花井圭子の発言 (文部科学委員会)
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○花井参考人 おはようございます。中央労福協事務局長の花井と申します。
本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
中央労福協は、二〇一五年より、給付型奨学金制度の創設、奨学金制度の改善、学費を含む教育費負担の軽減に取り組んでまいりました。その立場から、今回の法案並びに関連する奨学金制度の課題について意見を述べさせていただきたいと思います。
初めに、奨学金問題の基本的な認識についてお話ししたいと思います。
この間の取り組みを通じて実感したことは、この問題が極めて深刻であり、もはや個人の努力の限界を超えて、社会の構造的な問題となっているということです。
中央労福協では、奨学金の利用実態を把握するために、二〇一五年の七月から八月にアンケート調査を実施し、一万三千三百四十二名から回答を得ることができました。資料の「アンケートから見えてきた奨学金問題」というミニ冊子をごらんいただきたいと思います。
表紙にありますが、奨学金の平均的な借入額が三百十二・九万円、毎月の返済額が一万七千二百六円、返還期間は十四・一年となっています。
五ページ下のグラフで返済の負担感を見ると、苦しいが四割弱、非正規労働者では五六%に達しています。
六ページをごらんください。奨学金返済は、結婚、出産、子育てなどにも大きく影響を及ぼしていることがわかります。
授業料の高騰や家計収入の低下により、今や大学生の二人に一人以上が奨学金を利用しなければ進学できず、卒業後も不安定雇用や低賃金で返済に苦しんでいます。無理をして返している人も、結婚や出産にちゅうちょしてしまう。こうした事態を放置しておけば、貧困の連鎖や少子化をさらに加速し、日本社会自体が持続不可能となってしまいます。奨学金問題は、教育の機会均等確保の問題だけではなく、社会の存続にかかわる問題でもあるのです。
こうした中で、給付型奨学金の創設や、奨学金制度の改善、教育費負担の軽減は、勤労者、国民の切実な願いとなっています。そのことは、約三百四万筆にも及ぶ署名や、お手元に配付しております大変分厚い冊子でございますが、アピールへの賛同がさまざまな分野を超えて共感を呼び、大きく広がったことにあらわれています。
また、奨学金制度についてあなたの声を聞かせてくださいと呼びかけたところ、全国から千四通のメッセージが寄せられました。お手元の冊子にその一部を抜粋しておりますが、結婚、出産は無理、ブラックリストに載ってしまう、子供に借金を負わせたようなもの、このまま夢を諦めたくない、勉学よりもアルバイトに追われる毎日などなど、読むと本当に胸が痛みます。ぜひとも、こうした声を国会議員の先生の皆様たちに受けとめていただきたいと思います。
本法案で、これまで貸与型しかなかった日本において給付型の奨学金ができることは大きな前進であり、評価をしております。とりわけ与野党の先生の皆様たちの御尽力に対しまして、心より感謝申し上げたいと思います。しかし、規模は余りにも小さく、対象者も限定的です。今回の制度創設はあくまでもスタートラインであって、将来に向けて拡充し、大きく育てていただきたいと思います。
以下、法案の内容及び関連する課題について意見を申し上げます。
第一に、給付対象者についてです。
一学年二万人では、高等教育の進学者に対してわずか二・六%です。非課税世帯の進学者も三分の一しかカバーできていません。また、学費の高騰や家計収入の低下により、中間層を含む多くの世帯にとって、子供の学費を負担することが困難となっています。ごく一部の貧困層のみを救うという視点だけでは、現在の教育費問題を解決することはできません。当面は住民税非課税世帯の進学者六・一万人全員に対象を広げつつ、将来的には中間層にまで広げていただきたいと思います。
第二に、給付額についてです。
月額二万から四万円では、やはり不十分と言わざるを得ません。文部科学省の検討チームの試算でも、アルバイト、仕送り、その他の収入を見込んでも一万から二万円不足しており、その分の増額は必要であると思います。また、授業料減免と給付型奨学金を併用する場合、減額調整を行うと言われておりますが、再考をお願いいたします。進学を後押しするためには、学費の軽減と生活費の両面からの支援が必要です。
第三に、学業成績不良の場合には、そこに至った事情を総合的に判断し、可能な限り学業を継続できるよう、支給打ち切りや返還については慎重な運用を行うべきです。月額二万から四万円では、依然としてアルバイトに追われ、学業に集中できません。個々の学生の抱える事情を把握して、丁寧な相談対応を行っていただきたいと思います。
第四に、制度導入後も不断の検証と見直しが必要です。
法案の附則で施行五年後の見直しが盛り込まれましたことは、大変評価しております。ただ、それ以前であっても、ニーズの充足状況の調査や運用に伴う問題点の実態把握を行って、必要な改善については早期に対応していただきたいと思います。また、実施状況や検証結果については、国会に定期的に報告すべきであると考えています。
第五に、制度を円滑に運用するには実施体制の整備が不可欠です。
四月から給付型奨学金や所得連動返還型奨学金がスタートし、日本学生支援機構の業務量も相当に増大します。現在でも、返済に関する相談や学校現場からの問い合わせの電話がなかなかつながらないと言われています。業務量に見合う十分な人員の確保や、制度の周知、広報体制の整備を国の責任で行っていただきたいと思います。
第六に、無利子奨学金についてはここ数年拡充されてきておりますが、依然として、貸与奨学金の六割超が有利子です。将来は全て無利子にすることを目標に、少なくとも無利子が有利子を上回るよう拡充を図っていただきたいと思います。
第七に、新たに給付や貸与を受ける人だけではなく、既存の返済者の負担軽減や救済制度の改善、拡充も忘れてはなりません。新所得連動返還型奨学金制度のさらなる改善、拡充とともに、猶予期間の延長、一定期間経過後の返還免除制度の導入、延滞金賦課率の引き下げについても早急に検討し、改善していただきますよう要請いたします。
最後になりますが、奨学金制度の拡充や学費の引き下げは国民の関心が高いテーマです。しかし、文部科学省の検討過程が非公開とされ、国民的な議論ができなかったことは残念です。ぜひとも、奨学金や学費に関して検討を行う際には、情報の公開は言うまでもなく、検討過程に利用者、勤労者の代表や学校現場からの参画を図り、国民世論を味方につける形で進めていただきたいと思います。
ぜひとも、この国会審議を通じて、有利子から無利子へ、貸与から給付への流れをより確かなものとし、将来に向けて拡充していく方向性を国会の意思として明らかにしていただくことを強く要望し、意見陳述とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)