関村直人の発言 (環境委員会)

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○関村参考人 関村と申します。
 私は、東京大学大学院工学系研究科の原子力国際専攻で教授を務めさせていただいております。私は、原子力発電所のような複雑なシステムの安全性それから長期的な保守管理やマネジメント、これを研究課題とさせていただいております。
 まずは、このような場で参考人としての意見陳述の機会をいただきましたことに厚く御礼を申し上げたいと思います。
 私といたしましては、今般の改正法案による原子炉等規制法の見直し、この内容につきましては賛同させていただきたいというふうに考えているところでございますが、しかしながら、具体的な制度の運用を行う際には、あるいはその準備段階として考えられる期間の間に、これから幾つかの項目に関して述べさせていただきますような事項につきまして十分な注意をして、法改正の目的が達成されて効果的な制度の運用が行われていくように、これは、規制機関と、被規制者としての事業者、それからさまざまな専門を有する方々が努力を惜しまないということが極めて重要と考えている、こういう立場からお話をさせていただければと思います。
 まず第一に述べさせていただきたい点が、国際原子力機関、IAEAによるIRRS、総合規制評価サービス、この意義がどのようなものであるかという点について意見を述べさせていただければと思っております。
 私は、原子力規制委員会に設置されております原子炉安全専門審査会の会長を務めさせていただいている、こういう立場にございます。
 この審査会に対しましては、平成二十八年一月にレビューを受けたIRRS、これはIAEAの総合規制評価サービスでございますが、これにおいて指摘された事項に対して原子力規制委員会の取り組み状況の評価や助言を行うこと、こういう指示を原子力規制委員会より昨年三月にいただいているということでございます。これを受けて、学識経験者で構成をされております原子炉安全専門審査会及び核燃料専門審査会におきまして、取り組み状況の評価や助言を議論してきている、こういう状況にございます。
 この議論のベースでございますが、まずは、二〇〇七年の段階で原子力規制機関が受けたIAEAによるIRRS、これに対しましては、そのフォローアップができなかったということ。このフォローアップをする中で、本来であれば、東京電力福島第一原子力発電所の事故につながるような要因を規制機関として見出し、それを排除していくということにつながったのではないかというふうに考えているところですが、それができなかった。その反省に基づいて議論をしているという点が非常に重要な点だというふうに考えて、議論を進めさせていただいているということでございます。
 もう一点、IRRSの意義についてどのように考えるかということでございますが、IRRSで指摘された勧告、提言等は、IAEAの基準に基づいているというものでございます。しかし、さらに重要な点は、国際的な原子力安全の水準というものには、その背景に、基準としては明示されていないような国際的なすぐれたエクセレンスといいますか、こういうものがあるということでございます。
 したがって、IRRSというものは、そのエクセレンスと現状の規制の間のギャップ、これを勧告及び提言として具体的に示していただいた、こういうふうに考えているところでございます。
 次に、特に検査制度に関しまして、いかに安全水準の向上を図るかという観点でございます。これは、原子力事業者が行う安全確保、この責任をいかに浸透、定着していくかという点でもございます。
 原子力事業者が安全確保の最も重要な責任を負っているということは、IAEAの基本安全原則、この第一番目に、事業者が第一義的な責任を負っているというふうに明示をされておりますし、これは国際的ないわば常識というふうに考えていいものというふうに思っています。
 これに対しまして、規制機関によるチェックあるいは規制の仕組みというのは、事業者がこの責任を果たすことを促すものでなくてはならない。このために、事業者のあらゆる保安活動に対する監視と評価の仕組みを検査制度として確立する、これによって、規制機関それから事業者、これらがお互いに安全水準を高め合っていくんだということを進める、スパイラルアップというふうに私は呼んでいるところでございますが、安全水準の向上をお互いに目指していくんだということが検査制度に要請されるものであるというふうに考えております。
 事業者は、検査制度の中で罰則があるからということではなくて、みずからの主体的な取り組みによって期待をされている役割を果たすんだ。このために、実際に意識改革を進め、業務改善を進め、組織体制や実務を行うというこの領域において、安全を最も大切にするという取り組みが継続的に行われていく、このためのマネジメントシステムあるいは安全文化の構築をさらに進めていくということが要請されるというわけでございます。
 このために、安全確保に関する第一義的責任を浸透、定着していくということが必要なわけですので、これがなされることを強く希望すると同時に、国会や政治家の皆様の意識や情報発信、これも極めて重要でございますので、私は研究や教育という立場でこれを進めておるところでございますが、国民の各層が同様の認識を持てるように展開を考えていただければというふうに思っております。
 三番目に、品質マネジメントシステムに関する取り組みについてお話をさせていただければと思います。
 検査制度の中では、継続的な安全性の向上を図るためにマネジメントシステムが必要である、こういうことを申し上げました。品質マネジメントシステム、これを改善していくためには、例えばISOの9001の最新版、二〇一五年版でございます、これを取り込んでいくということが必要でございます。
 IAEAにおきましては、昨年、福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、その教訓を取り込んだ形で改訂された全般的な安全要件、GSRパート2というふうに呼んでおりますが、これがリーダーシップと安全のためのマネジメントということでございますが、この国際標準を積極的に取り入れていくということが重要でございます。
 このようなマネジメントシステムの確立に基づいた安全対策の強化は、事業者に加えて、IRRSでも指摘されているところでございますが、規制機関にも求められるというものでございます。
 一方で、事業者の取り組みに関しては、より具体的な現場レベルでの取り組みに適用するためのガイドライン、具体的にはこのように技術者が進めるべきだというガイドラインを、事業者はもちろんでございますが、学協会とか関連の機関、あるいは国際的な機関の力もかりながら環境整備を進めていくということが必要であろうというふうに思っておりますし、もともとの設計の思想、これが運転段階になった段階で改善を進めていくわけですが、運転の段階で品質マネジメントシステムが動き、それをきちっと引き継いだ形で運転段階でも安全性の向上が図れるようにしていく、こういう考え方が重要であろうというふうに考えているところでございます。
 四番目に、原子力の安全を脅かすリスク、これに関する情報を活用していくということ、それから、安全水準の実績をどのようにはかって効果的な監視、評価のシステムを動かしていくか、安全水準というのを実績としてどのようにはかっていけばいいか、こういう問題について意見を述べさせていただければと思います。
 安全上の重要性を共通認識というふうにしていくためには、客観的な物差しが必要でございます。あるいはレベル感という言い方も言えるかと思います。
 リスクに関する情報の活用というのは、米国の前例を見ても、リスクに対処していく方策とその重要性、あるいは優先順位というものを議論するために最も重要な手法であるというふうに考えております。
 しかし、リスクという言葉はなかなか難しい概念でございまして、どのような影響があるのか、例えば、ある放射性物質が容器の中に入っているとすれば、この容器がもし壊れたとすればどのようなレベルの放射性物質が外に出るのか、深刻度というものをしっかりと評価する。それから、この事象がどのような確からしさで起こるのか、確率であれば定量的に言えるかもしれません。さらに、どのような順序でこのような事故、トラブルが起こっていくのか、シナリオでございますね。こういう三つの要素を検討していくということが必要でございます。
 その結果として、より高いリスクがあるものに対して対策をとって、それを継続的に進めていくということは、規制機関それから事業者、その双方にとって、限られたリソースを安全性の向上に有効に活用するためには必要な要素でありますし、このためにリスク情報に基づいた重みづけが必要になってくるというふうに考えております。
 しかし、そのリスクの情報を扱おうとしますと、不確実な情報が出てくる。その不確実な情報の幅をどのように考えていくかという大きな課題があることは確かでございます。例えば、計算機シミュレーションによってリスクを評価しましたというわけですが、これには適用性に限界があるという場合もあるということです。
 したがって、定量的な、あるいは確率論的なというふうに言ってもいいと思いますが、こういう手法を活用することに加えて、定性的な、比べるとどっちがリスクが高いんですかという定性的な重要度区分、それから、従来的な、基準はここですよという決定論的な手法の取り入れ、これらをうまく組み合わせていくということが必要だというふうに思っております。
 さらに、安全対策のレベルをその後の対応に反映させていくためには、リスク情報の活用を通じてその実績を評価していって、規制機関による監視と評価を効果的に進めるということも重要だというふうに考えております。
 さらに、評価された実績がわかりやすい形で、国民にもコミュニケーションという形で議論の輪が広がっていくということを切に希望するわけでございます。
 その意味で、五番目に、多様なステークホルダー間のコミュニケーションの強化、これが必要だというふうに考えております。
 安全規制や保守管理に関する規格や基準、さらに、よりブレークダウンしたガイドラインというものを整備していくというものは、規制機関の力だけでは不十分であるという可能性が十分あるというふうに思っておりますし、これに対して、学協会等の場あるいはもう少し広い国際的な場で一層議論が進み、実効性の高い規格や、よりブレークダウンした規格基準が学協会の規格としても提示をされていって、それをうまく使いこなしていただくということも必要だというふうに思っております。
 それから、新しい知見が出てきた場合、リスクを考えていく上で、このデータは警告を発しているんだということをしっかりと理解して、今まではわからなかったリスクが生じているのであれば、それをうまく取り込んでいくような仕組み、これも必要になるのではないかなというふうに考えているところでございます。これに関しましては、自由な議論が進められる場というものが非常に重要だというふうに思っているところでございます。
 以上で私からの意見陳述を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 関村直人

speaker_id: 27773

日付: 2017-03-17

院: 衆議院

会議名: 環境委員会