山浦康明の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)
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○山浦参考人 ただいま御紹介いただきました山浦康明と申します。
今、明治大学の法学部の講師をしておりますけれども、長年、日本消費者連盟という消費者団体の役員をしておりまして、消費者問題に長らくかかわっております。その中でも、TPPといった貿易の問題、そして食の安全の確保、こういった問題につきましていろいろと活動をしてまいりました。
消費者庁、消費者委員会が二〇〇九年にできましたけれども、そのときにも、消費者委員会の食品表示部会の委員も二期ほど務めさせていただきまして、食品表示のあり方につきましていろいろと提言をさせていただきました。
きょう私がお話しする内容は、資料として皆様方にお配りしております。レジュメが、三枚紙が一つ。そして、内田さんなどのグループと一緒につくりました、TPPの原文を読んで内容を分析しようということで、その分析チームの報告書、第六版まで出ておりますけれども、そちらの食の安全についての私が書いたもの。そして、一般向けにこういった「TPP 24のギモン」という冊子をつくりまして、好評で、今、皆様方お読みになられているわけですけれども、こちらの食の安全に関する部分を印刷していただきました。それに基づきましてきょうはお話をさせていただきたいと思います。
本日、私が意見陳述をするに当たって気になったことは、去る十月二十五日、与党の推薦による参考人質疑が行われまして、その中で、奈良県立医科大学の今村知明教授の発言がありました。
この内容を見ますと、政府もQアンドAをつくっておりまして、TPPに参加したからといって日本の安全基準とか表示のルールというものは変える必要はないんだというふうに言っておりますけれども、その内容をそのまま今村先生はお話しになっておりまして、例えば、WTO上のSPS協定を守っていれば各国の基準の差は認めている、日本の食品安全基準はSPS協定を守っているんだから心配ない、こういった発言。あるいは遺伝子組み換え食品の表示、これにつきましては、わかりやすくすべきだけれども、最終的に検出できない場合もあるから、余り無理な義務表示はだめだ、こんなようなお話をされていたと思うんです。
これにつきまして、私はきょう、具体的な遺伝子組み換え、そしてBSE、そして食品添加物につきまして、TPPではどうなってしまうのかということをお話しさせていただきたいと思います。
まず、私のレジュメの括弧一番、「遺伝子組み換え食品・作物」のところですけれども、皆様方御存じのように、日本の安全性評価は私は不十分ではないかと思っているんですね。輸入が許可されているものは、トウモロコシ、大豆、菜種、綿実、ジャガイモ、パパイヤ、てん菜、アルファルファですけれども、実際に消費者が口にする可能性が高いものはトウモロコシとか大豆とか菜種、綿実の油ですね、こういったものが出回っているわけですけれども、この安全性について、TPPに参加すると非常に安全性の評価が後退してしまうんじゃないか、こういう危機を持っております。
したがいまして、安全性を評価する対象が、今後、遺伝子組み換えのシャケとか小麦、あるいはお米なども今開発されているわけですけれども、こういったものがもしかすると日本で承認されてしまうんじゃないか、こういうおそれがこの遺伝子組み換えをめぐる安全性評価の考え方にあらわれてくるんじゃないかというふうに思います。
そして、この遺伝子組み換え技術だけではなくて、今は遺伝子組み換え技術を使った微生物、そして添加物、それからゲノム編集などと言われる新たな遺伝子操作が非常に脚光を浴びておりまして、遺伝子組み換えだけではなくて、遺伝子操作の技術を我々がどう考えるかということについて懸念があるわけです。
そして、日本の遺伝子組み換えの表示、これについては今後変えることはないというふうに政府はよく説明をしますけれども、皆様方御存じのように、これを義務表示にしているのは遺伝子組み換えが使われているということで遺伝子組み換え表示、そして、不分別というものがあります。つまり、本当は遺伝子組み換えを使っているんだけれども、流通の過程で、製造の過程でわからなくなってしまったという場合には書かなくてもいい、不分別と表示すればいいということで、実際には遺伝子組み換えの原料を使った食品が大量に出回っておりまして、日本は世界で一番遺伝子組み換え食品を食べている国民である。いわば世界のモルモットなんですね。
こういう実情があるわけですけれども、消費者は厳しい遺伝子組み換えの表示を求めております。しかし、これができなくなるんじゃないかということがTPPの論理から出てくるということをお話ししたいと思います。
また、第二章には遺伝子組み換えの問題を、市場アクセスの章なんですけれども、突然、遺伝子組み換え対策、そういった条文が盛り込まれておりまして、微量混入の問題ですけれども、このときには、違法なものが入ってきた場合には、日本は輸出国に対して送り返すことが権利として当然できるわけです。また、そうしてきました。しかし、この条文によると、まずは話し合いをしようよ、協議をしようよ、そういうことになっていますね。ですから、すぐに突き返すではなくて、輸出国と日本がそこで協議をして何らかの対策を検討する、そういうふうなやり方が導入されています。
これは、先ほど内田さんもおっしゃったように、多分、モンサント社を初めとする遺伝子組み換え企業がこういうルールを新たに盛り込みたいというロビーイングをした結果、こういった食の安全と一見関係ないようなところに入ってしまったという問題だと思います。
そのほか、例えば、アメリカがこれを合法化したいというふうなことを考えた場合には、日本政府に対して早く合法化してくれという要請をすることができる、こういうふうな文言もあるわけですね。
ですから、私たちは、遺伝子組み換えのコーン、大豆油、マーガリン、マヨネーズ、こういったものを食べておりますし、また高度に加工された甘味料、しょうゆなども日々食べているわけですけれども、こういったことが今後非常に懸念されるということです。
その背景には、TPPの安全性評価というのはリスク分析を前提としておりまして、狭い科学主義を重視しております。WTOにもSPS協定が当然あるわけでして、この書きぶりとTPP協定の書きぶりを比べますと、リスク分析万能論を前面に出しているという違いがあるんですね。
科学主義といいまして、黒か、白か、グレーか、そういういろいろな問題があると思います。遺伝子組み換え食品をめぐっても慎重な市民派の科学者は、動物実験を含めて、こんなに危険がある、あるいはアメリカのいろいろなアレルギーを初めとする疾患がふえたのは遺伝子組み換えが原因ではないか、こういったことを実証しているわけですけれども、世界には遺伝子組み換えを推進したい科学者がたくさんおりますので、そういった人たちの論文などもあります。したがいまして、まだ科学的に結論が出されていない領域だというふうに言えます。
そうした場合に、規制をしたい国は、はっきり黒だというふうに証明しないと規制できない、こういう論理がこのTPPのSPSの章にちりばめられております。
具体的には、第七章でも、SPS委員会というものをつくりまして、その中でリスク分析に基づく評価をするわけですね。ですから、そこで厳しい規制というものが押しやられてしまうという可能性がありますし、また、国内で安全性評価をする際にも、そういった論理がまかり通るということになります。
それから、表示の問題には、TPPの第八章がかかわるんですけれども、これは、TBTの、貿易の技術的障壁に関する協定、WTOにもありますけれども、これが第八章に反映されておりますが、WTOのTBT協定に比べて、TPPは、やはりステークホルダーと称する産業界の意見が非常に反映されやすいという内容になっていると思います。
そこで、例えば、日本の審議会でそういった表示を考えるというときに、グローバル企業の代理人と称する人々が、そこでいろいろな発言ができる、消費者の厳しい要求を阻止するというふうな場面が非常に今後懸念されます。
それから、今はそういった懸念があるというふうに申しましたけれども、実は日本の食品安全委員会、この内閣府の科学的な評価をするという機関が、残念ながら、遺伝子組み換えを推進する立場に今変わったんじゃないかというふうに私は感じています。
具体的には、例えばことしの三月に食品安全委員会主催のシンポジウムがありましたけれども、そこで、バイオテクノロジーの部会の委員の方が、世界の企業を救うためには遺伝子組み換えは非常に有効であるといった、そんな発言もされておりますし、実際、安全性評価は、どんどんと遺伝子組み換え容認、あるいは先ほど申しました遺伝子組み換え微生物、添加物、こういったものを認めていく、そういう方向がありますので、TPPがこれから発効しますと、まさにそういった流れを加速していくんではないかというふうに思います。
次に、BSEの問題について触れたいと思います。
これは、皆さん御存じのように、全頭検査を、この九月に、もう廃止するというふうに政府は方針を決定しました。実は、これは去年から、あるいはその前から、アメリカのUSTRが日本に対して月齢の規制をするなという要求を毎年言ってきたものでして、これを去年十二月の段階で日本の厚労省が食品安全委員会に諮問しまして、そして夏に、これは四十八カ月齢以上の検査をしていましたけれども、それも要らないということで、健康牛についても要らない、そういう答申を出し、そして政府としても、来年からでしょうか、廃止する、そういう方針になりました。
そのほか、アメリカ側の要求が二国間の協議の中でいろいろと出されておりまして、ゼラチンとかコラーゲン、骨の成分などから抽出されるそういったものですけれども、これは異常プリオンが非常にたまりやすい場所に関係していますので、私は食べるべきではないと思いますが、これもアメリカの要求をのむ形でもって日本が譲歩していくということになっていったわけです。これにつきましても、きょうは時間が余りありませんので細かい説明はいたしませんけれども、食品安全委員会の安全性評価の仕方が非常に不十分ではないかというふうに思っております。
それから、最近国会で先生方も議論されていた、牛のホルモン剤の使用の問題ですね。これにつきましても私ども非常に懸念をしておりまして、残留基準値の後退が今後予想されるので、日本国内ではこの使用は禁止されているわけですけれども、輸入されたものについての安全基準が損なわれるとどんどんとまた入ってきてしまうということがTPPに絡んで出てくるというふうに思います。
それから、食品添加物について少し述べたいと思います。
食品添加物、二ページ目のところですけれども、これはなかなかわかりにくい制度になっておりまして、そこにちょっと触れておりますが、天然香料六百十二、一般飲食物添加物、イカ墨などですね、これが百四、それから指定添加物、厚労省が指定するのが四百四十九、夏の段階でこういう数字、それから既存添加物、長年の食経験があって政府としても認めてきたものが三百六十五ありますけれども、この指定添加物について、規格基準を厚労省が定めているんですけれども、この基準が今後緩められるという可能性がTPPに関して出てくるというふうに思います。
既に、アメリカから、日本が早く食品添加物をもっと承認してくれという要求が出され、それに応える形でもって、今非常に多くの食品添加物を承認しておりますけれども、具体的に、例えば四品目がまだだったから早く承認してくれというふうにアメリカから言われまして、固結防止剤のアルミノ珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、着色剤のカルミン、膨張剤の酸性燐酸アルミニウム、こういったものが承認されましたけれども、このアルミニウムが、ヨーロッパではアルツハイマーの一つの原因ではないかということで規制をしておりますが、こういったものも、食品安全委員会は、アメリカから言われたんでしょうか、認めてしまったということがあると思います。
それから、TPPの八章のTBTのところには、附属書がわざわざつくられておりまして、食品添加物については、これは企業秘密だから消費者が求めても公表しなくてもいい、こういう文言があるんですね。なかなか政府はそういった説明をしませんけれども、消費者の知る権利を阻害するという条項まであるわけです。
こういうふうに、今三つの例を申し上げましたけれども、国会でこういった安全性の問題あるいは国民の選択権の問題、こういうことにつきまして、詳しい、しっかりとした審議をしないまま、この十月にも、もし強行採決をしてしまうようであれば、全くこれは審議が不十分であるというふうに我々は考えております。
やはり理想は、こんなに二十一もの分野があるわけですから、それぞれ分科会をつくって、専門の委員の先生方がしっかり審議をしていただいて、この章はどうか、この章はどうかということをしっかり議論した上で、批准するかどうかということを決めるべきだと思います。
それから、アメリカを初めとして、日本以外の国は批准の方向にはないわけですけれども、そういった現実も直視すべきでありまして、拙速にTPPの承認案を採決すべきではないというふうに思います。
それから、最後に一点、私は法学部なんですけれども、少し懸念している事項がありまして、衆議院の優越の論理ですね。予算案と同時に、条約については衆議院の優越が認められておりますけれども、これほど国民生活に非常に大きな影響を及ぼすものを、衆議院が可決されたからといって、参議院のそういった審議を無視していいのか、こういうふうに感じております。
ぜひ、実際に強行採決というふうなことをしないと同時に、参議院でのしっかりとした議論をしていただいて、国民が納得いく形でもって、このTPPの承認案、そして、関連法案、これも重要ですから、これにつきまして、ぜひ、しっかりと議論をしていただいた上で国としての方針を定めていただきたい、そういう意見を申し述べて、終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)