丸田洋の発言 (農林水産委員会)

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○丸田参考人 おはようございます。新潟県上越市板倉区から参りました、有限会社穂海農耕の丸田と申します。
 本日は、このような場をいただき、まことにありがとうございます。
 それでは、まず初めに、自己紹介をさせていただきたいと思います。
 私は、大学時代は工学部で航空工学を学ばせていただき、その後、重工系の会社に就職し、ガスタービンの開発を行っておりました。その後、諸事情あり、地元である新潟県上越市に戻ることになり、しばらく工業とも農業とも関係なくぷらぷらしておりましたが、平成十六年に知り合いより声をかけていただき、水稲農業を手伝ったことをきっかけに、平成十七年十二月に就農いたしました。平成十八年作より耕作を始め、今作で十二作目に入ります。
 実家は、農家でもなく、農地も全く持っておりませんので、いわゆる農外参入と呼ばれる形態になるかと思います。ゼロからのスタートとなりますが、本作、二十九年作においては百三十ヘクタールを経営するまでに規模拡大をすることができました。
 この場をおかりし、地域の皆様、バックアップしていただいた行政の皆様、お取引先の皆様、金融機関の皆様、携わっていただいている全ての皆様、そして何よりも、従業員のみんなにお礼を言いたいと思っております。
 私が就農した際は、就農自体が非常に珍しく、周囲からは驚かれたことを思い出します。今では、就農は珍しいことではなく、新農業人フェアを初めとする農業への参入の垣根も随分下がり、農外からの参入者としては、仲間がふえていくことについて非常にうれしく思っております。
 新潟県の農場ということで、コシヒカリがメーンの作付だと思われることが多いのですが、弊社のコシヒカリの作付割合は、全体の一〇%強でしかありません。それらの品種も、極わせから超晩生までと作期をずらしており、同地域の一般的な農家の方ですと九月から十月上旬までの稲刈りのところを、八月下旬から十一月上旬まで伸ばすことにより、少ない機械でより多くの面積を経営することを行っています。
 また、販売については、自社で販売会社を持ち、外食、卸、商社へ玄米で直接販売をしております。
 弊社の概要につきましては、お配りさせていただいております資料をごらんいただければと思います。
 さて、長くなりましたが、一農業者として農業競争力強化支援法についての意見を法律の構成に沿って述べさせていただきたいと思います。
 まず、第一条の「目的」についてです。
 農業者は大規模化が進んだといっても、それも全体の一部でしかありません。また、もし大規模化が進み、水稲で千ヘクタールという規模があらわれたとしても、十数億円規模の売り上げにしかなりません。農業では大規模でも、他産業で見れば中小企業の域を出ることは難しく、なかなか他産業のように買い手が力を発揮するという状態になるにはほど遠いと考えられます。
 民間事業者である農業者がその環境をドラスティックに変えることは非常にハードルが高いと考えられますので、その点からも、本法案の目的としては適切ではないかと考えています。
 続いて、第三条から五条についてです。
 まず、少し遠いところからになりますが、現場での生産者の視点から考える、今後の農業の置かれる環境についてからお話をしたいと思います。
 高齢化は、皆さんが想像されているよりも、より早く押し寄せてきています。それに伴い離農される方も多く、集約化が進み、今後はより一層大規模化が進むだろうと感じています。弊社も十年足らずで百ヘクタールを超え、今後も同じような生産法人がどんどんふえてくることと感じています。
 さらに先を考えれば、五百ヘクタール、千ヘクタールといった大規模法人も必ずやあらわれてくることになるかと思います。そして、国内のマーケットは、人口減とともにシュリンクし、一方で、海外の人口は二〇五〇年には百億人と言われているように、今後もどんどん増加していきます。
 こういった国内外の環境を考えると、流通に関しても、今までと同じ形態のまま進んでいくとも思えません。国内販売だけではなく、輸出という選択肢も大きなものとしなければなりません。
 そういったことが考えられる中で、果たして私たちだけでどうしようもない事業環境の整備はどのようになるのだろうかという不安がありました。
 しかし、この三条、四条に、国及び農業生産関連事業者について環境の整備についての努力項目が明確にされていることにより、将来へ向けて、安心し、新しい取り組みも含めた経営ができると考えています。
 そして、私たち農業者にも五条において農業経営の改善についての努力が求められていることについては、前向きに受けとめています。個人的には、当初案の、必要な情報を収集し、主体的かつ合理的に行動するよう努めるという形でもよかったのではないかと考えております。
 これは、今回の農政改革において系統組織に求められている変革からも感じています。それは、系統組織のヒエラルキーのトップであるのは、全農でも単協でもなく、私たち生産者であるからです。系統組織について変化が求められているということは、組合員としての私たち自身が変化を求められていることにほかならないからです。
 系統組織の変革を起こすためには、その組合員として一票を持つ私たち農業者が、しっかり考え、行動し、その一票を正しく行使することが非常に重要ではないかと考えています。そのためには、私たち農業者も成長すべく、さまざまな情報を集め、勉強していかなくてはなりません。
 よって、この五条があることにより、それが明確になり、私たち農業者自身がより成長し、日本の農業を担っていくことにつながっていくのではないかと考えています。
 次に、八条から十条についてです。
 さきにも述べたように、今後、輸出も一つの選択肢として大きな役割を果たすだろうと考えています。海外で求められる食味や品質を供給できるようにすることはもちろんのこと、価格競争力についても重要です。
 そのためには、農業資材、農業機械の価格も非常に重要になってくると考えています。同品質、同効力のものであれば、結局のところ、価格で選ぶ形にならざるを得ません。よって、それらの選択肢がどれだけあるのか、その情報がいかに入手できるかも重要です。
 また、農業機械に関しては、現状の性能で十分にもかかわらず、モデルチェンジがされ、新しい機能が追加されるということが多々あります。むしろ、同じモデルを長く販売し、その価格を下げてもらう方が生産者としてはプラスであると考えます。
 また、必要な機能を自分たちで選べるなど、パソコンのBTOのような形も一つの選択肢ではないかと考えています。実際、今の農業機械では、使ったことのないスイッチや機能があるということも事実です。これらを解消すれば、同じ機能で廉価なものにすることも可能なのではないでしょうか。
 さらには、耐久性の向上も重要です。
 弊社では、極わせから超晩生までの品種を作付けることにより、作期を長くしています。これにより、より少ない機械でより多くの面積を経営するということとなり、減価償却費の削減を図ることが可能となります。
 そうなると、必然的に一台の機械の使用時間が長くなり、耐久性が重要となります。トラクターは二年で一千時間を超え、田植え機に関しては、償却期限の前の六年目となることしで一千時間に届こうとしています。これらは、弊社のお取引のある農機具屋さんでも見たことがないとおっしゃっています。
 田植え機は、ことしの整備では、定額で償却した際の償却費よりも多くの整備費用がかかっています。
 今は弊社が特異的に見えるかもしれませんが、大規模化が進んでいけば、遅かれ早かれ、どの生産法人も同じ取り組みをすることでしょう。よって、耐久性という視点も非常に重要になるはずです。
 さらに、種子、種苗についてです。
 弊社では、今作では試験も含め十一品種ほどの作付を予定しています。これは、新潟県の品種だけではなく、農研機構の品種が一番多く、民間品種も栽培しています。弊社は農研機構がなければ成り立っていないとも言えるほどです。
 前述のように、極わせから超晩生までの作期分散のために、この十一の品種を探し、選んでいます。それらは現在での多収、良食味の品種を作付けていますが、原価低減のためには、より収量の増加も求められるとともに、時代とともに変わる消費者の舌にも対応していくことが必須です。
 そして、これは日本国内の視点だけではなく、海外へ輸出に対応していく上でも同様です。この品種は、弊社にとっても、そして今後、生産者にとっても生命線となるはずです。
 大規模になればなるほど、きめ細やかな管理が難しくなり、品種そのものの特性である、倒伏しにくさや病気へのかかりにくさに頼らざるを得ません。
 実は、現在も、こういった情報がまとめられている稲品種データベースが農研機構によって整備されています。弊社も、これを活用し、品種を探して選んでいます。現在は休止中ですが、本法が施行されることにより、そういったデータベースがよりきめ細やかに整備され、生産者が知りたい情報を得られるようになることは重要であると考えます。
 以上のことより、八条から十条に関しては、非常に期待が持てる項目であると感じています。
 続いて、十一条から十五条についてです。
 この流通に関しては、第三条から五条のところでも申し上げたように、今後、事業環境の大きな変化が考えられます。消費者の減少、高齢化とともに進む大規模化、輸出など、今まででは想像もしていないようなスピードで大きく変わっていくことでしょう。物流についても、ドライバー不足は今でさえ深刻になりつつあり、モーダルシフトも考えていかなくてはならないかもしれません。
 弊社が参入した十二年前には、周辺の皆様はほとんどが系統出荷でした。弊社の場合、農外参入の新規就農だったため、JAさんへお米を出荷できるということを私自身が就農後しばらくは知らなかったため、自身で商社や卸さんへの販売ルートを開拓しなければなりませんでした。現在もそのときの販路が生きており、ほとんどが外食、卸、商社などの皆様への直接の販売です。
 このことにより、前述のような多数の品種を栽培していても、実需者の皆様と非常に近い形で話ができるため、販路の確保ができるとともに、次の求められている品質、それに合う品種の提案など、常にマーケットを意識した取り組みができるようになっています。これは弊社の経営の上で非常に重要な部分になっています。
 一方で、輸出に関しては全農さんと取り組んでいます。こちらも、海外で求められる品質に基づき、栽培する品種を決定しています。
 このような取り組みができるのは、弊社の地元JAさんの考え方が進んでおり、直売できる部分は応援していただけますし、輸出のこの取り組みも応援していただいています。
 個人的には、農産物流通においてのこれからの系統組織の役割として、単協は地域の中小規模の農場の維持発展のため、そして、全農は世界へ向けての輸出の役割を大きくすべきであると考えています。
 このような形で、本質的な生産者の利益の最大化ということを考えていただけるような事業環境が整えられることにより、生産者の経営の多様性が生まれ、結果として、消費者の利益にもつながるとともに、持続的な農業経営となるのではないかと考えています。
 また、昨今、弊社のような直接販売の場合、物流手段の確保も問題になっています。
 主に、トラックの手配の難易度については、繁閑期での差が大きく、それらの平準化ができないものかと既に悩みの種となっています。
 一方で、鉄道コンテナの手配はトラックに比べ容易ですが、コストが上昇してしまいます。
 こういった問題を解決していくためには、買い手、生産者、そして物流事業者が連携し、空席情報ならぬ空き情報などが共有されれば、それに基づいた出荷計画も立てることができ、物流コストの低減にもつながるのではないかと考えています。
 よって、このような事業環境を推進していただくためにも、本条項は必要であると考えます。
 次に、十七条から三十条についてです。
 既に、ここまでで資材供給や流通に関しての条項がありますが、その競争を促進するための新たな風を吹き込むために、本項目は必要ではないかと考えます。
 何度も申し上げておりますが、大規模化が進んでいくことにより、生産現場は大きな変化が起こることでしょう。それに伴い、資材供給や流通、物流なども大きな変化を起こさなければなりません。
 私が就農してから十二年ほどですが、資材や農業機械に関し、ほとんど再編が起こったり新しい企業が参入されたということを聞いたことがありません。米価は下落傾向である一方で、常に資材価格、農業機械の価格は上昇基調でした。
 よって、競争が起こることによっても、そこに風穴があくことを本条項が設けられることにより期待したいと思います。
 そして、イノベーションは、ほとんどの場合、中からだけではなく、外から起こることが多いものです。よって、このイノベーションも受け入れるべく、環境の整備はしておくべきであると考えます。イノベーションなくして、今後の農業の大きな成長はないはずです。
 以上が、私の本法案についての意見となります。
 そして、最後になりましたが、弊社が大規模化を推し進めておりますので、ここまでは大規模化が全ての前提であるかのようにお話をしましたが、一点だけお伝えしたいことがあります。
 弊社がこのように大規模化を標榜できるのも、実は、すばらしくおいしいものをつくることができる篤農家の方々がいらっしゃるからです。昨今、水稲農業イコール大規模というだけの図式で語られることが多くなっています。しかし、それは大きな間違いです。すばらしくおいしく、そして、日本の農業という文化を支えてくださっている篤農家の方々がいてこそ、私たちのような大規模な農場が維持することができるのです。
 その逆もしかりです。やはり、フラッグシップとしての、文化を背負ったすばらしくおいしい農産物は、日本の中でも、そして世界に向けても必要なものです。その農産物は、新しい品種だけではなく、在来種のものですぐれているものも多々あります。
 つまり、大規模がいいとか農家がいいとかではなく、これらが両方そろって、車の両輪となることにより、日本の農業は強くなり、そして、世界でも戦い、勝つことができるのではないかと強く感じています。これらを実現するためにも、本法律は有意義に働くのではないかと期待しています。
 そして、このような議論により、農業者自身も、そして若者たちも、農業に携わっている産業の方々全てが、日本の農業が明るいと思っていただけるようになることを心より祈り、拙いながら、私の本法案への意見とさせていただきたいと思います。
 本日は、御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 丸田洋

speaker_id: 439

日付: 2017-04-06

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会