天笠啓祐の発言 (環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)
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○参考人(天笠啓祐君) こういう席にお招きいただきまして意見を述べる機会を与えてくださいましてありがとうございます。
私は、今、日本消費者連盟という消費者団体の共同代表をやっておりますけれども、同時に、コーデックス国内委員会の委員をやっておりまして、また、国際獣疫事務局、OIEの国内連絡会の委員もやっております。そういう様々な委員として食の安全について関わってまいりました。
今日、主に四点についてお話ししたいと思っております。非常に急な話でしたものですから、資料を用意できませんで大変申し訳ありませんけれども、よろしくお願いいたします。
まず、第一点ですけれども、最近になりまして、やはり食の安全を脅かすような事故、事件というのが非常に多くなった。これは実は今世紀に入ってから大変増えたんですね。その証拠とも言えるのが、例えば食品安全委員会あるいは食品安全基本法が今世紀に入って作られましたし、それから、食品表示法自体も、つい最近、昨年できたばかりでありますけれども、こういうふうに食品に関する法律あるいは委員会の設立というのが非常に遅れてきた、でも、やはりそういう事件や事故が多発したからこういうものができてきたということが言えると思います。
それは、やはりグローバル化、いわゆる様々な輸入食品の増加が、これが非常に大きな原因になっております。例えば、二〇〇八年一月に中国産毒ギョーザ事件というのが発生しました。このときに、その直前なんですけれども、北海道でミートホープ事件というのが起きておりまして、この二つの事件というのが非常に連関して起きているんですね。それはなぜかといいますと、この中国産毒ギョーザ事件というのは、天洋食品といういわゆる中国の企業が作ったものなんですけれども、実はこのギョーザ、四十個で三百八十円という非常に廉価なものなんです。一個十円しないんですね。ミートホープ社というのはやはり同じ取引先であります。親会社、同じ取引先なんですね。
そうしますと、こういう四十個三百八十円という低価格に対して国内の企業というのは、いわゆる価格低下圧力というのですか、これが非常に掛けられてくることになります。そうしますと、例えば、皆さん、今どこの企業もそうなんですけれども、苦労されていますけれども、例えば時間外労働に対して賃金を払わないとか正規雇用を非正規に切り替えるとか、そういう形でいわゆる日本の企業は乗り切っているわけですけれども、でも、やっぱりそれでも太刀打ちできないわけです。
そのために、例えばミートホープ社の場合は、返品してきたものを例えば再出荷したりラベルを貼り替えたりとかそういう犯罪行為を犯したわけですから、これはとても許せないわけですけれども、でも、そういう状況にあるということが今やはりこの中国産毒ギョーザ事件で分かったわけですけれども。
例えば、二〇一三年にアクリフーズ事件というのがまた起きます。これも群馬県であります。これがやはり中国産毒ギョーザ事件と全く同じ構造で起きているんですね。これは国内のメーカーなんですけれども、やはり海外との競争の中で、低価格化圧力の中で現場にすごい不満がたまっていた。その不満が食品に農薬を混入するような、そういう事件になってしまった。こういうことが実は起きてきた。これは本当に今世紀になって目立ってきた事件です。
先日の、今年になりまして、CoCo壱番屋のカツが廃棄されたという事件も起きました。この事件、実は、報道の中でやっぱりびっくりしたのは、産業廃棄物として捨てられたカツなんですけど、二〇一四年から二〇一五年の間に五十九万枚廃棄されているわけです。
これ、何でこんなにたくさん廃棄されるか。これは異物混入という問題なわけですね、食の安全を脅かす事件なんですけれども。これは、やはり今全国でチェーン展開しております、いろいろな企業が。非常に全国展開する中で、それで大量生産する、それによってコストダウンを図る。これもやはりコスト圧力なんですね、コストダウン圧力でありまして。その中で、いわゆるロットが大きくなってきた。大量生産する、ロットが大きくなりますと、当然のことながら、そこに異物混入が起きますと大量の廃棄が起きるわけですね。
ですから、この背後にあるのはやはりコスト圧力であります。この中で、やっぱり食の安全というのが、ですから、異物混入事件が非常に頻発して目立ってきたというのも、実はその背景にそういうことがあるわけです。ですから、こういうのがまず一つ食の安全を脅かす問題として一点あります。
今回のTPPの合意の中でやっぱり非常に懸念されております問題について二番目にお話ししたいと思うんですけれども、一つは、市場アクセスの分野でモダンバイオテクノロジーによる生産品の貿易というところの中で、いわゆる遺伝子組換え食品に関して作業部会を設置するということが入っております。この作業部会なんですけれども、情報共有化という言葉がよく出てくるわけです。この情報共有化って一体何だろうかということなんですね。
これまでも食品添加物などでも起きているわけですけれども、例えば国内の安全審査を非常に簡略化する、省略化する、そのために例えば外国で行われた安全審査をそれで代替させるということが食品添加物でも行われてきましたけれども、遺伝子組換え食品でもそういう事態が起きる可能性がある。情報共有化というのは、まさにいわゆる十二か国でその情報を共有しよう、ということは安全審査における情報も共有しよう、これは将来的にはやはり新規承認に係る安全審査のいわゆる簡略化に非常につながっていきかねない、そういう問題がやっぱりここにあると思います。
それから、第五章の税関当局及び貿易円滑化の分野でありますけれども、この中でやはり一番心配されておりますのが輸入手続の迅速化という項目であります。これ、物品引取りでの四十八時間以内のルールというのが設定されておりますけれども、今まで日本の検査どのぐらい平均で掛かっていたかといいますと、九十二・五時間平均で掛かっていたわけです。これが四十八時間以内にしなさいということになりますと、ほとんど検査不能になってしまいます。
これは、実は、先ほどの中国産毒ギョーザ事件なんですけれども、このときにやはり私たち日本の消費者が大変衝撃を受けたのは、中国で作られたギョーザが、冷凍食品は安全だといういわゆる思い込みがあって、検査が全くされない状態でいきなり私たちの食卓に入ってきたということなんです。すなわち、やっぱり検査が全然されないということは、いわゆる中国で、中国以外の国でもそうですけど、外国で作られたものがいきなり私たちの食卓に入ってきてしまうという、そういう事態をつくり出してしまうわけですね。ですから、そう考えますと、やはりこの四十八時間ルールというのは大変に食の安全を脅かすルールになりかねません。
それから、四番目ですけれども、第七章のSPSあるいは第八章のTBTに関わるところで、利害関係者に意見を述べさせるというところがあるわけですね。SPSでは利害関係者に意見を述べる機会を与えるとなっております。それから、TBTにおいてはもっと踏み込んでおります。いわゆる技術的障害でありますけど、利害者の意見を考慮し、政府機関による強制規格、任意規格及び適合性評価手続、その作成に参加することを認めるということで、利害関係者がかなり介入できる仕組みをつくってしまうわけであります。
そうなりますと、このいわゆるTBT、貿易の技術的障害の中には食品表示という問題が入ってくるわけです。そうしますと、この食品表示において非常に形骸化していく、いわゆる食品表示が緩和されていく。あるいは、今まで私たちが、消費者が願ってきたのは食品表示の厳密化なのでありますけれども、それがむしろできなくなる、あるいは逆に緩和に向かっていく、そういう流れがやはりできてしまう可能性が非常に強まるわけですね。
特に、やはり利害関係者といったときに一番問題になってくるのは多国籍企業であります。大きい企業が介入したときに、それに対してやはり抵抗できるのだろうかというのが非常に心配になってまいります。
遺伝子組換え食品の問題が、非常に消費者の関心というのは大変高いわけでありますけれども、例えば、これに対してやはり私たちは、安全審査の厳格化、それから食品表示の厳格化、それをずっと求め続けてまいりました。去年から今年にかけまして大変多くの遺伝子組換え食品の厳格化を求める署名運動というのを行ってまいりましたけれども、それで、全国から物すごくたくさんの人が署名に協力してくださいました。そういう非常に強い思いがあるわけですね。これに対して、このTPPが成立しますと、やはり私たち、大変それと逆行するような動きが出てしまうんじゃないか、これが非常に心配になっております。
最後に、最初の話に戻りますけれども、今年に入ってから食品に対する事故、事件が非常に増えてきたというのは、やはりグローバル化の影響であります。TPPは更にそのグローバル化を徹底して推し進めるという、そういう内容を持っております。それが非常に心配だということであります。
例えば、二〇〇〇年に入ってどのような事件、事故が起きたかということの追加としてもう一つお話しすると、今、鳥インフルエンザの問題が非常に出てきておりますけれども、この鳥インフルエンザ含めて動物の感染症が頻発し始めたのも今世紀に入ってからなんです、実は。昔からあるように感じるかもしれませんけれども、これもやっぱり今世紀に入ってからです。非常に農家を苦しめております、この動物の感染症、特に鳥インフルエンザのようなものはたくさんの鳥を廃棄しなければならなくなりますので。
例えば、どういうふうに今世紀になって感染症が増えてきたかといいますと、二〇〇〇年に口蹄疫が宮崎県で九十二年ぶりに発生しているわけです、二〇〇〇年です。二〇〇〇年から始まります。それから、二〇〇一年にBSE感染牛が初めて日本で確認されました。それから、二〇〇四年に山口県で鳥インフルエンザが七十九年ぶりに確認された。二〇〇四年なんです、鳥インフルエンザが本当に頻繁に入るようになり始めたのは。それから、二〇〇九年に新型インフルエンザ騒動というのが起きました、これは豚インフルエンザ騒動とも言いますけれども。それから、二〇一〇年にまた宮崎県で口蹄疫が発生しまして、大変な被害をもたらしました。それと並びまして、鳥インフルエンザ、毎年のように発生するようになってしまいました。
こういうような、これなぜそういうふうになってしまったか、この感染症が増え続けたかといいますと、やはりこれはグローバル化の中で、鳥やそれからいわゆる家畜の移動、あるいは人間の移動等々が激しくなってきた、これが直接的な原因だと思います。
そういうようなグローバル化を更に徹底的に推し進めるようなTPPというのは、やはり私たち消費者を含め日本の国民に対して大変な食の安全に不安を増幅させるものだということを最後にお話しして、話を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。