田部井康夫の発言 (厚生労働委員会)

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○田部井参考人 認知症の人と家族の会の田部井と申します。
 認知症の人本人及び介護家族の立場から意見を述べさせていただきます。
 まず、前提といたしまして、二〇一五年の改定というのが、利用者あるいは家族の生活には極めて厳しい状況をもたらしているということを御理解いただきたいというふうに思います。
 家族の会は、二〇一五年の改定が非常に厳しいものになるということは十分予測しておりました。そこで、二割負担となった人あるいは補足給付から外れた人の利用料支払いが始まった時点で、この二割負担と補足給付を中心とした実態調査を行いました。
 その結果、二割負担と補足給付から外れたことが重なった場合に、一挙に五万円から十万円に近い負担増となって、生活が成り立たない、あるいは、いつまで生きられるのか、サービスを減らさざるを得なかった、つましくやりくりしてやっと人並みの生活をしているのに、食費を削るしかない、介護を続ける気力さえ失わせる、そういった非常に厳しい状況に追い詰められている利用者が相当数いることがわかりました。これは、私どもが当初想像した以上の影響であったと言うことができます。
 そこで、家族の会では二〇一六年四月に、次の四項目の要望書を塩崎厚生労働大臣宛てに提出いたしました。資料につきましては、ページを打っていない一枚物の資料、撤回を求める要望書をごらんいただきたいというふうに思います。
 まず第一に、要支援の人に対する訪問介護、通所介護を介護保険給付から外すことを撤回し、引き続き介護保険給付の対象とすること。二番目、利用料の二割負担への引き上げを撤回すること。三番目、特別養護老人ホーム入所対象者を要介護三以上に限定しないこと。四、施設入所者の食費、部屋代の補足給付の要件を二〇一五年の七月以前に戻すこと。私どもの願いは、今もこの四項目を中心にしてあるというふうに言って過言ではないというふうに思います。
 また、先ほど紹介をいたしました実態調査の結果を、二〇一六年六月、二〇一五介護保険改定についての当事者の生の声として取りまとめ、公表いたしました。これにつきましては、資料のページを打っております一から十八、つづりになっている資料をごらんいただきたいと思います。先ほど紹介をいたしました声は、わずかこの資料の一ページだけから拾ってでも、これだけの声が出てきているというのが実態でございます。そのことを十分踏まえていただければありがたいというふうに思います。
 私どもはそのような願いを持っておりますけれども、残念ながら、その後も、利用者負担増あるいは利用控えを強いるような動きというのは、とどまるところを知らないものがあります。今審議中の法案も、その流れの中で出てきているというふうに捉えております。
 それを踏まえまして、次の三点に絞って意見を申し述べたいというふうに思います。
 まず第一番目に、負担増による利用控えは本当にないのかということ、ないとすれば、その根拠はどこに求められるのかということについてであります。
 国会の審議の中で、負担増によるサービスの利用控えが起きているのではないかとの質問に対して、安倍首相は繰り返し、二割負担導入の前後において、サービスの受給者数の伸び率は、これまでの傾向と比較して顕著な差は見られないことをもって利用控えはないのであるというふうに述べておられます。
 しかし、よく考えてみていただければすぐわかりますように、受給者数に顕著な差が見られないことをもって、利用控えがないということの証明、証拠とすることはできないというふうに思います。利用者、家族は、もし利用料金が払えなければ、それを減らしてでもサービスは利用せざるを得ないわけです。ですから、減らしてでも使っていかなければ、生活は成り立っていかないわけですね。ですから、困難になっても、何とか少しでも利用して生活を成り立たせていこうというふうに考えていきますので、利用回数が減るということはあっても、利用者の数として減るということはあり得ませんので、それは、受給者数が変わらないということをもって利用控えがないということの証拠にはならないというふうに言うことができると思います。
 ですから、もし利用控えがないというのであれば、サービスの利用時間、例えばヘルパーさんの時間を短くするとか、あるいはデイサービスの時間を短くするとか、そういうことというのは十分あり得ますので、そこまで踏み込んで、サービスの種類と利用時間、あるいは利用回数まで踏み込んだ調査をやって、その上で結論を出さなければ、利用控えの有無の実態というのは明らかにすることができないというふうに思います。ですから、もしその調査をしておられるのであれば、その資料をぜひすぐに示していただきたいというふうに思います。もし調査をしていないのであれば、早急にその実態を明らかにして、次の施策を進めていく上で反映していただきたいというふうに考えております。
 一つの資料としまして、認定者全体の利用率よりも二割負担認定者の利用率というのは四%低い、全体として数的には二割負担者の中で十四万人の人がまだ利用していないという実態の資料がございます。これは、利用控えの一つのあらわれと言うことができるのではないでしょうか。利用者、家族の実態をきちんと踏まえた上で、政策を丁寧に進めていただくようにお願いをしたいというふうに思います。
 二割負担というのは、生活をしていけるかどうかのぎりぎりの人までを二割負担の中に含んでしまったという意味で、非常に私どもは罪が深いというふうに考えています。それをそのままにして次の政策に行くというのは、どうしても納得することができません。
 また、先ほど言いましたように、利用の実態調査のいかんにかかわらず、相当数の人に、私たちの調査結果に示されているような大きくかつ急激な負担増を強いる結果になっているという事実は何ら変わるところがないわけですね。その上に、さらに三割負担までを進めようという今のこの法案には、到底私ども利用者、家族としては賛成をすることはできません。
 二番目といたしまして、通所介護、訪問介護の市町村事業への移行ということについてであります。
 市町村総合事業の実施に伴いまして、要支援の人の通所また訪問介護が総合事業に移行されております。しかし、その影響はまだ十分に検証されていないというのが実態ではないかというふうに思います。にもかかわらず、結果的には撤回をされたんですけれども、まだ実態が十分検証されていないのに、さらに要支援を超えて要介護一、二の人のサービスまで総合事業に移行しようとする案がかなり強くあるということが、図らずも明らかにされたというふうに思います。
 一つ資料をお示ししておりますけれども、「まとめ」ということから始まっていて、ちょっと中途半端なんですけれども、ページが七十四からというページになっておりますが、これは、私どもがつい最近公表いたしました、認知症初期の暮らしと必要な支援、認知症の人と家族からの提言ということで、認知症の人の初期支援のあり方について、アンケートによる実態調査の結果でございます。
 家族の会が行ったこの調査によれば、要支援から要介護一、二の人のサービスの適切な利用が認知症の人のひとり暮らしを支え、また家族の就労をも支えているというふうな実態が明らかになっております。これらのサービスは、既に認知症の人あるいは家族にとって欠かせないものになっております。この実態調査に基づく提言、この提言も今お示ししました資料の中に含まれておりますので、後でよくごらんいただきたいというふうに思うんですけれども、この提言の中でも、要支援あるいは要介護一、二の人にこそ、専門職による柔軟な支援を願うというふうにされております。
 また、総合事業につきましては、これは私も直接、介護給付費分科会の中で、利用の手続について、非常に認知症の人が十分なサービスに結びつかないおそれがあるということで指摘をさせていただきましたけれども、手続的にも、基本チェックリストの利用、導入によって認知症の人が要介護認定から遠ざけられたり、あるいは、認知症があるにもかかわらず総合事業の対象とされているという例は散見されております。また、認定率を下げることが奨励されましたり、卒業ということが勧奨されていることも、認知症の家族あるいは本人にとっては大きな不安材料でもあります。
 こうした観点から、家族の会は、改めて、要支援から要介護一、二までのサービスを一体的に介護保険給付の対象とするべきであるということを要望したいというふうに思います。そして、その願いに沿わない本法案については、やはり私どもは賛成することはできません。
 それから、三つ目に、訪問介護の人員基準、報酬の見直しについてでありますけれども、まず、訪問介護は在宅介護の三本柱であることは、介護保険制度創設以来の何ら変わることのない原則であるということを確認しておきたいと思います。
 その中の家事援助につきましては、先ほど紹介をいたしました調査によれば、ADLの低下していない初期の認知症の人にとって、日常生活を変化なく送る上で不可欠の支援になっていることが明らかになっております。
 訪問介護、特に家事援助については、自立支援に資するところがないまま、だらだらと提供されているなどの批判もございますけれども、ここに表現される意味について、家族あるいは認知症の人にとっては少し違う理解を持っておりまして、だらだらということは、認知症の人に当てはめてみれば、余り状況が変わることなく過ごすということができている、つまり、病状は余り進行していないということをあらわしているというふうに思います。それは、まさに支援が適切に提供されていることのあかしであるというふうに言っていいというふうに思います。
 また、高齢の人も、徐々にではあれ低下していくのが通例でございますけれども、状況が変わらないとすれば、また援助は適切に役割を果たしているというふうに考えるのが自然であるというふうに思われます。
 認知症初期の人や超高齢の人の支援については、言葉がけ一つをとりましても、重度の人とはまた別の専門的な配慮が求められることは言うまでもありません。訪問介護が認知症初期の人に適切な役割を果たしてもらうために、訪問介護の人員基準の緩和や報酬の引き下げ、また安易に総合事業に移行することについては賛成することはできません。
 全体として法律案の基調となっております負担増、給付抑制の方向性というのは、利用者、家族の生活に困難を強いているだけではないというふうに考えます。この負担増の流れは、介護家庭以外の多くの人に今後の生活への不安を与えています。その不安が、消費性向をも停滞させたり、結果的に給付費削減以上のマイナスを生じさせていると言うべきではないでしょうか。
 今こそ私たちの生活の不安をなくす方向に政策を抜本的に転換していただくようお願いをいたしまして、私どもの意見とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 田部井康夫

speaker_id: 33905

日付: 2017-04-11

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会