西村まさみの発言 (本会議)
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○西村まさみ君 民進党・新緑風会の西村まさみでございます。
私は、ただいま議題となりました児童福祉法等の一部を改正する法律案につきまして、会派を代表して、賛成の立場から討論を行います。
児童虐待の現実は今どのような悲惨な状況にあるのか、全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数は、児童虐待防止法施行前の平成十一年度に比べ、平成二十六年度には七・六倍に増加しています。児童虐待により死亡した子供の件数は減少傾向にあるものの、平成二十六年三月末の統計で六十九名が犠牲となっています。痛ましい児童虐待の現実を一刻も早く止め、傷ついた子供に手を差し伸べることは、全国民、国を挙げて取り組む重要な課題であります。
現行の児童福祉法は昭和二十二年に孤児等の保健状態の改善を目的に制定されたものでありますが、児童福祉の理念として、全ての児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならないと規定されましたが、子供が権利の主体であること、最善の利益が優先されること等が不明確であるとの指摘を受けてまいりました。
今国会において審議された本改正案は、日本の法律の中で初めて子供の権利を法律に書き込んだものであって、全ての児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有すると明確に子供の権利が示されています。その上で、国民、保護者、国、地方団体がそれぞれ子供を支えるとの形で子供の福祉が保障される旨が規定されている。今回の改正の大きな柱であり、賛成する理由の一つであります。
しかし、この理念実現のため、深刻な児童虐待について、早期発見、発生の予防、そして自立支援までを一貫して支援の対策を強化していくとの内容ではありますが、この部分には数々の積み残しの大きな課題が残っています。
まず、虐待を発見し通報する者として、第二十一条の十の五に、要支援児童と思われる者を把握したときは、当該者の情報をその現在地の市町村に提供するように努めなければならない者として歯科医師の明記がありません。厚生労働大臣は委員会答弁等で度々、児童虐待の兆しとか疑いを早期発見して適切な保護あるいは指導につなげるとの観点から、歯科医師の先生方の協力というものは極めて大事と述べてくださっています。にもかかわらず、なぜこの法律に明記されなかったのか。大学教育においても、児童虐待は歯学教育モデルコアカリキュラムに取り入れられ、歯科健診等を通じて虐待を何より早期に発見し通報し得る、言わば即戦力となる専門職であります。法律に明記することと通知とでは周知徹底の効力は格段に異なるということは周知の事実であります。
当時の民主党政権下で制定された平成二十三年障害者虐待防止法においては、早期発見に努める者に歯科医師はしっかりと明記されたのにもかかわらず、今回、衆議院厚生労働委員会での明記する等の修正案は否決され、歯科医師が法律に盛り込まれなかったことは残念でたまりません。
次に、日本では、四自治体を対象にした研究で、年間三百五十人の子供が虐待で命を落としているという推計があります。しかし、厚生労働省が把握している二〇一三年の六十九人とは余りに大きく懸け離れた数字が示されており、国が的確な数値実態を把握できなければ、虐待を撲滅する実効性ある政策を打ち出せません。
チャイルド・デス・レビューは、一九七〇年代に、アメリカ、イギリスなどで死因究明として収集された情報を基に死亡事例を検証して、その要因を明らかにするとともに、予防策を検討するとの手法であります。日本においてもチャイルド・デス・レビューの導入が望まれるところであります。政府においては、このモデル事業にしっかりと取り組み、効果的な予防策の究明に生かしていただきたいと思います。
次に、特定妊婦についてです。
児童福祉法では、特定妊婦を養育支援訪問事業及び要保護児童対策地域評議会の対象としています。虐待による死亡事例は、平成二十五年、四四・六%を占め、とりわけゼロ日児死亡事例では、予期せぬ妊娠の占める割合が七一・三%にまで上っています。死亡事例の背景には、妊婦健康診査未受診である、妊娠期から一人で問題を抱えているなど、支援を要する妊婦を把握しやすい期間から虐待のリスクについて着目をして支援につなげていくことが大切であります。
例えば、予期せぬ妊娠をした場合、そもそも妊娠を知られたくない場合、そして若年者の妊娠等、今回の改正によって救われない妊婦、自らの声を上げられない妊婦に対してどのような手を差し伸べるのか、どこで支援していくのか、おなかの中の赤ちゃんの命を守るために何をしていくのか、具体策が見えてきません。
衆議院に提出されました修正案では、国及び地方公共団体の責務に妊産婦の支援を加えること、これも出しました。しかし、残念ながらこれも否決されました。大変残念であります。
次に、自立援助ホームの利用が、大学等就学中の場合、二十歳から二十二歳の年度末まで延長されました。しかし、児童養護施設を退所した子供の四〇%が一年以内に離職、三年間では実に七〇%が離職する現実があります。一定の年齢に達したら自動的に支援を終えるのではなく、また、就学や就労の区別なく柔軟な対応が必要であると考えます。
児童福祉法の改正を審議した新たな子どもの家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告において、直ちに実施すべき事項として、就学前の子供の代替的養育について、原則家庭養育とするとされています。特に乳幼児については、生後三か月までが特定の大人との愛着形成が重要であるということは様々な科学的研究により検証されています。反応性愛着障害という行動障害は、保護者から長期にわたり虐待、ネグレクトを受けたり、身近な大人が頻繁に替わることで、対人関係を構築する力が未発達なため引き起こされることは知られています。
本改正案では、第三条の二で家庭養育の優先を定めていますが、乳幼児は原則家庭養育とは明記されていません。また、さきの専門委員会報告で指摘されていた子供にとって永続的な家庭の保障、恒久的な家庭の優先、これも盛り込まれておりません。
本改正案では、里親委託及び養子縁組の推進が柱の一つとうたわれています。現状で里親委託率は上昇傾向を示してはいますが、平成二十七年三月末時点で一六・五%、その原因として、里親制度の社会的認知度が低いため登録里親が少ないこと、里親への支援体制が十分に備えられていないこと、様々な課題が残されています。
本改正案では、里親への相談業務に加え、里親に関する自己啓発、里親の選定、里親と児童間との調整、児童の養育に関する計画の作成が都道府県の業務として児童相談所が行うものとしています。
厚生労働省は、平成二十七年度から四十一年度までの十五年間に、本体施設入所児童、グループホーム入所児童、里親等へのそれぞれの委託児童の割合をおおむね三分の一とする都道府県推進計画を作成するよう各自治体に要請し、昨年十一月にその結果を得ています。それによれば、里親、ファミリーホームへの委託児童の割合は、平成二十七年の一五・八%から平成四十一年に二九・五%の増加しか達成できていません。施設入所の割合は、七六・四%から四七・二%までの下落にとどまっています。各都道府県自治体の割合の現況、達成割合にはばらつきがあり、養親や里親に恵まれず、施設での集団生活のまま成長せざるを得ない子供が、これからも生まれ、社会生活になじめぬまま社会に出ていく、この現実が続いていくことになります。
民進党は、特別養子縁組その他の養子縁組を促進し、児童の福祉増進を図るため、特別養子縁組の促進等のための児童の養子縁組に関する法律案を、昨日、衆議院に提出したところであります。
我が国の少子化の進行は急激であり、子育てを取り巻く環境の変化は、若者の将来の夢さえ摘みかねません。
最後に、数々の問題を指摘してまいりましたが、政府が直ちに着手できる虐待防止の政策に取り組むことで、悲惨な児童虐待の状況の流れを止めて、遠くない将来には虐待死がゼロとなり、虐待を知らない世代の誕生というものが実現されますことを、党派を超えて確実に進めていくことをお約束をいたしまして、私の賛成討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)