西尾正道の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)

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○参考人(西尾正道君) 北海道がんセンターの名誉院長をやっております西尾と申します。
 私は、放射線治療で四十年ほどずっと一線の病院でやってまいりました。原発問題なんかでもいろいろ発言しているんですけれども、日本人のこういった放射線の健康被害も非常にうそだらけで塗り固められているので、大変僕は危機意識を燃やしているんですけれども。
 TPPに関しては、水曜日の午後にこの参考人のお話、電話を受けまして、昨日一日でちょっと資料を作りました。以前書いたものなんかを集めて四つの資料を作っております。
 一番目は、講演なんかでスライドとして使っているスライド、ポイントになるものを十六枚ほど用意しました。今日はその内容だけで説明になると思いますけど。
 二番目は、医療がどういうふうに変わるかというようなことを、ちょっと長文ですけれども書いたものがありましたので、持ってまいりましたので、後ほど読んでいただければと思います。
 それから、三点目と四点目の原稿は、北海道医師会の雑誌に、お医者さんもTPPのことに関しては余り問題意識がないということと、それから、実は福島の原発事故の健康被害というのはこれから出てくるとして、本態は微粒子の取り込みによる内部被曝であるということで僕自身の頭も大分整理付きましたので、それをちょっと医者向けに書いた原稿でございます。三、四は投稿原稿ですけれども、一応医師会の雑誌に載った原稿でございますので、これもまた直接関係ないかもしれませんけど読んでいただきたい。特に、三番目のTPPによって医療はどう変わるかということに関しては、実は経済的な問題だけじゃなくて、健康被害が本当に深刻になるというふうに僕は思っています、最後、ちょっとお話ししますけれども。
 それとあと、よく調べてみますと、このTPPというのはとんでもなく不平等な条約なわけですね。例えば、ISD条項というのは皆さん御存じだと思いますけれども、そのほかにラチェット条項というのがありますね。これは、一回取り決めたらもう後戻りできない、とんでもなく日本が不利になってもとにかく変えることはできないとか、それから、ノン・バイオレーション・コンプレインツ、とにかく思うようにアメリカの企業が利益を得れなければ日本を訴えることができるとか、それから、スナップバック条項といいまして、アメリカに不都合なことがあればアメリカだけが一方的に関税撤廃ができるとか、大変な不平等な条約がたくさんちりばめられております。
 こういうことだけじゃなくて、医療を中心にしてちょっとお話ししますけれども、このスライド原稿の一枚目ですけれども、かつて自民党は、選挙でうそはつかない、TPP断固反対と言っていました。今の稲田防衛大臣はかつて、TPPのバスは終着駅は日本文明の墓場だという発言をしているんですけれども、もうころっと、とにかく皆さん、個人がうそをつくというレベルじゃなくて、党としてうそをついている、百八十度態度を変えちゃう。一体国民は誰に投票したらいいんですか、これ。こういう党の公約そのものも破棄しちゃう。修正どころか百八十度違うようなことを言う。これはもう、うそとしか言いようがない。これらの倫理的な、道義的な問題って一体どうなっているんでしょう。恥ずかしくないんですかね。TPPを推進している、何年か前に断固反対していたのが。とにかく、こういった形で息を吐くようにうそをつかれたら、やっていられません、国民は。
 それで、そもそも六千ページに及ぶこの内容を本当に皆さん読んでいるんですか。情報を出してくださいと言っても、のり弁当の段階です。こんなことで、知らないで、とにかく赤信号みんなで渡れば怖くないといって今皆さん賛成しようとしているわけです。冗談ではない。こんな条文が、まともにチェックもしていないわけですから、実際には赤信号も見ないで今渡ろうとしているわけです。これが今の現実です。
 実際にTPPというのは、基本的には、歴史的には、昔戦争、今TPPです。昔は戦争を仕掛けて国益を取りました。戦争をするのは国益を取るためです。ところが、公然と核兵器を持つ時代になったら、お互い面と向かって戦争はできない。そうなると、地域紛争はもちろん起こりますけれども、国家として国同士がぶつかり合えないですから、国益を取る、国益というよりもむしろグローバル企業ですけれども、国を動かしているグローバル企業の利益を取るために、貿易上の仕組みを変えて利益を取ろうというのがまさにTPPでございます。これがTPPの本質でございます。
 それから、三ページ目ですけれども、米国の医療というのはとんでもない高い。GDPの二〇%以上を占めていますし、日本の七倍の医療費が使われている。実際にですけれども、TPPに入るということは、結局アメリカナイズされた医療になるということでございます。もうお互いに助け合うとか共に生きるなんという発想はないんです。もうとにかく医療も完全に金もうけの道具になるというふうに考えてください。
 実際に、四枚目のスライドですけれども、これは米国のロビー活動費、これ、この活動費見たら、何がターゲットですか。農業とかそういうものじゃないです、実際には。ターゲットは医療です。医療であり医療産業の、保険も含めた医療業界の仕掛けなんです、最大のターゲットは。これは、二〇一三年の三月四日付けのタイム誌に、二十八ページにわたる米国医療の驚愕、医療ビジネスという特集号が出ていました。まさにこの中から取った記事であります。こういうことによって、日本の医療は多分かなり大幅に変わると思います。
 ちなみに、米韓FTAが二〇一二年に締結されましたけど、韓国の医療費は二年間で二倍になりました、二倍になりました。多分、日本は韓国の医療規模の四倍ぐらいありますから、恐らくあっという間に膨大にお金が飛び上がる。今、オプジーボで半額にしようなんという議論をやっていますけれども、そんな話じゃ全然なくなります。本当に深刻です。遠藤先生の意見とは僕は全く反対の考え方をしていますけれども、そういうことです。
 五枚目ですけれども、従来、一九八五年以来、とにかく日本の医療市場を開放するようにアメリカはずっと働きかけてまいりました。最近では、新薬創出加算のようなものをつくったりして、非常に製薬会社が有利な形で日本市場に参入してまいりました。しかし、このTPPが、まさにこういった米国の日本の医療産業の開放を行う最後の仕上げがTPPだというふうに僕は考えております。
 ちなみに、米国業界と保険業界の標的は日本市場であるということは、これは全国保険医団体連合会の寺尾さんの論文からサマリーを取ったものです。これ六枚目です。後から詳細は読んでください。時間がありませんので飛ばします。
 七枚目は、抗がん剤の価格が今こういうふうになっています。私が医者になった頃は、一か月の抗がん剤は数千円でした。九〇年代になって数万円になりました。二十一世紀になって数十万円になりました。そして、三年前の免疫チェックポイント阻害剤が出たら数百万円になりました。ですから、これでもう桁三つ違っているんですね。桁三つ違っていますけれども、TPPが締結されればどうなるか。要するに、アメリカの製薬会社のほとんど言いなりの値段になりかねない。
 中医協ではチェックできません。それから、中医協のやっていることが透明性とか公平性を欠くといってISD条項で訴えられたら、もうそれはできませんので、かなり製薬会社の意向を酌んだ価格になる。これは今、本当に日本の医療費というのはもうとにかくパンクしつつありますけれども、そんな話じゃ全然ありません。もう断トツにとにかく日本の医療費は飛び抜けます。ですから、最終的には皆保険も実質的に崩壊するというふうに考えております。
 実際に、六枚目ですかね、TPPで日本の医療はどう変わるかということになりますと、患者負担が増大しますし、混合診療が解禁されます。民間医療保険の拡大があります。それから、営利団体が、営利の会社が医療産業に入ってきます。そういうことで、今でさえ薬剤費、医薬品は三兆円以上の輸入超過になっていますけれども、もっともっとこれが広がっていくというふうに考えられます。
 それとあと、次ですけれども、このままでは、ですから日本の医療が崩壊して、日本人の健康は守られません。その下は、具体的にどういうことも例えば想定されるかというと、例えば先進医療みたいなことが今やられていますけれども、それが医学的に効果があるということで保険診療にしようとしたときに、先進特約なんかをやっている保険会社が利益を損ねるということで、保険診療にしたらそれは企業としては非常に損をするからということで、訴えられたら負けます。ですから、新しい新技術が保険診療にできないというような事態も考えられますし、もっと言いますと、実際の手術の術式まで特許料を取るというような事態になります。そういうことで、医療費も高くなりますので、国民はみんな医療保険に入らざるを得ないというような社会にもなりかねないというのがございます。
 あと、十枚目ですかね、TPPの根底にある思考というのは本当に正しいのかと。
 基本的に、TPPの本質は、グローバル企業が一般国民を犠牲にした金もうけでございまして、それから、自由貿易というのは善であるという前提なんですけど、これはやっぱり国の状況とか経済格差みたいなのを考えてやるべきであって、これ自体が本当にいいかどうかというのは話が別ですね。
 いわゆる産業革命以来、富の源泉というのは労働力でした。しかし、今は労働力じゃなくなった。ロボットも使える、AIも使える。そうしたら何が富の源泉かというと、科学技術を持つか持たないかです。それがまさに富を生み出すものになった。そうすると、科学技術の持つ負の側面は隠す、隠蔽するということになりますし、とにかくそういうことが金もうけになっちゃうと、とんでもない格差ができます、経済的に。
 それをどう社会正義だとか公平性を保って再配分するかということが、僕は本当の意味でのこれからの政治家の仕事だと思います。こういった本質的にやるべきことをきちっとやらないで、どんどん企業がもうけるようなところに世界をどんどん誘導していくというのは、僕はとんでもないことだと思います。そういう点では、議員としてというよりは一人の人間として、共に生きるような日本の社会をどうつくるかということを本当に真剣に考えていただきたい。
 それで、最後になりますけれども、生命を脅かすTPPの二つの大きな問題というのがございます。これは今、医療問題を言いました。もう一つは健康問題です。
 例えば、この四十年間、ホルモン依存性のがん、女性は、僕、医者になった頃、乳がん一万五千人でした。今九万人です。前立腺がんもほとんどいなかったけど、今、前立腺がんも九万人で、男性の罹患者数のトップになりました。卵巣がんもどんどん増えている、子宮体がんも増えている。ホルモン依存性のがんが五倍になっているんですよ。この四十年間でアメリカの牛肉消費量は五倍になりました。まさに、エストロゲン入りの、女性ホルモン入りの餌を与えて一割生産性を高めて、そういう肉を食べている日本人もアメリカ人も五倍になっているんです、ホルモン依存性のがんが。
 それから、例えば耐性菌もそうですね、豚や鳥には抗生物質入りの餌を与えて生産性を高めている。そのため、人間が肺炎になってもなかなか効かないという問題もございます。
 それから、残留農薬がとにかく世界一緩和されている。とんでもない話だ。実際に今一番使われているネオニコチノイド系の農薬が自閉症の原因であるということが突き止められています。小児の神経発達障害の原因であるアスペルガー症候群も含めたトータルな子供のそういう精神発達障害の原因がこの農薬である。最近、WHOは、今のネオニコチノイド系の農薬は発がんにも関係しているとBランクにランキングされました。それから、認知症にも関係している、うつ病にも関係しているという報告がどんどん出てきている。このままいけば、アメリカの若者が、子供たちが二人に一人は自閉症になるよというハーバード大学から去年論文が出ました。本当にこういうことが深刻なんですね。
 遺伝子組換えも日本は一番食べている。アメリカにとって大豆やトウモロコシは家畜の餌です。ところが、日本人は納豆で大豆食べます。みそやしょうゆの原材料です。一番食生活で遺伝子組換えの影響を受けるのは日本人の食生活なんです。こういうものが全くチェックされないで、世界一遺伝子組換え食品が普及している。これはもうまさに日本人の健康そのものが保てません。
 がん患者さんが増えているというのは、高齢者だけではないです。こういう食生活を含めて増えているし、更にもっと深刻なのは、昔六十以上になってがんになったのが、今四十代ざらです。約二十年間、若年化してがんになっています。これが現実です、僕の実感として。
 こういう健康問題というのが、自分たちの国で農薬を規制したり遺伝子組換えの表示がちゃんとできるようにしたり、そういったことがTPPに入った場合にできなくなっちゃうんです。日本の国の決まりよりもTPPの方が上位にあるわけです、位置されているわけです。こういう現実をやっぱり冷静に考えていただきたいと思います。
 最後の二枚ですけれども、最近では遺伝子組換えでサケなんかも五倍ぐらいの大きいものが作られていますね。これがもう本当に規制しなくていいのってことですよね。本当に何があるか分かりませんよ。
 例えば子宮頸がんワクチンだって、今までワクチンというのは、不活化ワクチンか弱毒化ワクチン、この作り方で作っていたんです。だから、大きな問題は起こらなかった。弱毒化か不活化にして作っていた。子宮頸がんワクチンというのは、遺伝子組換えを作っているんです。遺伝子組換え技術で作って、さらに効果を高めるためにアルミニウムのようなアジュバントを加えて作っているから、ああいう予期しない問題が起こっちゃうわけです。
 もう少し冷静に、命をやっぱり重視する、とにかくお金よりも命を大事にするという発想にやっぱり切り替えるべきだと思います。
 僕は、最後のスライドですけれども、大変深刻なのは、今福島から出ている放射性物質、これは微粒子として浮遊しています、残念ながら、四番目の資料の論文に書いてありますけれども。そういうものと化学物質が、農薬も含めた化学物質が人間の体に入った場合に相乗的に発がんするということが動物実験で分かっています。こういう今、多重複合汚染の社会になってきて、恐らく今二人に一人はがんになると言われていますけれども、多分、二、三十年たったら三人のうち二人はがんになります。僕はとっくに死んでいますから、若い議員さん方、是非確かめてください。この場で西尾がうそを言ったかどうか確かめてこいと。本当にがんがどんどん増えるという社会になります。
 そういう点では、自分たちの国できちっと法律である程度規制できるような体制をつくるためには、決してTPPに加入すべきではないというふうに私は思っております。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 西尾正道

speaker_id: 28238

日付: 2016-12-02

院: 参議院

会議名: 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会