田代洋一の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)

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○田代参考人 田代でございます。
 このような発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 私のお話し申し上げたいことは大体このレジュメに書いてございますので、大体これを読み上げる形でお話をさせていただきたいと思います。大体五点にわたっております。
 第一点目に、やはり日本は、通商戦略の原点に立ち戻って、あるいは今お話のありました国会決議に立ち戻って、あるいは国際標準との関係でもって、やはりこのTPPを再検討すべきだということが一点目の主張でございます。
 1でございますけれども、今、世界では、反グローバリズム、この嵐が吹き荒れております。そういう中で、日本はいち早く、二〇〇〇年のWTO交渉日本提案、この二〇〇〇年の提案で、行き過ぎた貿易至上主義へのアンチテーゼとして、多様な農業の共存、そういう通商戦略を打ち出しました。まさに行き過ぎた貿易至上主義というのが今のTPPではないでしょうか。TPP協定は、この日本の二十一世紀の通商戦略、特に、やはり農業交渉戦略の原点に反しているということでございます。
 二点目に、今御指摘がありましたように、二〇一三年四月に衆参両院でもって、農産物重要五品目について、「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」ということを決議しておりますけれども、御案内のように、五品目で三割になる関税の撤廃がなされている。こういう点からも、やはり国会決議に違反しているのではないか。
 三点目でございます。
 アメリカのTPAに基づく、ITC、国際貿易委員会がアメリカの議会に五月十八日に出した報告書、これで、TPPによるアメリカのGDPの引き上げ効果は〇・一五%しかない、こういうことでございます。そして、製造業に至ってはマイナスである。
 ところが、アメリカにとって農業だけはプラスでありまして、しかも、その輸出増の最大の輸出先が日本になっていて、四千億円を超える。大体、輸出増の三二%は日本が引き受けてくれる。こういう形で、日本の行った影響分析とは非常に大きく異なるということであります。
 今御指摘がありましたように、日本の影響分析は、まず国内対策ありきということで計算しているわけでございますけれども、やはり、科学的なこういう試算に当たっては、他の条件を等しくしてTPPのみの影響効果をまず分析する。それを踏まえた国内対策でないとすると、やはり国民の血税を使った国内対策そのものが根拠を失うというふうに考えております。
 四点目でございますけれども、グローバル化時代の農業所得の確保、これは直接所得補償でやるということが、EUを初めとする先進国農政の標準であります。ところが、日本はそうではなくて、農業所得の増大を農家に、農協に迫ってくる。
 そういう中で、直接所得補償といいますと、畦畔管理を支援するような日本型直接支払いと青色申告の対象者だけに行うような収入保険、こういう検討だけでもって、やはり本格的な直接所得補償を導入するという、もしもTPPでも言えるならば、それにかわるものとして、やはりこの直接所得補償、直接所得支払いを標準として取り入れるべきだと思いますけれども、それがなされていないということでございます。
 二点目に、私は、将来にわたる農業問題で最大の問題は、やはり、農産品が七年後に再協議を日本だけが義務づけられたという点でございます。
 1でございますけれども、附属書の二―Dでもって、日本国の関税率表の中で、日本はオーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカの求めに応じて、原産品の約束、関税、関税割り当て、セーフガード、これについて、発効七年経過後に再協議するということになっています。何で日本だけが、こういう屈辱的というか、こういう約束をさせられたのか、この交渉過程をぜひ知りたいところでございます。
 これについては、2でございますけれども、実は、こちらの衆議院ではなくて参議院でございますけれども、二〇一三年の二月の十九日、林元農水大臣、この方が、二〇一一年当時に、九〇から九五%の関税を即時撤廃する、残るものも七年以内に段階的に撤廃する、これが多くの国々の合意であるということを確認していらっしゃいます。
 まさにこの九五%という数字が、日本の関税率撤廃の数字に用いられております。それから、七年後協議ということは、七年以内に段階的に関税撤廃というこの言葉が生きているわけであります。
 そういうふうに考えますと、この七年後協議、日本だけが七年後協議を義務づけられたということは、今回は少し勘弁してやるけれども七年後には絶対に許さないぞというTPPの輪郭をつくったP9の国々のかたい決意である。それを日本がはねのけるだけの力があるのかということを私は非常に心配しております。
 三点目に、食料と国民生活の安全性が脅かされるということで、これはもう既に議論されておりますし、これからもまた議論されることであると思いますけれども、私、最大の問題の一つは、現在のSPSだとかTBTでは大丈夫だということを言われているわけですけれども、問題は、多くの事項が、ほとんどの事項が、食の安全性、食品表示等々について、全てこれが小委員会、作業部会に委ねられているということでもって、一体そこで何がこれから要求されるのか。
 これも、今回は許してあげるけれども、後で小委員会でがっちりとっていくよ、こういう話だと思うんですね。
 そこで私は思い出すんですが、原発事故のときに、現時点では大丈夫というような言い方がされたんですけれども、まさにこの食の安全性についても、現時点では大丈夫かもわからないけれども、これが先送りされているということを考えてみますと、安全だ安全だと言いながら、それは空約束でもって、実は行き先のわからないバスに乗せられてしまうということがあるのではないかと思っています。
 2でございますけれども、医薬品についても、やはり特許の期間が延長されるというような規定が入っている。これはやはり国民の新薬利用を制限することになってくるんじゃないかと思っております。
 四番目には、ISDSの危険性でございます。
 一応、健康、安全、環境等に対する公共政策はISDSの対象にしないということになっておりますけれども、実は附属書の方でもって、それはまれな場合には、だけれども対象とするよということになっております。このまれな場合ということを使って、結局は、国民の健康、安全、環境に関する規定もやはりISDSの対象とさせられる、こういう可能性が非常に強い。
 そもそも、海外に司法権を委ねるISDSは、やはり司法権が最高裁を初めとする裁判所に属するという憲法七十六条の規定に反しております。学説では、条約と憲法はどっちが優先するかということになってくると、やはり憲法が優先するということになっておりますので、ISDSを入れることについては、憲法との関係を重々考える必要があるだろうということでございます。
 2でございますけれども、ISDSと農業の関係でございます。
 農業との関係で、今、農協改革でもって、全農が株式会社化できるということになっております。それから、農林中金や全共連も株式会社を検討するということになっております。
 その場合に、農協出資の株式会社という、農協出資だけの株式会社であれば外部に支配されることはないというふうになっておりますけれども、問題は、農協だけが出資できる株式会社、これを考えてみると、何で農協以外のほかの資本、あるいは特に外資が日本の農協に、日本の全農なり中金なり全共連に出資できないのかという形でもって、これはもうISDSに訴えられることは必定であります。そのことは、在日商工会議所が長年にわたってこの信用共済事業についてイコールフッティングを要求してきていることに照らしても成り立つだろう。
 そうなってくると、結論的には、日本の農家、農協が築いてきた百兆円を超える金融資産が海外に流れてしまう、こういう可能性もあるのではないか。
 三番目でございますけれども、林業について、現在、林産物の自給率が少し高まっておりますけれども、自治体による地域材の優先的な利用、あるいは自治体の公共建築物の国産材利用、こういうものが、やはり、何で国産材に限るのか、地域材に限るのか、こういうことがISDSに訴えられると、これもひとたまりもない。既にこの点について、木材ポイント制度でもって、日本は譲歩を迫られているわけでございます。
 最後に、五番目でございます。
 私自身はTPPに反対でありますけれども、少なくとも、TPPの国会承認を急ぐべきではないというふうに考えております。
 1でございますけれども、TPPに反対するアメリカの大統領候補の本音は、別にTPPに反対ではなくて、再交渉してもっと奪え、もっと多く獲得しろということにあると思います。首相は、我が国のTPP承認がアメリカを初めとする国々の早期発効に弾みを与えるというふうにおっしゃっておりますけれども、アメリカの内政は、御承知のように、そんな状況では全くない。
 そのときに、日本がアベノミクスの柱にTPPを据えて、何としても、アメリカに先んじても、ともかくTPPを発効させたい、そうやって焦れば焦るほど、その足元をアメリカに見られて、もしもアメリカの再交渉に応じなければTPPそのものを批准しないぞ、こういうブラフをかけられてきたら、果たして政権はもつのだろうかという懸念がございます。
 国会承認をした後で再交渉に応じて、しかもそこで妥協するということになってきたら、これはもう国会の承認したことが否定されてしまうわけですから、もはや日本は主権国家としての存在価値を失っていく、こういうふうに思っております。
 結論としまして、TPPの早期国会承認、これはやはりアメリカの批准の促進にも役に立たない、再交渉の阻止にもつながらない。結論的には、百害あって一利ないということでございます。TPPの国会承認を焦ることなく、時間をかけて問題点の解明に意を尽くして、アメリカ等の出方を見て最終的な判断をするのがやはり国益を守る国会の賢明な態度ではないかというふうに私は考えております。
 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119204011X00820161027_004

発言者: 田代洋一

speaker_id: 22665

日付: 2016-10-27

院: 衆議院

会議名: 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会