怖いというふうに思っております。
 言わば編集された形で目の前に登場するわけですね。その編集されたもので実際の実態を見抜けるかどうかということを私たちは慎重に判断しなきゃいけないと思いますし、是非とも、この可視化の問題に関しては、虚偽自白が一体どういう形で起こるのかを認識していただいた上で決定していただきたいと思います。
 僅かな時間ですので十分なことはできません。お手元に資料を用意していますので、それをまた読んでいただく、あるいは文献も幾つか用意しておりますので是非読んでいただいて、認識を深めて判断に生かしていただけたら有り難いというふうに思っています。
 どうもありがとうございました。
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魚住裕一郎#8
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、渕野参考人にお願いいたします。渕野参考人。
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渕野貴生#9
○参考人(渕野貴生君) 立命館大学で刑事訴訟法を担当しております渕野でございます。
 本日は、貴重な機会を与えていただき、感謝いたします。
 時間に限りがございますので早速本題に入らせていただき、本日のテーマである通信傍受法を中心に、市民の基本的人権保障や被疑者、被告人の適正手続保障の観点から法案には重大な問題があるということについて所見を述べさせていただきます。
 通信傍受に関し、法案の第一の問題点は、通信傍受対象犯罪が大幅に拡大されている点です。
 現行の通信傍受法では、通信傍受の対象犯罪は、薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の四つのカテゴリーに一応限定されております。もちろん、現行法でもこの四つのカテゴリーを合わせますと対象犯罪は四十種類にも及び、ごく限定された範囲にとどまっているとは言い難いところもございますが、しかし、対象犯罪は辛うじて組織的犯罪及びその周辺の犯罪の範囲に枠付けられているという説明を許容し得る範囲にとどまっております。
 ところが、法案では、現住建造物放火、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐関連犯罪、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、爆発物取締罰則関係、児童ポルノ関連犯罪にまで対象犯罪が拡大されており、一般刑法犯のかなりの領域が侵食されたと言っても過言ではありません。これに対しては、例えば詐欺罪とか窃盗罪について、行為態様を限定せずに通信傍受の対象とすると余りにも傍受の範囲が広がり過ぎるという批判がなされてきました。
 そこで、法案では、この批判に応えて、当該犯罪があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限るという要件を付加しています。しかし、この要件は、指揮命令系統の存在及び結合体の継続性を求めていないなどの点で、適用を限定する効果をほとんど持たないというふうに言わざるを得ません。
 このように、法案では対象犯罪の範囲が一気に拡大しており、それだけプライバシー侵害の範囲が拡大することになります。しかも、対象となる犯罪には、詐欺や窃盗など必ずしも組織犯罪とは関わりのない、通常の市民が日常生活を送る中でうっかり関わってしまう可能性のある犯罪が含まれており、現行の通信傍受法と比べて飛躍的にプライバシー侵害の可能性が高まります。
 通常の市民が日常生活を送る中でうっかり関わり合うということの意味を少し敷衍します。
 この法案の下では、捜査機関から窃盗や詐欺の嫌疑が自分あるいは自分の知り合いに掛けられたら、自分の通信が傍受される可能性があるわけです。仮に私たち市民が、自分は窃盗や詐欺などの犯罪には絶対に関わらない、そういう犯罪は絶対に行わないと断言できたとしても、自分は窃盗や詐欺の嫌疑を絶対に掛けられないとは断言できないはずですし、ましてや、自分の電話の相手方である友人、知人が窃盗や詐欺の嫌疑を絶対に掛けられないとは絶対に言えないわけです。
 そして、更に問題であるのは、市民の日常のプライバシーがこのように深刻に侵害されるにもかかわらず、法案では、犯罪に関連しない会話を傍受された人に対しては傍受した旨の通知がなされないことになっている点です。つまり、犯罪に関連しない会話を聞かれてしまった一般市民に対して不服申立て等の救済手段が全く整備されていない点が問題であるというふうに考えます。
 この点、会話を聞かれてもその会話は事後の手続に使われないのだからよいではないかというふうに考える考え方もあるかもしれませんが、決してそうではありません。仮に家族や知人との親密な会話を誰かがひそかに盗み聞きして録音していたというときに、録音していた人がその会話を悪用しなければ権利侵害は生じないなどという理屈は到底成り立たないからです。聞かれた人にとっては、他人に聞かれたこと自体が不気味で気持ち悪いのであり、プライバシー侵害は聞かれた瞬間に既に完成しているのです。したがって、聞いただけだから権利救済の機会を与えなくてもよいということには絶対にならないように思われます。
 このように、通信傍受という捜査手法は、元々市民のプライバシーを広く侵害する危険が大きい上に、さらに、傍受対象通信の特定が困難であるため令状主義によるコントロールが本来的に難しいという難点を抱えております。
 捜索、差押えに当たって場所及び対象物を特定した令状の発付を受けなければならないことは憲法三十五条が要求するところです。通信傍受においては犯罪関連通信が差押対象物に当たりますので、傍受令状を発付する際には犯罪関連通信を特定しなければなりません。しかし、通信傍受の場合は、対象となる犯罪は令状審査の段階ではまだ行われておりませんので、その審査は、将来犯罪関連通信がなされる見込みがあるか否かという判断にならざるを得ません。その結果、必然的に特定性の審査は甘いものにならざるを得ないわけです。
 これに対しては、組織犯罪で使われる携帯電話等では犯罪に関連しない通信が行われる可能性は低いから、回線を特定すれば無関係な日常会話が傍受される危険性は低いという説明もなされてきました。しかし、現実を見るとどうかといえば、現行の通信傍受法の下で、平均すると実に約八〇%の通信が、ヒット率が高かった平成二十七年度に限っても六五%の通信が令状発付の根拠となった犯罪にも関連しない、他の犯罪にも関連しない通信であったことが統計上明らかにされています。
 法制審議会ではヒット率など問題ではないという議論もなされていましたが、とんでもないことであり、この数字が持つ意味は極めて重大です。なぜなら、傍受した会話の八〇%が本来であれば聞くことが許されなかった、聞くことに正当な理由がなかった日常会話であったことを意味するからです。もちろん、通常の捜索、差押えでも、令状審査が証拠物の存在する蓋然性という予測判断である以上、百発百中というわけにはいきません。しかし、八割もの会話が犯罪に関連しない会話であり、市民の正当なプライバシーが侵害されてしまっているという事実は、令状審査がきちんと機能していないのではないかという疑いを生じさせるのに十分であります。
 このような問題点が明らかになっているにもかかわらず、そのことに対する検証を行うことなく対象犯罪を拡大するとすれば、それは、市民の日常生活の隅々まで捜査機関が入り込んでいってもよいのだと居直ることにほかならないように思います。
 法案の第三の問題点は、通信傍受の合理化として通信事業者の常時立会いを不要とした点です。すなわち、立会いを不要とすることで通信傍受の運用は爆発的に拡大することが懸念されます。
 確かに、現行の通信傍受法では、傍受期間中捜査官が通信事業者の施設に常駐しなければならず、立会人もその期間中常時立ち会うことが要求されるために、通信事業者が立会人を捻出することにも困難が伴い、結果的に、実体的要件がそろっても実務運用上傍受の実施までこぎ着ける数が少数にとどまらざるを得ないことは指摘されるとおりです。しかし、まさにそうだからこそ捜査機関による濫用的使用を効果的に防止することができてきたと言えます。
 既に述べたとおり、元々、通信傍受は傍受対象会話の特定要求が緩くなりがちという性質上の難点を抱えています。その意味で、令状審査の実効性に疑問が持たれてきたところであります。つまり、通信傍受には、捜査機関の行き過ぎた活用を規範的にはなかなか効果的に縛り切れないという弱点があるわけです。現行通信傍受法は、常時立会いを要求することによって物理的な障壁を設けたことで通信傍受が有する性質上の弱点を補い、辛うじて捜査機関の暴走に歯止めを掛けることに成功してきたというふうに言えるかと思います。
 一般的に言って、ある捜査手法について、要件を厳格に法律で定めるという規範面からのやり方だけでは実効的に権限濫用を防止できないという場合に、それと併せて物理的な障害を設けることによって権限行使を慎重にさせるというやり方を取ることは決して不合理ではありません。現行の通信傍受法で立会いの仕組みを国会が法に組み込んだのは一つの見識であったと考えます。多くの件数を実施できないからこそ、捜査機関は本当に必要な場合に限って令状請求をすることになり、その結果、他の捜査手段では解明できない場合という補充性要件が実効的に担保されるわけです。
 立会い要件を外すことは、このような微妙なバランスの上に成り立っている現行の通信傍受の在り方を根本的に変容させることになります。傍受令状請求に向けたハードルは一気に下がり、傍受の日常化ともいうべき雪崩現象が起こることが強く危惧されます。
 最後に、今回の法案全体を通じた問題点を二点指摘したいと思います。
 第一に、今回の法案は、協議・合意制度や証人保護なども提案されております。そうすると、例えば、通信傍受を行って被疑者を特定し、傍受内容を示しながら他人の犯罪について情報提供することの協力を求め、そして他人の犯罪について供述をさせ、これを使って別の人物を裁判にかける。しかし、その際、協力者には証人保護の措置がとられるので、売られた他人は協力者の身元も分からないというようなことが起こり得ます。
 このような手続の積み重なりは、無実の第三者を巻き込み、法廷での反対尋問権の行使を深刻に侵害し、冤罪を生み出す危険が極めて大きいと言わなければなりません。個々の制度を単独で評価するのではなく、法案全体の危険な性格をトータルに把握する必要があることを強調したいと思います。
 第二に、今回の法案では、例えば取調べの可視化の例外事由を始め捜査機関の裁量に委ねられるところが非常に多い、このことの問題性を指摘したいと思います。
 通信傍受の点でも、要件を満たす結合体の行う全ての窃盗に対して通信傍受を実施するわけではない、日常的な窃盗に適用されるわけではないと説明されています。しかし、刑事手続においては、捜査、訴追という国家の最もむき出しの暴力装置の発動を認めざるを得ないがゆえに、刑事手続法が行政当局による恣意的、濫用的な権限行使を招かないように、市民に対する不当な権限行使にならないように、立法府が法律によって権限行使を許す条件を厳格に限定し、かつ明確な枠付けをすることが求められているのです。それが適正手続保障の要請の真の意味であると言えます。適正に運用されるはずだという期待を掛けて捜査・訴追機関の裁量に任せるという考え方は、刑事手続法の立法の在り方として根本的に間違っていると言わなければなりません。
 捜査機関は、権限を与えられれば、それを最大限使いたい集団です。それは、組織の属性としてむしろ当然の行動パターンです。通信傍受について、法律で拡大するけれども運用は厳格に行われることを期待するというのは、例えて言えば、子羊の群れの中にオオカミの群れを解き放った上で、オオカミに対して、食べてもいいけど三日に一匹だけにしてね、三日に一匹しか食べないでねとお願いするようなものです。刑事手続法の立法はこれでは駄目なのであって、餌やり係が厳格に三日に一匹しか与えないというルール、すなわち、一般化して言えば、捜査機関が濫用したくても濫用することができない制度にしなければ決して守られない、こういうふうに考えるべきかと思います。
 以上、通信傍受を中心に法案に対する問題点を指摘してまいりましたけれども、今回の法案は、通信傍受のみならず、刑事訴訟法の基本原則に照らして看過できない重大な問題点を多く含んでおり、賛成することはできないということを結論として述べ、私の意見とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
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魚住裕一郎#10
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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三宅伸吾#11
○三宅伸吾君 自由民主党の三宅でございます。
 本日は、四人の参考人の皆様、有意義なお話をいただきましてありがとうございました。
 まず、浜田参考人からお聞きをしたいと思います。
 先ほど御意見の中で、有罪を前提にして謝罪追求型の取調べをされて、やっただろうやっただろうと、やっていませんと言っても、またやっただろうと何度も何度も言われて、そうしますと、言うことを聞いてくれないということで無力感に襲われる、そして、一度無力感でうその自白をしてしまうと、その後もあたかも自分が犯人であるかのような供述を任意性があるような形でやってしまうことがあるというようなお話がございました。そのような虚偽の自白が任意性の外観をまとってなされるということを一般の方に是非知っていただきたいという表現がございました。
 私は、今のお話をお聞きしておりまして、検察官と警察官と裁判官に是非知ってもらいたいと思ったわけでございますけれども、浜田参考人は、今日されたようなお話、それから様々なところで教鞭を執ったり、それから論文もお書きになられていると思いますけれども、例えば司法研修所でこういうようなお話をされたことはあるんでしょうか。
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浜田寿美男#12
○参考人(浜田寿美男君) 司法研修所では一度だけ話をさせていただきました。弁護士さんの先生からの依頼で一度しゃべりました。
 それ以降はないですが、ただ、ついでに言っておきますと、先ほどちょっと言いましたけど、警察学校で最近呼んでいただいて、足利事件以来、警察学校の中でも取調べについてどう考えるべきかということをいろいろ考えておられる方が多くなって、年に七、八回は警察学校の方で話をさせていただいています。
 その中で私が強調しているのは、謝罪追求型じゃなくて、被疑者だからひょっとしたらやっていないかもしれないという無実の可能性を必ず念頭に置きながら調べてほしい、本人のやっていないという弁明があればその弁明を裏付けると。つまり、裏付けというと有罪方向の裏付けしか考えない方が多いですけれども、実は、無実の側の裏付けをやっていけば、ああ、言えば捜査官も調べてくれるんだなという実感を持てますから、無力感に陥らなくて済むということで、無実の可能性を念頭に置きながら調べてほしいと。逆に無実だということを見抜くことができれば、それは周りから称賛するという雰囲気をつくってほしいと。実際には、有罪方向で自白を取ると周りから表彰されるような状況がありますけど、逆に無実の人間を無実だと見抜けば、それはもう周りから称賛されるというような文化をやっぱり捜査の中につくっていかなきゃいけないんじゃないかと。
 そういうふうに思って伝えているつもりなんですが、ただ、そういうことを伝えても、現場はそうじゃない方も、理解してくださる捜査官も多いんですけど、なかなかそういうふうにならずに、現場でそれが生きていかないことも多いような気がしております。
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三宅伸吾#13
○三宅伸吾君 最後のところをもう少しお聞きしたいんですけれども、有罪前提じゃない可能性があるということを頭にもう一度置いて逆の裏付け捜査をしたらどうかとか御提案されたそうでございますけれども、もう少し具体的に、どういう反応が警察学校であったのか、それから、司法研修所での講義のときどのような反応があったのか、教えてもらえますか。
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浜田寿美男#14
○参考人(浜田寿美男君) 割合熱心に聞いてくれるので、私もおっかなびっくりで最初は行っていたんですけれども、すごく熱心に聞いてくださいますし、捜査官も、自分が落とした被疑者が後で無実だというようなことが分かるというのは、それは非常に本人にとってはつらいことですから、逆に私も脅しで、足利事件みたいな事件で自白をさせた相手が本当は物証上も無実だというふうに分かったら夢見が悪いでしょうと言って脅しているんですけれども、実際に、だけど無実方向でもし無実だということを見出すことができれば、逆にこれは、冤罪を引き起こしてしまうということは真犯人を取り逃すということでもあるわけですから、無実の人だということを明らかにすることは実は捜査として非常に大事なことだということをお伝えして、それは納得して聞いていただいているというふうに思いますし、後で質疑で、いろんなそういう形で、私の意見を酌み取ってくれた形で言ってくれる捜査官もたくさんいらっしゃいます。
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三宅伸吾#15
○三宅伸吾君 恐らく浜田参考人は、全ての、任意の段階も含めまして可視化をした方がいいというふうに多分お考えだと思うんですけれども、仮に、じゃ、捜査官と参考人というか、まだ被疑者になる前の段階の例えば全てのコミュニケーションを可視化していた場合に、そもそもうその自白は、無力感に追い込まれてうその自白をするということは絶対になくなるのか。それからもう一つの質問は、仮に任意の取調べ、参考人段階から可視化をしておいて、例外的に、それでもうその自白がなされたという場合、浜田参考人であれば、全過程の記録を見たり聞いたりすればこれは虚偽の自白だと見抜けますか。
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浜田寿美男#16
○参考人(浜田寿美男君) 一つは、全面可視化して全てを可視化しても虚偽自白が完全になくなることは僕はないだろうとは思います、それは実際やってみないと分からないですけれども。ただし、相当減るだろうというふうに思います。
 それからもう一つは、全面可視化していれば、逆に、自白した後、犯行ストーリーを語るって相当難しいことなんですね。体験していることであれば自分の記憶に基づいてしゃべるということでできますけれども、やっていない人が犯行のストーリーを語るということは本来無理なんですね。だけど、語らざるを得ないということで語る。想像で語りますから間違うわけですね。だけど、捜査官は証拠を握っていますから、証拠と合わせてどうもおかしいということになると、そうかと、こう聞き直す。そうかと聞き直された本人は、想像で言っている、うそで言っていると知っていますから、ああ、間違ったんだということで、じゃ、こうですと言う。そうしたら、いや、そうかとまた言われる。じゃ、また間違ったんだと思って直すというふうにやっているうちに、結果として捜査側が握っている客観的証拠と合致するような自白が取られるということになります。
 ただ、それを後から可視化されて見ますと、本来真犯人が記憶としてとどめていないというようなことはあり得ないような肝腎な部分で、しかも、うそをつく必要のないようなところで実際に客観的証拠と明らかに違うものが出てくるということがあるわけですね。それを私は無知の暴露と言っているんですが、秘密の暴露に対して無知の暴露、つまり、本人が事件のことを知らないということがそこに表れているという意味で、実は、可視化をするとそこの中から無実の証拠を取り出すことができるというふうに思っているわけで、かなりを見抜けるというふうに私は思っております。
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三宅伸吾#17
○三宅伸吾君 川出参考人にお聞きしたいんでございますけれども、今回の改正法案、対象犯罪も広がるということでございます。
 ただ、可視化義務付けの対象犯罪であっても、例外規定に該当すれば捜査機関はその義務付けの義務を負わないということになるわけでございます。ただ、これは義務を負わないというだけであって、勝手に、勝手にというか場合によっては、被疑者が可視化は困ると明言していた場合でも、法律を読むと、例外的には本人が拒否をしても無理やり可視化できる場合もあるような気もするんです。
 今の浜田参考人のお話を伺っていますと、やっぱり全過程録音したら虚偽の自白は相当減るだろうということを陳述されたわけでございます。義務化対象犯罪であって例外規定に合致して、捜査機関には録音、録画の義務がなくても、本人の同意を無視して、それか本人の知らない間に録音、録画をして、その状況を、まあ証拠として出すかどうかは分かりませんけれども、今私が申し上げたような状況で、義務付け対象の義務が外れた場合において本人の同意なく録音、録画をしても、この改正法案上は捜査機関としては違法な取調べにはならない場合があると私は思うのですが、いかがでしょう。
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川出敏裕#18
○参考人(川出敏裕君) そこはおっしゃるとおりで、例外規定は録音、録画の義務が外れるということだけですので、その上で録音、録画するということは、別にやること自体が違法ということにはならないと思います。
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三宅伸吾#19
○三宅伸吾君 もう一つ、川出参考人にお聞きをいたします。
 東京大学法科大学院ローレビュー二〇一五年の十一月号に参考人はこのようにお書きになられていらっしゃる。「立会いには、人の目があることにより、捜査機関が違法行為を行いにくくなるという事実上の効果があり、立会いを廃止することにより、それが失われてしまうという批判がある。 このような事実上の効果は、法律が立会いの機能として予定したものではないが、立会いがそうした効果を持つこと自体はそのとおりであろう。」というふうにお書きになられておりまして、それに関連するような今お話もあったわけでございます。
 私は素朴な疑問があるんですけれども、暗号化されてデータが保持されている、だから事後検証がきっちりできるようになっているから問題ないだろうという趣旨の御発言だったと思うんですけれども、全ての記録が事後検証を実際されるわけではないと思うんですね。事後検証がなされるという蓋然性、蓋然性までいかないかもしれませんけれども、事後検証されるであろうという可能性が抑止効果を持つというのは分かるんですけれども、事後検証される割合が低ければ、事後検証されないからまあちょっとスポット傍受長めにやってみようかと。例えば、立会人がもしいれば、何かにこにこ笑いながら、捜査官が本来なすべき傍受じゃないところまで聞いちゃってにこにこ笑っていると、立会人見ているわけですから、何聞いているか分からなくても顔は分かるわけですから、そうすると牽制機能が僕は働くと思うんですね。
 ですから、事後検証の可能性があるからの一点をもって違法な傍受がなされなくなると決め付けるのもどうかなと思うんでございますが、いかがでしょうか。
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川出敏裕#20
○参考人(川出敏裕君) それはもうおっしゃるとおりで、事後検証があるから、当然、何というんですかね、抑止効果が今までと同じように働くというところまで言えるかどうかというのはおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、それは捜査機関の立場に立ってみないと分かりませんが、しかしそれは、違法なことをやれば発覚する可能性があるわけですよね。そういうリスクを冒してまでそんな違法なことをやるだろうかというのを考えたときに、それはやらないというのが恐らく捜査機関の立場じゃないのかというふうに思いますし、部会でもそういう形で皆さんが合意をされたということだと思います。
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三宅伸吾#21
○三宅伸吾君 西村参考人にお聞きしたいんですけれども、様々な弁護を通じて通信傍受の必要性を訴えられたわけでございます。
 非常にその思いはよく分かるんでございますけれども、その上でお聞きしますけれども、違法な盗聴のリスクがゼロとは僕はやっぱり言えないと思うんです。ないことが望ましい、その方向にきっちりと制度的な枠組みをつくるのは当然でございますけれども、その違法な盗聴リスクがないという状態に向けて、参考人として、捜査機関への、運用への注文といいますか期待があればお聞かせいただけますか。
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西
西村幸三#22
○参考人(西村幸三君) 捜査機関が違法な盗聴、やり過ぎの通信傍受、これをしないようにどう心理的な抑制を働かせるかということを、私、今回の特別部会の議論なども聞いていろいろ考えていました。
 捜査機関、警察あるいは検察において最もサンクション、制裁として働くのは、裁判所が違法収集証拠としてその通信傍受の記録を証拠から排除してしまうことです。それが違法な通信傍受であるとして現実に指弾されてしまうことであると考えます。
 今回の通信傍受の、もちろん制定当初からそうなんですけれども、全記録確実に裁判所に封印されて送られます。暗号鍵によってでないと、それを捜査機関が読むことすらできない。暗号鍵が仕込まれた機械でスイッチが入っているときだけしか聞こえないように、機械的に相当な高いセキュリティーによって保護されている。つまり、捜査機関が何を聞いたかが全て裁判所が後で見ることができて、違法収集証拠であるというふうに攻撃されるおそれがあるという状況になっております。
 捜査機関からすれば、違法収集証拠排除によって事件が潰されてしまうというのが組織自体にとって強烈なダメージであります。それを担当している捜査官なりその捜査官を統括する捜査官だけの問題ではなくて、それこそ、県警の本部長であったり検察庁であれば検事正であったり、そういうところまで責任が発展する大問題であります。つまり、裁判所が違法収集証拠排除というプロセスを適切に働かせて監視するということが捜査機関にとって最も違法な通信傍受を行わないための心理的抑制になると思っております。
 現在の立会人が全く音声が聞こえない中で捜査しているコンピューターの後ろから見ていると、捜査状況をですね、それによる心理的抑制と組織全体が懸かる違法収集証拠排除の問題と、これは、もう心理的抑制の程度というふうに考えますと、全く次元の異なる強いものだと思っております。
 ですので、いかに改ざんなく傍受記録がきちんと裁判所へと保存されるか、これこそが大事であると。現行法もそうですけれども、これにつきましては、かなりセキュリティーのレベルも含めて改正通信傍受法は強化されたというふうに私は見ております。
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三宅伸吾#23
○三宅伸吾君 終わります。ありがとうございました。
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真山勇一#24
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。
 四人の参考人の方、ありがとうございました。非常にお伺いをしていて明快で、しかも具体的ないろいろ御指摘を受けました。
 私は、法律の専門家でないし法律の世界の人間でもないんですけれども、法律の世界での見方をお示しいただいたのと、それと同時に、実際にそのフィールド、いわゆる現場でどういうことを感じていらっしゃるかということの意見も伺えて、大変参考になったというふうに私は思っております。ありがとうございました。
 まず初めに、ちょっと具体的にお伺いしたいんですけれども、まず川出参考人にお伺いしたいというふうに思います。
 私は、この通信傍受で一番やっぱり気になる点というのは立会人の話なんですね。確かに、現行、立会人がいても実際にそんなに権限はないんだよ、ただいるだけなんだよ、だから時間の無駄なんだよ、経済的にもロスが多いんだよみたいな論議になっているんじゃないかというふうに思うんです。でも、そこに人が立ち会うということというのは、やはりこれは機械では代えられない何か大事なものが私はあるというふうに思うんですね。川出参考人のその辺りの、やはり立会人がなくなったとしても、特定電子計算機は信頼性があるし、それから今の立会人というのはただいるだけということなのだから、経済性、合理性からいくと余りいい仕組みではないというようなふうに私は伺ったんです。
 だけれども、やはり通信傍受、いわゆる分かりやすい言葉で言えば盗聴ということになるわけですね。つまり、人の通信というものを、ないしょの部分を聞き取る、盗み聞きするということになるわけですけれども、やはり必要ならやるということは分かります、そしてその歯止めも掛かっていることは分かるんですけれども、必要ならやるということが、やはり逆に言えば無理をしてもやるということにつながっていきかねないというふうに思うんですね。その濫用を防止するという観点からいえば、確かに、機械に任せてその部分の担保をつくるということも必要ですが、やはり立会人がいるということの必要性、私は、それを法的なものではなくて人間の心理的な面でやはり必要じゃないかというふうに思っているんです。人の目ですね、人の目、大事だと思うんです。機械に代用ができるでしょうか。
 そして、例えば、東京の繁華街に交番があります。防犯カメラが今非常に普及してきました。いろんなことが防犯カメラで犯罪解決していきます。びっくりするぐらい解決しますね。捜査しなくても、映像があるからということで事件が解決してしまいます。そういう状況の中で、もしかしたら将来は、防犯カメラの社会になったら交番が要らなくなってしまうのかなと私は思っているんですね。
 何を言いたいかというと、つまり、交番がある抑止効果というのはあると思うんですね。人の目なんですね、警察官がそこにいる。例えば住宅街なんかでいうと、交番があって、そこにお巡りさんがいなくても交番があるということだけで犯罪の抑止効果というのが言われています。その辺というのを川出参考人はどんなふうに考えられるのかということをお伺いしたいと思います。
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川出敏裕#25
○参考人(川出敏裕君) まず前提として、立会人がいることが何か無意味であるというふうには私は決して思っていなくて、それは、立会人が現行法の下ではいて、外形的なチェックをし、それから封印すると、それはそれとしてもちろん重要な機能を果たしていると思います。それが機械、この特定電子計算機というシステムを入れることによって代替できるかというところが問題で、それは代替できているだろうということですね。
 その上で、人の目がある場合というのはやっぱり違うんじゃないかというのは、前の先生の御質問とも関わるんですが、人の目があることによって抑止できているものは一体何なのかというのを考えたときに、今度のシステムを入れることによって、そもそも抑止しようとしている対象が違法行為が行えなくなるという場合が少なからずあって、その部分は、ですから、人の目のあることによって何か防止できていたものが今度のもので完全に代替できるわけですね。その上で、そうでないような場合について、人の目でその時点で違法行為を見ているということがどのくらいの意味を持つのかということだと思います。
 先ほどの交番と防犯カメラの話でいえば、多分、交番があってお巡りさんがいてということになると、その時点で何か違法な行為が見られてしまうということによる抑止と、それから、防犯カメラがあって、それを後から検証することで何か違法行為をやったら分かってしまうと、そこの抑止効果の違いだと思うんですが、それがこの通信傍受の場合、先ほど西村先生がおっしゃったように、それは、後から違法なことをやったということが分かって、それで一定の効果が生じるその抑止効果と、現に見ていて、外から見ていて何か違法行為を防げるという抑止効果というのを考えたときに、それは、後から分かるというところの抑止効果というのは十分現時点で見ているということに代替できるものではないのかというのが私の考えですし、西村先生がおっしゃったとおりだと思います。
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真山勇一#26
○真山勇一君 私は、その特定電子計算機、先ほど川出参考人もおっしゃいましたけど、これからどういうものができるかという、まだどういうスペックなのかとか仕様書も分からない段階でこの機械、まさに万能の機械のような、つまり、人間に代われるんだ、悪用もできない、チェックもできる、後から調べることもできる、外にも漏れないと、何かもういいことずくめの機械ですけれども、まだこれから作る機械に対してこういうふうなことになっている。私は、やっぱりこの機械を運用してみてからどうだというのを決める方が筋じゃないかなと。
 いきなりもうその機械、万能の、これで大丈夫だから人要らないよということになることの一つ疑問を感じるのと、それから今おっしゃった、私は思うんですけれども、盗聴というのは無理してもやってしまうということがやっぱり過去のことでもあるわけですよ。そういうことを防ぐためには、心理的抑制というのはこれはやっぱり大きいものじゃないかなと私は思うんですね。立会人がどんな権限があるとか、もちろん権限はあった方がいいと思います、これは。でも、やっぱりその辺りは抑止効果というのが大事だと思うんですが、もう一回ちょっとお願いします、その辺り。
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川出敏裕#27
○参考人(川出敏裕君) ですから、立会人が見ているので違法行為を行わないというのは抑止効果ですよね。それはおっしゃるとおりで、あると思うんですね、事実上の効果として。そのことと、繰り返しになりますが、事後的にその違法行為をしたことが分かってしまうということによる抑止効果というのがそんなに差があるのかということだと思うんですね。
 それは、捜査機関の側からしてみたら、やはり事後的に分かって、自分たちがやった捜査の結果というのが無に帰してしまうという、そういった方の抑止効果の方が大きいのではないかと。まさに、盗聴ですか、通信傍受をとにかくやりたいというふうに捜査機関が思っているとすれば、それは、その結果が無意味になってしまうというのは全くそれに反する結果になるわけですから、そうだとすれば、そちらの抑止効果というのは十分あり得るだろうというふうに思います。
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真山勇一#28
○真山勇一君 ありがとうございました。
 続きまして、西村参考人にお伺いしたいんですが、今回の改正は犯罪対象の拡大ということもやりまして、特に、西村参考人からお話を伺った闇金融の悲劇、これは確かに防がなくちゃいけない、私もそう思います。幾らこれは対応しても増えるばかりですね。減らないということがあると思います。やはり手をもう焼いてしまっているという感じがあります。私は、これ何とかしてやっぱりこの闇金融、そして振り込め詐欺というのをなくしていかなければならないというふうに思っています。
 その一方で、西村参考人が挙げられた窃盗なんですね。私も、新たに窃盗が加わるというのはやはりちょっと違和感を感じているんですね、ちょっとこれが本当にいわゆる重大な犯罪であるのかどうかということ。もちろん、窃盗にもいろいろなことがあるので、これは、中身をしっかりと具体的に吟味したらこれは重大な犯罪だよということもあるかもしれませんが、先生が挙げられたその高校生の万引き、情緒的なこれは反対であって的外れ、現実的でないというふうにおっしゃいました。私も、そうなんですよ、そう思うんです。だから、万引きというのをなぜ今回入れたのか、この入れた理由がやはり何かあるのかなということを私は非常に感じてならないんですね。
 例えば、万引きということでしたら、本屋さん、書店の例を挙げられましたけれども、確かに、本屋さんにとっては大きなダメージを受けますね。決してささいな犯罪ではないと思います。この万引きによって本屋さんが潰れてしまうということも今起きているわけですから、それはささいな犯罪だというふうには思いませんけれども、例えば、やっぱり一つの例として、そういう万引きといったような窃盗を捜査するためにあえて通信傍受、盗聴をするというその捜査手段をする必要があるのかどうかという辺りをちょっとお伺いしたいんです。
 それはなぜかというと、また話が出てきますけれども、万引きの一番取締りで効果があるのはやはり防犯カメラじゃないかと思うんですね。例えば、本屋さんに防犯カメラがあればその現場を押さえられる。特に窃盗、万引きなどというものは、あるいは振り込め詐欺もそうですけれども、やはり現行犯でどうやって捕まえるかということがとても大事だと思う。そうすると、通信傍受で長々と、多分通信傍受でそういうものをやるとしたら時間もお金も私は掛かるんじゃないかと思うんですが。例えば、防犯カメラをもう少し有効的な活用をして、窃盗などは通信傍受を入れない、私は、通信傍受というのはやっぱりプライバシーの問題からいってできる限り捜査に必要な最小必要限にした方がいいというふうに思うんですよね。
 例えば、そういうことから見れば、本屋さんの万引きというのも防犯カメラの効果というのもあると思うんですが、その辺りのお考えを伺いたいと思います。
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西
西村幸三#29
○参考人(西村幸三君) 防犯カメラなどを書店が防犯対策としてどんどん導入していっておられることは事実です。これは町の商店でもそうだと思います。万引きの防犯に関しては、やはり警備員を増やしたりだとか防犯カメラを置く、これが大変重要なことだと思います。
 ただし、じゃ、そのコストは誰が負担しているんでしょうということです。防犯コストに掛かる経費というのもやはり調査されたことがありますけれども、相当なコストが掛かっております。その防犯コストが現実にやはり町の商店の利益を相当圧迫してしまっていることも事実であります。防犯カメラですればいいんじゃないかというふうにおっしゃっている質問ではないとは思うんですけれども、現実に民間の努力が必要になる、警備員を置けばそれだけ人件費が掛かる、大変薄利の中で商売されている町の商店からして、それをどういう思いで聞かれることになるのかなというふうには思います。
 それと、重ねて申し上げますけれども、万引きで通信傍受がされるという事例というのは、私はほとんどないだろうと考えております。
 通信傍受というのは、現実、捜査員が六人とかそれぐらいの人数は掛かって、必死になって傍受内容を聞いて、関係ないところは切って、後で違法収集証拠などと言われないようにという統制の下、実施している。現実に、傍受された事案のほとんどで多数の犯人が逮捕されているという事実がありますけれども、大変人的なコストが掛かります。捜査員をそれだけの期間、一か月といった期間張り付けるわけですから決して軽いものではない。貴重な限られた捜査資源と予算の中でどこまでそういうことをするか。
 中高生でしたら、防犯カメラなり従来の面通しといった、写真で参照したり、あるいは一部の子供を事情聴取すれば簡単に共犯関係をしゃべってしまうというような事案がほとんどだと思います。それに、まず、単独犯については、これは傍受できません、全くできません、これは。要件欠缺ということになりますので。
 ですので、万引きを例えにするのは良くないと私は思っております。あくまで倉庫荒らし、商店荒らし、事務所荒らし、あるいは自動車を組織的に窃盗して海外に売り飛ばすといった事案、こういうものがやはり対象になって想定されていると。ここは世間の皆さんも誤解されないようによく理解を得ておかないといけないところだろうというふうに思っております。
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