新里宏二の発言 (法務委員会)

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○新里参考人 参考人の新里でございます。
 お呼びいただきまして、本当にありがとうございます。
 私自身は、仙台弁護士会に所属しておりまして、三十四年間弁護士活動をしております。当初から多重債務問題に取り組み、さらに、平成十年十二月からは、商工ローン被害に対応するため結成されました日栄・商工ファンド対策全国弁護団の副団長も務めておりました。平成十八年十二月、グレーゾーン金利の廃止等を伴う貸金業法の大改正では、参議院の財政金融委員会でも参考人で意見を述べる機会も与えていただきました。
 貸金業法の大改正の残された課題として、保証被害を防止する仕組みづくり、特に第三者保証人の禁止が必要であると考えておりました。平成二十五年六月十日、当時の民主党が提案されました民法の一部改正、第三者保証の禁止を求める改正案に賛成の立場で参考人としてお話しする機会があり、それで本日もこのような機会を持たせていただいたのではないかと考えております。
 私自身は、日弁連の副会長も務めましたし、現在でも日弁連の消費者問題対策委員会の委員を務めております。今回、参考人としてお声をかけていただきましたけれども、商工ローン被害に取り組んできた一実務家として、民進党さんが第三者保証禁止の修正を考えているということもお聞きしましたので、極めて短い期間ではありましたが、保証の問題について賛成の立場から意見を述べるということを考えている次第でございます。
 実は、平成二十五年六月十日の参考人でもお話しさせていただきましたけれども、私の実体験も少しお話しさせていただければと思っております。
 実は、闇金の被害でそれを解決した私の元依頼者が、商工ローン業者に発行した手形が決済できず不渡りを出し、その朝、未明に首をつるという自殺をしました。遺書があり、生命保険で保証人に迷惑をかけないように、わざわざ、新里弁護士に依頼して債務整理をしてくれということでした。それを聞きまして、何でもう少し前に相談に来なかったのかとすごく悔やんだのでありますけれども、保険金が三千万あったということで、保証人は、公務員を勤めた兄、それから取引先の社長でございました。何とか保証人に迷惑をかけない形で債務整理ができました。
 今回、法制審議会が保証問題についても利害を調整し、多大な労力をかけ取りまとめていただいたことについては、高く評価をしているところでございます。保証被害を抑制する観点では、大きな改革となると理解をしております。ただし、第三者保証の禁止については意見がまとまらず、公証人による保証意思の確認という形になったことについては残念に思っているところでございます。
 先日の参考人質疑でも、日弁連の消費者委員会の委員の黒木弁護士が指摘した、平成二十四年一月の日弁連の意見書がございます。資料として配付されたと聞いております。その意見書を採択した際の担当の副会長でもありました。法務省にも法改正の論点として提出させていただいております。
 具体的には、事業貸し付けにおける第三者個人保証の禁止、裁判所による保証人の責任減免、契約締結時の債権者の説明義務、情報提供義務、説明を怠った場合の契約取り消し、契約締結後の情報提供義務、比例原則、保証契約締結時において、保証債務の内容が自然人である保証人の財産、収入に対して過大であった場合、保証請求された時点で、それに足りる財産及び収入を有する場合でない限り、債権者は保証債務の履行を請求してはならないなどを求めたものでございました。
 今回の改正法では、改正案四百六十五条の六で、公証人による保証意思の確認が定められました。保証人が個人であって、事業のために負担した貸し金等債務を主たる債務とする保証債務契約、または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸し金等債務が含まれる根保証契約について、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一カ月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないとするものです。
 ただし、例外として、保証人となろうとする者が、主たる債務者の理事、取締役、執行役またはこれらに準ずる者、主たる債務者または親会社の総株主の議決権の過半数を有する者、主たる債務者と共同して事業を行う者、主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者について、公証人での意思確認が不要とするものでございます。
 そして、四百六十五条の二で、貸し金等根保証に限らず、個人が保証人となる根保証契約について、極度額の定めがない場合、無効とするものでございます。
 四百六十五条の十は、主たる債務者に対して、契約締結時の情報提供義務を課し、義務違反の場合に、主たる債務者の義務違反を債権者が知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができる。
 それから、四百五十八条の二は、保証人が主たる債務者の委託を受けて保証人となった場合、保証人の請求があった場合の主たる債務の履行状況についての情報提供義務。
 そして、四百五十八条の三で、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報提供義務でございます。
 多くの保証被害を抑制する規定が盛り込まれたと考えているところでございます。しかし、第三者保証の禁止が公証人での保証債務を履行する意思の確認に変わり、さらに、出口としての比例原則など責任制限が、条文上、つくり方が非常に困難であるということで、盛り込まれませんでした。
 次に、公証人での保証意思の確認についてでございます。
 私ども、商工ローン被害を取り扱った弁護士からすると、やはり、もう一つ苦い経験がございます。商工ローン業者であった商工ファンドが複写式の契約書の三枚目などに公正証書作成委任状を忍び込ませておいて、その委任状により、公証人役場で執行認諾つき公正証書が作成されます。保証人は、そのような証書が作成された事実も知りません。
 そして、主債務者が支払いを怠ると、保証人に請求がなされ、すぐに給料の差し押さえなどがなされます。会社から呼び出され、やむなく支払いをする。まさしく、公正証書が取り立ての武器として利用されたのでございました。公証人は、保証人作成の委任状が書面上そろっている以上、そのまま執行認諾つき公正証書を作成しています。このようなことが多数起こり、商工ローン被害と言われる状況が生じました。
 二〇〇四年、私ども日弁連は、日本の公証人法の母法であるドイツへも調査に行きました。そこで、公証人が極めて尊敬される法律家であり、そこでは、日本ではない教示義務が法定されていることがわかりました。
 教示義務とは、公証人は、当事者の意思を探求し、事実関係を明らかにし、当事者に行為の法的射程を教示して、当事者の意思表示を誤解のないよう明確に証書中に再現しなければならない。その際、公証人は、錯誤と疑問を避けるよう、さらに、無経験でふなれな当事者が不利益を受けないよう注意しなければならないとされ、さらに、行為が法律に適合するか、あるいは当事者の真意と一致するかにつき疑いがあるときは、その疑問について当事者と議論しなければならない。公証人が行為の有効性について疑いを抱いたにもかかわらず、当事者が証書作成に固執する場合には、公証人は、当事者にした教示内容とそれに対する当事者の釈明を証書中に記載しなければならないなどと規定されております。
 日本では、公証人法二十六条で、「公証人ハ法令ニ違反シタル事項、無効ノ法律行為及行為能力ノ制限ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ法律行為ニ付証書ヲ作成スルコトヲ得ス」と定められておりますけれども、ドイツでいう教示義務を定めたものとは考えられておりません。このような中で、公正証書によるトラブルが十分防止できなかったのではないでしょうか。
 では、口授による公証人の保証債務の意思確認で保証人の保護が図れるのかということでございます。
 これまでの参考人の質疑の中でも、公証人の実務では口授が形骸化していることがこの委員会の中でも議論がなされております。
 銀行取引などでは、金融庁が監督を緩めない限り、現状の、原則として保証人をとらない運用と相まって、一定の効果を生む可能性を否定するものではございません。
 しかし、貸金業者はこれまで、貸金業法の改正で、貸し付けの際、特定公正証書作成委任状を徴求することが禁止されてきました。いわゆる特定公正証書とは、まさしく執行認諾つき公正証書のことでございます。今回、公証人での保証債務履行の意思確認に続いて、執行認諾つき公正証書を作成するようになりますと、裁判を提起することなく強制執行が可能となり、保証人が追い込まれかねない事態が招来されかねません。公証人による意思確認が形式的に行われ、かえって、公正証書による差し押さえによる被害が懸念されるところでございます。
 私は、前回の参考人でもお話ししましたとおり、公証人による保証意思の確認ではなく、第三者保証の禁止について今回盛り込むべきではなかったかと考えているところでございます。その理由は、保証が自己破産などの原因となっているということでございます。日弁連の破産調査でも、常時二五%前後となっております。さらに、保証が自殺の原因になっていることは既にお話ししたとおりでございます。さらに、保証が再チャレンジの阻害要因となっているものでございます。身ぐるみ剥がれてしまうという状況が再起を不可能にしかねないということでございます。
 他方、金融実務におきましては、平成十八年以降、信用保証協会で第三者保証の原則禁止で、ほとんど第三者保証人がとられないような仕組みとなっております。平成二十三年の金融庁の主要行向け、あるいは中小・地域金融機関向け監督指針で、経営者保証以外の第三者の保証人を求めないことを原則とする融資慣行の確立を明記しております。
 保証は、親戚、一定の深い関係から依頼を断れない関係にある、よく情義性と言われます、迷惑をかけないからと言われ軽率に行われやすく、経営にタッチしていない以上、利害計算が不可視的であり、さらに、被害が多発していることからすると、第三者保証を民法で禁止する許容性、合理性は存するものではないかと考えるところでございます。
 さらに、今回の改正案の中で、主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者について、公証人での意思確認も不要とされております。これにつきましては、保証を断ることが困難な情義的保証の典型であり、新しい民法にふさわしくないのではないかと考えているところであり、修正が必要ではないでしょうか。
 既に述べましたように、出口での比例原則など、保証責任の軽減策が採用されておりません。実は、被災者の二重ローン対策としての個人版私的整理ガイドラインにおいては、保証人に責任を求めるケースが限定され、ガイドラインの運用の実務上もこれが定着しております。さらに、経営者保証のガイドラインにおいても、経営者保証人ですら、その責任の軽減策が実行されております。ぜひ、保証責任の負担軽減策についても早期に検討、実行されることを望むところでございます。
 さらに、今回は議論はされておりませんけれども、奨学金の保証人の問題でございます。親の連帯保証人、おじさんの保証人など、本人が正規の就職ができず支払い困難にあるにもかかわらず解決ができないのは、この保証の問題でございます。奨学金の保証人の負担軽減を図るガイドラインの策定も焦眉の急の課題ではないかと思われます。
 公証人での意思確認については、もしこのまま採択されるのであれば、公証人法の改正、例えば日本における教示義務を認めるなど、具体的な対策を講じなければ禍根を残すのではないかと危惧するものでございます。特に執行認諾つき公正証書の乱用を抑える仕組みはどうすべきか、検討しなければならないのではないかと考えるところでございます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 新里宏二

speaker_id: 12250

日付: 2016-12-07

院: 衆議院

会議名: 法務委員会