環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会

2016-10-27 衆議院 全474発言

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会議録情報#0
平成二十八年十月二十七日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 塩谷  立君
   理事 うえの賢一郎君 理事 江藤  拓君
   理事 菅原 一秀君 理事 西村 康稔君
   理事 森山  裕君 理事 今井 雅人君
   理事 篠原  孝君 理事 上田  勇君
      あべ 俊子君    赤澤 亮正君
      池田 道孝君    大西 宏幸君
      鬼木  誠君    加藤 寛治君
      勝沼 栄明君    黄川田仁志君
      北村 誠吾君    坂本 哲志君
      武部  新君    武村 展英君
      津島  淳君    寺田  稔君
      冨岡  勉君    中川 郁子君
      中村 裕之君    長尾  敬君
      ふくだ峰之君    福田 達夫君
      福山  守君    古川  康君
      前川  恵君    宮川 典子君
      山本ともひろ君    渡辺 孝一君
      緒方林太郎君    岸本 周平君
      近藤 洋介君    佐々木隆博君
      玉木雄一郎君    福島 伸享君
      升田世喜男君    宮崎 岳志君
      村岡 敏英君    伊佐 進一君
      稲津  久君    岡本 三成君
      中川 康洋君    濱村  進君
      笠井  亮君    斉藤 和子君
      畠山 和也君    小沢 鋭仁君
      椎木  保君    松浪 健太君
      丸山 穂高君
    …………………………………
   内閣総理大臣       安倍 晋三君
   法務大臣         金田 勝年君
   外務大臣         岸田 文雄君
   厚生労働大臣       塩崎 恭久君
   農林水産大臣       山本 有二君
   経済産業大臣       世耕 弘成君
   国務大臣         松本  純君
   国務大臣         石原 伸晃君
   国土交通副大臣      田中 良生君
   内閣府大臣政務官     武村 展英君
   外務大臣政務官      滝沢  求君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本佐和子君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    小川 秀樹君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口 英彰君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房総括審議官)         水田 正和君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       西郷 正道君
   政府参考人
   (農林水産省消費・安全局長)           今城 健晴君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君
   政府参考人
   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君
   政府参考人
   (国土交通省政策統括官) 舘  逸志君
   参考人
   (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)     鈴木 宣弘君
   参考人
   (横浜国立大学名誉教授)
   (大妻女子大学名誉教授) 田代 洋一君
   参考人
   (NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表)  内田 聖子君
   参考人
   (明治大学法学部兼任講師)
   (NPO法人日本消費者連盟元共同代表)      山浦 康明君
   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十六日
 辞任         補欠選任
  笠井  亮君     田村 貴昭君
同日
 辞任         補欠選任
  田村 貴昭君     笠井  亮君
同月二十七日
 辞任         補欠選任
  坂本 哲志君     冨岡  勉君
  福田 達夫君     津島  淳君
  福山  守君     長尾  敬君
  近藤 洋介君     緒方林太郎君
  稲津  久君     濱村  進君
  笠井  亮君     斉藤 和子君
  小沢 鋭仁君     丸山 穂高君
  松浪 健太君     椎木  保君
同日
 辞任         補欠選任
  津島  淳君     福田 達夫君
  冨岡  勉君     鬼木  誠君
  長尾  敬君     福山  守君
  緒方林太郎君     宮崎 岳志君
  濱村  進君     伊佐 進一君
  斉藤 和子君     笠井  亮君
  椎木  保君     松浪 健太君
  丸山 穂高君     小沢 鋭仁君
同日
 辞任         補欠選任
  鬼木  誠君     坂本 哲志君
  宮崎 岳志君     近藤 洋介君
  伊佐 進一君     稲津  久君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会条約第八号)
 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第四七号)
 派遣委員からの報告聴取
     ――――◇―――――
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塩谷立#1
○塩谷委員長 これより会議を開きます。
 第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。
 両案件審査のため、本日、参考人として、東京大学大学院農学生命科学研究科教授鈴木宣弘君、横浜国立大学名誉教授・大妻女子大学名誉教授田代洋一君、以上二名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、農業につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。
 まず最初に、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず鈴木参考人にお願いいたします。
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鈴木宣弘#2
○鈴木参考人 皆さん、おはようございます。鈴木でございます。よろしくお願い申し上げます。
 配付資料も配付いただいておりますので、それも参照しながらお話をさせていただきます。「TPPに係る懸念事項の再検証」というタイトルの配付資料でございます。
 まず、国民の格差是正、自由貿易見直しの声が巨大なうねりとなって、大統領候補も全てTPP反対という形になっておるアメリカのみならず、参加国は一国としてTPP関連法案をいまだ可決しておりません。国民のさまざまな懸念が噴出し、それを受けとめて政治、行政も慎重な対応をしているからでございます。
 我が国でも、これから示すように、多くの懸念事項が、国会決議との整合性も含め、納得のいく説明が得られているのかどうかが厳しく問われている状況であるというふうに思います。
 まず、基本的な論点として一つ申し上げたいのは、TPPで雇用がふえ賃金が上がるという議論ですが、これは冷静に考えれば、ベトナムの方の賃金は我々の二十分の一から三十分の一でございますから、投資が自由化されて人の移動が自由になれば、日本人やアメリカ人の高い賃金の方をいかに首を切るか、あるいは、それが嫌ならば短期雇用で雑巾のように使うぞという議論になりかねないというのが現実でございまして、まさにアメリカがこのことで大変な大きな反対のうねりが出ているわけでございます。このことについて、なぜもう少し日本の中できちんと議論が行われないのか。
 ただ、日本の内閣府のモデルなどでは、農家の方が失業しても、瞬時に例えば自動車産業の技術者になれる、こういうモデルで計算しておるので、失業というものがそもそも存在しない、完全雇用を前提にしたモデルだということ、まずここが机上の空論になっているということももう一度問われなければいけない。
 それからもう一点、重要な論点として、ISDSがございます。
 人の命や環境よりも企業の利益の方が優先されてはいけない、そういうふうな訴訟は防止しなければいけないという議論が日本でもありました。
 端的に言えば、御案内のとおり、例えばアメリカの企業が水銀を垂れ流すような設備で日本で操業しようとしたら、当然日本は規制をします。ところが、それに対して、アメリカの企業は、それによって生じるアメリカの企業の損害を賠償しろと国際法廷に訴えて、損害賠償させられ、そのルールも取り壊されてしまう。こういうことが、起こるはずがないようなことが起こるのがISDSだ。だから、国会決議でも、濫訴防止策がとられていないような、国の主権を損なうようなISDSには反対すると決議しているわけです。
 濫訴が防止できたというふうに政府は説明しておりますが、問題のTPP協定九・十六条は濫訴防止にはなっていないというのが、世界、日本も含めての法律家の解釈です。この点について、きちんとした説明があるでしょうか。
 こういうことをそのままにしておりますと、韓米FTAで起きたように、遺伝子組み換え食品を使わないとしたソウル市の学校給食条例が不当なアメリカ差別に当たるとして、損害賠償で提訴するとおどされて、韓国政府は、アメリカに損害賠償させられ、訴訟費用も払うぐらいなら、先にやめた方がいいという判断をせざるを得なくなった。こういうことが日本でも懸念されるということについて、きちんと検証されているでしょうか。
 そのアメリカでも、全米の法学者、環境保護団体などが、ISDSは国家主権の侵害だと。それから、ヨーロッパ、フランス、ドイツ全土でも、ISDSに対する猛烈な拒否運動が起こっている。これが世界の現実で、日本もオーストラリアとの自由貿易協定ではISDSを入れていないんですよ。
 だから、日本政府の解釈には無理があると言わざるを得ず、国会決議違反という疑いは拭い得ない。
 それから、農業に関する問題で、食の安全基準は何ら影響を受けないというふうに政府は説明しておりますが、これは全くの間違いです。
 アメリカは、二〇一一年の十二月のアメリカ議会での公聴会で、当時のマランティス次席通商代表が、TPPでは、日本のような国が科学的根拠に基づかずに国際基準以上の規制措置をとっているのを国際基準に合わさせるのがTPPだとはっきり言ってきたわけです。条文にはそのとおり書いてある。それは、TPP協定七・九条の二項です。これを見れば、そのようにして科学的根拠が示されない限りは、それを緩めさせるということがどんどん起こるということです。
 しかも、実際に既に日本はもう緩めているわけですよね。BSEですよ。
 BSEは、TPPに日本が入れてもらいたいならば、前もって入場料として緩めろと言われて、二十カ月齢を三十カ月齢まで緩めました。そしてさらに、今起こっていることは、アメリカは一応BSEの清浄国ということになっているものですから、アメリカから、科学的根拠が示せないならば月齢制限を撤廃しろと言われているわけですよ。それに対して、既に日本は前もって、もういつでも撤廃できるように、食品安全委員会は準備を終えているわけですよ。
 だから、このことを考えれば、食品の安全基準が影響を受けないということはもう既に満たされていない。国民に対する説明と全く矛盾しておるわけです。
 それは、防カビ剤の問題もそうです。
 防カビ剤、これはポストハーベストの農薬ですね。収穫後に農薬をかけることは日本では禁止。しかし、アメリカからカビが生えないように運んでくるには農薬をかけなきゃいけない。そこで、無理やりこの防カビ剤を食品添加物と二重の分類をして、わざわざ認めてあげた。それに対してアメリカは、食品添加物に分類されるとパッケージに表示をしなきゃいけない、これが不当なアメリカ差別であるから、これを改善しろと言い始めた。
 これは二国間の並行協議でもう既に改善を認めた。日本政府は、その時点、三年前ですか、一切そんなことはやっていないと主張しましたが、今回TPPが成立して、その附属文書を見てみると、そこに、その時点で日本がアメリカの要求に応えて改善を認めたというふうにちゃんと書いてあるわけですよ。
 こういうふうに、TPPに関する日米の二国間の協議というのは三段階ありまして、まず事前の、国民には単なる情報交換だというふうにごまかされましたけれども、この時点で入場料をたくさん払った。
 それから、TPPの十二カ国間の交渉が始まった中で、日本だけ積み残し分を別途並行協議という場でやらせる。そこで決まったのが先ほどの防カビ剤ですよ。
 それから、TPPが決まったこれからは、アメリカがTPPを批准するために、各国の制度がきちんとそれに適合しているかを審査して、合わせさせるということがもう始まっているわけですね。その中で、既に輸入牛肉の月齢制限は撤廃するということを日本は完全に準備しているということですよ。
 だから、食品の安全基準が影響を受けないということは全く説明になっていないということになります。
 それから、国民に十分に説明したというふうに政府は言っておりますが、これも国会決議でもそういうことがきちんとうたわれているわけですけれども、三ページの十行目ぐらいのところを見ていただきますと、私も全国を回りました。全国キャラバンで説明に行かれたと言いますけれども、ほとんどまともな説明ではなくて、まともに回答もしてもらっていない、これが全国の声です。
 それから、都道府県知事、四十七知事に対するアンケート調査では、どちらとも言えないという答えが多いんですけれども、確かなことは、TPPに関する政府の説明は十分と答えた知事はゼロ、国会決議が守られたもゼロ、試算が現実的もゼロ、こういう数字があるということですね。これは重く受けとめざるを得ないということです。
 それから、TPPの経済効果は非常に大きくて農家への影響はないんだというのが今回の試算でございます。この件は、国会決議の一番目、農産物についての聖域を守るという議論とも絡んで、非常に大きな問題です。
 そもそも、政府の全体の試算も、二〇一三年には、GDPは三・二兆やっとこさっとこふえると言っていたわけですよ。これも水増しだったんですけれども、今回は、それより減るはずのものが、何と十四兆ですよ。四倍以上に膨れ上がる。そんなことはあり得ないわけですね。
 その三・二兆についても、これはドーピングですよ。何が行われたかというと、生産性向上効果というものです。要するに、TPPで製品価格が十円下がれば、みんなも頑張るからコストも十円下がると置けば、マイナスは出てこないわけですよ。そこでやっとこさっとこ三・二兆と言っていたのが、何で四倍になるんですか。今度は、価格が十円下がれば、何と、みんなもっともっともっと頑張ってコストは五十円下がるとか勝手に置いて、十四兆になるように数字を合わせればいいわけですよ。こういう分野を専門にしている私が言うんだから間違いないですけれども、まあ、要するにその程度のものだということですね。
 それから、農業についても大変でした。私は所管官庁にも同情したい。何とか政府の中で食料、農業を守るということで抵抗すると言って、最初は被害四兆円と言った。それが、外務省さん、経産省さんから、そんなに多くないだろうと言われて、三兆まで減らした。だけれども、三兆だった。それが今度は一千三百とか二千百億って、二十分の一以下ですよ。これは、所管官庁の中でも大変もめましたよ、こんな恥ずかしい数字を出すのかと。だけれども、やはり幹部は骨抜きにされてしまった。
 今の政権は、反対する声を押し潰していく巧妙な策略が大変上手でございます。人事権を握られたということは大きい。今回の一連の人事も、刃向かう者は全て飛ばすですよ。これによって全て、正論を言う人を押さえつけていく、これによって所管官庁は物が言えなくなってしまったわけですよ。こんなことが続けば、食料も農業も農業関連組織も、所管官庁自体も、これはもう全部葬式を上げるのかという話になるわけですよ。こういうことを続けることが許されるのかどうか。
 そして、具体的に言いますと、まず、農水省の影響試算については、本来ならば、影響がこれだけあるから対策はこれだけやらなきゃいけないという議論をしなければいけないのに、それを逆にして、対策を出したから影響ない、要するに、影響がないように対策するから影響はないと言っているだけなんですよね。
 例えば、わかりやすいのは、酪農について、政府も、加工原料乳は、バター、脱粉向けの牛乳価格はキロ七円下がるというふうに出しているわけですよ。ところが、七円下がったら酪農家は潰れますよ。なのに、酪農家の所得も生産量も変わらないと言うんですよ。そんなことあり得ますか。いや、生クリームに補給金をつけるから大丈夫だと言う。生クリームに補給金をつけただけで七円補填されますか。いやいや、そんなことはない、畜産クラスター事業を頑張れば七円コストが下がるんだと。どこにそんな保証があるのか、ちゃんと根拠を示してくれということですよ。そういうことが山のようにあって、全く説明になっていない。
 それに加えて出てきたのが、SBS米の偽装でございます。これによって完全に、国内価格と輸入米の価格は同じであるから影響はないと言っていた前提が崩れたわけですから、影響試算は残念ながらやり直さざるを得ないというのが、ここで出てくる話だと。
 それから、我々の試算では、もし本当にきちんと合理的な方法で計算して、その損害を差額補填で相殺するとすれば、毎年八千億円の予算が必要だと出てきます。十年で八兆円ですよ。
 今考えているつけ焼き刃の予算は、大半がそもそもこれまでの政策の焼き直しですし、とても、本当に現場がこれから受けるであろう被害をきちんと相殺できるものではない。これで十分だと言っていたら、本当に現場は、どんどんTPPの影響が出てきたらゆでガエルになっちゃいますよ。それで本当に大丈夫なのか。
 日本政府は、収入保険があるから大丈夫だと。収入保険はセーフティーネットではありません。これは、五年間の米価が平均で六十キロ五千円になったら、五千円との差額は補填するから大丈夫だと言っているだけなんですよ。こんなものでつくれる人がおりますか。
 アメリカの政策をまねした、これもうそですよ。アメリカは、一俵四千円で売っても、一俵一万二千円との差額は、九割は全部払うというぐらいの政策をやっていて、つけ足して収入保険があるだけなんですよね。そのつけ足しの部分だけを持ってきて、これでいいんだと言えば、これは完全なミスリーディングになります。
 そういうことも含めて、今の議論されている政策も、全くTPP対策としては不十分である。
 そして、既に現場の農業は苦しいんですよ。この状態で、TPPも何も影響がないといってセーフティーネットも外して、大丈夫だと言っていたら、本当につくれる農家の方はいなくなりますよ。家族経営は全滅状態ですよ。それでもいいんだと言うんですよ。
 政府の諮問会議に属しているような流通企業の大手の方々が農業をやりたいと言っているから、条件のいいところだけそういう人たちがやって、そこで利益が上がれば所得倍増だというわけですよ。では、残り九九%の地域はどうするんですか。そんなところには人が住むな、伝統も文化もコミュニティーも、そんなものは非効率だから要らない、極端に言えば、こういう議論になってきているわけですよ。
 これで国民の食料を守ることができますか。武器である食料の安全保障を追求していながら、食料自給をないがしろにする議論は、全く国家安全保障の本質を理解していない議論だというふうに言わざるを得ません。
 欧米は、きちんと農産物の価値を、多様な機能を評価して、国民がどうやって負担していくかというシステムをつくり上げています。アメリカは、さっき言ったとおり、生産者に必要な最低限の水準との差額は補填するという仕組みをつくっているわけですよ。そうやって、国民の大事な食料を、自分たちの命を守る食料をみんなで守る、これが食料を守るということなわけですよ。
 そういう議論がきちっと日本で行われていますか。そのことを考えても、TPPの国内対策の議論も全く不十分だということで、以上のように考えれば、国会決議との整合性も含めて、まだまだ議論すべき点が山のように残っている。こういう状況で拙速に採決をするということがもしあれば、誰のために政治、行政をやっているのか、日本の民主主義が問われる、日本の歴史上大きな禍根を残すと言わざるを得ないというのが私の意見でございます。
 以上でございます。拍手
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塩谷立#3
○塩谷委員長 ありがとうございました。
 次に、田代参考人にお願いいたします。
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田代洋一#4
○田代参考人 田代でございます。
 このような発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 私のお話し申し上げたいことは大体このレジュメに書いてございますので、大体これを読み上げる形でお話をさせていただきたいと思います。大体五点にわたっております。
 第一点目に、やはり日本は、通商戦略の原点に立ち戻って、あるいは今お話のありました国会決議に立ち戻って、あるいは国際標準との関係でもって、やはりこのTPPを再検討すべきだということが一点目の主張でございます。
 1でございますけれども、今、世界では、反グローバリズム、この嵐が吹き荒れております。そういう中で、日本はいち早く、二〇〇〇年のWTO交渉日本提案、この二〇〇〇年の提案で、行き過ぎた貿易至上主義へのアンチテーゼとして、多様な農業の共存、そういう通商戦略を打ち出しました。まさに行き過ぎた貿易至上主義というのが今のTPPではないでしょうか。TPP協定は、この日本の二十一世紀の通商戦略、特に、やはり農業交渉戦略の原点に反しているということでございます。
 二点目に、今御指摘がありましたように、二〇一三年四月に衆参両院でもって、農産物重要五品目について、「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」ということを決議しておりますけれども、御案内のように、五品目で三割になる関税の撤廃がなされている。こういう点からも、やはり国会決議に違反しているのではないか。
 三点目でございます。
 アメリカのTPAに基づく、ITC、国際貿易委員会がアメリカの議会に五月十八日に出した報告書、これで、TPPによるアメリカのGDPの引き上げ効果は〇・一五%しかない、こういうことでございます。そして、製造業に至ってはマイナスである。
 ところが、アメリカにとって農業だけはプラスでありまして、しかも、その輸出増の最大の輸出先が日本になっていて、四千億円を超える。大体、輸出増の三二%は日本が引き受けてくれる。こういう形で、日本の行った影響分析とは非常に大きく異なるということであります。
 今御指摘がありましたように、日本の影響分析は、まず国内対策ありきということで計算しているわけでございますけれども、やはり、科学的なこういう試算に当たっては、他の条件を等しくしてTPPのみの影響効果をまず分析する。それを踏まえた国内対策でないとすると、やはり国民の血税を使った国内対策そのものが根拠を失うというふうに考えております。
 四点目でございますけれども、グローバル化時代の農業所得の確保、これは直接所得補償でやるということが、EUを初めとする先進国農政の標準であります。ところが、日本はそうではなくて、農業所得の増大を農家に、農協に迫ってくる。
 そういう中で、直接所得補償といいますと、畦畔管理を支援するような日本型直接支払いと青色申告の対象者だけに行うような収入保険、こういう検討だけでもって、やはり本格的な直接所得補償を導入するという、もしもTPPでも言えるならば、それにかわるものとして、やはりこの直接所得補償、直接所得支払いを標準として取り入れるべきだと思いますけれども、それがなされていないということでございます。
 二点目に、私は、将来にわたる農業問題で最大の問題は、やはり、農産品が七年後に再協議を日本だけが義務づけられたという点でございます。
 1でございますけれども、附属書の二―Dでもって、日本国の関税率表の中で、日本はオーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカの求めに応じて、原産品の約束、関税、関税割り当て、セーフガード、これについて、発効七年経過後に再協議するということになっています。何で日本だけが、こういう屈辱的というか、こういう約束をさせられたのか、この交渉過程をぜひ知りたいところでございます。
 これについては、2でございますけれども、実は、こちらの衆議院ではなくて参議院でございますけれども、二〇一三年の二月の十九日、林元農水大臣、この方が、二〇一一年当時に、九〇から九五%の関税を即時撤廃する、残るものも七年以内に段階的に撤廃する、これが多くの国々の合意であるということを確認していらっしゃいます。
 まさにこの九五%という数字が、日本の関税率撤廃の数字に用いられております。それから、七年後協議ということは、七年以内に段階的に関税撤廃というこの言葉が生きているわけであります。
 そういうふうに考えますと、この七年後協議、日本だけが七年後協議を義務づけられたということは、今回は少し勘弁してやるけれども七年後には絶対に許さないぞというTPPの輪郭をつくったP9の国々のかたい決意である。それを日本がはねのけるだけの力があるのかということを私は非常に心配しております。
 三点目に、食料と国民生活の安全性が脅かされるということで、これはもう既に議論されておりますし、これからもまた議論されることであると思いますけれども、私、最大の問題の一つは、現在のSPSだとかTBTでは大丈夫だということを言われているわけですけれども、問題は、多くの事項が、ほとんどの事項が、食の安全性、食品表示等々について、全てこれが小委員会、作業部会に委ねられているということでもって、一体そこで何がこれから要求されるのか。
 これも、今回は許してあげるけれども、後で小委員会でがっちりとっていくよ、こういう話だと思うんですね。
 そこで私は思い出すんですが、原発事故のときに、現時点では大丈夫というような言い方がされたんですけれども、まさにこの食の安全性についても、現時点では大丈夫かもわからないけれども、これが先送りされているということを考えてみますと、安全だ安全だと言いながら、それは空約束でもって、実は行き先のわからないバスに乗せられてしまうということがあるのではないかと思っています。
 2でございますけれども、医薬品についても、やはり特許の期間が延長されるというような規定が入っている。これはやはり国民の新薬利用を制限することになってくるんじゃないかと思っております。
 四番目には、ISDSの危険性でございます。
 一応、健康、安全、環境等に対する公共政策はISDSの対象にしないということになっておりますけれども、実は附属書の方でもって、それはまれな場合には、だけれども対象とするよということになっております。このまれな場合ということを使って、結局は、国民の健康、安全、環境に関する規定もやはりISDSの対象とさせられる、こういう可能性が非常に強い。
 そもそも、海外に司法権を委ねるISDSは、やはり司法権が最高裁を初めとする裁判所に属するという憲法七十六条の規定に反しております。学説では、条約と憲法はどっちが優先するかということになってくると、やはり憲法が優先するということになっておりますので、ISDSを入れることについては、憲法との関係を重々考える必要があるだろうということでございます。
 2でございますけれども、ISDSと農業の関係でございます。
 農業との関係で、今、農協改革でもって、全農が株式会社化できるということになっております。それから、農林中金や全共連も株式会社を検討するということになっております。
 その場合に、農協出資の株式会社という、農協出資だけの株式会社であれば外部に支配されることはないというふうになっておりますけれども、問題は、農協だけが出資できる株式会社、これを考えてみると、何で農協以外のほかの資本、あるいは特に外資が日本の農協に、日本の全農なり中金なり全共連に出資できないのかという形でもって、これはもうISDSに訴えられることは必定であります。そのことは、在日商工会議所が長年にわたってこの信用共済事業についてイコールフッティングを要求してきていることに照らしても成り立つだろう。
 そうなってくると、結論的には、日本の農家、農協が築いてきた百兆円を超える金融資産が海外に流れてしまう、こういう可能性もあるのではないか。
 三番目でございますけれども、林業について、現在、林産物の自給率が少し高まっておりますけれども、自治体による地域材の優先的な利用、あるいは自治体の公共建築物の国産材利用、こういうものが、やはり、何で国産材に限るのか、地域材に限るのか、こういうことがISDSに訴えられると、これもひとたまりもない。既にこの点について、木材ポイント制度でもって、日本は譲歩を迫られているわけでございます。
 最後に、五番目でございます。
 私自身はTPPに反対でありますけれども、少なくとも、TPPの国会承認を急ぐべきではないというふうに考えております。
 1でございますけれども、TPPに反対するアメリカの大統領候補の本音は、別にTPPに反対ではなくて、再交渉してもっと奪え、もっと多く獲得しろということにあると思います。首相は、我が国のTPP承認がアメリカを初めとする国々の早期発効に弾みを与えるというふうにおっしゃっておりますけれども、アメリカの内政は、御承知のように、そんな状況では全くない。
 そのときに、日本がアベノミクスの柱にTPPを据えて、何としても、アメリカに先んじても、ともかくTPPを発効させたい、そうやって焦れば焦るほど、その足元をアメリカに見られて、もしもアメリカの再交渉に応じなければTPPそのものを批准しないぞ、こういうブラフをかけられてきたら、果たして政権はもつのだろうかという懸念がございます。
 国会承認をした後で再交渉に応じて、しかもそこで妥協するということになってきたら、これはもう国会の承認したことが否定されてしまうわけですから、もはや日本は主権国家としての存在価値を失っていく、こういうふうに思っております。
 結論としまして、TPPの早期国会承認、これはやはりアメリカの批准の促進にも役に立たない、再交渉の阻止にもつながらない。結論的には、百害あって一利ないということでございます。TPPの国会承認を焦ることなく、時間をかけて問題点の解明に意を尽くして、アメリカ等の出方を見て最終的な判断をするのがやはり国益を守る国会の賢明な態度ではないかというふうに私は考えております。
 以上でございます。どうもありがとうございました。拍手
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塩谷立#5
○塩谷委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
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塩谷立#6
○塩谷委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。升田世喜男君。
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升田世喜男#7
○升田委員 冒頭、三笠宮様が薨去なされました。心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 改めて、おはようございます。
 鈴木氏、田代氏、御両者の参考人には、大変お忙しい中御出席をいただきまして、また、大変貴重な御意見を拝聴させていただきました。感謝申し上げたいと思います。
 わずかな、決められた限りのある時間でありますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。
 昨年の十月にTPP大筋合意がなされまして、きょうを迎えているわけでありまして、私は青森でありますが、周りの農家は会うたびごとに不安を口にしております。そういう不安の中で今、農家は日々暮らしをしているんだろうなと思います。
 さて、そういう中で、さらにまた農家を不安、さらには今度は不満を持たせることが生じました。それは、SBS米のことでございます。米の価格偽装、販売問題であります。
 鈴木氏に私はお伺いをしたいのでありますけれども、このTPP特別委員会の中で、政府あるいは農水省、特にまた山本農水大臣は、SBS米の取引において国内の米の販売価格に影響は全くない、こういうことの答弁の一辺倒なんですね。この答弁に対して、鈴木氏は専門家でもありますから、どんな見解をお持ちかどうか、お伺いをさせていただきたいと思います。
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鈴木宣弘#8
○鈴木参考人 SBS米の偽装問題につきましては、まず、このように国が差額を徴収する、差益、レントを徴収する仕組みにおいては、必ずその差額部分を分け合うという行動が起きます。それは国と業者間でもありますし、業者同士でもあり得るということで、こういうふうな不正といいますか、これはつきものであるということになると思います。
 そこで徴収した差益部分、それを安値販売に向かわせるということもこれは常識的に当然のことでありまして、そのことについてこれまで政府も認識していたにもかかわらず、そのことを伏せて、国産米と輸入米の価格が同じであるから在庫に回せば影響はないという根拠にしていた。この根拠がそもそも完全に崩れていたということだと思います。
 その点についてきちんと調査をするということで、農水省が調査をされました。農水省もいろいろ板挟みで大変だとは思いますけれども、この調査結果というのがちょっと驚きでございます。安値販売が行われたかどうかについてはきちんと聞かずに曖昧にしたまま、結局、仮に安値で販売が行われたとしても影響はないんだという理屈にすりかえているわけですね。
 まず、輸入米と国産米が同じであるから影響はないと言っていた、つまり輸入米が安ければ影響があると言っていたわけですから、そのことについて、ではどう説明するんですか。完全にもう矛盾しているわけですよね。
 この調査そのものを見ていただいたらわかりますように、これが卒業論文で出されてきたら、残念ながら、優、良、可の不可をつけざるを得ない。卒業できません。という意味で、これは普通でしたら、もう一年かけて卒業できるようにやり直していただくということに大学の場合はなろうかと思います。
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升田世喜男#9
○升田委員 今のお話を聞きますと、農水省の調査は専門家から見たらもう調査に値しない、こんなことを言われたんだなと思います。
 鈴木氏が、SBS米の実態に照らし合わせてその影響額は三千四百億円にも上る、新聞等でこう御指摘をされておるんですが、このことに対してもうちょっと詳しく御説明いただけないでしょうか。
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鈴木宣弘#10
○鈴木参考人 この三千四百億円という計算は、SBSの輸入米が最大キロ六十円安く売られる可能性がある、キロ六十円というのは約三割弱です。そういう数字をもとにしますと、輸入米の一%の下落が〇・五%の国産業務用米の下落につながるという統計的な解析結果があります。それから、業務用米の一%の下落も約〇・五%の家庭用米の下落につながる、業務用米と家庭用米の比率は大体一対二、米価の一%の下落は米生産の約一%の減少につながる、このような統計的に解析した数字をもとにして計算しますと、生産額は、一九%、三千四百億円減少する可能性があるという試算が一応成り立つということでございます。
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升田世喜男#11
○升田委員 鈴木氏の計算でいきますと、三千四百億、こうなります。政府・与党がいわゆる国内対策を行った場合、一千三百億から二千百億と三兆円から急に下がったわけでありますけれども、この三千四百億というのはそこに照らし合わせると倍ぐらいになりますから、極めて膨大な影響があるわけでありますよね。
 としますと、TPPそのものの影響額の試算に対して、もうこれは根底から崩れるんじゃないかと私は思うんですが、鈴木氏の見解を求めたいと思います。
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鈴木宣弘#12
○鈴木参考人 先生のおっしゃるとおりでございます。一千三百億から二千百億と言っていた額が、この三千四百億だけでそれを超えてしまうわけですから、全く話が違ってくるということになります。
 そして、私が先ほど申し上げた、私が以前に計算していた現状の被害額に基づいて、それを相殺するには年間八千億の予算がかかると申し上げましたが、それに比べてさらに二千億の予算をふやさなきゃいけないということですので、TPPの影響を相殺するには毎年一兆円の差額補填予算が必要になるという計算が、現状では大体目安として出てまいります。
 そうなれば、これは今の対策で対応できるレベルをはるかに超えていると言わざるを得ない。ですので、そうでないと言うならば、きちんとそれに対する政府側の試算を出して、それによって議論すべきじゃないでしょうか。そういうふうに思います。
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升田世喜男#13
○升田委員 ただいまのお話を聞くと、毎年一兆円の補填が必要だと。これが事実とすれば、農家はますます不安になっていくわけでありますね。
 こういうさなかにおいて、政府・与党は、もう強行採決でやっちゃうんだ、こういう御意見が大変出ております。これは大変不謹慎だと思います。その中でも、この農水行政の最高責任者である山本農水大臣が、国会内ではありませんけれども、政治的な場面において強行採決に関連した言及をされたことは、私は、農家の方々の思いを鑑みれば、断じてあってはならない、こう思っておりまして、ただいまのお話のやりとりの中でも、やはりこの審議というのは時間をかけて慎重に、丁寧にやるべきだなと今改めて思った次第であります。
 続きまして、きのう宮崎の方にお邪魔させていただきまして、地方公聴会に私も参加させていただきました。そのときに、御出席をされた藤原氏ですか、輸出補助金のことに触れておりまして、しかし、その輸出補助金というのはかつてあったのであって、今はそれはないんだというような、そういう意見もあって、私も鈴木氏の本は何冊か読ませていただいて、鈴木参考人はその著書の中では明確に輸出補助金の存在を認めておりまして、今現在、きのうの地方公聴会を聞いて、あるないということでちょっと見解が分かれておりますので、鈴木氏から、アメリカには輸出補助金的なものがあるのか、あるいは、そのことを目的とする仕組み等が存在するのかどうか、専門家から見てこれはいかがでしょうか。
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鈴木宣弘#14
○鈴木参考人 WTO上、輸出補助金、明確な輸出補助金は廃止されるということになったのは事実でございます。
 ただ、アメリカには実質的な輸出補助金がたくさんありまして、その最たるものが、先ほども言いました、一俵六十キロ四千円でお米を売っても、生産者にとって最低限必要な、例えば一万二千円との差額の九割は全額政府が補填するという不足払いがございます。この不足払いというのは輸出補助金ではないとアメリカは主張して、ずっと続けているわけですよね。
 なぜかというと、これは国内向けも輸出向けも一緒に払うから、輸出を特定した支払いではないから、輸出向けの部分は輸出補助金なのに、それも含めて輸出補助金ではないと言い張っているわけですね。そういう形で、実質的に補助金の仕組みは維持されている。
 ただ、これは、一万二千円と四千円との差額を補填すると言いましたが、仮に国際価格が一万四千円になっていれば、この差額は発生しないということでございます。最近は、国際価格が高かったので、実質的に補助金が支払われることがない年が出てきているというのが現実です。
 ただ、重要なことは、いざというときには必ず生産コストに見合う水準との差額は補填するから安心してつくってくれという仕組みが準備されている、このことが大変重要なポイントであろうというふうに思います。
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升田世喜男#15
○升田委員 最近、地元を回って妙なことに気づきまして、それは、農業をされていない方が農家に対して、あなたたちは相当保護されて、いわゆる過保護である、税金をたんまり使っている、我々はそんな恩恵がない、もうちょっとしっかりしなさい、改革やTPPにうろたえるな、こういう声が、農家以外からそういう指摘があるんですね。
 私も国会議員をさせていただいて、いささかこの分野を勉強させていただきますと、ヨーロッパなんかはかなりな所得補償的な保護政策があるのがわかりまして、そしてまた、ただいま鈴木氏も述べた、輸出補助金というものはないにしても、いざとなったらその目的のための仕組みはまだ存在している。こうなりますと、私は、決して思うほど日本の農業は過保護ではないのではないかな、こんなふうに思うんですね。
 世論の、農業は過保護過ぎるというこの声に対して、鈴木氏の見解をお知らせいただければと思います。
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鈴木宣弘#16
○鈴木参考人 この点につきましては、具体的な資料がきょうの私の配付資料の十一ページにございますので、これで少し確認させていただきたいと思います。
 まず、表の二と書いてあるところでございますが、日本の販売農家の農業所得に占める補助金の割合は、二〇〇六年段階で一五・六%、非常に少なかった。確かに最近は、米価の下落等で所得が減ってきているものですから、三八%ぐらいまで増加しております。
 しかしながら、表の一で見ていただきますと、アメリカがやはり三五%程度と日本と同程度ですが、ヨーロッパ各国、スイスはほぼ一〇〇%、フランス、ドイツ、イギリスも九割前後の所得が補助金で賄われている。こんなのが産業かと言われるかもしれませんが、命を守り、環境を守り、国土、国境を守っている産業を国民が支えるのは、欧米では当たり前なんですよね。むしろ、それが当たり前でないのが日本だと考えた方がいい。
 表の三のフランスを見ていただくと、品目別にありますが、ここでは、日本ではほとんど所得に補助金が出ていないと思われるような野菜とか果物でも、三割、五割もの所得に対する補助金率となっております。これが世界の実態だということ。
 そして、アメリカは、ヨーロッパに比べれば補助金の割合は少ないようにも見えますけれども、表の四、主要国の農業生産額と予算額の割合、アメリカの場合は、農業生産額に対する農業予算の割合が七五%に達しております。これも、ほかの国と比べて日本が一番低いわけです。
 こういうことを考えますと、日本の農業が過保護であるという議論は、世界的に、相対的に見れば全く間違っている。このような前提をもとにして、農業が過保護であるからこれを競争にさらせば輸出産業になって強くなるんだという議論をしてしまえば、最後のとりでまで失って、本当に潰れてしまいますよということになるんじゃないか。
 こういうふうな、世論がこういうことについて全く逆の方向に誘導されているということが大変な問題だと思います。
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升田世喜男#17
○升田委員 ただいまのは大変貴重な見解ではなかろうかなと私は思うんです。自分の中でも、この数字が信じられないぐらい、やはり食というのは国が責任を持って守っていくんだなと。あの競争一辺倒のアメリカでさえも七五パーの補填があるということでございました。
 これに対して、田代氏にも、同じことで御見解をお知らせいただければと思います。
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田代洋一#18
○田代参考人 余り発言の機会がございませんので一言申し上げたいんですけれども、何で地方の公聴会を、今御指摘の米の問題でこれだけ苦しんでいる東北で開かないで北海道と九州だけでやるのか、そのことに対して、私としては非常に不満がございます。それが一点。
 今まさにおっしゃるように、何で日本の農業は過保護かというと、やはりTPPの試算を、国内対策をまずやったからTPPの影響は少ないんだ、こういう形でやれば、国民は、TPPの国内対策を農業だけが受けている、やはり過保護だ、こういう発想になってくると思うんですね。やはり、まず国内対策は抜きにして、TPPの純粋な影響がどれくらいあるのか、それが何兆円に達するのか、そのことを明らかにして、その上で、では、やはり国内対策が必要だ、こういう論理に持ってくれば国民も納得してくれるんじゃないかと思っております。
 以上です。
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升田世喜男#19
○升田委員 私、農業というのは、特に米農家、米というのは日本の文化そのものだと思います。
 先般、神社の例大祭に参加させていただいたときに、宮司さんがおはらいするときにも米を使うわけですよね、お清めするときはお酒で、その原本も米なんですね。ですから、米を守るというのは日本の文化を守るということで、ただ単に競争競争で輸出をすればいいという論調が、特に安倍総理が声を大にしてそういうことを述べているわけでありまして、私は、そういうときであっても、もう一回足元ということで、内需の拡大こそ今行って、そして家族農家も守る視点も持つべきだ。
 日本は本来、小さなことに丁寧に向き合って、その上で、大きな安心と大きなきずなで安定、発展してきた。これこそ文化だと思うんですね。輸出に特化せず内需に目を向けるべきだ、この点につきまして、鈴木氏の見解をお伺いしたいと思います。
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鈴木宣弘#20
○鈴木参考人 先生御指摘のとおりだと思います。
 実は、日本は、製造業も含めて輸出国だと言いますけれども、GDPに占める輸出の依存度は一四%しかございません。内需国なんですよね。
 ですから、特に食料につきましては、農業につきましては、これは国民の命を守るかなめの産業として、まず内需をしっかり満たして、国民に安全、安心な食料を提供し、地域のコミュニティーを守っていく、このことが一番重要な役割だ、先生のおっしゃるとおりだというふうに理解しております。
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升田世喜男#21
○升田委員 もう時間が来てしまいまして、田代氏には余り質問できずに申しわけないなと思っています。
 きょうは、私、改めて、このやりとりをさせていただいて、やはり慎重審議が大事だな、このように思います。強行採決などということは、農家に不安あるいは不満、これをさらに倍増させて、日本の民主主義を根底から崩していく可能性が大でありますので、丁寧な審議を求めて、私、終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
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塩谷立#22
○塩谷委員長 次に、斉藤和子君。
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斉藤和子#23
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
 鈴木先生、田代先生、本日は本当にありがとうございます。
 早速質問に入らせていただきます。
 今、TPPの審議の中でも、農業は、攻めの農業、強い農業などなど、TPPを利用して輸出で攻めるんだということがよく言われています。それに対して、鈴木参考人、田代参考人、それぞれに御見解をいただければと思います。
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鈴木宣弘#24
○鈴木参考人 輸出の問題につきましては、先ほどの内需の問題とも絡みますけれども、政府は盛んに、人口も減少する中で、これからは輸出で経営を成り立たせていくことが重要であるということを発信されまして、特に輸出で成功している農家の方がよくテレビ等でも出てきておられます。
 輸出を振興する、これについて努力をすることはもちろん大変重要なことだと思いますが、その輸出で成功しているという農家の方の経営を見てみても、輸出による所得というのはわずか数%です。輸出で成り立っている経営というのは、日本に農業経営で存在しません。
 このことをよく考えないと、これからは輸出で全てバラ色なんだということを喧伝するというのは、これは非常に幻想で危険なことであるというふうに私は思っております。
 輸出が伸びる前にTPPで安いものが入ってきて、それで経営が苦しくなったら、とても経営は成り立たない、こちらのことをまずきちんと議論すべきである、そういうふうに私は考えております。
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田代洋一#25
○田代参考人 輸出でございますけれども、現状でもう御案内かと思いますけれども、日本の輸出のうち、実際にTPP諸国に出ているものは二十数%、二〇%程度でもって、はっきり言って、輸出することは、輸出自体について頑張ることは大切なことかと思いますけれども、余りTPPとは関係がないんじゃないかということでございます。
 それから、加工品が輸出の大体五割を占めているということもございます。しかも、その加工品の原料の三割が輸入されているというんですから、やはり農産物の輸出についても加工貿易だな、こういうことであります。
 しかし、最大の問題は、自給率三九%の日本が輸出で農業を伸ばすんだと言っても、これはもう世界のお笑い物だというふうに考えざるを得ないと思うんですね。
 先ほども御質問がありましたけれども、内需の拡大が必要だと言っていますけれども、今の消費を見てみますと、実は、若い人ほど、若いお宅ほど食べていないんですよ。それから、若いお宅ほど安いものを食べているんですよ。きょうお集まりの議員の先生方は、和牛牛肉のキロ千五百円ぐらいのは食べるかもわからないけれども、若い人たちはそんなにお金がなくて、キロ三百九十五円ぐらいのものを食べている。
 こういうことを考えると、やはり若い人の内需から高めていって、輸出も大切だけれども、国内消費は、まだ三九%ですから、まだまだ伸ばす可能性はあるというふうに考えております。
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斉藤和子#26
○斉藤(和)委員 田代先生の方から牛肉の話がありましたけれども、やはり牛肉・オレンジの自由化によって、牛肉は国産のものは高くて手が出せないと。こうした状況の中で、TPPによって豚肉なども関税がかなり下げられる、安くなる、もうなくなる、そういった状況の中で、豚肉も国内産は食べられなくなるのではないか、そういう懸念があるわけですけれども、どのようにお感じでしょうか、田代先生。
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田代洋一#27
○田代参考人 国産の豚肉が食べられなくなるかどうかということについては、むしろ鈴木先生の方がお詳しいと思いますけれども、ただ、問題は、牛肉はともかく、豚肉については、はっきり言って、味の面でもって一般の我々消費者が国内産、外国産の区別をなかなかつけることができない、こういう難点がございます。そういう点では、こうやって関税が引き下げられていくということになってくると、輸入の構造が変わってきて、大量に豚肉が入ってくるということがあるなという感じがいたします。
 この間、テレビでどこか大阪のレストランの方を見ていたら、ランチには輸入豚を使う、ディナーには国産を使う、こういう使い分けがどんどん進んでくるということでありますから、当然、やはり大きな影響を受けるというふうに考えております。
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斉藤和子#28
○斉藤(和)委員 鈴木先生の方がというお話だったので、それに触れていただきながら、配付資料の九ページに、農業政策は安全保障政策というお話があります。先ほど、食料自給率三九%もありましたけれども、食料、農業の問題と食料安全保障の問題との絡みで、先生の御見解、そして田代先生にもお話をいただければと思っています。
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鈴木宣弘#29
○鈴木参考人 まず、豚肉の件に関しましては、政府は、豚肉については、いわゆる差額関税制度を守ったので基本的にはほとんど影響がないと言っております。これは間違いでございます。
 差額関税制度によって、今は、安い豚肉と高い豚肉をまぜて五百円幾らにして、関税が二十二・五円という一番低くなるようにして輸入をしている。それで、今度、一律五十円の関税になる部分が多くても、関税五十円よりも二十二・五円の方が低いから、今の、コンビネーションというまぜて輸入する仕組みをやめないんだというふうに説明している。これは完全な形式論です。たくさんの輸入業者さんは、五十円でいいならば安い部位を大量に輸入しますよと言っておるわけですよ。だから、それだけの影響がある。しかも、アメリカで一番TPPで喜んでいるのは豚肉業界なわけですよね。ということは、大変なことだということがわかるわけですよね。
 そういう意味で、既に、牛肉もそうです、豚肉もそうです、自給率は五割を切っているわけですよ。それが、牛丼、豚丼が安くなるからということでどんどん国民がそちらの方に走っていったら、自給率は本当に一割とかに近づくかもしれません。
 そのときに大変なのは、食品の安全の問題でも出てきますように、成長ホルモン、ラクトパミン等のたくさんのリスクが満載の輸入牛肉、豚肉を食べて、発がん性があり、がんがふえてきた、大変だ、国産の安全、安心なものを食べたいと思ったときにはもうつくってくれる人がいない、このときになって気づいても遅いんだ。食に安さだけを追求することは命を削ることなんだということに今気づいて、きちんと対策をしなければ、食料の安全保障は守れない。
 食料の安全保障は、まず量を確保することが大前提であって、量がきちんと安定的に確保できなければ、安全なもの、質の安全保障も守れない。つまり、安全なものを選ぼうと思ってももう選べなくなるわけですから、そういう意味で、国民を守る食料というのは、質、量の面できちんと安定的に確保されなければいけない。
 もう一つは、いざというときに食べる食料がなくなるということは日本ではないんじゃないかなんということを言う議論は、私は間違っていると。
 アメリカなんかは、食料は武器であると言って政策をやってきた。
 あのブッシュ大統領も、戦争を続けて困ったものだったけれども、食料はナショナルセキュリティーだ、皆さんのおかげでそれが常に保たれているアメリカは何とありがたいことかと農家の皆さんにお礼を言って、それに引きかえ、どこの国のことかわかると思うけれども、食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ、そんなふうにしたのも我々だけれどもな、もっともっと徹底しようと言っているわけですから、そのことを私たちは深刻に受けとめなきゃいけない、そういうふうに思います。
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