新里宏二の発言 (内閣委員会)
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○参考人(新里宏二君) 弁護士の新里でございます。
本日、参考人としてお呼びいただいて発言の機会をいただいて、本当に感謝申し上げるところでございます。
私は、このいわゆるIR法案、又はカジノ解禁推進法案と言いますけれども、反対の立場から御意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、カジノの経済効果ということでございます。統合型リゾート、IRは、投資、雇用が期待でき、経済を活性化させる切り札になるだろうとも言われております。アメリカの投資銀行は、日本のカジノの経済効果を四兆円などとも試算しております。その中で、その狙いが日本人の金融資産であることも明らかにしております。
日本ゲーミング学会の谷岡一郎氏は、カジノの推進について、海外からの投資が盛んになり、高齢者のたんす預金など世の中に出てきにくい金が回り始めると紙上で明言されております。
平成二十六年五月、アメリカのカジノ運営会社であるサンズ社の会長は、日本のカジノに五千億ないし一兆円を投資するとも述べております。それだけ短期的に巨利を上げることができるということでしょうか。
日本にはカジノ産業についての蓄積はなく、海外からの資金及びノウハウに頼らざるを得ません。日本人の金融資産がカジノを通じて海外に散逸することの危惧の念を抱くのは私だけでしょうか。
カジノ賭博は業者がもうかり、事業者のもうけはカジノでの負けの総体でございます。私自身、多重債務問題に取り組み、ギャンブルで借金をつくり、仕事、家族を失い、自分の命まで失う悲劇をつぶさに見てまいりました。カジノ賭博は、多くの者が財産を失い、依存症へと追い込まれる。カジノは不幸をまき散らすビジネスではないのでしょうか。人の不幸を前提とした成長戦略に大きな疑問を感じざるを得ません。
次に、日弁連の意見書についてでございます。
平成二十六年五月九日、日弁連は、カジノ解禁推進法案に反対し、その廃案を求める意見書を採択しております。今日の資料一、二で付けておきました。カジノ解禁推進法案の問題点について、カジノ経済効果への疑問、暴力団対策上の問題、マネーロンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響、民間企業の設置、運営によることの問題を指摘しております。
本日は、その中でギャンブル依存症の問題及び民間企業の設置、運営によることの問題について触れたいと思っております。
まず、ギャンブル依存症でございます。ギャンブル依存症の問題は極めて深刻です。ギャンブル依存症は、慢性、進行性、難治性で、放置すると自殺にも至ることもある極めて重篤な疾患でございます。
我が国において、平成二十六年三月の厚生労働省研究班による調査結果、資料三で付けておりますけれども、成人男性八・七%、成人女性一・八%、全体四・八%で、推計数は五百三十六万人に達すると言われております。他方、アメリカでは、ルイジアナでは一・五八%、オーストラリア、男性二・四%、女性一・七%、フランス一・二四%などと比べると極めて高い数値となっております。
日本には、公営ギャンブルがあるほかにパチンコが地方の隅々にも存在しています。世界のスロットなどの遊技機械の六割以上が日本にあることがギャンブル依存症問題を深刻化させております。
カジノは、利益を上げるために多数の賭博客を得ようとするのは当然であり、カジノの設置によってギャンブル依存症の患者が増加することは明白でございます。カジノの売上げによってギャンブル依存症対策を推進するとの見解もありますが、ギャンブル依存症問題の深刻さからすれば、ギャンブル依存症対策はカジノ解禁の問題とは別個にその対策を強力に推進すべきものと考えます。
本年九月、九州の弁護士と弁護士会の集まりであります九州弁護士会連合会で、ギャンブル依存症のない社会をめざしてと題するシンポジウムを開催しました。弁護士会側から、ギャンブル依存症問題の解決のために必要な基本法の制定を提案をしております。資料四でございます。
次に、民間企業の設置、運営によるところの問題でございます。
日本では、賭博は太古の昔から厳罰をもって禁止され、記録上確認できるのが持統天皇によるすごろく禁止令であることは、国会の議論でもなされているところでございます。現行刑法は、賭博及び富くじに関する規定、刑法百八十五条以下を設けております。他方、特別法、競馬法、自転車競技法等により賭博罪、富くじ罪に該当する行為を正当化する規定が置かれており、実際上は、これらの公認された賭博、富くじの枠外で行われ、違法行為を惹起し、暴力団等の資金源となるような賭博、富くじが処罰の対象とされております。
カジノについて違法性阻却を求めるかどうかについては、本年十二月七日、法務省のペーパー、資料五を付けておりますけれども、八項目が示されております。
それによりますと、「これまで刑法を所管する法務省の立場からは、例えば、目的の公益性(収益の使途を公益性のあるものに限ることも含む。)、運営主体等の性格(官又はそれに準じる団体に限るなど)、収益の扱い(業務委託を受けた民間団体が不当に利潤を得ないようにするなど)、射幸性の程度、運営主体の廉潔性(前科者の排除等)、運営主体への公的監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害(青少年への不当な影響等)の防止等に着目し、意見を申し述べてきたところであり、カジノ規制の在り方についても、同様である。」とされております。
この括弧書きにつきましては、これまで明らかにされていないことが今般明らかになってきております。この八項目につきましては、日弁連の意見書でも指摘したところでございます。括弧内の指摘を前提といたしますと、民営カジノでは、従来の法務省の見解からすると合法の余地はないのではないかと考えているところでございます。
次に、韓国の江原ランドの問題について指摘したいと思います。
韓国では、二〇〇〇年、国内十七番目のカジノとして、自国民が入れる江原ランドがオープンします。ソウルから二百キロほど離れた旌善郡に位置します。かつては炭鉱でしたが、二〇〇〇年、カジノリゾートとして、江原ランドとしてオープンし、当初はカジノの単体でしたが、二〇〇三年に、四百七十七の客室を有するホテルカジノとして全面リニューアルし、周囲にはスキー場やゴルフ場も併設した複合型観光施設となっております。
中毒管理センターも併設され、十三年間で利用者は五万人、ランド内で自殺した人は四十八人を数えているということでした。ランド側も、当初は二十四時間営業だったものを二十時間に短縮、客は入場記録が管理され、一か月の利用は十五回に制限されているとも言われています。
私は、平成二十六年八月に江原ランドにも訪問しております。二〇一二年の入場者数は約三百万人、国へ納める税金は年間四百七十五億円、三千人いる従業員の六割は地元採用と聞いております。それでも、カジノが開業した年から人口が減少し、子育て世代が出てしまい、人口減少に歯止めが掛からないと言われています。
実は、江原ランド最寄り駅であります舎北駅のバス停、電話ボックスには名刺大のおびただしいサチェ、日本の闇金の広告が出されております。これについては資料六を見ていただければと思います。昔の日本の風俗産業が電話機に名刺大の広告を出したものと同様でございます。明らかに闇金がばっこしていることが予想されます。
駅へ上がる、駅に小型バスが止まっておりました。カジノホームレス宣教会の相談所のようでした。担当者は不在でしたけれども、バスの後ろには少女がポスターを掲げている写真が貼ってありました。これがその写真でございます。お父さん、お母さん、自殺しないでくださいと書かれています。江原ランドの自殺者が急増し、このポスターになったのではないかと思っているところでございます。江原ランド周辺の質屋街については、その異様な雰囲気がNHKのニュースでも取り上げられております。
他方、韓国でも、依存症対策としてカジノへの入場規制がなされております。家族要請、本人要請、一般入場規制もなされていると言われております。韓国では、カジノに関わる賭博中毒などが大きな社会問題となっております。
韓国では、ギャンブル産業の売上高が二〇〇九年に十六・五兆ウォンとなっております。他方、国家ゲーミング産業統合監視委員会のホームページの賭博問題の社会・経済的費用研究によると、経済と財政、雇用、犯罪及び法律、及び健康及び福祉、それぞれについての金額を推計し、賭博中毒者らの年間総社会・経済的費用として七十八兆ウォンと指摘しております。資料七で付けているところでございます。
負の影響が経済効果を大きく上回ることは、日本においてカジノを解禁するかの議論をする上では極めて実証的なデータだと考えるところでございます。
さらに、江原ランド依存症管理センターからいただいた資料の最後の記載が示唆に富むものでしたから御紹介させていただきます。資料八でございます。
どれだけ徹底した依存症管理システムを備えても、ギャンブル産業の副作用、家産の蕩尽、自殺、地域共同体の崩壊などを根本的に防ぐことはできないので、地域再生戦略としてカジノなどのギャンブル産業を誘致することは非常に慎重を期すべきであり、誘致の前には徹底した準備が必要であると記載されておるところでございます。
次に、日弁連の平成二十六年八月のシンガポール調査についても少し触れたいと思います。
シンガポール調査の目的は、日本のカジノが観光目的で解禁したシンガポールを参考に企画されていること、シンガポールではカジノの利用は自国民に許されていますが、百シンガポール・ドル、約八千円でしょうかの入場料を課し、家族、本人、政府からの入場規制を掛ける仕組みがあること、これについても日本で参考にするとされていること、シンガポールはカジノの負の影響を抑えることができているのだろうかということを依存症支援の現場から確認しようとしたものでございます。
シンガポールは、御承知のとおり、カジノを解禁したのは二〇一〇年であり、カジノは二か所、MICEを充実させたマリーナ・ベイ・サンズ、家族向けアミューズメントを充実させたワールド・リゾート・セントーサでございます。人口は約五百万人、都市国家でございます。
依存症の支援組織であるワンホープセンターではギャンブル依存の相談が急増し、五年前には二百から三百件であったものが五百件台に急増しているということでございました。まさしくカジノが影響しているということでございます。自国民に入場料を取ることについては、入場料分を取り戻そうとすること、時間いっぱいゲームをすることから依存症対策として機能していないとのこと、さらに、入場制限についても、ここへの相談者は制限者であり、それも機能していないとの認識でございました。
平成二十五年秋から新しいガイドライン、ビジット・リミット・ガイドラインによって、賭博依存国家評議会、NCPGから月六回以上の利用者には通知を出し、銀行口座などを自己申告させること、カウンセリングを受けることを通知するというような仕組みとなっていることでございました。協力的でない者に対しては、標準的な基準を基に個別ケースで調整をして、一か月のカジノへの入場回数の制限ができることになっているということも報告を受けました。
調査結果からすると、自国民への入場料、入場制限は、依存症対策としては機能していないのではないかと言わざるを得ません。
また、支援団体二か所での聞き取りで、ローンシャークがばっこしていることも確認されました。依存症と借金、ローンシャーク問題はほぼ重なっているとの認識でございました。
最後になります。
新聞各紙の世論調査では反対が賛成を大幅に上回り、各社説も拙速な審議に疑問を呈しております。特に、本日述べた賭博の違法性阻却が民間カジノで可能かどうか、十分御審議お願いし、意見陳述を終わります。
御清聴ありがとうございました。