福島功の発言 (総務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○福島参考人 日本自治体労働組合総連合の福島といいます。
 本日は、参考人として意見陳述を御承認いただき、ありがとうございます。
 地方自治法等の一部を改正する法律案のうち、地方独立行政法人法の一部改正について意見を述べたいと思います。
 結論的には、地方独立行政法人の業務に申請等関係事務を追加することは、窓口業務の行政サービス水準を低下させ、地方自治体の業務の集約そして統廃合を促進して地方自治体を空洞化させることにつながるものと考えており、反対であります。
 窓口業務を地方独立行政法人に委託することは、以下の三つの点で重大な問題があるというふうに考えています。
 第一は、窓口業務を地方自治体の業務から切り離すことによって、住民の基本的人権を守る自治体の機能が損なわれることであります。
 自治体の窓口業務の役割は、出生から死亡まで、住民生活の権利取得にかかわる重要な場面において、憲法が保障する基本的人権を保障することにあると考えています。国民主権や地方自治に基づく主権者としての確認や証明、そして生存権や幸福追求権に基づく権利の保障としての各種保険、そして年金、生活保護、保育など、さらには、家庭生活における権利に基づく権利の保障としての戸籍や結婚、離婚、相続など、さらに納税の義務に基づく各種の業務などがあります。
 先ほどの今村先生が述べられたアウトリーチにかかわる問題でありますけれども、こういった業務がある上で、窓口に訪れる住民の方は、自分や家族の抱えている問題が十分に整理をされないまま役所を訪れる方が少なくありません。とりあえず訪れた窓口で、自分の抱えている問題や家族の状況を話してから用件に入る方もおられます。窓口業務にかかわる自治体職員は、住民の話を聞いて相談に応じ、さまざまな制度の窓口にもつなぎながら、その人の抱えている問題を解決していきます。
 滞納している税金を納めに訪れた住民の生活の状態を聞いて、減免の要件に該当すると認められる場合については、減免申請ができることを説明したり、生活保護の窓口につなぐこともあります。
 また、税金のほかにも滞納している公共料金がないかを尋ね、国民健康保険料も滞納しているのであれば、保険証を取り上げられて病院に行けなくなる、こういうことがないように、生命や健康を優先する立場から、国保料をまず支払うよう助言することもあります。
 住民の基本的人権を保障する最善の対応ができるように、職員には深い専門的な知識が必要です。窓口に訪れた住民とコミュニケーションをとりながら、他の窓口の部署とも連携をして、住民の求める課題にきめ細かに対応できる総合的な判断力が求められます。
 窓口業務を定型的な業務とそうでない業務に切り分けて、定型的な業務とみなした業務を外部に委託すれば、本来は一体であるべき窓口業務が分断されることになります。自治体職員と地方独立行政法人の職員との間で業務について直接的なやりとりをすれば、それは偽装請負になってしまいます。
 結果、窓口業務を委託することで業務が非効率的になるとともに、自治体職員は窓口に訪れた住民の状況を直接に把握することもできず、関連する行政部門との連携にも支障が生じます。また、自治体職員の専門性やノウハウも失われることにつながります。
 第二の問題点は、住民の個人情報の管理や不正な請求などに対して、適正な対応ができなくなる、こういうおそれがあることであります。
 自治体が保有する個人の住民の情報は、常に外部からの窃盗や漏えいの危機にさらされています。窓口では、犯罪や不正な目的による申請が行われることが少なくありません。成り済ましによる虚偽の申請を見抜いたり、家庭内暴力や闇金融などの不正な請求から住民の安全、権利を守らなければなりません。
 申請に訪れた方に対して、不審な点があれば質問をし、相手の挙動などを観察しながら虚偽を見抜く熟練した能力も求められます。
 窓口業務を担う職員には高い専門性が必要であり、業務に必要な専門性は、経験を積み重ねる、そういう中で養われるというふうに思います。専門性を育成、そして維持、継承するためには、地方公務員として安定した身分を保持し、安心して業務に従事できる賃金、労働条件を保障することが必要であります。
 一方、地方独立行政法人は、原則として企業会計原則によることとされ、毎年度の目標設定により、段階を追って経費削減などのリストラを推進することが求められており、住民の福祉の増進を図る役割を持つ地方自治体とは異なる運営が求められています。
 地方独立行政法人が業務の効率化を優先することにより、法人職員が低賃金で短期間雇用の非正規職員にされれば、業務についての専門性が蓄積されなくなります。短期間のうちに地方独立行政法人の職員が次々と入れかわることになれば、住民の個人情報の管理にも支障が生じてまいります。
 法案では、地方独立行政法人の業務の適正を確保するためとして、設立をした市町村から法人への立入検査や監督命令を行えるようにする、このようにしていますが、問題が発生してから事後的に対応を行うものでは、住民情報の漏えいなどで失われた損害は回復できないというふうに思います。
 第三番目は、複数の市町村の窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託するようにすることで、地方自治体の業務の集約、統廃合を加速させることにつながることであります。
 政府は、骨太方針の二〇一五の中で公的サービスの産業化を打ち出して、このように言っています。「市町村で取組が遅れている分野や窓口業務などの専門性は高いが定型的な業務の適正な民間委託の取組の加速をはじめ、公共サービスの広域化、共助社会づくりなど幅広い取組を自ら進める。その際、窓口業務のアウトソーシングなど汎用性のある先進的な改革に取り組む市町村数を二〇二〇年度までに倍増させる。」このように述べているわけであります。
 窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託をすることで、地方自治体の空洞化が一層進められるおそれがあると思っています。
 二〇一四年に東京都の足立区が戸籍業務を民間企業に委託したところ、戸籍法違反であるとかあるいは偽装請負の問題が発生して、住民からも批判を呼び、一部を直営に戻さざるを得なくなりました。
 今回の法案は、骨太方針の二〇一五に基づき、地方独立行政法人を突破口にして、窓口業務の包括的な委託を進められるようにする意図で提出されたものであるというふうに考えざるを得ません。
 自治体の窓口業務は、これまで述べてきましたように、住民の基本的人権にかかわる重要な業務を担っており、地方自治体がみずから主体となって、正規の自治体職員が直接担うことが必要であるというふうに考えています。したがって、今回の法改正に反対であることを改めて表明し、陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119304601X01920170517_008

発言者: 福島功

speaker_id: 32225

日付: 2017-05-17

院: 衆議院

会議名: 総務委員会