西尾正道の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)
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○参考人(西尾正道君) 今のことと関連して、僕はずっとずっと現場でやってきましたけど、オプジーボを使っても、例えばメラノーマ、悪性黒色腫、五年生存率一七%が三四%になったと。つい最近の報告です。倍になった。だから、確かに成績はいいわけです。今までの新薬の抗がん剤といったって、例えば五年生存率一五%が一八%になったとか、そういうレベルのドングリの背比べだったんですけれども、倍近くなったと。
だけど、知っておきたいことは、それで治っているわけじゃないんです。抗がん剤で治るのは血液のがんだけです。白血病や悪性リンパ腫は治る時代になりました。だけど、例えば肺がんにしたって胃がんにしたって乳がんにしたって、普通の固形がんは治りません。一回り小さくなることによって延命になると。奏効率二割あれば、奏効率というのは、半分になれば部分的に良くなったと、そういうものが二割あれば認可されるというのが抗がん剤なんです。だから、薬の概念とはちょっと違うんです。眠剤飲んだらみんな眠たくなるし、痛み止め飲んだら痛みが少し楽になるというのが薬だと皆さんは思っているけど、抗がん剤の定義は違うんです、二割の奏効率で認可される薬。だから、治るわけではない、多くのがんは、固形がんは、血液がん以外は。そういうことが皆さん、余り国民にはよく説明されていないということがありますね。
それで、実際にがんの三大治療法の中で、治療費の八割は薬なんです。放射線治療は三%です、たった。手術代は一七%です。そういうことからいうと、何がコストに見合うような形で治しているのという、いわゆる効果比みたいなものをきちっと導入して薬価というのを僕は決めていかなきゃ、もうどうしようもなくなる時代になってきた、これだけ高額なもの。
だから、昔、例えば陽子線治療で、先進医療で三百万掛かりますと、随分高いなと言っていたけど、あれはああいう治療をしたら治る人も結構いるわけですね。今だったら、感覚としては、C型肝炎だって六百七十万、あれも治るからまあいいでしょう。ところが、抗がん剤のこういうオプジーボ、じゃ、治るのといったら、治るわけでもないですよね、生存率は上がるかもしれないけど。じゃ、それが三千五百万使うのが本当に意味があるのかどうか。今一番よく使われている、大腸がんの再発に対して、アバスチンという血管新生阻害剤あります。アメリカでは、実際にそれ使って、二年が二年三か月になる。三か月ぐらいの延命効果だけど、それを一年間使ったというふうに換算したら五千万ぐらいになります。
そういう値段がTPPになった場合にもろに日本にもかぶってくるという可能性もあるし、要するに、これからの薬価というものも、診療報酬全体ですよ、診療報酬そのものもまさにそういうコストパフォーマンスというものを導入せざるを得ない。そうしたら、日本人の死生観というものを共有化して、ある程度ベースをつくって、どうするのという議論を僕は本当にすべきだと思いますね。
僕がずっとやってきたのは、セシウムとかラジウムというのを患部に埋め込んでいったわけです。日本一被曝している医者なんですよ、だから。国立病院でしたから、いい機械買ってもらえませんでしたから。それで、だけど、その治療は線源を使って直接がんの病巣に埋め込むような治療で、二十人やったら十九人治せます、その治療は。だけど、被曝して、一千万の鉛で囲まれた、設備投資してベッドを使って、診療報酬六万円だったら誰もやらぬです。今やれるのは北海道がんセンターだけです、その治療は。僕は捨てません。なぜならば治るからです。
だけど、医療というのは、やっぱりもうからなければ全部どんないい治療でも廃れるんです。社会の流れというのはそういうことで動いているわけです。だから、もう本当に、もうけてもいいけれども、もうけるに該当するだけの効果というものをきちっと出すと。それが単なる一か月、二か月延命という話じゃなくて、もうちょっとそういうコストパフォーマンスを考えた費用効果分析というものを導入して僕は医療の在り方というのをこれから考えていかないと、今オプジーボと同じような類似した薬がどんどんどんどん出ます、これからは。だから、本当に難しい時代ですので、本当に真剣に取り組まないと大変なことになりますね。