脇紀美夫の発言 (沖縄及び北方問題に関する特別委員会)
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○脇参考人 皆さん、おはようございます。ただいま御紹介をいただきました、公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟の理事長を仰せつかっております脇でございます。
個人的には、北方四島の一つ、国後島の生まれでありまして、私が生まれた年に第二次世界大戦が始まりました。四歳のときに戦争が終わりまして、その後三年間島にとどまって、最後の引き揚げで本土に渡ってまいりました。以後、それ以来、今住んでいる羅臼町に住まいさせていただいております。
本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、鈴木委員長を初め委員皆様の御高配によりまして、北方領土の元居住者を代表して意見を申し上げる機会をいただき、厚く感謝を申し上げます。
また、日ごろより、私ども元島民や後継者に対する支援措置を初め、当連盟に対しまして格別なる御理解と御支援を賜っていることにつきましても、この際、御礼を申し上げたいと思います。
本日は、当連盟の設立の経過や活動の内容については、時間の関係もございますので詳しくは申し上げませんが、既に皆様御承知のことと存じます。当連盟の主な課題に関して、意見や要望などを申し上げてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
当連盟は、御案内のとおり、昭和三十三年、社団法人として設立しております。当時、幾つか存在していた北方領土返還要求を目的とするいろいろな団体が統合する形で発足し、これまで六十年余りが経過いたしました。
当連盟では、北方領土返還要求運動に関する取り組みを初め、領土問題に関する理解を深めてもらえるよう、各種の啓発事業や、元島民とその後継者による語り部の活動を進めています。
また、元島民への援護対策の一環として、財産権を行使できなかったことや、土地など残置財産に関する問題などについて検討するほか、元島民やその家族がふるさとの島を訪問する、いわゆる自由訪問や墓参に関する活動を進めているところでもございます。
このほか、今後の活動を担う二世など後継者のリーダー育成や活動しやすい環境づくりに取り組んでおります。
それでは、千島連盟の主な意見、要望について順次申し上げます。
お手元には、当連盟の組織と事業というタイトルの冊子のほかに、宣言と決議と要望書を配付させていただいております。
このうち、宣言と決議は、先月、五月二十九日に開催されました当連盟の本年度の総会において決定、採択されたものでありまして、宣言は、領土問題や返還要求運動に関するものであります。また、決議は、領土問題に関することを含め、外務省や内閣府など関係する省庁や機関への要望、要請に関する事項を掲げており、要望書には、これらの要望項目に関して、その背景や具体的な要望内容を記載しているところであります。
まず、領土問題に関してですが、宣言をごらんください。
当連盟では、これまで一貫して、北方四島の早期一括返還をスローガンに掲げ、活動を進めております。当時一万七千人余りであった元島民は、既に多くの方が亡くなり、この三月には六千百人余りとなり、その平均年齢は八十二歳を超えています。長い年月が経過しましたが、領土問題の解決、四島の返還に至る道筋は、いまだに明確になっておりません。
昨年十二月、ロシアの大統領が来日して行われた首脳会談には、私どもとしても、何らかの具体的な進展があるのではないかという期待を寄せていたところでありますが、領土問題の解決に向けた具体的な道筋あるいは成果といったものは示されず、大変残念な結果となりました。
政府においては、これまでの発想にとらわれない新しいアプローチという考えのもと、ロシアとの交渉を進め、四島の帰属の問題を解決し平和条約の締結を目指していくこととしております。
安倍総理は、平和条約の締結や領土問題の解決に関して、これまで幾度となく強い意欲と決意を表明されていますので、早期に四島返還の具体的な道筋が明らかになるよう期待するとともに、私どもとしても、外交交渉の後押しとなるよう、引き続き、返還運動などに取り組んでいくことが重要と考えております。
政府の方針である新しいアプローチの一環として、今後、北方四島において共同経済活動が進められることになりますが、この活動は、あくまでも領土返還に向けた環境づくりとして行われるものでなければならないものと考えております。
いつの間にか、経済活動そのものが目的となってしまい、領土問題が置き去りにされることがあってはならないと考えています。また、日ロ両国の企業による合弁事業など具体的なプロジェクトが進められる場合には、我々元島民の土地などの権利が侵害されることがないよう、必要な措置等を求めていくことが必要と考えております。
次に、墓参や自由訪問事業に関してであります。
昨年十二月の首脳会談後の共同記者会見では、安倍総理は、自由に墓参りをし、かつてのふるさとを訪問したいという元島民の願いをかなえるための検討を進めることを合意した旨の発言がありました。これに加えて、ロシアのプーチン大統領からも、これまで閉じられていた地域への最大限自由なアクセスを保障するという、私どもにとって大変喜ばしい発言がありました。
こうした両首脳の発言や、これまでの事業の結果などを踏まえ、墓参や自由訪問事業に関して幅広く要望してまいりたいと考えております。
要望書の一ページから二ページ目の「北方領土墓参・自由訪問事業等の充実と円滑な実施」をごらん願います。
(1)の墓参の関係では、これまで立ち入りが制限されている墓地も含め、希望する地域での実施や、墓地の現地調査、荒れた墓地の修復、保全、環境整備などが重要なことと考えております。
次に、(2)の自由訪問の関係では、元島民の子の配偶者や孫などが訪問の対象者として参加できるよう要望しております。
また、(3)の墓参と自由訪問に共通する事項についてでありますが、今月十八日には、政府が実施する形で、飛行機を利用して国後島と択捉島での墓参を急遽実施していただくこととなり、大変感謝申し上げる次第でもございます。今後とも、可能な限り、自由訪問や墓参での飛行機の利用が可能となるよう配慮いただきたいと考えております。
また、国後島と択捉島であっても空港から遠い地域や、色丹島や歯舞群島のように空港がない地域では、飛行機が使えませんので、ヘリコプターの利用といったことも御検討いただくようお願い申し上げます。
このほか、先ほど墓参に関して申し述べたところでございますが、墓地や元居住地など希望する地域では、制限を受けることなく立ち入りができ、自由な行動を可能としていただきたいと思います。
手続の改善に関しては、この八月末に実施予定の勇留島と志発島の墓参の際には、国後島の古釜布以外の場所に入域、出域の手続を行うポイントが設けられる見込みとなっていますが、これまでのところ、自由訪問では同様の措置が見込まれておらず、残念な状況にあります。
また、何よりも残念なことは、今年度の第一回目の自由訪問として、五月十五日から四日間の日程で国後島を訪れた際の対応についてであります。
訪問予定の三地域のうち二つの地域では、これまで以上に厳しい立ち入り制限がされることとなり、また、従来何の制限もなかった地域でも、全く立ち入りが認められないという事態が生じました。
訪問を待ち望んで参加した皆さんのお気持ちを思うと、極めて遺憾な問題であると受けとめております。
五月二十四日には、外務省と内閣府に対し、今後実施される自由訪問や墓参において、希望する地域において、円滑に、また確実に実施できるよう急遽要請、申し入れを行ったところであり、今後こうしたことが生じないよう、関係の皆様のお力添えをぜひお願いいたします。
次に、要望書の三ページの「元居住者の権益の保護等」についてであります。先ほども申し上げましたが、財産権に関する問題であります。
連盟においては、これまでも、土地などの残置財産の問題とともに、財産権を長年にわたり行使することができなかった損失に関して、必要な措置を行うよう国に求めてきているところであります。
共同経済活動といったことが議論されていくこの時期、このタイミングで、ぜひ要望書に掲げているこれらの問題が解決、実現されるよう、政府を初め委員皆様の御尽力をお願いしたいと考えております。
最後の項目、要望書の四ページの「後継者の育成、活動への支援」についてであります。
返還要求運動を初め、連盟の活動については、今後さらに二世、三世といった後継者の皆さんに大きな役割を担っていただかざるを得ない状況にあります。
当連盟としては、後継者活動の中核となるリーダーの育成を初め、後継者に関する事業の充実に努めていくとともに、(3)に記載のとおり、北対協融資については、より多くの後継者の方がその対象となるよう、制度の改正、充実されることが極めて大事なことと考えており、委員皆様の御理解と御支援をお願いいたします。
終わりになりますが、私ども元島民は高齢となり、残された時間は本当に少なくなっていますが、一日も早く北方領土の返還が実現するよう、多くの後継者を初め、全国各地で返還要求運動に御尽力いただいている関係団体の皆さんと協力し、連携しながら、外交交渉の後押しとなるよう力を尽くしてまいることをここにお誓い申し上げ、私の陳述といたします。
本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)