浅田正彦の発言 (外務委員会)

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○浅田参考人 京都大学の浅田正彦でございます。
 本日はお招きをいただきまして、ありがとうございます。
 日印原子力協定の意義につきまして、考えるところを述べさせていただきたいというふうに思います。
 原子力協定というのは、原子炉あるいは核物質のような重要な原子力資機材の継続的な輸出入をする場合に、その平和利用を担保するという目的で締結されるものでありまして、日本としましてもこれまで十三の国との間で締結しておりますし、一つは、国際機関との間の協定であります。
 以前は、日本の締結する原子力協定というのは、日本が原子力資機材を輸入するということのための協定というのがその主要な性格であったわけですけれども、最近では、日本から原子力設備を輸出するという側面が強くなっているというふうに思います。インドとの関係におきましても同様でありまして、日本からの原子力設備の輸出という側面が強いというふうに思います。
 したがって、日印原子力協定というのは、一方で日本の原子力産業の国際展開という側面あるいはインドにおける地球温暖化防止という側面に加えまして、日本の原子力協力というものが核不拡散・核軍縮といった観点からマイナスに働かないようにというふうな要請という、この二つの種類の要請を満たす必要があるというふうに思っております。
 前者の要請というのは、すなわち、原子力の国際展開というもの、あるいは地球温暖化防止というものが協定によって促進されるというのは明らかでありますので、私の方からは、核不拡散・核軍縮の観点を中心に述べたいというふうに思います。
 核不拡散については、一九六八年のNPT、核不拡散条約によって、五つの国以外の国は核兵器を保有できないということになっておりますけれども、インドは、これは差別的であるということで一度も加入したことがないということでありますけれども、他方で、一九七四年と一九九八年に核実験を行って、核不拡散体制の外で核保有国の地位を得ておるということであります。
 しかし、二〇〇八年になりますと、日本もメンバーであります原子力供給国グループ、NSGといいますけれども、この紳士協定と言われる緩やかなグループにおいて、インドを例外扱いにするということがコンセンサスで決定されています。これによって、NPTに加盟しておらず核を保有しておるインドとの間で、インドに対して原子力供給を行うということが認められることになりました。
 こういった二〇〇八年の決定を受けて、アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、カナダといった九の国がインドとの間に原子力協定を結んでおりますし、さらに三つの国が署名まで至っているというところであります。
 厳密に言いますと、既に核を保有しておるインドとの協力で、核不拡散上の問題が生ずるということにはなりません。インドが核を保有した後に、インドに対して核不拡散上の意味のある措置をとれるというわけではありません。
 したがって、日本として主として考慮すべきは、インドからのさらなる拡散の防止と、それから核実験あるいは核分裂性物質の生産についての核軍縮の側面ということになろうかと思います。
 原理原則の問題としましては、NPTに加入せず核兵器を保有するインドとの間に原子力協力を行うということについては、反対という立場もあり得るかと思います。
 他方で、先ほど述べましたように、日本の原子力産業の国際展開、あるいは地球規模の温暖化の防止という観点に加えまして、インドが核を保有しているということを前提とした場合には、インドを核不拡散のレジームのメーンストリームに取り込むというふうな側面にも注目しなければならないというふうに思います。
 先ほど言いましたように、ここでは、日本のインドに対する原子力協力が核不拡散あるいは核軍縮の観点でマイナスに働かないかという点を中心に述べたいと思います。
 第一には、原子力資材、すなわち核物質でありますけれども、かつて米印の合意の際に、アメリカがインドに提供したウラン自体は平和目的に利用されるけれども、それによってインドの国産ウランがインドの核兵器の生産に振り向けられるというふうな問題がないかというふうなことが指摘されておりました。
 しかし、日本の場合には、インドに対してウラン等の資材を提供するということはありませんので、日本については米印の場合のような問題はそもそも起こらない。それどころか、むしろ、諸外国の提供したウランが日本の提供した原子炉等で使用される場合には、日本の原子炉に対する保障措置といった規制がかかっているわけですから、各国の提供したウランに対しても平和利用、あるいはそうした保障措置の提供という効果も期待できるかと思います。
 第二が、原子力機材でありますけれども、これは原子力設備です。日本が主としてインドに対して提供するというのはこの原子力機材、原子炉等の機材であろうというふうに思います。問題は、その中でも、濃縮、再処理といった核兵器の開発に直結するような機材あるいは技術というものが提供された場合には、これは大きな問題になろうというふうに思いますけれども、この点については協定の二条四項というところで、協定が改正されなければ提供されないというふうなことになっております。
 この点に関連して、改正の可能性があるかどうかということですけれども、先ほども少し触れましたNSGというグループ、原子力供給国グループのガイドラインの中に規定がありまして、二〇一一年の改正によって入ったものですけれども、濃縮、再処理のような機微技術あるいは設備というのは、NPTに入っていない国には提供しないということになっています。
 したがって、インドがNPTに入っていない以上は、日本が協定を改正して、インドに対してこういった技術を提供するということにはならないというふうに思います。
 第三に、インドの核実験との関係でありますけれども、これが日印原子力協定の交渉では最も争われたところだというふうに理解しております。
 日本は、核実験が行われた場合には原子力協定を終了、あるいは協力を停止するというふうな立場であったのに対して、インドは、現在行っている自発的な核実験のモラトリアムが法的な義務になるというのは受け入れられないというふうな態度であったわけですけれども。その交渉の結果が、協定と同時に署名されました、やや奇妙な名称ですけれども、見解及び了解に関する公文というものに取りまとめられておるというふうに思います。
 国会では、これまで、この公文の法的性質というものが議論になっているというふうに思いますけれども、私自身は、この文書が法的にどのような地位を持っているかということを議論するのは余り生産的でないというふうに思います。
 といいますのは、協定の十四条自体において、締約国は理由のいかんを問わず一年の事前通告をもって協定を終了できるというふうに書いてあります。したがって、この公文があるかないかを問わず、日本としては、あるいはインドもそうですけれども、一年の事前通告で協定の終了はできる、あるいは協力の停止もできるということであります。
 ただ、公文は無意味かといいますとそうではありませんで、公文は政治的には極めて重要であるというふうに思います。
 公文では、簡単に言いますと、核実験が行われた場合には協定を終了しあるいは協力を停止するということが書いてあるわけですけれども、これは、日本が協定の十四条に書かれておる一方的な終了の権利を、核実験が行われた際には行使するというふうな意図を明確化したというふうな意味がありまして、この文書に日本のみならずインドも署名しているということは、それなりの政治的な意味があろうというふうに思います。
 日印協定というのは、日本の原子力産業の国際展開やあるいは地球温暖化防止の観点に加えて、さらにはインド、まあ、インドはNPTに入っていないという事実はありますので、それを前提にして、しかもインドが核兵器を持っているという事実を前提とした場合には、インドを核不拡散体制に事実上取り込む、さらには、こういった協定を結ぶことによって、核実験を行えば協定が終了するというふうなことで、事実上の核実験に対する抑止というふうな効果も見られるのではないかというふうに思っております。
 以上、簡単ではございますけれども、考えているところを述べさせていただきました。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 浅田正彦

speaker_id: 10796

日付: 2017-04-28

院: 衆議院

会議名: 外務委員会