今井高樹の発言 (予算委員会公聴会)
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○今井公述人 皆さん、おはようございます。日本国際ボランティアセンター、JVCの今井高樹と申します。
本日は、このような場にお招きいただきまして、本当にありがとうございます。
日本国際ボランティアセンターといいますのは、NGO、非政府組織でありまして、世界、アジアあるいは中東、アフリカの国で人道支援活動あるいは開発援助、平和構築の活動を行っております。私も通常、海外に駐在しておりまして、三日前に日本に戻ってきたところです。
本日は、この間予算委員会でも議論になっております南スーダンの問題、自衛隊派遣あるいは駆けつけ警護、宿営地防護の新任務といったことについて、現地の状況を知る者として意見を述べたいと思います。よろしくお願いいたします。
私自身は、二〇〇七年から二〇一〇年の前半まで南スーダンのジュバに住んで、駐在しておりました。そして、そのときは、帰還してきた難民の支援の活動を行っておりました。当時のジュバは、まだ独立前でしたけれども、非常にいい時代で、人々は希望にあふれ、町も落ちついていて、まさに今の南スーダンの状況は当時からは信じられないような感じになります。
その後、私どもは二〇一一年に南スーダンの難民キャンプで活動を始めまして、年に一回あるいは二回ぐらい私も出張しておりました。さらに、昨年は、御存じのとおり、七月に大きな戦闘がありました。その後、この戦闘で被災された方々、避難された方への支援のために、私自身が九月それから十一月にジュバを訪問いたしまして、緊急人道支援活動、食料援助ですとか医薬品の支援を行っております。
最初に、今の南スーダンの全般的な状況ですけれども、お手元の資料の方をごらんください。
こちらは国連、UNOCHAの出しているものですけれども、皆さん御存じかと思いますけれども、国内避難民が百九十万人、それから国外に逃れた難民が百五十万人、合わせて三百四十万人、およそ国民の三人に一人ぐらいが家を追われて避難生活を送っているような状況になっております。あるいは、国民の半分が非常に深刻な食料不足に陥っているということで、一言で申し上げると、昨年の七月以降、情勢は安定しているどころか、ますます悪化しているといったところだと思います。
昨年の後半、特に特徴的なこととしては、エクアトリア地区と呼ばれる国の南側に暴力が拡散しています。この地図でいいますと、ちょうどこのあたりになります。
もともと南スーダンの紛争は、御承知のとおり、キール大統領の出身部族であるディンカ族、それと元副大統領マシャールさんの出身部族のヌエルとの戦いであって、主に国の北側の方で戦闘が行われていたんですけれども、昨年後半にはこれが国の南側の方に、エクアトリア人といったような人が住んでいる地域ですけれども、そちらに拡散しています。
もう一枚のパネルの方で、そういったエクアトリアの地域では、村が武装グループに襲撃をされて焼き討ちをされています。この下の方の写真は私自身が撮ったわけではなくて、これは南スーダンの教会系の団体が撮ったものを私がいただいてきたんですけれども、ロボノクというジュバから八十キロ離れた場所ですけれども、こういったように、武装グループによって村が襲撃をされ、焼かれ、人々は殺されたりレイプをされたり。
私、実際にジュバで、このロボノクという村から避難してきた人とお会いしました。食料支援を行いましたけれども、その方が言っていたのは、その方はディンカと言っていましたけれども、ディンカの武装したグループが村に来て、無差別的に銃を乱射して、人を殺し、子供たちを殺し、最後は死体を切り刻んで家の中に投げ込んで火をつけたといったような、ちょっと信じられないような話をしていらっしゃいました。
あるいは別の避難民の方は、こういったエクアトリアの村々では、まさに子供たちが、鶏を殺すように、鶏を絞めるような形で殺されているといったような話を聞きました。
多くの村が無人化しています。このエクアトリア地域から昨年の後半だけで約四十万人がウガンダの方に避難民になっています。
やられた村の方、エクアトリアの人たちも、ただ黙っているわけではもちろんありません。自分たちで自警団をつくったり、あるいは新しい武装グループをつくって報復に出ています。ですから、エクアトリアの人たちがディンカを攻撃するといったことが起きています。
具体的には、このエクアトリアの地域を通る幹線道路でバスを襲撃して、中に乗っているディンカを捜し出して処刑をするといったようなことが行われています。もちろん、ディンカの人もそれに対して報復をしようということで、そういったエクアトリア人は許せないといったキャンペーンが行われまして、非常に民族間の対立、報復の連鎖、憎悪の連鎖ということが広がっています。
ですから、皆さん、エクアトリアの方も、あるいはディンカの方もそうですけれども、自分たちがいつ標的になるのか、自分たちがいつ殺されるのかということで、一般の住民の方は非常におびえているのが南スーダンの現実です。
ですから、国連も、皆さん御承知のように、南スーダンに大量虐殺の危険があると警告していますけれども、南スーダンはそういったまさに紛争状態、混乱した状態にあると私は認識しています。ですから、PKO五原則については崩れているというふうに思っております。
ただ、そうは申しましてもといいますか、私も国会の議論も聞いておりますけれども、稲田防衛大臣は、そうはいってもジュバは安全なんだ、ジュバは落ちついているんだというふうに繰り返しておっしゃっておられます。ただ、本当にそうなのかということで、少しお話をさせていただきます。
私は、九月と十一月に合わせて約三週間ぐらいジュバにおりましたけれども、確かに表面的にはジュバは落ちついています。そこでは普通の市民生活、子供が学校に行き、女性が買い物したりといったものが一応表面的には見られているわけなんですけれども、ただ、実際には、皆さん非常におびえていらっしゃいます。
例えば、昨年の十月にこんなことがジュバでありました。キール大統領が死んだというようなうわさがジュバで流れたんですね。そのときに、多くの、ほとんどの住民がすぐに家に逃げ込みました。町からは人影が消えて、商店街といいますか市場は全てシャッターをおろしてというか閉じられて、誰も、人っ子一人いない状態になったと聞いています。それが三日間続いたというふうに聞いています。
人々は、これはうわさだけなんですけれども、キール大統領が死んだことによって後継者争いとかで新しい戦闘が起きるのではないか、そうした戦闘が起きたときには自分たちが殺されるのではないかと。特にエクアトリアの方々は、さっき申し上げましたように、ディンカとの対立がありますので、大統領派の軍の主力であるディンカがエクアトリア人を殺しに来るのではないかということで、皆さん恐れて、家の中に閉じこもった、あるいはもうジュバから逃げ出した人もいたというふうに聞いています。
この混乱をおさめるために、三日たってやっとキール大統領は姿をあらわしたんですけれども、キール大統領は、宣伝カーのような車に乗ってジュバの町中を走り回って、自分は生きているんだということをアピールしたそうなんですが、そのぐらいしないとおさまらないぐらいのパニック状態だったと聞いています。
そういった形で、今のジュバは、もし何かあったら、これは住民の皆さん自身が、虐殺にしろ、暴動にしろ、戦闘にしろ、一体何が起きるかわからないということで恐れています。
具体的に、政治的な混乱の要因というのはあります。
この二週間の間に、新聞等でも報道されていますけれども、大統領派の軍のSPLAの司令官が一人辞任しております。あるいは労働大臣も辞任をしております。こういった方々は、まさに今のキール政権のやり方はおかしい、国民を虐殺している、ディンカ民族を中心にしてほかの民族を排斥するようなことをやっているということで、不満を、抗議の意思を表明して辞任しているわけなんですけれども、そういったことを契機にしまして、いつどこで戦闘が起きてもおかしくないような状況だと思います。
もう一つは、非常に南スーダンの経済は、内戦、今の紛争によって破綻している状態です。
通貨である南スーダン・ポンドは大暴落をしておりまして、物価は一年前に対して五倍、六倍に上がっています。あと、物が不足しています。これは、外貨がないので物が輸入できない、あるいは輸入しようとしても、その輸入ルートが非常に危険で、トラックが物資を運べないということで、ガソリンが非常に不足しています。
私、ジュバの町を走りますと、あちこちで道路渋滞のようなものに遭遇するんですけれども、それは渋滞ではなくて、ガソリンスタンドの前に何百メートルも車が列をつくっています。ガソリンがないとどうなるかといいますと、直撃されるのは水なんですね。ジュバの多くの地域では、もちろん上水道はないです、ナイル川の水を給水車が運んで供給をしているんですけれども、そういった給水車が走ることができません。あるいは、非常に水の値段が高くなっています。私が聞いたある方は、自分の収入のほとんどが水を買って消えてしまうというような話をしていらっしゃいました。
この写真の上の方ですけれども、これは私たちが訪問した、あるいは支援した避難民キャンプで、このお母さんと子供たちは、近くから野草をとってきて、その草を食べているところなんです。そういった物価高の中で、食料品の価格が非常に高くて、皆さん食料が買えません。ですので、決して避難民キャンプだけではなくて、ジュバの中の、特に郊外なんですけれども、地域では、こうやって草をとってきて食べるようなことも行われています。
そういったように、こういった経済的な状況が社会不安を起こしている、しかも民族間の敵対がある。非常に不安定なジュバの状況です。
この避難民の方々は、私どもが支援しましたけれども、実は皆さん、ジュバのある一地域から避難してきた方なんです。昨年の七月の戦闘からもうそろそろ半年たっていますけれども、まだ自宅には戻れません。こういった方の自宅の周辺は非常に治安に不安がある。皆さん、自宅には戻れないと言っていらっしゃいます。
もう一枚の資料ですけれども、こちらはジュバの地図になります。今お話をした避難民の方は、ジュバの北側に空港がありまして、御承知のように空港の脇に自衛隊の宿営地があるわけですけれども、東側にナイル川がありまして、西側のこのあたり、ちょうど国連の避難民保護施設、UNハウスの近くですけれども、このあたりから避難してきた方々です。
この場所は、七月以前は副大統領派、リヤク・マシャール派の軍事拠点があったところです。ですので、七月には大変な激戦になりまして、皆さん避難したんですけれども、ただ、その後も、人々の話では、ここには元マシャール派が潜んでいるかもしれない、あるいは、政府軍、大統領派は、このあたりに元マシャール派が帰ってくるかもしれないということで、常に大統領派の軍隊がパトロールを続けている。そこにもし住民が戻ってきたら、おまえはマシャール派の仲間だということで、尋問をされ、あるいは襲撃をされ、女性であればレイプをされるといったようなことを皆さん恐れて、家には戻れない状態になっています。
さらに、ここにある避難民保護施設の中には、マシャールさんの出身部族であるヌエルの人たちが多くいます。大統領派は、その中にはマシャール派の元兵士といいますか幹部も紛れ込んでいるというふうに考えていまして、避難民保護施設に対して七月には直接の攻撃も加えられていましたけれども、その後もそういった幹部を引き渡せといったような動きもあって、この避難民保護施設の周辺というのはジュバの中でも最も不安定な場所になっていて、市民の方もそちらにはなかなか近づきたがらない場所になっています。
皆さん御承知のように、自衛隊は、その宿営地、それからまさにこの避難民保護施設で今活動を行っております。自衛隊が活動を行っているところというのは、まさにジュバの中で最も不安定な、何がしかの衝突が起こっても全く不思議ではないような場所で行っているということです。
私、今ジュバで、確かに昨年の七月のような大規模な戦闘、戦車部隊ですとかヘリコプターが出ての戦闘が行われるということは非常に考えにくいと思います。ただ、今申し上げましたように、さまざまな不安定要因の中で、軍の内部分裂、あるいは住民の暴動ですとか、それに対する虐殺が起きる可能性は決して少なくはない。
もしそういったときに、自衛隊が巻き込まれる、あるいは駆けつけ警護なり宿営地防護をした場合に、そこで巻き込まれて戦闘当事者になってしまう、もし一発でも自衛隊が撃ってしまえば、それは日本に対する非常に大きな敵対感情を巻き起こします。それは政府軍、大統領派の中に巻き起こすかもしれませんし、あるいはその逆、あるいは住民の中に巻き起こすかもしれませんけれども、そういったことに容易になってしまうのが今の南スーダンの現状です。
私どもNGOの立場からしますと、もしそういったように日本に対する反感が巻き起これば、私どものような日本のNGOは非常に活動がしづらくなります。住民の方が敵対意識を持ってくれば、もちろん人道支援活動はできません。この自衛隊の駆けつけ警護の問題は、NGOとかで、あるいは国連で働いている邦人を保護する、そういうことも言われていますけれども、実際には、そういった武力をもって、自衛隊が武力行使をすれば、逆に私たちの活動がやりにくくなるといったふうに思っております。
では、NGOはどうやって自分たちの安全を守るのかということがよくこれもまた質問されるところですけれども、私どもは、NGOの中でNGOフォーラムという、日本だけではなくて各国から来ているNGOが集まって、常に安全対策のミーティングを持ったり、情報交換をしながら活動しております。あるいは、現地のジュバの一般の方からさまざまな情報をもらいながら、危険を回避するような形で活動を行っています。
あるいは、仮に私どもが例えば拘束されるといったようなことがあった場合に、でも、それは決して武力で解決するのではなくて、現実的にはやはり交渉、話し合いで解決をする方がよほど安全です。これは実際に、今まで南スーダンのPKOも、PKO部隊の一部が反政府勢力に拘束されたこともありましたけれども、やはり交渉によって解決されています。
この間、予算委員会では、ジュバで昨年の七月にあったものが戦闘なのか、あるいは衝突なのかといったような議論も繰り広げられてきましたけれども、私は、率直に言いまして、こういったことは言葉遊びのようなものではないかというふうに思っております。現地にいる人から見れば、皆さん、自分たちの家族を亡くし、あるいは自分たちの家を追われ、今も避難生活を続けています。多くの方が亡くなりました。ジュバの戦闘でも、二百七十人、三百人という数字は決して実態ではないと思います。多くの方が千人ぐらいは死んでいると言っていますけれども、それが現実なわけです。衝突と呼ぼうが、戦闘と呼ぼうが、起きたことは変わりません。
そういった南スーダンの方は、私も話を聞きますと、とにかく戦争をやめてほしい、殺し合いをやめてほしい、普通の生活を取り戻したいというふうにおっしゃっています。そのために国際社会に何とかしてほしいというふうに皆さんおっしゃっています。そういったことに対して一体日本に何ができるのかということをもっと考えなければいけないと思います。
私は、それは決して自衛隊の派遣ではないと思います。自衛隊の方は、ジュバで非常に困難な状況の中活動をされていて、その御苦労に私は敬意を表します。しかし、自衛隊派遣ではなくて、もっと別のやり方で日本は南スーダンの和平に、平和な社会づくりに貢献すべきではないかと思っています。
それは、自衛隊の活動、先ほど申し上げましたように、PKOの五原則は崩れています。今の状況で自衛隊がいても、もともと計画していた南スーダンの国づくり支援をやることはできません。あるいは、むしろ戦闘に巻き込まれるリスクが高くなっています。
それよりも、日本がやるべきことは、武力ではない協力。日本は、憲法九条を持つ国として、武力でもって紛争解決はできないというふうに宣言をしております。まさに今、そのことを南スーダンの人たち、特に紛争当事者に伝えていく。残念ながら、南スーダンの紛争当事者は、問題があれば武力で解決できるという考えを強く持っています。それに対して、いや、そうではないんだということで、日本がほかの国と協力して、南スーダンの戦闘当事者が和解をするような、そういった話し合いをぜひ、仲介といいますか、することが日本のすべきことだと思います。
南スーダン周辺諸国、エチオピア、ケニア、ウガンダ、スーダン、こういった国もこの南スーダンの紛争に大きくかかわっているわけですけれども、日本はその周辺のどの国とも非常に良好な外交関係を持っています。
特にスーダン、それとウガンダ、この両方が非常に強くかかわっていますけれども、その両国と良好な関係を持っている国というのはそんなに多くはないです。日本は非常に良好です。そういった立場も生かして、周辺国も含めて、しかも、キール大統領だけではなくて、そのほかの反政府勢力、武装した人たちもいます、非武装の人たちもいます、そういった方も含めて話し合いの場を持つ。最初は非公式ででもいいと思いますけれども、そういった和解の手助けをするというのが、まさに日本がやるべきことではないかといったように思います。
ただ、そうはいっても、自衛隊の問題を言うときに、今さらPKOから撤収できないのではないかといったような意見も聞くことがあります。私は、決してそういうことではないと思います。
皆さん御存じのように、PKOというのは必ずしも軍だけではありません。軍はもちろんPKF、ピース・キーピング・フォースと呼ばれますけれども、PKO、ピース・キーピング・オペレーションの中には、それ以外の文民部門と呼ばれる部門もあるわけですね。それは文民警察もあります、あるいは警察以外のさまざまな行政機構の整備、あるいは法律の整備といった部門のスタッフもいらっしゃいます。そういったところに派遣することで、日本は大きな貢献ができるのではないかと私は思っております。
最後になりますけれども、何とかこの殺し合いをとめることがもちろん第一ではありますけれども、現実には、目の前で苦しんでいる人たちへの人道支援ということもまた非常に大きな課題です。こういった面でも日本は積極的に取り組むべきと思いますけれども、一つだけ私の立場から申し上げさせていただきますと、今、日本のNGOは、非常に日本人スタッフが南スーダンに入りにくい状況になっています。
これは、日本のNGOが日本政府、外務省から助成金をもらって活動していると、南スーダンへの渡航が現状では非常に規制されております。私が南スーダンに行っているのは、私どもは南スーダンについては外務省の助成金を受けずに活動しておりますので入れますけれども、そういった助成金を受けていると入れないといったような状態です。
もともと、皆さん覚えていらっしゃると思いますけれども、安倍首相が駆けつけ警護の話をしたときに、現地で頑張っているNGOの方がいる、そういう方を見捨てていいのかといったような話をされたかと思いますけれども、現実に今、日本政府がやっていることは、NGOの日本人が南スーダンには入れない、あるいは非常に入りにくいようなことをやっております。これはNGOだけではありません。日本人の研究者の方もなかなか入れません。そのことによって、日本に入ってくる南スーダンの情報は非常に限られています。
南スーダンに対して日本がどういった外交的な努力ができるのかを考えるときに、現地の情報は非常に重要だと思います。しかも、それは政府の皆さんだけではなくて、民間の、あるいは研究者の方、いろいろな情報を集めて初めて正しい判断ができると思いますけれども、現実にはそれができない状態になっている。ここについてもぜひ皆さんに再考していただきたいというふうな問題提起を最後にいたしまして、私の話を終わらせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)