渡邉雅之の発言 (内閣委員会)
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○参考人(渡邉雅之君) 弁護士渡邉雅之から、法律家の立場、それからマネーローンダリング、反社会的勢力対策の専門家として、それからカジノに関するシステムに関しての研究者としての立場からお話を申し上げたいと思います。
御説明、意見の陳述に当たりましては、お手元の資料を使わせていただきながらさせていただきたいと思います。パワーポイントの資料ともう一つ、A4縦書きのネバダ州において無制限免許のゲーミング従業員が申請時に開示すべき情報と書かれている資料を御覧ください。
今回、私、衆参の内閣委員会における審議、インターネットを通じて配信をつぶさに見てまいりました。その中でかなり実質的な審議が行われたなというふうに実感しているところでございますが、その中でも、主に突っ込まれて御検討された点を中心に今からお話をしたいと思います。
それは、まず最初に特定複合観光施設、IRについて、それから賭博罪と違法性阻却について、それからマネーローンダリング対策について、そして最後にギャンブル依存症対策についてでございます。
まず、三ページ以降、IRについてでございますが、こちらは、美原先生の方から先ほど御説明がありまして重複するところがございますが、御説明したいと思います。
四ページにありますとおり、まず、IRとは何かというと、カジノ施設だけではなく、会議場施設、レクリエーション施設、展示場施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与する施設が一体となっているということは皆さん御存じのとおりでございます。その中で、高規格で質の高い多様なサービスが提供されるIRの整備によって国際競争力のある魅力の高い滞在型観光が実現されて、地域経済の振興に寄与するとともに、健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることが期待されるということになります。
次に、五ページ、なぜ今IRが必要なのかということでございますけれども、シンガポールの例で見ますと、二か所のIRを設置することによって観光を飛躍的に伸ばしております。そのシンガポールのIRの施設の中には、ごく一部にカジノという非常に大きな収益力の高い施設が設けられています。それが加わることによって、他の施設、国際会議場や展示場、単体であれば不採算となるような施設も含めた施設全体での円滑な運営ができ、更に集客も伸ばしているところでございます。日本版のMICEの機能を強化していくためにも、こういった施設の一部にカジノ施設を含むIRというものを検討していく必要があると考えております。
また、政府においては、平成二十五年に日本再興戦略において、二〇三〇年までに訪日外国人観光客三千万人を目標に、新たなツーリズムの創出や国際会議、MICEの誘致、投資の促進を掲げております。このIRの整備はまさに税負担のない経済政策、都市政策として、また、ここが重要でございます、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックがありますが、その後の経済政策をどうするか。そこで、これはまさに、アフターオリンピック・パラリンピックの国際観光戦略の一つとしてこのIRがあるわけでございます。
さて、このIRについては、衆参の内閣委員会でも議論がありましたとおり、今更IR、アジア市場ではもう既に飽和しているんじゃないかという、そういった批判もあるところです。
そのIRの導入に批判的な御意見といたしましては、米国のニュージャージー州アトランティックシティーやマカオにおいてカジノ収益が落ちていることがよく理由として挙げられておりますけれども、それから、アジア各国にカジノの設置が今進められているじゃないか、そういった中でアジアのカジノ市場、もう飽和じゃないのと、そういったことが言われるわけでございますが、まずもって、米国のニュージャージー州アトランティックシティーについては、このカジノ収益が落ちている一番の大きな理由というのは、米国北東部の各州でIR、カジノの導入ラッシュがあるということが一因でございます。ニューヨーク州、マサチューセッツ州などにより競争が激化しているということによるものです。米国北東部全体でのカジノ収益は伸びていますし、また、米国全体のカジノ収益も伸びています。ネバダ州のラスベガスでのカジノ収益も伸びている。
他方、マカオでございます。マカオは、中国の本国の反腐敗政策や資金移動の制限、そういったところでVIP顧客の勘定が今現在かなり減少していますけれども、マカオ政府は、今、いわゆる一般観光客の方に相当政策をシフトしていらっしゃいまして、観光客は相当増えております。二年連続観光客三千万人を達成しているということです。すなわち、一般大衆の観光客は今増えているわけで、極めて健全なレベルに移行しつつあると。カジノ収益に関しても、これは、二〇一六年の八月以降は三か月間連続プラスというふうになってきております。そもそも、ラスベガスやマカオにおきましては、IR施設がないときに比べてはるかに地域経済が活況になっているということも留意しなければいけません。
次に、IRの成功の鍵でございますが、これはいろいろあると思います。シンガポールの例を見ますと、リゾート・ワールド・セントーサというところには水族館やUSJ、ユニバーサル・スタジオのような観光施設、それから、皆さんよく御存じのマリーナ・ベイ・サンズ、ホテル棟が三つある上に巨大な船が乗っている、まあプールになっているわけでございますけれども、そういったファミリーでも楽しめる、そして巨大なアイコンのようなものがあることが非常に重要となってくると思います。
それから、ニュージャージー州アトランティックシティーでの失敗を踏まえて、やはり過当競争は避けるべきであると。最初は数を限定した上でスタートしていき、慎重に段階的に増やすことを検討していく必要があると思います。
また、我が国ならではの、日本ならではのクールジャパンの発信や日本の伝統文化の発信も重要です。皆さんよく御存じだと思いますが、昨年、二〇一五年の八月に、ラスベガスのベラージオの噴水、皆さん、オーシャンズ11という映画御存じですか、あの映画で出てくる噴水ですけれども、その前で歌舞伎役者の市川染五郎さんが演舞をなさった、これは非常に高い評価を得ているところでございます。ですので、我が国において導入する場合もこういったものを意識する必要があるんではないかと思います。
次に、刑法の賭博罪とIR法制、非常に重要な問題でございます。九ページを御覧ください。
なぜこのIR推進法案、そしてこれに引き続く実施法案において民設民営のカジノを目指すのかと。これは、カジノの運営者は賭博行為の直接の当事者となるとともに、当事者としてのリスクを負担することになり、公的主体が運営者となることは適切でないとまず考えられることによります。そして、ゲーミングのノウハウを有する事業者が運営することで質の高いサービスが提供され、IR全体の魅力が高まるとともに、収益の公益還元の最大化ができると、そういった点にあると思います。
宝くじや競馬、競輪などでは総賭け金の一定率をまず主催者が取っていきますけれども、民営のカジノではそうではないと。主催者がリスクを負いながらやっていくところにこの民設民営のカジノを目指す理由というところがあるところです。
十ページを御覧ください。
では、刑法の賭博罪というのはどういうふうに規制されているか。これ、刑法百八十五条の賭博罪、刑法百八十六条の常習賭博及び賭博場開張等図利罪、賭博場開張罪と言った方が分かりやすいと思いますが、こういったものが定められているところでございます。
賭博罪の保護法益につきましては、これは内閣委員会でも何度も御説明があったとおり、賭博行為は、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強盗罪その他の副次的犯罪を誘発し、国民経済の機能に重大な障害を与えるからと、そういうふうに言われているところでございます。
次の十一ページから少し重要なポイントでございます。
今回、衆参の内閣委員会で、特に衆議院の中では緒方林太郎先生、民進の先生、それから参議院では大門実紀史先生、共産党の先生方から、この賭博罪の違法性阻却の論拠についてかなり詳しい質問、それに対する政府の回答がありました。ここを私つぶさに拝聴しまして、整理させていただきました。
まず、公営競技に関しては、特別な法律により正当行為、刑法三十五条として違法性阻却がされている。違法性阻却する要件として考慮すべきという点では八つの点があると。この八つの項目を、各項目について具体的な案件において総合的な判断がなされるという政府、法務省の回答がありました。
では、その八つの項目というのは何かというと、目的の公益性、そしてこの公益性に関しては、収益の使途の公益性はこれは一例であって、これに限定はされないということ。それから運営主体の性格、これも、官、これに準ずる団体であることはこれは一例にすぎないということ。それから、三として収益の扱い、四として射幸性の程度、そして運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、そして最後に副次的弊害の防止でございます。
次のページを御覧ください。
違法性阻却の各項目は、それではIR推進法には書かれているか。実際には、違法性阻却は次の実施法案で考えていくところですけれども、推進法案の中でもちゃんとこの各項目というのは書かれていますよということです。
まず、目的の公益性でございますが、カジノ単体ではなく会議場施設、レクリエーション施設などの他の施設を加えて、IR全体としての公益性が認められること。そして、法案の一条では、観光、地域振興に寄与するということを財政の使途としております。そして納付金、それから入場料等を取ることによって、それを、附帯決議でも挙げられておりますが、依存症対策にも使う、そういったところで十分公益性が認められるんだと。
それから、運営主体の公益性については、カジノ管理委員会によって公営競技以上の厳格な規制に服することになるということでございます。
収益の扱いについては、納付金、入場料を徴収することができると法案に書かれております。法案提出者の意思としてはこれを必ず取るということで、それは尊重されることになると存じます。
そして射幸性の程度ですが、こちらは、基本的にはパチンコとの対比で設けられた、パチンコ等風適法の遊技との関係で設けられた要件ではないかと考えております。必ずしも公営競技においてもこの射幸性をどう抑えるかということは検討されてはいないのではないかと。要は、公序良俗に反しない限りは認められていると存じます。
運営主体の廉潔性、これもカジノ管理委員会による公営競技以上の厳格な規制に服していると。
運営主体の公的管理監督についても、同じようにカジノ管理委員会により公営競技以上の厳格な規制に服する。
運営主体の財政的健全性、これはカジノ管理委員会による厳格な背面調査により見られていく。実際にアメリカでは、この背面調査によって、要は財務的健全性がないということで申請が認められなかった事例も多数あります。
副次的影響の防止でございますけれども、これは、法案の十条各号にカジノ施設の設置及び運営に関する規制ということで項目が挙げられておりまして、マネーローンダリング対策、ギャンブル依存症対策を始めとする対策が取られているところです。
次のページの図は、ちょっと私が工夫して作った、IR、カジノを含む統合リゾートと公営競技、宝くじとの違法性阻却の比較をしております。それぞれどういう状況なのかなということで比較をしてみました。
その検討の結果が次の十四ページに書かせていただいておりますが、結論から申し上げて、IR、カジノを含む統合型リゾートは十分違法性阻却の要件を満たし得るのではないかと。当然ながら、これは実施法案で検討していくところですけれども、まず、私が分析しているところによりますと、公営競技の違法性阻却というのは、かなり公的主体であること、すなわち目的の公益性、運営主体の性格、収益の扱い、運営主体の廉潔性によるものと考えられます。運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止については、十分であると言えるかは少し疑問が残る、とりわけ副次的影響の防止については疑問が残るわけです。
要は、今、パチンコ、パチスロ、広義のそういうところでお話ししますが、公営競技においてもギャンブル依存症対策ということも問題となっておりますし、宝くじにおいてはかなり射幸心をあおるような広告がなされていると。そういったことで、今後、副次的弊害の防止については今以上の対策を講ずる必要があるんじゃないかと個人的には思っているところです。
それから、IR、カジノを含む統合型リゾートについては、カジノ管理委員会の厳格な監督を通じて、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性は公営競技よりも優れたものになることが想定されております。また、副次的弊害の防止に関しましても、ギャンブル依存症や入場料規制等の公営競技で全く取り組まれていないことを新たに取り組もうとしている。
以上を踏まえますと、IR、カジノを含む統合型リゾートは刑法の賭博罪の違法性阻却の要件を十分に満たすものではないかと私個人は現在思料している次第でございます。今回の国会の審議を聞きまして、こう確信した次第でございます。
次に、マネーローンダリング対策について申し上げます。
実は、マネーローンダリングでちょっと注意していただきたいのは、よくマネロン、マネーロンダリングと言いますけれども、政府における正式な用語はマネーローンダリングでございます。ちょっとそこを御注意していただきたいんですけれども。
その意味合いというのは、十六ページに出ているように、犯罪で得た収益を、それを身元を分からなくするというのがこれマネーローンダリングというもの。
十七ページを見ていただきますとおり、これについては、FATF、要は金融活動作業部会という政府間会合で厳重に規制をしておりまして、勧告を出しております。これが各国の法律のスタンダードになっております。カジノについても、このマネーローンダリングの防止のため、免許制、犯罪者、その関係者の所有、経営、運営の防止、マネロンテロ資金の供与対策の義務の遵守措置を設けることといったことを求めておりまして、そのために、一定の基準以上賭けをする顧客の本人確認義務、記録の作成保存義務などを課しております。
我が国においては、犯罪による収益の移転の防止に関する法律、いわゆる犯罪収益移転防止法においてこれが規制されているところでございます。こちらについては、日本のマネロン規制、非常に弱いねということを言われておりますが、今日お配りしている、皆さんにお配りしたこちらの本、私が書いた本でございますが、日本の法律の規制もこの十月に国際基準に到達しました。ですので、カジノが日本にやってきたときも十分にこれに対応できるというふうに私は考えております。
そして、カジノにおけるマネーローンダリングについてどう防止するかということもありますけれども、二十一ページを御覧ください。このカジノの導入に当たっては厳格な背面調査ということを導入することが考えられております。それは、民間主体の五%超以上の有効議決権を有する主要株主、経営者、主要な管理職、直接、間接にゲームの運営に関与する職員、それについては国際基準と同じ書式の手続によって背面調査をする。
今日お配りをしているこちらのネバダ州の背面調査の、私、ちょっと申請書の一覧を日本語訳したものですけれども、非常に膨大なものです。これはまさに平成の黒船と呼ばれるようなものでございまして、今まで日本にはないような免許申請を求めていると。主体となるIR事業者には反社会的勢力やマネーローンダラーが関与することはまず考えられません。
米国においては、ここについて、家族に関する情報、それから個人の全ての資産を五年以上のものを出したり家族の情報も出す。それから、離婚した相手についても、その離婚した配偶者のところに行って、どうして離婚したかとか、そういったことも聞くということで、非常に厳格なことをやっている。
二十三ページを御覧ください。
では……