藤田孝典の発言 (厚生労働委員会)
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○藤田参考人 まず初めに、厚生労働委員の皆様には、市民生活に、福祉の向上推進に御尽力いただきまして、まことにありがとうございます。
お手元に私の資料をお配りいただいておると思いますけれども、それに従ってきょうは話をさせていただけたらと思っております。
私は、この法案に対して、反対の立場から意見を申し上げさせていただこうと思っております。
なぜかといえば、この後、御説明させていただきますが、一つ目は、かなり時期尚早なのではないかということと、なおかつもう一つは、それが国民に十分理解されているのか、十分周知されているのかという点です。
もう一点は、この後、御説明させていただきますが、かなり今の現状の生活困窮されている高齢者の実態がひどい、相当生活が逼迫されているという状況を申し上げておきたいなというふうに思っております。
まず、その前提となる話ですけれども、私の自己紹介から始めたいと思いますが、NPO法人ほっとプラスは、埼玉県さいたま市に事務所を構えておりまして、年間五百件、十代から八十代まで、さまざまな方が相談に来られてきています。いわゆる生活困窮者という状況で、日々の生活費に事欠く状態で相談に来ております。そのうち約半数が高齢者ということで、中でも、国民年金が足りない、あるいは今の生活費だと生活がしていけないという状況が次々に寄せられております。ですので、きょうはこの実態について少しお話をさせていただけたらと思っております。
一枚資料をめくっていただけると、実態が書いてあると思います。
まず、年金がこのまま、もし景気浮揚等なく減らされていくという状況におかれましては、まず、生活困窮状態にある高齢者がどういうふうな状態に陥っていくのかということです。これはぜひ丁寧に御審議いただけたらありがたいと思っております。
まず一つ目に、私たちのもとに相談に来られる方たち、病院の受診回数、服薬回数を減らしております。現行の年金制度であると、十分に支給が至っていない方は、なるべく病院に行かないように、日々、本当は受診をしなきゃいけない、そういった回数が規定されていますが、医師の指導に従えない、そういった状況なんかが見られております。
あるいはもう一つ、介護保険制度も、本当は要介護四のサービスを入れないと普通の生活がしていけないという状態であるんですが、その助成に至っても、年金金額が少ないがために、要介護一分のサービスしか入っていない。現状では、今の年金制度では、このお金が、介護費が捻出できないというようなこともおっしゃられる方が相談に来ております。
あとは当然、趣味とか楽しみ、社会参加の機会等の抑制をせざるを得ないということで、社会参加の機会が得られにくくなる、外に出ることが難しくなるということは、当然ですが、リハビリ等、歩くこととか外出することが、外出できないということは健康状態等を悪化させるということにつながっていきますので、今後の医療費、介護費の増大につながっていくんじゃないかということが懸念されます。
あとは、所得に応じた健康格差の拡大ということを指摘しておりますけれども、ほかの、私以外の多くの研究者の方たちも、低所得にある高齢者の人たちがいかに健康を害しているのかという調査も既に多く出されております。この間、低所得高齢者の男性は、ほかの男性と比べても、うつ症状が七倍くらいに見られている、広がっているんだというような、そういった指摘もなされております。
これらを見る限りは、たかが数千円、あるいは数万円という月々の生活費が減らされるという状況において、その金額だけを見るとわずかなものだと思われがちだと思いますが、この効果は非常に大きいということです。ですので、現行の年金制度でほとんど生活ができないという声を聞きながら、ぜひ先行投資的に、この高齢者の人たちにお金を出す意義、将来の介護費負担、健康についても考えながら、支給基準を検討いただけたらありがたいなと思っております。
残念ながら、今の状態で年金制度改革がされてしまうと、若者へのツケをしないためにということで検討がなされていると思いますが、現在の高齢者を取り巻く家族が、さらに負担は増していくんじゃないかということが非常に危惧されているところです。
なおかつ、現状の高齢者の生活におかれましては、この下に書いておりますが、高齢者の貧困率が非常に高い状況です。六十五歳以上の高齢者で一八%の相対的貧困率を示しております。
これは国が認めているもので、大体、ひとり暮らしだと百二十二万円、二人暮らしだと百七十万円、これは年間の所得になりますけれども、そのあたりの所得以下で暮らしている高齢者の方が一八%、ひとり暮らしの方においては四割から五割を占めるというような、非常に高い数字が上がっております。要するに、現行の年金制度がほとんど生活保障の役割を担えていない、この金額だと生活がしていけないという状況にある高齢者が非常に多いという状況です。
この水準ではかると、現行においては、少なく見積もって、控え目に見積もっても、約七百万人の高齢者の方が生活保護基準相当か、それ以下で暮らされているという状況にあります。立命館大学の唐鎌先生は約九百万人という指標を出していますけれども、同様に、もう少し多いのではないかというくらい、今の高齢者の年金水準は低いということが、これが研究のスタンダードかなというふうに思っております。
私は昨年、「下流老人」という本を出版させていただきながら、その本で実情を、さすがにこれは厳しいだろうということで警鐘を鳴らしております。それが、もう一枚めくっていただいた後、括弧一、括弧二と書いている、高齢者の実情を明らかにさせていただきました。
例えば、相談に来られた、飲食店にずっと勤めてこられた男性は、今現在、厚生年金月額九万円で暮らされています。例えば、この方がどういうふうな生活になっていくのかということも御検討いただきたいなと思っているんですが、七十六歳の男性、埼玉県在住です。平屋で民間賃貸住宅に五万円を払いながら暮らしているという方です。この方は、年金が足りないがために、春は野草を食べながら暮らしているという状況で相談に来られています。先進国日本において、年金水準が低くて、もう自前で野草を食べなければ生きていけないというような高齢者が現に発生しているという状況です。
この方、一時期は主食を野草にしていた、それを食べて暮らすんだ、ヨモギとかフキノトウ、ツクシなんかもとっていたな、野草には救われた、それがなかったら餓死していたかもしれないと思うときもある、恥ずかしいけれどもホームレス専用の炊き出しにも並んだこともあった。
ホームレスの方に対して支援をするという炊き出しは、当然、年金受給者、家を持っているという方は対象としていません。でも、そこに並ばざるを得ないという高齢者が実態としては出てきているという現状があります。
二つ目に、うつ病の看病をしながら三人で暮らす御夫婦の事例です。この方は、月額年金十七万円の厚生年金を受給されております。七十七歳男性、七十四歳の奥さん、四十八歳の長女の三人暮らしです。金型工で長いこと町工場で働いてきたという男性です。一般的な中小零細企業で働いてきた、そんな男性の御家族になります。
この方も、娘さんの治療費、医療費等を払いながら暮らしているので、月額二十六万円の出費があるという状況で暮らしております。自宅を売却しながら、その資金を得ながら生活をしているという状況になるわけなんですが、年金だけが生活の命綱なんだということを語っております。なのに年金は上がらないし、下がる一方なんだ、そこに働けない娘もいる、十七万円ではとても暮らしていけない、夫婦二人では、健康なうちは何とかなるけれども、どちらかが病気になったらおしまいなんだということを言っております。出費があり、貯金もできない暮らしが続いているということも相談の中で語っている方です。
ほかにも、こういった相談は枚挙にいとまがない状況で、日々、毎日のようにメール、電話、来所されてこられる状況にあります。
ほかにも、七十代の御夫婦は、国民年金二人で九万円です。それでは足りないので、夫、男性の方が新聞配達で働きながら何とか生活をやりくりしている。本当は仕事をしない方がいいんだけれども、医師にとめられているんだけれども、働かないと暮らしが成り立たないという状況にもあります。
あとは、六十代の男性なんかは、厚生年金の金額が十万円に満たないという金額ですので、もうそれだけでは生活していけない。ですので、窃盗、強盗未遂等にならざるを得ない状況で、弁護士さんと一緒にかかわるという事例なんかも既に、これも数件というレベルではなくて、数十件というレベルで発生しているという状況にあります。
年金金額がわずかでも減らされるということは生活を相当圧迫するということで、それが犯罪であるとか自殺であるとか、そういったものを招きかねないということを思っておりますので、ぜひ、この点も考慮いただきながら検討いただけたらと思っております。
もう一枚めくっていただくと、だから、年金が足りないので働かざるを得ないという高齢者がこの間ずっと急増しているという状況です。本当は、仕事をせずに年金をもらいながら、仕事の件数を減らしたい、回数を減らしたいということをおっしゃる方も多いんですけれども、残念ながら、そういった状況になっていないということが多いかなと思っております。
この状態になると、先ほどもお話ししましたが、私たちのもとには、自殺を考えている、一家心中を考えている、あるいは介護殺人を考えているというような声が既に数多く呼びかけられて、出されています。これは、六十代以上の方の自殺率あるいは自殺の件数が非常に高いということを考えてみていただければ、この改正がどんな影響を及ぼすかを、もう一度検討いただけたらありがたいなと思っております。
最終的には生活保護を受ければいいじゃないかという話になると思いますけれども、現在では、生活保護はほとんど機能していないと言っていいかなというのが現場の感覚です。
これは、もう一枚めくっていただけると、約七百万人の貧困状態にある高齢者のうち、現行で生活保護を受給できている方は約百万人程度に及んでいます。ですので、まだ六百万人程度は、本来生活保護は受けられるんだけれども、受けられていないという状況です。それは、生活保護を受けると恥ずかしい、あるいはさまざまなスティグマを伴う問題があって、せっかく年金を掛けてきたのに、生活保護を受けると苦しい、生活制限があるんじゃないか、さまざまな問題があって、まだ受けられていないという状況もあります。
年金が少ないということであれば、本来、生活保護を支給すべきなんですが、残念ながら、これくらい低い捕捉率であれば生活保護という選択肢が出てきませんので、当然、死を考えるという方も出てくるだろうということを思っております。
年間、私たちのもとに五百件相談がありますが、そのうちのほとんどの方は生活保護を選択肢の中に入れていないという状況です。これ以上年金が減るということが万が一あるのであれば、生活保護を当然支給していかないといけないはずですけれども、生活保護が十分機能していない現状においては、かなり生活が逼迫される、その後、何が起こるかということは容易に想像がつくところかなというふうに思っております。
さらに、今の生活保護受給者の方の内訳を見ると、この表に書いてありますが、多くの方が、約半数の方が、生活保護を受けている方のうち、年金を受給されている方です。年金を受給しているんだけれども、年金が足りないから生活保護を、現行、半分の方が受けているという状況にあります。ですので、さらにこれは年金が減っていくと、生活保護になだれ込んでいくという現象が起きますので、生活保護受給者をふやすことが、本当にそれでいいのかということも、あわせて検討いただけたらと思っております。
あとは、一番下に書いておりますけれども、年金がもしカットされるということが、これが現状よりも下がっていくということがあるのであれば、少なくとも今の高齢者の支出を抑制する、支出を削減するという政策を入れていかない限りは、厳しい生活がさらに追い打ちをかけるだろうというふうに思っております。
現行においては、非常に高い医療費、介護費、負担を求めております。なおかつ、住宅費の負担が非常に重たい国の一つです。特に、低所得であればあるほど民間賃貸住宅にお住まいであって、そのうちの家賃がかなり高くなってきているという状況にありますので、この家賃負担を下げるということであるとか、租税、保険料を下げるということであるとか、地方においては軽自動車の保有とか維持に随分負担が重たくなってきておりますので、さまざま、電気、ガス、水道、その他、必要な費用の支出削減をするような政策の導入を検討いただけたらありがたいなと思っております。
最後になりますが、一番下に書いておりますとおり、いずれにしても、この年金法案は、人々の、特に高齢者と、その取り巻く家族について、命とか暮らしに重大な影響がある法案です。これについては、非常に時間をかけて丁寧な審議をいただきたいということを思っております。なおかつ、今この審議自体が国民に幅広く共有されているとは到底思えませんので、これについても丁寧に説明いただきたいと思っております。
私からは以上です。どうもありがとうございました。(拍手)