逢見直人の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(逢見直人君) ただいま御指名をいただきました連合の逢見でございます。
本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げます。
私からは、働く者の立場から見た我が国の経済社会における課題を踏まえ、とりわけ社会保障並びに教育分野において取るべき政策について申し述べます。お手元に資料がございますので、参照願いたいと思います。
まず、働く者を取り巻く環境と経済の好循環に向けた課題でございます。
働く者を取り巻く状況を見ますと、円安が継続し原油価格が低位に安定していることなどから、大手製造業を中心に企業業績は好調さを堅持していますが、ほとんどの国民は景気が良くなったという実感がありません。現在の日本は、企業規模や雇用形態あるいは男女間など国民の間に様々な格差が存在しており、加えて、貧困に苦しむ国民も増え続けています。近年では、主に家計を支える非正規労働者が増えており、その多くは年収二百万円にも満たないワーキングプアです。さらに、生活保護受給者は約二百十七万人にも達し、極めて深刻な状況だと言えます。
連合は、希望する誰もが学ぶことや公正で公平な労働条件の下で働くことができ、人として当たり前の暮らしを営むことができる国にしなければならないと考えています。そのためにも、社会的、経済的に弱い立場に置かれた人たちに光を当てた政治や政策が必要です。
お手元の一枚目のスライドを御覧ください。
私たち労働者の賃金は、一九九七年をピークに低下の一途をたどっており、厚生労働省の国民生活基礎調査でも、生活が苦しいと感じる人の割合が全ての所得層で高まっています。企業の保有する現金、預金の残高が過去最高を更新する一方、労働者の実質賃金は二〇一三年以降の三年間でもマイナス傾向にあり、こうした分配のゆがみがGDPの六割を占める個人消費を冷え込ませる要因となっています。
これらを踏まえると、政策面においては、非正規労働者の正規労働者への転換はもとより、正規労働者との均等待遇の実現を図ることが重要です。そのための第一歩として、最低賃金の引上げ、社会保険の適用拡大は欠かせません。
さらに、スライドの二枚目にあるように、世界的に見て低水準である税や社会保障による所得再分配機能の強化が必要です。所得税における累進性の強化や、人的控除の社会保障給付への振替、給付付き税額控除制度の導入などによって所得格差を是正し、暮らしの底上げで消費の拡大につなげていくことが経済の好循環の実現に欠かせない課題だと考えます。
その一方で、今国会で審議中の軽減税率は、高所得者ほど受ける恩恵が大きいことや対象品目の合理的な選定が難しいこと、約一兆円の税収減を賄う財源の確保が先送りされていることなど、多くの問題を抱えています。この制度は将来にわたって我が国の経済社会に大きなゆがみをもたらす懸念があることを改めて強調しておきたいと思います。
次に、社会保障の基盤整備と人材の確保に向けてであります。
一点目は、財源の問題です。
二〇一二年の子ども・子育て関連三法案の国会審議において、質と量の充実を図るために一兆円超程度の財源確保に最大限努力するという附帯決議が行われています。しかし、二〇一六年度予算案では約〇・六兆円にとどまり、約束はいまだ果たされていません。また、低年金者のための年金生活者支援給付金制度の実施は消費税一〇%への引上げと一緒に先送りされており、低所得者対策として講じる予定であった総合合算制度も、軽減税率の導入によって先送りされようとしています。
全ての国民が安心して暮らし続けられるようにするためには、社会保障の充実と機能強化に向けて恒久的な財源を確保し、一体改革を着実に実行すべきであります。
二点目は、社会保障の担い手の確保の問題です。
一億総活躍社会を実現するための柱である介護と保育現場においては、高齢者の尊厳の確保と自立の支援、子供の健やかな成長を支えるという仕事に見合った労働条件が確保されていないという問題があります。
介護サービスでは、求人に対する応募が少なく、入所定員を減らさざるを得ない事態が起きています。また、厚生労働省は、二〇二五年には介護労働者が現在の一・四倍必要となる上、一億総活躍緊急対策として介護施設を前倒しし上乗せ整備するために、二〇二〇年初頭には更に五万人が必要になると言われています。
三枚目のスライドのとおり、福祉施設介護員、いわゆる介護施設職員やホームヘルパーの年収は三百十万円前後で、全産業平均四百八十九万円に比べて百八十万円程度低くなっており、勤続年数を考慮する必要はありますが、このことが介護労働者の離職率が高い一つの要因であると考えます。
一方、保育所待機児童は減少傾向にありましたが、昨年度に再び増加に転じ、いまだ二万三千人余りの子供が認可保育所に入れずにいます。保育職場は都市部を中心に慢性的な人材不足であり、保育士の有効求人倍率は、昨年一月には二・一八倍に達しています。
四枚目のスライドの下にあるように、保育士の約半数が五年未満で保育の職場を辞めていますが、保育士としての就業を希望しない理由を聞いた調査では、賃金が希望に合わないが最多に挙げられています。
二〇一七年度末までに五十万人の保育の受皿を確保するためには約九万人の保育士が必要になると試算されており、保育現場の処遇改善は喫緊の課題です。しかし、政府の緊急対策は、復職支援と新たな資格取得を目指す人への支援が中心で、現在働いている人への対策は不十分と言わざるを得ません。ましてや、外国人労働者の活用で人手不足を補うという考え方には賛成できません。施設の拡充を含めた介護や保育サービス充実のためにも、人材の処遇改善が最優先であることを改めて強調しておきたいと思います。
三点目は、介護離職ゼロに関してです。
私たち連合は、さきに述べた介護従事者と同様に、家庭で家族を介護しているようなケアラーについても介護離職のない社会を目指すべきと考えます。家族を介護している人の離職を防ぐためには、男女が協力して家事、育児、介護へ参画することや、余暇を享受できる労働環境を実現しなければなりません。そのためには、男性の長時間労働の是正や介護休業日数の延長、柔軟な働き方に係る制度の拡充、介護休業給付の引上げなど、全ての労働者に対して仕事と介護の両立支援を充実させるべきです。加えて、家族を介護している人を支援する体制が必要であり、これらを実現するための法整備や企業の取組を促進する政策が求められます。
次に、子供の貧困解消と教育機会の格差の是正に向けてであります。
五枚目のスライドにあるように、我が国は六人に一人の子供が貧困の状況にあります。最近の研究では、都道府県別のデータが示され、沖縄県で三人に一人以上、大阪府や鹿児島県などでは五人に一人以上が貧困の状況にあるとされています。実際に、学校では、体操着や上履きを買い換えることができず、小さくなって擦り切れたままのものを使い続ける子供や、給食のない夏休みの間に痩せ細ってしまう子供が散見され、これがGDP世界第三位の経済大国で起こっている現実かと疑うばかりです。
加えて、親の経済的背景が子供の初等教育における学力と正の相関があることや、最終学歴と生涯年収にも正の相関があることなど、多くの先行研究で教育の差が将来の子供の所得差をもたらすことを示唆しています。これは、親の所得による教育格差が貧困の連鎖を生むことを示していることにほかなりません。
最後のスライドには、昨年実施した連合の調査結果を記載しています。
世帯年収が二百万円から四百万円の大学生、大学院生のうち六割以上が奨学金を利用しており、卒業後の平均返済額は三百万円を超えることも明らかになっています。こうした状況が結婚や子供を産み育てることを希望する若者の足かせとなり、希望出生率一・八を目指すとする政府方針と逆行する結果をもたらすことは言うまでもありません。
政府は、先延ばししている就学前教育の無償化を一刻も早く実現するとともに、高額化する大学授業料の是正や高等教育における給付型奨学金の導入を今すぐ決断すべきです。貧困の連鎖をなくし、国民全体の格差是正、底上げ、底支えを図るためにも、同じスライドにもあるように、先進国でも極めて低い水準と言われる公的教育支出を拡大し、それらの政策を実行に移していくことを切に訴えます。
最後に、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人の課題についても一言触れたいと思います。
年金積立金は、労使が拠出した保険料を原資とするものであり、保険料拠出者の意見が確実に反映されるガバナンス体制を構築する必要があります。それにもかかわらず、労使や国民に十分な説明を欠いたまま、二〇一四年十月にリスク運用の拡大に大きくかじが切られるとともに、政府による民間企業支配につながる株式のインハウス運用の解禁までもが議論されたことは極めて問題であると考えています。
今、日本は、本格的な人口減少社会を迎え、本日申し上げた格差や貧困、分配の在り方など、経済社会のあらゆる側面での構造的な課題に直面しています。私ども連合としても、こうした課題を一歩ずつ克服していくため、二〇一六春季生活闘争において、全ての働く者の底上げ、底支え、格差是正を目指し、定期昇給相当分を含め四%程度の賃上げを目標に掲げながら、サプライチェーン全体で生み出した付加価値を適正に分配する公正取引の実現に向けて取組を進めていく所存です。
そのことを最後に申し上げ、私からの意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。